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第参章 失いゆく、日常――秘密の花園編。

漆拾捌話 侵入。

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「すまーん、俺はやっぱ足手纏いかもだわ、うん」

「パパ、気にしない!」「そうですわよ!」

「肯定。マスターはマスター」「チュイン!」

 斗家美女軍の余りにも規格外な身体能力に、当然のことだが全くついて行けなかった俺。
 恥ずかしい話し、アイに負ぶさられて移動している真っ最中。

 重装備な俺を背負っているにも関わらず、障害物をモノとせず走り抜けるアイ。

 何ぞかの人外である最妃に、俺嫁の血を色濃く引き継ぐ未来にしても、何処ぞの有名体操選手も真っ青な華麗な動きでその速度に苦もなく平然とついてくるとは流石だよな。

 リペアですら余裕でアイの頭に載っているってんだから。

 格好つけてアリサ的痛ホラーハウスを出たってのに……俺、まぢでへこむわ、うん。

「パパ~。このスーツさ~、意外に気に入ったよ~。着る前はないわ~って正直思ってたけどさ~。ボクの普段着より動き易くて良いね~、本当に凄い~」

「か、彼方、わ、私も凄く気に入りましてよ? か、感覚が増して肌に直に感じると言うか……ですわ! オホホ~」

「肯定。格好良い。移動上昇。防御上昇。作戦成功率に貢献。他には……えーと……えーと」


 足手纏い的俺に皆が優しく慰めてくれやがる……薄ら苦笑いで……俺、辛っ。


「へいへい。ありがとな。慰めてくれて……。その優しさが心に痛いわ……。俺はトホホだよ」

 悔しいから暴れる俺的超お至宝と俺的お至宝をガン見してやんよ!
 うはー良いね! 最高だね!

 俺が皆から愛ある仕打ちを喰らって、ちょっと拗ねてる間に距離は詰まっていった。
 近付くにつれ全貌を現していく超近代的な建物。
 それはアリサが個人で発足して所有する、世界有数のトンデモ特務機関直轄の研究施設――。


 通称、秘密の花園。


 国家機関何ぞとも当然繋がりを持っている所為か、存在は公には公表されてはいない。
 秘密の特務機関何ぞはまさに秘密結社、つまりお約束中のお約束なのだ。
 俺的電波に匹敵するアリサ直轄だけはある。

 有名なフランシス何某著書の創作小説、秘密の花園が名前の由来だと言っていたのな。
 何ぞかの理由で荒廃した庭を蘇らせていき、様々なファンタジー現象を自身が体感して解き明かしていく――と、そんな話しの内容だ。

 アリサは考古学の権威で博士号まで持っている。
 世界中に残る失われた謎文明や未知なるモノ、オーパーツやオーバーテクノロジーのことだな。
 アリサが凡そ有り得ないファンタジーなモノの謎を解き明かし現代に呼び覚まそうとする。
 自身が触れて体感することに因んで付けたそうだ。

 それとだな、この話に出て来よるんだが、威張りくさった我儘娘ってキャラが、アリサの内面に良く似て言い得て妙だよ。
 庭ではないがまさにそっくりな内容じゃね?
 大体な、こんな自虐入りの巫山戯た名前からして、真面な何ぞを扱っている機関で有る筈ないって!
 俺的にぶっちゃけた言い方をしてやるとだな、裏でナニやってんのか解らん胡散臭いトコな?


 しょーもないことを思い出している間に特に問題なく検問所前に到着した斗家の面々は、直ぐに辺り一帯を見回し警戒する。

 密林を更地に再開発した広大な敷地一帯が、背の高い分厚そうな塀でぐるりと囲まれていた。

 なので俺達の居る場所からでは全部は把握できないが、凡そ場違いなほどに近代的な建物の頭が見えた。

 塀の上には侵入者避けか逃亡防止の目的か、刑務所などで見かけるバリケードが張られていた。
 厳重に管理された研究機関ってだけのことはある。

 塀には巨大な門が構えており、重々しく閉じたまま。
 直ぐ横に警備員の待機室と通用口らしき出入口だ。
 このどちらかより入所するしかないらしい。


 但し、それは。
 正規の来客であった場合だがな。


「アイ。周囲の状況確認と通用口の方へ頼む」

「了解」

 俺はアイに背負ってもらったまま指示を出すと、皆と一緒に待機室の横にある通用口へと向かう。

「こんな施設にはごつい警備員がお約束だ。用心棒的何ぞが居ても良さげなもんだが」

 俺は皆を見やり怪訝そうに疑問を口にした。
 待機室に居るべき筈の警備員の姿が見当たらない。
 コレだけの胡散臭い施設で誰も居ないなど、普通に考えても絶対に有り得ないことだ。


 それどころか。
 ヒトの姿が一人も見当たらないのだ。


「ヒトが居ないのでは止むなしだ。アイ、この門を跳び越えて中に入ってくれ!」

「了解」

 アイは深く蹲み込んで地面を蹴り抜くと、指示通り一足飛びですんなりと門を跳び越えた!

 続いて最妃と未来も余裕で軽く越えてきた。


 ただのヒト科である俺には無理。
 やっぱ足手纏いなのな……とほほ。



 ―――――――――― つづく。
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