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第弐章 壊れゆく、日常――デパート編。

肆拾壱話 疑問、其の弐。

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 未知のダンジョン攻略のような隊列のまま、一歩ずつ慎重に先へと進んでいく斗家の面々。


 重苦しい空気が漂うが、約一名、おかしな子が混じっている所為で、何故か笑いが込み上げる。


 そうしてある程度、歩みを進めた頃に、俺達の正面に三つの灯りが見えてきた。

「何ぞ?」

「不明。怪電波反応無」

「じゃあ、巻き込まれたヒト?」

「あらあら」

 歩みを止めた斗家の面々に緊張が疾る。

 未来が手に持つ単なるミニライトを前方へと向ける。
 アイも未来に続いて仮称、アイライトを向けた。

 その動きに合わせるかのように、目の前の三つの明かりも照らし返してくる――。

 油断なく俺達は警戒して近付くが――、


 そこには姿身の大きな鏡が埋め込まれたいた。


「脅かすな!」

「「ぷっ!」」

「あらあら」

 未来とアイはホッとしたのか軽く吹く。
 最妃は鏡を覗き込み、異常がないのを確認すると、微笑んで身嗜みを軽く整えたりしたり。
 緊張を解いて皆で集まり苦笑いする中、俺だけはあることに気付いてしまった。


 それは、鏡に映る最妃の隣で唖然と立つ俺の姿――またしても若返ってしまっていたのだ!


 この容姿は俺の三十歳くらいの頃か?
 いや、多分二十代半ば頃だな。

 今までは再構成され若返ったあとそれ以前で、髪の色以外は然程に目立った変化はなかった。

 皺が取れて、肌の艶が若干良くなった程度。
 そんな微妙な違いに、流石の俺家族も気付けないんだとばかり思っていたんだが。

 流石にここまで変われば、大概、気付く筈だろ?
 なのにそれを当たり前に受け入れてる?


 いや、違うな。
 疑問にすら思っていないって、ナニ? 


 もしも気付いていれば、屋上で再会した時にでも間違いなく、何ぞか突っ込んでくる筈だからな。
 今も何ぞ冗談で茶化して弄ってくるに決まってる。


 これは……認識を阻害する何ぞが働いてると考えるべきなのか?


 だとすると……皆に聞くだけ無駄ってことになるな。
 一体、ナニが切っ掛けで……更に若返ることになった?


 ノウに叩き付けられて気絶した――あの時か!


 俺は只の普通のおやぢ……ってわけでもないけども、身体的にも普通のヒトだった筈だ。
 なのに、あの大穴が開くほどの衝撃で叩きつけられて、耐えられるわけがない、生きていられる筈がない。


 傷一つなく、無事で済む筈がないんだ!


 楽観してたが、改めて考えたら異常過ぎだろう、俺!


 だとすると……再び神に疑問符ってヤツにでも再構成されたのか?
 或いは怪我の自動治癒効果何ぞがあっての自動作用? 細胞活性化とか?
 そもそも全く違う他の何ぞの効果?
 うーん、俺の身体どーなった? 
 まぢ意味が解らんぞ?
 有り難い様な気持ち悪いような、うーむ。


 俺が若返りの原因を色々考えている間に、ホテルのロビー的な所へ辿りついた。

 俺のことは恐らく害はないだろうと割り切って、一旦、華麗にスルーしておき、現状に意識を戻す。


「これは――」

 待機の指示を出した俺が、一歩前へと出る。
 未来の持つ単なるミニライトと仮称、アイライトで、付近一帯を順に照らし出してもらった。

 旅行客の待合場所も兼ねているので広く、奥に受付カウンターと従業員の控室が見える。

 豪華ってほどでもないが、上品な装いの調度品や、ベンチやテーブルなどが設置されていた模様。


 だがそれらは、見るも無残に散乱していた――。


 その様相は、ヒトが何ぞかから必死で逃げていたことを、明確に物語っているように見えた。

 引き摺られた赤黒い染みなどが、それらを裏付けていた。

「遺体は見当たらないが……恐らく無事ではあるまい」

 酷い有様を目の当たりにした所為か、言い知れぬ不安で余裕がなくなったのか、皆が余りにも緊張しまくり空気が重くなった。


 約一名、笑いを誘うおかしな子は居るんだがな。


「リアル版バイオハザ◯ドだな? ゾンビとか出たらどーする? まぢありそう」

「あらあら」

 俺は少し悪巫山戯して、緊張を解そうとする。

「敵勢力索敵中……って、え? ゾンビ? えー?」

 電波メカ口調で宣ってる最中に、ゾンビと聞いてビビるあまり素に戻るアイ。

「パパやめて! 怖いから! フラグに聞こえるから! 怖いから、パパ!」

 未来もあー見えてゾンビが苦手らしく、俺に振り返って鬼の剣幕でえらい怒ってきた。


 意味不明なノウのが断然怖いと思うんだけど?
 あと、両目が光ってるアイは言わずもがなだがな?

「――何ぞ⁉︎ 居るっぽい?」

 突如、例のあの鳥肌が立つ俺。

「とても……不快な空気ですわ」

 同時に繋いでいた手を、強く握ってくる最妃。

「ボクも嫌な感じはしてる。何処かは解らないけど」

「肯定。感度微弱。位置及び勢力、特定中」

 顔色が変わり真剣な表情になる未来とアイ。

 やはりおかしい。
 二人共、感知が遅過ぎやしないか?

 以前に遭遇したのと違う種の個体だろうか?

 何処が違う? ナニが違う?
 状況を整理しろ俺!

「位置特定。敵捕捉。数、一。距離、ドア前。マスター。回避」

 唐突にアイは目からビーム……違うんだって俺。

 仮称、アイライトで俺を照らし出し、同時に回避するよう指示の声が上がる!

「今度は何ぞ⁉︎」

 俺は、斗家全員が俺に視線を投げかける中、条件反射で意味も解らずそこを跳び退いた!

 同時に俺の後ろにあった従業員室のドアを、ゆっくりブチ破って何ぞかが這い出して来た!

 アイはすかさず仮称、アイライトで這い出たモノを追う!

 照らし出され、姿が晒された這い出したモノ。



 それは見るも悍ましい――女性らしきモノだった。



  ―――――――――― つづく。
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