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第弐章 壊れゆく、日常――デパート編。

伍拾漆話 救出、其の弐。

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「――ナニか気付いたことはない?」

「え? 彼方、ナニが……ですの?」

 突然、投げ掛けられて、キョトンとする最妃。
 ……まぁ、可愛いから良しとしようか。

「んー、にゃにって?」

「もぐもぐ……パパが……にゃにって?」

 双子組は果物を食べるのにご執心の模様。
 何ぞ頬張って膨らませた顔で俺を見やると、ナニ言ってるかな的な怪訝そうな返事が返る。


 お前ら、まぢ泣かすぞ!


「――アリサ。お前も気付いてない?」

「ナニをなのよ? ――義兄さんの性癖なのよ? 双丘万歳お◯ぱい星人なのは知ってるのよ?」

「――アホか」

Joke冗談なのよ? ――Be rejuvenaイケメンに若返ったted……えっと、日本語だと……若返った、と言うのよ?」

「――やっぱりか。アリサは気付いてたか」


「「「え!?」」」


 そうなのだ。
 病室に備え付けの鏡に映った俺なんだがな、またしても若返ったみたいなのだよ、うん。

 ただな? 今回は二十代前半頃だ。

 この頃の俺は、眼鏡を必要としない程度には視力はあったから、裸眼で遠くも見えた。

 つまり、俺は病室で寝てたままなので、眼鏡を掛けずに離れた鏡を見ているんだよ。

 ここに運ばれてくる前までは、当然、眼鏡が必須だった。

 二十代後半と前半で見た目に差は殆どないが、視力の程度は大きく変わってたんだよ。

「えーと……アレ!? ――ホントに若っ! え!? ナニナニ!?」

「――あら!? あらあら!? わ、私も全然、気付きませんでしたわ?」

「パパが若いって、お姉ちゃんの嘘吐き……って、え~っ!? なんで⁉︎ 嘘!~、若っ⁉︎」

「お前らな――今、気付きましたよ的なご都合リアクション、乙!」


 磯巾着擬きのようなモノがやっていた隠蔽の推論。


 見えてるのに居ないことになっていた現象。
 それに気付けたのは……意識したことによって、だった筈だ。


 アリサが資料と俺を怪訝そうに見比べて、計器をチェックしてる際に、時折り首を傾げて交互に見やってたから、もしや、意識したから俺の異常に気付いたのではないかと思ってな?

 それならばとアリサの発言で、皆に意識させ気付いてもらったってわけだ。

 これで俺にも何ぞかの認識阻害が働いていた事実に確証が取れたし、隠蔽の解決法も一応だが確立できた。

 若返る理由についても、俺に致命的なダメージが入ったら、発症ないし発動するっぽいことまでが解ったし。

 ま、そのメカニズムまでは、当然、解らんのだが……収穫としては上々だな。

「あ、あのさ。パパってさ、もしか……ボクよりも若ない?」

 モノ珍しそうな表情で、俺の頬っぺたを摘んで引っ張る未来。

「あらあら。そうですわね……私と結婚した頃の彼方っぽいでしてよ?」

 さっきまで泣いてた最妃は、めっさ嬉しそうな超笑顔で俺を見る。

「パパって、こんな――イケメンさんだったの!?」

 サラッと心外だったと宣うアイ。

「ちょっとちょっとアイさんや。サラッとディス侮辱ってくれるな!」

「あ、痛ぁい~」

 当然、愛あるキツいデコピン何ぞをお見舞いしとく。

「義兄さん、見た目だけがFantasy若返ってるなのよ? それ以外の検査結果については全く異常ないのよ? 最妃姉さんと一緒にとっとお家に帰るのよ? それと、義兄さんの無茶のおかげかなのよ? 貴重なSample未知のモノの標本が山ほど入手できたのよ? こっちでもナニか解ったら連絡するのよ?」

 アリサは検査結果の報告書を俺に叩き付けるように差し出して――、

「お礼は可愛い系のUnbelieアンビリーバボvable系の玩具を一個なのよ?」

 協力してあげたからでしょ的不適切な笑顔で、お代にアンビリーバボを寄越せと宣いつつ手招き。

「アリサも好きだな? へいへい、用意させて頂きます。それとな、日本語頑張れな? 語尾が疑問形って、ナニ? おかしいぞ」

「喧しいのよ? ほっとくのよ?」


 俺の検査と後始末までしてくれてたうえに、今後も率先して協力してくれるっつーんだしな。

 それで済むなら安いモノだ。
 願ったりだよ。

 ただな、大好の事だ。
 俺的聖典も貸したら最後、戻ってこんのかな……。

 だが、迷惑を掛けてるのも事実だし……秘蔵のアレでも追加で差し出しておくか。

 大好の好みの幼女モノ――あのナリで幼女好き……ぷ。

 アリサにべったりなのも肯けるわ。

 しかし……真面目な話、今回の件を弱みに、色々と脅してくるんだろうな。

 国家機関や権力云々は、だから嫌いなんだよ、俺は。
 いっそ引っ越して、身を隠すのもアリかもな。


「ま、なるようになるだろうよ……」

 俺はベットから降りて、大きく背伸びをする。

 目の前の未来とアイの頭をグシャグシャと撫で、最妃を引き寄せて側にあったタオルで顔を綺麗に拭ってやった。

「――んじゃ、俺居城に帰って、ゆっくり休みますかな?」

 そう言うなり、最妃が俺の腕にべったり張り付いた!


 そして、俺的超お至宝を押し付けて、上目遣いにあざとくこう宣ってくれました。


「彼方。約束ですものね? 若返った分も存分に構って差し上げますわ」

 夫婦の秘め事を公然と暴露しつつ、艶かしく微笑む最妃。

「最妃姉さん、次は男の子を狙うと良いのよ?」

 その意味を理解したうえで茶化すアリサ。

「ボクも今度は弟が欲しいかも!」

 それに乗っかる未来。

「お、お姉ちゃん!」

 ダメ出しの人外のアイ。

「未来ちゃんはヒトのことより、自分の相手を見つけるのが先なのよ?」

「アリサ叔母おばさん、痛いトコ突かないでよ~」

Hey!おいっ! 未来ちゃん? 誰が叔母さんクソババァなのよ?」

「あははは~」「ちょいと待つなのよ?」

 見た目中学生な姪っ子に叔母おばさん呼ばわりされて怒った、見た目小学生の叔母との凄まじい追いかけっこ。

「――はぁ。お前らな、大概にしとけっつーの! ここは病院だぞ……全く」

 それを平和だな~と、ほっこり気分で見ている、実の娘より若いおやぢな俺。


 いやはや、カオス過ぎてホラーだな、うん。はっはっは。――どんだけ!


 とりあえず、家族全員が無事で良かった。
 これからのことは……大好と話をしてからだな。
 碌な話しにならんのだろうけども……。

 はぁ、未来じゃねーけど、頭痛が痛くなってきたわ、俺。


 早よ帰って、最妃に思う存分に構ってもらおっと! うひひ!



 ―――――――――― つづく。
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