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Act.22 幼女から始まる非日常について。②
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「流石はそーぢ様、ご英断に御座います。――良かったですね、茉莉様」
「うん!」
「――あ!」
――のは、良いんだけど、言ってて嫌なことに気付いてしまったオレ。
「――どうかなされました?」
怪訝そうに首を傾げ、オレに尋ねるリリーさん。
「あ~、うん。なんでもない、なんでもないよ、うん」
慌てて頭を撫でていない方の手を横にブンブン振って、気にしないでと伝えた。
実はちょいと嫌なことを思い出した。
そのオレの経験から、酷い意味での名前を連想したから、詰られやしないかと心配してしまったんだよね。
御手洗茉莉って名前は、酷い意味で言い換えるとトイレ祭り。
しかも茉莉って、モクセイ科ソケイ属の植物、ジャスミンの和名でもある。
トイレの芳香剤に良く使われる代名詞ときた。
オレや姉さんがやられた時のように、トイレの花子だとか、便所掃除だとかなんとかの酷い渾名を付けられたりと言った、名前のことで酷い目にあわないかと、不意に心配になっただけ。
苗字が苗字だけに偶然とは言え、そんな不名誉な渾名で呼ばれた日には可哀想だもんね。
ちなみにオレは、そんな名前で呼んでくるヤツは、容赦なくボッコボコにして言ったことを後悔させてやったけどさ。
ま、ヤンチャ時代の若さゆえの過ちってことにしておいて。
「――それでは、必要な手続き諸々につきましては、こちらにて手配と処理を済ましておきます」
「宜しくお願いします。リリーさん」
「――畏まりました」
そうして、リリーさんを見送る為に茉莉ちゃんと手を繋いで玄関前に行く。
例の如く外に停めてある、リリーさんが乗ってきたモノを見てビックリした!
「リリーさんらしいと言えば、リリーさんらしいとは思いますけど……一体、いくらするんですか――コレ?」
エリーさんが世界のランボルギーニだったのに対し、リリーさんは大型排気量の側車付き二輪――所謂、サイドカーだった。
「お褒めに与り光栄の極みに御座います。これは私の自慢の愛車に御座います」
和やかに微笑むリリーさんの愛車とは、真っ黒に塗られたクラウザー・ドマニって言う、世界で三〇〇台も生産されていない希少中の希少なモノ。
知るヒトぞ知る憧れのサイドカーだった。
それも新品同様に完璧に整備された、ここにこの状態で在るのが絶対におかしいほどの超美麗なレベルで。
エリーさんもだけど、貴女達のお給金、義祖父からどんだけ搾り取ってるって言うんですか……。
「そーぢ様? 差し出がましく恐縮に御座いますが――そーぢ様がもしも御所望で御座いましたら、喜んで献上致します……私つきで。……如何なされます?」
由緒正しきメイド服で跨った姿勢で、レプリカでない本モノの航空機用のヘルメットを被る直前、そんな冗談を真顔で平然と告げてくるリリーさんだった。
「ははは――オレもバイクは大好だし欲しいちゃ欲しいけども……一応、遠慮して丁重にお断りしておきます」
苦笑いで返答するオレ。
貰えない……断じて貰ってはいけない。
貰ったが最後、オレの予想ではとんでもない修羅場に繋がる。
命の危険が孕むほどに過酷な、ね?
「――左様に御座いますか。お気持ちが変わり御所望なれば、いつでも仰って下さいませ――それでは、ご機嫌よう」
そう言い残し、颯爽と去って行った――。
「凄い変わったヒトだね……」
見送っていた茉莉ちゃんがポロリと漏らした。
「それを言うなら凄いを通り越して、もう異常なほどだよね」
肯いて相槌を打つオレ。
その時だった――。
「――そんなことは御座いませんよ、そーぢ様」
俺の背後から突然声がした! 慌てて振り返ってみると――。
「うわっ⁉︎ ビックリした~! 気配なく背後に立たないで! 暗殺者みたく近付かないでって何回も言ってるでしょ! エリーさん!」
「遅ればせながら、只今、戻りました。――早速、お夕飯の支度に取り掛かりますゆえ、新しい妹君の茉莉様と有意義にお過ごし下さいませ」
「――話もちゃんと聴こうね! 全く!」
エリーさんのモノ言いや態度を見る限り、話は予め通ってるっぽいね。
だからか、食材の補充に突然行くと言い出したのは。
「――ぷ」
妙な漫才を繰り広げるオレとエリーさんを見て、初めて小さく笑った茉莉ちゃんだった。
「さて、茉莉ちゃんの住むお部屋を決めないとね。――行こうか、茉莉ちゃん」
茉莉ちゃんに向き直り、和かに手を差し伸べるオレ。
「茉莉で良い……」
俯いたままそっとオレの手を再び取り、恥じらいつつ小さく呟いた。
「そう? ぢゃあ、茉莉。行こうか」
「うん……お兄ちゃん……」
「なんて尊い! ――そーぢ様を兄とお呼びするその恥じらいのある天使の笑顔が素敵に御座います! 茉莉様!」
茉莉ちゃんの前に美人台なしなガニ股で立ち、目を輝かせたヤバい表情で褒めちぎるエリーさん。
「この妙なお母さんは放って置いて良いから。行こうか?」
「――くっ、あえて母と呼ぶ容赦なき仕打ち⁉︎ 流石にそーぢ様に御座いますね! 中々にドS! 私、不覚にも濡れ――あ、あれ⁉︎」
一人芝居を玄関先でやってるエリーさんを無視して、茉莉ちゃんと家に戻るオレ。
「ほら、エリーさん、ドア閉めるよ! 開けれない様にチェーンもしちゃおうかな?」
「――お、お待ち下さい! そ、そーぢ様!」
両手一杯に買い物袋を引っ提げて、態と滑稽な動きで蹴躓き、転けそうで転けない慌てたフリで蹌踉めきながら玄関に入ろうと、閉まりかけのドアの隙間から必死に覗くエリーさん。
「ぷ――あはははは~、面白い~、あはははは」
その美人台なしな姿を見た茉莉は、遂に暗い顔を吹き飛ばして腹絶倒の大笑い。
沈んだ気持ちを吹き飛ばし、幸せを呼び込むには笑顔が一番だからね。
オレがやらかしたりして落ち込んだりすると、小さい時は良く姉さんと義祖父が巫山戯てたっけ?
大人になってからは義父さんが戯けて見せて笑わせてくれたっけな……。
ワザとそんな笑いを取る態度で和ませるなんてね。
やっぱり凄く優しい良いヒトなんだね、エリーさんは……有り難う。
義妹になった茉莉はオレが必ず幸せに導くと約束しておきます。
安心して遠くから見護ってあげてて下さいね。
茉莉のご両親さん――。
―――――――――― つづく。
「うん!」
「――あ!」
――のは、良いんだけど、言ってて嫌なことに気付いてしまったオレ。
「――どうかなされました?」
怪訝そうに首を傾げ、オレに尋ねるリリーさん。
「あ~、うん。なんでもない、なんでもないよ、うん」
慌てて頭を撫でていない方の手を横にブンブン振って、気にしないでと伝えた。
実はちょいと嫌なことを思い出した。
そのオレの経験から、酷い意味での名前を連想したから、詰られやしないかと心配してしまったんだよね。
御手洗茉莉って名前は、酷い意味で言い換えるとトイレ祭り。
しかも茉莉って、モクセイ科ソケイ属の植物、ジャスミンの和名でもある。
トイレの芳香剤に良く使われる代名詞ときた。
オレや姉さんがやられた時のように、トイレの花子だとか、便所掃除だとかなんとかの酷い渾名を付けられたりと言った、名前のことで酷い目にあわないかと、不意に心配になっただけ。
苗字が苗字だけに偶然とは言え、そんな不名誉な渾名で呼ばれた日には可哀想だもんね。
ちなみにオレは、そんな名前で呼んでくるヤツは、容赦なくボッコボコにして言ったことを後悔させてやったけどさ。
ま、ヤンチャ時代の若さゆえの過ちってことにしておいて。
「――それでは、必要な手続き諸々につきましては、こちらにて手配と処理を済ましておきます」
「宜しくお願いします。リリーさん」
「――畏まりました」
そうして、リリーさんを見送る為に茉莉ちゃんと手を繋いで玄関前に行く。
例の如く外に停めてある、リリーさんが乗ってきたモノを見てビックリした!
「リリーさんらしいと言えば、リリーさんらしいとは思いますけど……一体、いくらするんですか――コレ?」
エリーさんが世界のランボルギーニだったのに対し、リリーさんは大型排気量の側車付き二輪――所謂、サイドカーだった。
「お褒めに与り光栄の極みに御座います。これは私の自慢の愛車に御座います」
和やかに微笑むリリーさんの愛車とは、真っ黒に塗られたクラウザー・ドマニって言う、世界で三〇〇台も生産されていない希少中の希少なモノ。
知るヒトぞ知る憧れのサイドカーだった。
それも新品同様に完璧に整備された、ここにこの状態で在るのが絶対におかしいほどの超美麗なレベルで。
エリーさんもだけど、貴女達のお給金、義祖父からどんだけ搾り取ってるって言うんですか……。
「そーぢ様? 差し出がましく恐縮に御座いますが――そーぢ様がもしも御所望で御座いましたら、喜んで献上致します……私つきで。……如何なされます?」
由緒正しきメイド服で跨った姿勢で、レプリカでない本モノの航空機用のヘルメットを被る直前、そんな冗談を真顔で平然と告げてくるリリーさんだった。
「ははは――オレもバイクは大好だし欲しいちゃ欲しいけども……一応、遠慮して丁重にお断りしておきます」
苦笑いで返答するオレ。
貰えない……断じて貰ってはいけない。
貰ったが最後、オレの予想ではとんでもない修羅場に繋がる。
命の危険が孕むほどに過酷な、ね?
「――左様に御座いますか。お気持ちが変わり御所望なれば、いつでも仰って下さいませ――それでは、ご機嫌よう」
そう言い残し、颯爽と去って行った――。
「凄い変わったヒトだね……」
見送っていた茉莉ちゃんがポロリと漏らした。
「それを言うなら凄いを通り越して、もう異常なほどだよね」
肯いて相槌を打つオレ。
その時だった――。
「――そんなことは御座いませんよ、そーぢ様」
俺の背後から突然声がした! 慌てて振り返ってみると――。
「うわっ⁉︎ ビックリした~! 気配なく背後に立たないで! 暗殺者みたく近付かないでって何回も言ってるでしょ! エリーさん!」
「遅ればせながら、只今、戻りました。――早速、お夕飯の支度に取り掛かりますゆえ、新しい妹君の茉莉様と有意義にお過ごし下さいませ」
「――話もちゃんと聴こうね! 全く!」
エリーさんのモノ言いや態度を見る限り、話は予め通ってるっぽいね。
だからか、食材の補充に突然行くと言い出したのは。
「――ぷ」
妙な漫才を繰り広げるオレとエリーさんを見て、初めて小さく笑った茉莉ちゃんだった。
「さて、茉莉ちゃんの住むお部屋を決めないとね。――行こうか、茉莉ちゃん」
茉莉ちゃんに向き直り、和かに手を差し伸べるオレ。
「茉莉で良い……」
俯いたままそっとオレの手を再び取り、恥じらいつつ小さく呟いた。
「そう? ぢゃあ、茉莉。行こうか」
「うん……お兄ちゃん……」
「なんて尊い! ――そーぢ様を兄とお呼びするその恥じらいのある天使の笑顔が素敵に御座います! 茉莉様!」
茉莉ちゃんの前に美人台なしなガニ股で立ち、目を輝かせたヤバい表情で褒めちぎるエリーさん。
「この妙なお母さんは放って置いて良いから。行こうか?」
「――くっ、あえて母と呼ぶ容赦なき仕打ち⁉︎ 流石にそーぢ様に御座いますね! 中々にドS! 私、不覚にも濡れ――あ、あれ⁉︎」
一人芝居を玄関先でやってるエリーさんを無視して、茉莉ちゃんと家に戻るオレ。
「ほら、エリーさん、ドア閉めるよ! 開けれない様にチェーンもしちゃおうかな?」
「――お、お待ち下さい! そ、そーぢ様!」
両手一杯に買い物袋を引っ提げて、態と滑稽な動きで蹴躓き、転けそうで転けない慌てたフリで蹌踉めきながら玄関に入ろうと、閉まりかけのドアの隙間から必死に覗くエリーさん。
「ぷ――あはははは~、面白い~、あはははは」
その美人台なしな姿を見た茉莉は、遂に暗い顔を吹き飛ばして腹絶倒の大笑い。
沈んだ気持ちを吹き飛ばし、幸せを呼び込むには笑顔が一番だからね。
オレがやらかしたりして落ち込んだりすると、小さい時は良く姉さんと義祖父が巫山戯てたっけ?
大人になってからは義父さんが戯けて見せて笑わせてくれたっけな……。
ワザとそんな笑いを取る態度で和ませるなんてね。
やっぱり凄く優しい良いヒトなんだね、エリーさんは……有り難う。
義妹になった茉莉はオレが必ず幸せに導くと約束しておきます。
安心して遠くから見護ってあげてて下さいね。
茉莉のご両親さん――。
―――――――――― つづく。
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