46 / 154
第弐章 壊れゆく、日常――デパート編。
肆拾陸話 脅威、其の弐。
しおりを挟む
「やはり、行こう。未来、ここの窓ガラスを割ってくれるか?」
「りょ!」
「アイは俺達を順に運んでくれ!」
「了解。先行及び着地点確保」
「頼む」
「最妃は俺と一緒に居てくれ。離れるなよ?」
「承知ですわ。何処までもご一緒致しますわ」
「顕現せよ、ディアボロス! ハッ!」
未来は無い胸の前で合掌し、アイアンキャンディを起動する。
「こんな強化ガラス程度、なんてことない!」
痛いフレーズの後、大きく溜めた渾身の力で、窓ガラスに向けてアイアンキャンディを穿つ!
防弾ガラスの強度に等しい分厚い窓を、たったの一発で打ち砕き、粉々に吹き飛ばした!
割れた途端、赤黒い霧と一緒にザラリとした不快な空気が、館内になだれ込んできた。
「アイ、先行します」
アイは両手で俺的ビームライフルを構えると、割れた窓に飛び込んで自由落下を敢行。
空中で一回転し、バランスを取り直して体勢を整え、六階という高さをモノともせずに難なく着地した。
直ぐ様、近くの瓦礫に飛び込み身を隠すと、俺達に向け手だけを見せてサムズアップをする。
そのあとは、周囲の状況把握に努めるアイ。
「流石にアイだな……」
俺と未来は窓からアイの様子を覗き込む。
その間、ベレッタを構える最妃が後方を油断無く見張ってくれている。
暫くしてアイから次の指示を乞うと、上階の俺達を見やって、手でサインを出してきた。
そのサインと言うのは、俺がサバイバルゲーム何ぞで良く使う、俺的ハンドシグナル。
簡単に言うと、俺独自の手話みたいなモノだ。
つまり、会話できないほど離れたり、声を出せない状況下の際に、意思疎通を図る手段だな。
俺の記憶を継承しているアイだからこそ、完璧に相互連絡が取れるのだ。
“ 状況。確認。索敵。降りれるか。送れ―― ”
“ 良好。地点確保。敵反応なし。可能。送れ―― ”
“ 了解。上がれ。――終わり ”
俺的ハンドシグナルを見た瓦礫の影に潜むアイは、俺に向けてサムズアップをすると前転で飛び出し、蹲み込んで一気に地面を蹴り抜き上空に跳び上がった。
そして、六階と言う高さを物ともせずに、降りた時と同様、俺達の所へ難なく戻ってきた。
「良し。未来から先に降りて着地点の確保だ。運搬中のアイの援護を頼む」
「りょ!」
「その次は……最妃を頼む。俺は一番最後で構わない」
「肯定。お姉ちゃん掴まって」
アイの背中に担がれてのノーロープバンジーに挑む未来。
こんな時に不謹慎だが、双子が窓際に立って飛び降りるなんて、中々にシュールな絵面だな、うん。
窓枠に立った二人は俺を見やると大きく頷いて、そのまま自由落下して行った。
「死ぬ時は…… 違うな。未来永劫、二人は一緒だ」
側にいた最妃を抱き寄せ軽く唇を重ねる。
静かに肯いた最妃は、優しい笑顔で小指を立ててくる――。
「指切りゲンマン。ですわ、彼方」
「指切りゲンマン。だな、最妃」
それに応じ誓いを交わす俺は、心の蟠りと言うか不安や焦燥感のようなモノが、消し飛んだように軽くなったのだった。
そうこうしている内にアイが戻ってきた。
最妃を背中に担ぎ、先程と同じ要領で再び自由落下して行く。
その場に居残った俺は、自由落下を見送っていて思った……。
アイが俺の元に居てくれて、本当に助かったと。
こんな無茶なことも、実際、できやしなかったのだからな。
得体の知れない神に疑問符ってヤツに、ほんの少しだけ感謝した――。
「お待たせ」
最妃を送り届けると、直ぐに戻ってきたアイ。
最後に俺が背中に担がれて、自由落下を敢行するわけだが。
「アイ、有り難う。……無事に皆で帰ろうな」
耳元でアイに感謝を述べると――、
「それ、死亡フラグだと思うよ、パ~パ」
などと、悪怯れることなく笑って宣った。
やっぱり俺の愛娘だよ、アイは。
―――――――――― つづく。
「りょ!」
「アイは俺達を順に運んでくれ!」
「了解。先行及び着地点確保」
「頼む」
「最妃は俺と一緒に居てくれ。離れるなよ?」
「承知ですわ。何処までもご一緒致しますわ」
「顕現せよ、ディアボロス! ハッ!」
未来は無い胸の前で合掌し、アイアンキャンディを起動する。
「こんな強化ガラス程度、なんてことない!」
痛いフレーズの後、大きく溜めた渾身の力で、窓ガラスに向けてアイアンキャンディを穿つ!
防弾ガラスの強度に等しい分厚い窓を、たったの一発で打ち砕き、粉々に吹き飛ばした!
割れた途端、赤黒い霧と一緒にザラリとした不快な空気が、館内になだれ込んできた。
「アイ、先行します」
アイは両手で俺的ビームライフルを構えると、割れた窓に飛び込んで自由落下を敢行。
空中で一回転し、バランスを取り直して体勢を整え、六階という高さをモノともせずに難なく着地した。
直ぐ様、近くの瓦礫に飛び込み身を隠すと、俺達に向け手だけを見せてサムズアップをする。
そのあとは、周囲の状況把握に努めるアイ。
「流石にアイだな……」
俺と未来は窓からアイの様子を覗き込む。
その間、ベレッタを構える最妃が後方を油断無く見張ってくれている。
暫くしてアイから次の指示を乞うと、上階の俺達を見やって、手でサインを出してきた。
そのサインと言うのは、俺がサバイバルゲーム何ぞで良く使う、俺的ハンドシグナル。
簡単に言うと、俺独自の手話みたいなモノだ。
つまり、会話できないほど離れたり、声を出せない状況下の際に、意思疎通を図る手段だな。
俺の記憶を継承しているアイだからこそ、完璧に相互連絡が取れるのだ。
“ 状況。確認。索敵。降りれるか。送れ―― ”
“ 良好。地点確保。敵反応なし。可能。送れ―― ”
“ 了解。上がれ。――終わり ”
俺的ハンドシグナルを見た瓦礫の影に潜むアイは、俺に向けてサムズアップをすると前転で飛び出し、蹲み込んで一気に地面を蹴り抜き上空に跳び上がった。
そして、六階と言う高さを物ともせずに、降りた時と同様、俺達の所へ難なく戻ってきた。
「良し。未来から先に降りて着地点の確保だ。運搬中のアイの援護を頼む」
「りょ!」
「その次は……最妃を頼む。俺は一番最後で構わない」
「肯定。お姉ちゃん掴まって」
アイの背中に担がれてのノーロープバンジーに挑む未来。
こんな時に不謹慎だが、双子が窓際に立って飛び降りるなんて、中々にシュールな絵面だな、うん。
窓枠に立った二人は俺を見やると大きく頷いて、そのまま自由落下して行った。
「死ぬ時は…… 違うな。未来永劫、二人は一緒だ」
側にいた最妃を抱き寄せ軽く唇を重ねる。
静かに肯いた最妃は、優しい笑顔で小指を立ててくる――。
「指切りゲンマン。ですわ、彼方」
「指切りゲンマン。だな、最妃」
それに応じ誓いを交わす俺は、心の蟠りと言うか不安や焦燥感のようなモノが、消し飛んだように軽くなったのだった。
そうこうしている内にアイが戻ってきた。
最妃を背中に担ぎ、先程と同じ要領で再び自由落下して行く。
その場に居残った俺は、自由落下を見送っていて思った……。
アイが俺の元に居てくれて、本当に助かったと。
こんな無茶なことも、実際、できやしなかったのだからな。
得体の知れない神に疑問符ってヤツに、ほんの少しだけ感謝した――。
「お待たせ」
最妃を送り届けると、直ぐに戻ってきたアイ。
最後に俺が背中に担がれて、自由落下を敢行するわけだが。
「アイ、有り難う。……無事に皆で帰ろうな」
耳元でアイに感謝を述べると――、
「それ、死亡フラグだと思うよ、パ~パ」
などと、悪怯れることなく笑って宣った。
やっぱり俺の愛娘だよ、アイは。
―――――――――― つづく。
0
お気に入りに追加
10
あなたにおすすめの小説
【完結】お嬢様の身代わりで冷酷公爵閣下とのお見合いに参加した僕だけど、公爵閣下は僕を離しません
八神紫音
BL
やりたい放題のわがままお嬢様。そんなお嬢様の付き人……いや、下僕をしている僕は、毎日お嬢様に虐げられる日々。
そんなお嬢様のために、旦那様は王族である公爵閣下との縁談を持ってくるが、それは初めから叶わない縁談。それに気付いたプライドの高いお嬢様は、振られるくらいなら、と僕に女装をしてお嬢様の代わりを果たすよう命令を下す。
異世界TS転生で新たな人生「俺が聖女になるなんて聞いてないよ!」
マロエ
ファンタジー
普通のサラリーマンだった三十歳の男性が、いつも通り残業をこなし帰宅途中に、異世界に転生してしまう。
目を覚ますと、何故か森の中に立っていて、身体も何か違うことに気づく。
近くの水面で姿を確認すると、男性の姿が20代前半~10代後半の美しい女性へと変わっていた。
さらに、異世界の住人たちから「聖女」と呼ばれる存在になってしまい、大混乱。
新たな人生に期待と不安が入り混じりながら、男性は女性として、しかも聖女として異世界を歩み始める。
※表紙、挿絵はAIで作成したイラストを使用しています。
※R15の章には☆マークを入れてます。
アルビオン王国宙軍士官物語(クリフエッジシリーズ合本版)
愛山雄町
SF
ハヤカワ文庫さんのSF好きにお勧め!
■■■
人類が宇宙に進出して約五千年後、地球より数千光年離れた銀河系ペルセウス腕を舞台に、後に“クリフエッジ(崖っぷち)”と呼ばれることになるアルビオン王国軍士官クリフォード・カスバート・コリングウッドの物語。
■■■
宇宙暦4500年代、銀河系ペルセウス腕には四つの政治勢力、「アルビオン王国」、「ゾンファ共和国」、「スヴァローグ帝国」、「自由星系国家連合」が割拠していた。
アルビオン王国は領土的野心の強いゾンファ共和国とスヴァローグ帝国と戦い続けている。
4512年、アルビオン王国に一人の英雄が登場した。
その名はクリフォード・カスバート・コリングウッド。
彼は柔軟な思考と確固たる信念の持ち主で、敵国の野望を打ち砕いていく。
■■■
小説家になろうで「クリフエッジシリーズ」として投稿している作品を合本版として、こちらでも投稿することにしました。
■■■
小説家になろう、カクヨム、ノベルアップ+でも投稿しております。
サバイバルゲーム
秋元智也
SF
高校二年の二学期が始まろうとしていた矢先、いきなり現れた少女によって全てが変わってしまう。自称 《神》 を名乗る少女がいうには助かりたかったら他人を殺せ。と、いきなりの現実に戸惑う生徒たちに現実が突きつけられる。最後まで生き残れるのか?大切な人は守れるのか?今前代未聞のサバイバルゲームが始まる。
The Outer Myth :Ⅰ ~目覚めの少女と嘆きの神~
とちのとき
SF
少女達が紡ぐのは、絆と神話の続き・・・。
主人公の女子高生、豊受イナホ。彼女は神々と人々が当たり前のように共存する地、秋津国で平凡な生活を送っていた。しかし、そこでは未知なる危険生物・クバンダにより平和が蝕まれつつあった。何の取り柄もない彼女はある事件をきっかけに母の秘密を探る事になり、調査を進めるうち運命の渦へと巻き込まれていく。その最中、ニホンからあらゆる漂流物が流れ着く摩訶不思議な池、霞み池に、記憶を失った人型AGI(汎用人工知能)の少女ツグミが漂着する。彼女との出会いが少年少女達を更なる冒険へと導くのだった。
【アウターミス パート1~目覚めの少女と嘆きの神~】は、近未来和風SFファンタジー・完結保証・挿絵有(生成AI使用無し)・各章間にパロディ漫画付き☆不定期更新なのでお気に入り登録推奨
【作者より】
他サイトで投稿していたフルリメイクになります。イラスト製作と並行して更新しますので、不定期且つノロノロになるかと。完全版が読めるのはアルファポリスだけ!
本作アウターミスは三部作予定です。現在第二部のプロットも進行中。乞うご期待下さい!
過去に本作をイメージしたBGMも作りました。ブラウザ閲覧の方は目次下部のリンクから。アプリの方はYouTube内で「とちのとき アウターミス」と検索。で、視聴できます
全ての悩みを解決した先に
夢破れる
SF
「もし59歳の自分が、30年前の自分に人生の答えを教えられるとしたら――」
成功者となった未来の自分が、悩める過去の自分を救うために時を超えて出会う、
新しい形の自分探しストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる