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◇第一部◇
第六話 スーパーでの騒動。
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スーパーの荷物搬入口に車を横付けし、中に入る準備をする俺と鈴木さん。
正規の入口である正面側が半壊している為だ。
「車だとやっぱり早い。乗り心地がイマイチですけどね」
七三式から降りて、大きな背伸びする鈴木さん。
ゾンビでも窮屈に感じるんか?
「ええ。ガソリン不要なら使い倒したいところです。――それと鈴木さん、これ」
七三式から降りて荷台の荷物の中から、電動ガンタッカーと弾の釘を取り出して手渡した。
非力な鈴木さんでも扱えるだろうと、俺のとは別に掻っ攫ってきた。
「えっと? これは?」
「銃のように使えるんで、護身用に持ってて下さい。俺のみたく、こんな感じに身につけると良いですよ?」
「なるほど。近未来の銃っぽいし、ガンマンみたいですね。――どうですか、似合います?」
腰にホルスターを巻き、香ばしいポーズで抜き放って格好つける鈴木さん。
ゾンビでなければね? めっさシュールですよ?
「遊んでないで。食糧調達に行きますよ? 無駄弾厳禁でお願いします、鈴木さん」
「あ、はい。すいません」
搬入口の扉の鍵を開錠して店内に入る。
以前にここを訪れた際に、守衛室から入手しておいた。
「僕は腐った高級肉をゲッチューしてきます」
「ちょっと待って!」
買い物カートを引き、喜び勇んで飛んで行こうとする鈴木さんを引き留める。
「どうしました?」
「様子が変です……何かいますよ……」
以前に来た時とは違い、売り場が酷く荒れていた。
「ま、また蜘蛛とかそんなですか⁉︎ ――うぇっ⁉︎ ――あ、失礼」
俺の言葉を耳にすると、目を見開き驚き慄く鈴木さん。
勢いあまって目ん玉が片方飛び出て、ぶら~んと吊り下がった!
更にそれを、何事もなかったように、しれっと手で戻した!
「ギャグか⁉︎ ――って、遊んでないで警戒して下さい」
「す、すいません! 最近は緩んでるのか良く飛び出るんです。視界が暴れてビックリするんですよ!」
「痛くないってホント怖いわ。とにかく油断せずに。この荒れ方は虫程度では絶対にないですから……」
カートを引き、前後左右に警戒しながら、ご馳走目当ての対面式精肉売場へと向かう。
腐り切った肉ばっかりだけどな?
「ちょっとヤバい雰囲気と言うかな感じがするんで……ちゃっちゃと済ませて下さい」
「わ、解りました!」
肉の調達に向かう鈴木さんを視界に入れたまま、周囲の警戒に当たる俺。
「肉を確保したら直ぐに出ます。調味料はコンビニで」
「了解です。良い感じのお肉……これとこれと――」
ガタり――そんな音が響き渡る。
鈴木さんが物色して、不意に出した音ではない……。
「――チッ、倒壊した玄関から紛れ込んだっぽいか……」
俺の睨みつけた音の出所に、蹌踉めき揺蕩っている人影が見えた――。
近寄ってくるそれは大きな損傷も無く、御体満足な人の姿を保っている男性。
パッと見は俺と大差のないほどに、正しく人――だが、生きてはいない。
虚な表情が物語る通り、自我は崩壊。
だらしなく開けた口から涎を垂らして、腕もダラリと下げたまま、足を引き摺るように歩いてくる。
カートに詰め込んだ肉を撒き散らし、鈴木さんが駆け戻ってきた!
「鈴木さん……夕食に御馳走でも追加しましょうか?」
にじり寄ってくる男性を睨み、自作の釘バットを握りしめて、鈴木さんに問い掛ける。
「山田さんが――って、やっぱり嫌でしょ? 直接、見てなくても……僕らが人を食べる姿は……」
そりゃあね。気分が良いとは間違っても思わない。
「――わわわっ! も、もう行きましょう! 腐った高級肉は充分に確保できましたし! ね?」
俺に気を遣ってか、頭を犬のようにブルブル振って否定し、最後は俺の肩を取って、立ち去るように促した。
――当初は人の野良ゾンビを中心に捕獲し、寝袋に入れて手渡していた。
生計を共にして少し経った頃から、動物の野良ゾンビばかりを要求するようになったのだ。
動物の方が美味しいから……そう、言い訳をして。
本当のところは、元が人だった者を捕らえてくる俺に、気を遣ってくれているんだろうな……。
「向こうにも動く影が見える。囲まれて無駄に争うより、一旦、放棄するのがベターか」
「は、早くいきましょう!」
高級肉を一杯積んだカートを必死に押して出入口に辿り着く。
しっかり鍵を掛けて車まで戻り、車内に投げ入れたあと、直ぐ様、乗車してスーパーを後にした――。
――――――――――
退廃した世界に続きはあるのか?
それは望み薄……。
正規の入口である正面側が半壊している為だ。
「車だとやっぱり早い。乗り心地がイマイチですけどね」
七三式から降りて、大きな背伸びする鈴木さん。
ゾンビでも窮屈に感じるんか?
「ええ。ガソリン不要なら使い倒したいところです。――それと鈴木さん、これ」
七三式から降りて荷台の荷物の中から、電動ガンタッカーと弾の釘を取り出して手渡した。
非力な鈴木さんでも扱えるだろうと、俺のとは別に掻っ攫ってきた。
「えっと? これは?」
「銃のように使えるんで、護身用に持ってて下さい。俺のみたく、こんな感じに身につけると良いですよ?」
「なるほど。近未来の銃っぽいし、ガンマンみたいですね。――どうですか、似合います?」
腰にホルスターを巻き、香ばしいポーズで抜き放って格好つける鈴木さん。
ゾンビでなければね? めっさシュールですよ?
「遊んでないで。食糧調達に行きますよ? 無駄弾厳禁でお願いします、鈴木さん」
「あ、はい。すいません」
搬入口の扉の鍵を開錠して店内に入る。
以前にここを訪れた際に、守衛室から入手しておいた。
「僕は腐った高級肉をゲッチューしてきます」
「ちょっと待って!」
買い物カートを引き、喜び勇んで飛んで行こうとする鈴木さんを引き留める。
「どうしました?」
「様子が変です……何かいますよ……」
以前に来た時とは違い、売り場が酷く荒れていた。
「ま、また蜘蛛とかそんなですか⁉︎ ――うぇっ⁉︎ ――あ、失礼」
俺の言葉を耳にすると、目を見開き驚き慄く鈴木さん。
勢いあまって目ん玉が片方飛び出て、ぶら~んと吊り下がった!
更にそれを、何事もなかったように、しれっと手で戻した!
「ギャグか⁉︎ ――って、遊んでないで警戒して下さい」
「す、すいません! 最近は緩んでるのか良く飛び出るんです。視界が暴れてビックリするんですよ!」
「痛くないってホント怖いわ。とにかく油断せずに。この荒れ方は虫程度では絶対にないですから……」
カートを引き、前後左右に警戒しながら、ご馳走目当ての対面式精肉売場へと向かう。
腐り切った肉ばっかりだけどな?
「ちょっとヤバい雰囲気と言うかな感じがするんで……ちゃっちゃと済ませて下さい」
「わ、解りました!」
肉の調達に向かう鈴木さんを視界に入れたまま、周囲の警戒に当たる俺。
「肉を確保したら直ぐに出ます。調味料はコンビニで」
「了解です。良い感じのお肉……これとこれと――」
ガタり――そんな音が響き渡る。
鈴木さんが物色して、不意に出した音ではない……。
「――チッ、倒壊した玄関から紛れ込んだっぽいか……」
俺の睨みつけた音の出所に、蹌踉めき揺蕩っている人影が見えた――。
近寄ってくるそれは大きな損傷も無く、御体満足な人の姿を保っている男性。
パッと見は俺と大差のないほどに、正しく人――だが、生きてはいない。
虚な表情が物語る通り、自我は崩壊。
だらしなく開けた口から涎を垂らして、腕もダラリと下げたまま、足を引き摺るように歩いてくる。
カートに詰め込んだ肉を撒き散らし、鈴木さんが駆け戻ってきた!
「鈴木さん……夕食に御馳走でも追加しましょうか?」
にじり寄ってくる男性を睨み、自作の釘バットを握りしめて、鈴木さんに問い掛ける。
「山田さんが――って、やっぱり嫌でしょ? 直接、見てなくても……僕らが人を食べる姿は……」
そりゃあね。気分が良いとは間違っても思わない。
「――わわわっ! も、もう行きましょう! 腐った高級肉は充分に確保できましたし! ね?」
俺に気を遣ってか、頭を犬のようにブルブル振って否定し、最後は俺の肩を取って、立ち去るように促した。
――当初は人の野良ゾンビを中心に捕獲し、寝袋に入れて手渡していた。
生計を共にして少し経った頃から、動物の野良ゾンビばかりを要求するようになったのだ。
動物の方が美味しいから……そう、言い訳をして。
本当のところは、元が人だった者を捕らえてくる俺に、気を遣ってくれているんだろうな……。
「向こうにも動く影が見える。囲まれて無駄に争うより、一旦、放棄するのがベターか」
「は、早くいきましょう!」
高級肉を一杯積んだカートを必死に押して出入口に辿り着く。
しっかり鍵を掛けて車まで戻り、車内に投げ入れたあと、直ぐ様、乗車してスーパーを後にした――。
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退廃した世界に続きはあるのか?
それは望み薄……。
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