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第壱章 崩れゆく、日常――遭遇編。
弐拾玖話 休息、其の肆。
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ほどなくして、リビングに皆が集まってくる。
俺が少し遅れて皆の所へやって来ると、でき立ての最妃の手料理が、テーブルに続々と運ばれてくる。
未来とアイも運んだり食器の準備をしたりと、甲斐甲斐しくもお手伝いをしていたらしい。
ワンコ?達も既にリビングに集合して、ベロは忙しなく、スゥは優雅にご飯を待っていた。
ただケルだけは窓の外を見やり、大人しくお座りしている。
所謂、見張りってヤツだな……ナニを見張っているのかは俺の知るところでは全くないのだが、まぁ、いつものことだ。
「遅~い! 今日はハンバーグらしいよ、パパ」
「おお! お昼から豪勢だな!」
「あらあら」
「アイも大好きです♪ ママの美味しいご飯♪」
「ベロにスゥもお待たせ。さぁ、召し上がって」
「ハッ!」「フンッ!」
最妃に出されたお昼ご飯にベロは飛び付き、スゥは静かに食べ始めた。
「ウォンッ」
見張り役をしているつもりのケルだけは、最妃に会釈し終わると、再び外を監視していた。
いつもベロとスゥが食べ終えてから食事をするからだ。
「「「「いただきまーす」」」」
テーブルに腰掛け全員が集まったところで、一家団欒のお約束的な挨拶を済ませ、食事をし始める斗家の面々。
今日の出来事など色々と雑談をしたりして、和気藹々と愉しい時間を過ごしていく――。
そして唐突に俺が切り出すわけだが。
「最妃の誕生日は?」
「「明日!」」
「そこで俺から提案がある!」
「あらあら」
「皆で明日、お出掛けしよーではないか!」
そーなのだ。
俺嫁の最妃の誕生日は明日だ。
俺的素敵プレゼントはなし崩しで先渡しになってしまったので、代わりに皆で出掛けようと提案してみたのだ。
当然の如く、俺店は休業日に決まっているのでな?
「何処ぞ行きたいスポットとかないかな~? ホラースポットとか」
行楽地でも良いし、買物や食事でも良い。
最妃が喜ぶことならバッチ来いだ!
「ボクはショッピング!」
「アイは遊園地!」
「だが断る!」
「「えー!?」」
「あらあら」
全く、俺娘共は……相変わらずで御座いますな。
しかし、俺的便利家電のアイが遊園地って……。
絶叫コースターも真っ青な機動力なのにか?
ま、家族で賑やかな場所で遊びたいんかね?
「彼方、私は何処でも宜しくってよ?」
「それがな? 一番困る返事と知れよな、最妃」
お決まりの返事にダメ出しをする俺。
「それはいけません。如何なさいましょう?」
口の前に手をやり貴婦人の良くやる、オホホな仕草で謝る最妃の表情は、めっさ嬉しそうだ。
「ママー! 自分の行きたいところで全然オッケーだよ! 例えば、皆でワイワイお買い物とか!」
「そうだよ、ママー! 皆でワイワイ乗りモノに乗るのも良いよ~♪」
テーブルに両手をついて身を乗り出し、悪巧みしてる悪戯っ子の様に目を輝かせ、最妃に自分の行きたい所を強引に勧める二人。
「未来! アイ! しれっと誘導、す・ん・な!」
そして、それぞれにデコピンを喰らわす俺。
未来の意見については、最妃にしても、案外、喜びそうだから良いかもだ。
だがな、アイ。元乗りモノが現乗りモノに乗りたい心境を、俺に解り易く丁寧に説明するがよろし。
「私は皆と一緒であれば、何処へなりと――でも、そうですわね~」
俺の質問に嬉しい感情を隠せずにいる最妃。
いつも以上に和やかな微笑みで、顎にヒト差し指をあてがい暫し思案する。
少し間をおいてから、自分の希望を優雅に優しく返答し始める。
「最近、できたデパートに、素敵なお洋服店があるとご近所さんが仰っておりましたから、そちらにでも伺ってみたいですわね~」
「え? 洋服⁉︎」
「屋上には観覧車等の遊園地、他にも色々な娯楽施設が充実してらっしゃるとか」
「え? 観覧車⁉︎」
それから額を摩りながら涙目で聴いていた、俺娘二人に向かって髪を撫でると、茶目っ気たっぷりのウィンクをかました。
「「決まり! デパートで!」」「あらあら」
返答を聴くなり再び悪戯っ子の様に目を爛々と輝かせ、嬉しい声をあげつつ復活した二人。
いやはや、未来とアイ、お前らホント瓜二つじゃの。
全く違和感なく自然に行動規範が同じとか、見た目だけ双子じゃないってホラーだわ、うん。
存外、お前らも魂繋がってんじゃねーの?
「お前らは何処ぞの小学生か! まぁいい。最妃、そこで良いのか?」
「ええ。宜しくお願いします、彼方」
「へいへい」
家族会議と言うより、ほぼ双子組の強引な行先に合わせて、後押しした形なのな。
はぁ……俺嫁ってヤツはホント、うん。
そんな訳で、明日はオープンしたてのデパートへ、家族揃って遊びに行く運びとなった――。
―――――――――― つづく。
俺が少し遅れて皆の所へやって来ると、でき立ての最妃の手料理が、テーブルに続々と運ばれてくる。
未来とアイも運んだり食器の準備をしたりと、甲斐甲斐しくもお手伝いをしていたらしい。
ワンコ?達も既にリビングに集合して、ベロは忙しなく、スゥは優雅にご飯を待っていた。
ただケルだけは窓の外を見やり、大人しくお座りしている。
所謂、見張りってヤツだな……ナニを見張っているのかは俺の知るところでは全くないのだが、まぁ、いつものことだ。
「遅~い! 今日はハンバーグらしいよ、パパ」
「おお! お昼から豪勢だな!」
「あらあら」
「アイも大好きです♪ ママの美味しいご飯♪」
「ベロにスゥもお待たせ。さぁ、召し上がって」
「ハッ!」「フンッ!」
最妃に出されたお昼ご飯にベロは飛び付き、スゥは静かに食べ始めた。
「ウォンッ」
見張り役をしているつもりのケルだけは、最妃に会釈し終わると、再び外を監視していた。
いつもベロとスゥが食べ終えてから食事をするからだ。
「「「「いただきまーす」」」」
テーブルに腰掛け全員が集まったところで、一家団欒のお約束的な挨拶を済ませ、食事をし始める斗家の面々。
今日の出来事など色々と雑談をしたりして、和気藹々と愉しい時間を過ごしていく――。
そして唐突に俺が切り出すわけだが。
「最妃の誕生日は?」
「「明日!」」
「そこで俺から提案がある!」
「あらあら」
「皆で明日、お出掛けしよーではないか!」
そーなのだ。
俺嫁の最妃の誕生日は明日だ。
俺的素敵プレゼントはなし崩しで先渡しになってしまったので、代わりに皆で出掛けようと提案してみたのだ。
当然の如く、俺店は休業日に決まっているのでな?
「何処ぞ行きたいスポットとかないかな~? ホラースポットとか」
行楽地でも良いし、買物や食事でも良い。
最妃が喜ぶことならバッチ来いだ!
「ボクはショッピング!」
「アイは遊園地!」
「だが断る!」
「「えー!?」」
「あらあら」
全く、俺娘共は……相変わらずで御座いますな。
しかし、俺的便利家電のアイが遊園地って……。
絶叫コースターも真っ青な機動力なのにか?
ま、家族で賑やかな場所で遊びたいんかね?
「彼方、私は何処でも宜しくってよ?」
「それがな? 一番困る返事と知れよな、最妃」
お決まりの返事にダメ出しをする俺。
「それはいけません。如何なさいましょう?」
口の前に手をやり貴婦人の良くやる、オホホな仕草で謝る最妃の表情は、めっさ嬉しそうだ。
「ママー! 自分の行きたいところで全然オッケーだよ! 例えば、皆でワイワイお買い物とか!」
「そうだよ、ママー! 皆でワイワイ乗りモノに乗るのも良いよ~♪」
テーブルに両手をついて身を乗り出し、悪巧みしてる悪戯っ子の様に目を輝かせ、最妃に自分の行きたい所を強引に勧める二人。
「未来! アイ! しれっと誘導、す・ん・な!」
そして、それぞれにデコピンを喰らわす俺。
未来の意見については、最妃にしても、案外、喜びそうだから良いかもだ。
だがな、アイ。元乗りモノが現乗りモノに乗りたい心境を、俺に解り易く丁寧に説明するがよろし。
「私は皆と一緒であれば、何処へなりと――でも、そうですわね~」
俺の質問に嬉しい感情を隠せずにいる最妃。
いつも以上に和やかな微笑みで、顎にヒト差し指をあてがい暫し思案する。
少し間をおいてから、自分の希望を優雅に優しく返答し始める。
「最近、できたデパートに、素敵なお洋服店があるとご近所さんが仰っておりましたから、そちらにでも伺ってみたいですわね~」
「え? 洋服⁉︎」
「屋上には観覧車等の遊園地、他にも色々な娯楽施設が充実してらっしゃるとか」
「え? 観覧車⁉︎」
それから額を摩りながら涙目で聴いていた、俺娘二人に向かって髪を撫でると、茶目っ気たっぷりのウィンクをかました。
「「決まり! デパートで!」」「あらあら」
返答を聴くなり再び悪戯っ子の様に目を爛々と輝かせ、嬉しい声をあげつつ復活した二人。
いやはや、未来とアイ、お前らホント瓜二つじゃの。
全く違和感なく自然に行動規範が同じとか、見た目だけ双子じゃないってホラーだわ、うん。
存外、お前らも魂繋がってんじゃねーの?
「お前らは何処ぞの小学生か! まぁいい。最妃、そこで良いのか?」
「ええ。宜しくお願いします、彼方」
「へいへい」
家族会議と言うより、ほぼ双子組の強引な行先に合わせて、後押しした形なのな。
はぁ……俺嫁ってヤツはホント、うん。
そんな訳で、明日はオープンしたてのデパートへ、家族揃って遊びに行く運びとなった――。
―――――――――― つづく。
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