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◇第一部◇
第十七話 腐っても人でありたい。【後編】
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俺は鼻歌混じりに調理している佐藤さんの後ろ姿を、複雑な気分でじっと眺めていた――。
実は鈴木さんから聴いていたことがある。
ゾンビ化したら、腐った物ほど美味しく感じると言った、味覚異常をきたしたそうだ。
特に腐りきった人肉とかが、最高品質の肉に感じると言った酷い異常らしい。
通常の鮮度の高い物、或いは人の食べ物が薄味気味になって、あまり味を感じられないばかりか、酷い場合は生ゴミ味になったと言う。
生ゴミの味が、どんなだかは俺は知らんが。
例外はお酒などのアルコールと香辛料や調味料の類い。それは今まで通りらしい。
香辛料とかは薄い味を誤魔化せる、所謂、濃くするのに使うそうだ。
特に酒に関しては不思議と正しく人であった時の味覚で、ちゃんと味わって飲めると言ってた。
だから出掛ける前に、宅飲みに付き合ってと、俺は誘ったわけで。
正しい人の味覚が衰え狂っているゾンビ。
俺が思うに、ゾンビ化を誘発させた細菌の所為で、味覚などにも変化をきたしたんだろうな……。
程なく、ちゃぶ台に見た目が本気で美味しそうな、沢山のつまみが運ばれてくる――。
頃合いを見て、冷蔵庫から冷えた缶ビールを持ってくる俺。
並べられた生まれて初めて振る舞われた、赤の他人女性お手製のつまみに、否が応にも期待と不安が入り混じって膨らむ――。
見た目は凄く美味そうで、実際は不味い。
なんて殺人的料理は、美人にありがちな定番設定だからな、うん。
「早速、いただい――」「あーん」
割り箸を取ろうとしたら、不意打ちで横からすかさず攻められた!
小っ恥ずかしいが止むなし!
折角のおもてなしを無碍にしては、末代まで呪われる罰が下されてしまう!
覚悟を決めて、あーんを受け入れた俺。
「――な、何これ⁉︎ ――激ウマぁ~!」
馬ではないぞ? 言葉の通りビックリした! いや、ホント!
味見もなく、保存食のみで拵えたとは思えない、まさに至高の一品!
実は素朴な家庭的な味なんだけどな?
だがそれが実に良い!
「お口にあって良かった……大丈夫かなって、ドキドキしちゃいました」
頬を朱に染めて、照れてモジモジする佐藤さん。
何? このクソ可愛い生物は?
ゾンビッチ? そんな生物は今滅んだ!
そして、俺にあーんをした割り箸で、佐藤さんもそのままつまみをパクっと食べた。
これには驚いた! 色々とだけど!
「――だ、大丈夫なんですか⁉︎ 人の食べ物なんか普通に食べて⁉︎」
「お食事中に言うとあれだけど……味はやっぱり――美味しくはないですね」
「ならどうして⁉︎」
「――好きな人と一緒に同じ物を食べて……過ごしたかったから……かな? 格好だけ……形だけでも――せめて……人らしく……正しく、ね?」
涙が溢れ落ちそうになった――。
クッソ、ゾンビッチって茶化して思ってなじって悪かったよ!
アンタ最高に良い女じゃねーか!
あー、クソクソ! 俺は阿呆だよ! 最低だったよ!
「――む、無理しないで。宅飲みに付き合ってもらえただけでも、俺は充分に有難いんですから……」
「――お言葉に甘えて――食べてるフリだけにしますね」
そのあと、今日あった出来事や愉しかったことを反芻して語り合ったり、今後に予定している改築などの話、今日手に入れた着てるブラをチラ見させてきたり。
本当にたわいもない、下ネタとか下ネタとか下ネタで大いに盛り上がった。
――って、ちょっと下ネタ多すぎだろ!
愉しい時間を重ねる度に、少しずつ元気をなくし、段々と意気消沈していく佐藤さん。
「このまま……いつか醜く腐って朽ちるだけね……こんな生きてるか死んでるか解らない、緩やかに死を待つくらいなら、綺麗な身体――正しく人のままで、とっと死んでおけば良かったかな……」
「――そんな悲しいことは言わない方が良い。実際、多くの人々がそうなったんだから」
「――そうね。ごめんなさい」
「俺は――俺の個人的意見だけど……佐藤さんが死んでも生きていてくれて……良かったと思うかな?」
「――え?」
「恥ずかしい話、生まれて初めて女性とデートができたし、世紀末宜しくな廃れたこんな世界で手料理までありつけた。振る舞ってくれたその相手は、こんなにも優しい凄い美人さんだよ? ――こんな世界になってなかったら……出逢うこともきっとなかっただろうし、こんな距離にも絶対に居ない筈だしね」
「山田さん――」
「先のない廃れた世界。人柄――ゾンビ柄の良い愉快な住人と大騒ぎしながらも、そんな世界で退屈せずに生きていける俺は、この世界で一番の贅沢者で、一番の幸せ者ですよ」
「――もらって」
「ん? 何を?」
「――私を」「――は?」
「日々、腐っていくのが解るの……私もそう長くはないだろうし。まだ生きた人のように綺麗な内に……その……私を……腐って朽ちる前に、ね?」
「――佐藤さん」
「あはは……私、何身勝手なこと言ってんだろ。嫌よね、ゾンビだもん。青白い紫斑が浮き出た醜い身体だもん。ナシナシ! 今のナシ! 山田さんまでゾンビ化させちゃうかも知れないし! ホント、私って最低! ヤダヤダ! ごめん、本当にごめん! もう帰るね」
泣きそうな顔で涙目になって、必死に誤魔化し帰ろうとした佐藤さんを引き留めた俺は――、
思いっきり抱きしめて、唇を塞いだ――。
「俺……俺で良ければ――違うか。俺からお願いします。いつまで一緒に――これも違うな。ずっと一緒に居たいから」
「や、山田さん……嘘……同情な――」
小っ恥ずかしく真っ赤になってるであろう顔を隠す為、佐藤さんから離れ土下座した俺は――。
「それは断じて違う! ――この気持ちは墓まで持ってく気だったんだけど……しゃあないな。――佐藤さん、大好きです! 俺の大切な人になって下さい! 結構、大マジです! 酒の所為ではないです!」
想いの内をブチ撒けてやった! 床に向かってだけど。
「嗚呼――そんな……夢なら覚めないで……」
「夢じゃないです。ゾンビであろうが佐藤さんは佐藤さん。その佐藤さんが俺は大好きなんです――」
そんな佐藤さんに素早く抱きつき、再び唇を奪った俺。
「――俺では駄目……ですか?」
「――馬鹿……ホント、馬鹿! 駄目なわけないじゃない……馬鹿馬鹿馬鹿!」
「やったね! 超絶美人な嫁さんを遂にゲットだぜー!」
「ふ、不束ゾンビ者ですけど……す、末長く宜しくお願いします……」
いつまで続くか解らない俺の人生と、いつ朽ちるか解らない佐藤さんのゾンビ生。
今日この日から、共に歩んでいくこととなった――。
互いの運命が尽きるその時まで、ずっと一緒に側に居たいと切に願って――。
――――――――――
退廃した世界に続きはあるのか?
それは望み薄……。
実は鈴木さんから聴いていたことがある。
ゾンビ化したら、腐った物ほど美味しく感じると言った、味覚異常をきたしたそうだ。
特に腐りきった人肉とかが、最高品質の肉に感じると言った酷い異常らしい。
通常の鮮度の高い物、或いは人の食べ物が薄味気味になって、あまり味を感じられないばかりか、酷い場合は生ゴミ味になったと言う。
生ゴミの味が、どんなだかは俺は知らんが。
例外はお酒などのアルコールと香辛料や調味料の類い。それは今まで通りらしい。
香辛料とかは薄い味を誤魔化せる、所謂、濃くするのに使うそうだ。
特に酒に関しては不思議と正しく人であった時の味覚で、ちゃんと味わって飲めると言ってた。
だから出掛ける前に、宅飲みに付き合ってと、俺は誘ったわけで。
正しい人の味覚が衰え狂っているゾンビ。
俺が思うに、ゾンビ化を誘発させた細菌の所為で、味覚などにも変化をきたしたんだろうな……。
程なく、ちゃぶ台に見た目が本気で美味しそうな、沢山のつまみが運ばれてくる――。
頃合いを見て、冷蔵庫から冷えた缶ビールを持ってくる俺。
並べられた生まれて初めて振る舞われた、赤の他人女性お手製のつまみに、否が応にも期待と不安が入り混じって膨らむ――。
見た目は凄く美味そうで、実際は不味い。
なんて殺人的料理は、美人にありがちな定番設定だからな、うん。
「早速、いただい――」「あーん」
割り箸を取ろうとしたら、不意打ちで横からすかさず攻められた!
小っ恥ずかしいが止むなし!
折角のおもてなしを無碍にしては、末代まで呪われる罰が下されてしまう!
覚悟を決めて、あーんを受け入れた俺。
「――な、何これ⁉︎ ――激ウマぁ~!」
馬ではないぞ? 言葉の通りビックリした! いや、ホント!
味見もなく、保存食のみで拵えたとは思えない、まさに至高の一品!
実は素朴な家庭的な味なんだけどな?
だがそれが実に良い!
「お口にあって良かった……大丈夫かなって、ドキドキしちゃいました」
頬を朱に染めて、照れてモジモジする佐藤さん。
何? このクソ可愛い生物は?
ゾンビッチ? そんな生物は今滅んだ!
そして、俺にあーんをした割り箸で、佐藤さんもそのままつまみをパクっと食べた。
これには驚いた! 色々とだけど!
「――だ、大丈夫なんですか⁉︎ 人の食べ物なんか普通に食べて⁉︎」
「お食事中に言うとあれだけど……味はやっぱり――美味しくはないですね」
「ならどうして⁉︎」
「――好きな人と一緒に同じ物を食べて……過ごしたかったから……かな? 格好だけ……形だけでも――せめて……人らしく……正しく、ね?」
涙が溢れ落ちそうになった――。
クッソ、ゾンビッチって茶化して思ってなじって悪かったよ!
アンタ最高に良い女じゃねーか!
あー、クソクソ! 俺は阿呆だよ! 最低だったよ!
「――む、無理しないで。宅飲みに付き合ってもらえただけでも、俺は充分に有難いんですから……」
「――お言葉に甘えて――食べてるフリだけにしますね」
そのあと、今日あった出来事や愉しかったことを反芻して語り合ったり、今後に予定している改築などの話、今日手に入れた着てるブラをチラ見させてきたり。
本当にたわいもない、下ネタとか下ネタとか下ネタで大いに盛り上がった。
――って、ちょっと下ネタ多すぎだろ!
愉しい時間を重ねる度に、少しずつ元気をなくし、段々と意気消沈していく佐藤さん。
「このまま……いつか醜く腐って朽ちるだけね……こんな生きてるか死んでるか解らない、緩やかに死を待つくらいなら、綺麗な身体――正しく人のままで、とっと死んでおけば良かったかな……」
「――そんな悲しいことは言わない方が良い。実際、多くの人々がそうなったんだから」
「――そうね。ごめんなさい」
「俺は――俺の個人的意見だけど……佐藤さんが死んでも生きていてくれて……良かったと思うかな?」
「――え?」
「恥ずかしい話、生まれて初めて女性とデートができたし、世紀末宜しくな廃れたこんな世界で手料理までありつけた。振る舞ってくれたその相手は、こんなにも優しい凄い美人さんだよ? ――こんな世界になってなかったら……出逢うこともきっとなかっただろうし、こんな距離にも絶対に居ない筈だしね」
「山田さん――」
「先のない廃れた世界。人柄――ゾンビ柄の良い愉快な住人と大騒ぎしながらも、そんな世界で退屈せずに生きていける俺は、この世界で一番の贅沢者で、一番の幸せ者ですよ」
「――もらって」
「ん? 何を?」
「――私を」「――は?」
「日々、腐っていくのが解るの……私もそう長くはないだろうし。まだ生きた人のように綺麗な内に……その……私を……腐って朽ちる前に、ね?」
「――佐藤さん」
「あはは……私、何身勝手なこと言ってんだろ。嫌よね、ゾンビだもん。青白い紫斑が浮き出た醜い身体だもん。ナシナシ! 今のナシ! 山田さんまでゾンビ化させちゃうかも知れないし! ホント、私って最低! ヤダヤダ! ごめん、本当にごめん! もう帰るね」
泣きそうな顔で涙目になって、必死に誤魔化し帰ろうとした佐藤さんを引き留めた俺は――、
思いっきり抱きしめて、唇を塞いだ――。
「俺……俺で良ければ――違うか。俺からお願いします。いつまで一緒に――これも違うな。ずっと一緒に居たいから」
「や、山田さん……嘘……同情な――」
小っ恥ずかしく真っ赤になってるであろう顔を隠す為、佐藤さんから離れ土下座した俺は――。
「それは断じて違う! ――この気持ちは墓まで持ってく気だったんだけど……しゃあないな。――佐藤さん、大好きです! 俺の大切な人になって下さい! 結構、大マジです! 酒の所為ではないです!」
想いの内をブチ撒けてやった! 床に向かってだけど。
「嗚呼――そんな……夢なら覚めないで……」
「夢じゃないです。ゾンビであろうが佐藤さんは佐藤さん。その佐藤さんが俺は大好きなんです――」
そんな佐藤さんに素早く抱きつき、再び唇を奪った俺。
「――俺では駄目……ですか?」
「――馬鹿……ホント、馬鹿! 駄目なわけないじゃない……馬鹿馬鹿馬鹿!」
「やったね! 超絶美人な嫁さんを遂にゲットだぜー!」
「ふ、不束ゾンビ者ですけど……す、末長く宜しくお願いします……」
いつまで続くか解らない俺の人生と、いつ朽ちるか解らない佐藤さんのゾンビ生。
今日この日から、共に歩んでいくこととなった――。
互いの運命が尽きるその時まで、ずっと一緒に側に居たいと切に願って――。
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