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Act.14 街角から始まる非日常について。②

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「XXXXX」

 オレに気付き振り返ったモノ――。


 禍々しい四つの眼をオレに向ける、内臓剥き出しの悍しい姿をしている、ヒトでないナニかだった!


「な、なんだ――あれは――⁉︎」

 目の当たりにしたモノが理解できずに狼狽するオレ!

「そーぢ様、急に如何な――NoUノウですって⁉︎ 何故、このような場所に⁉︎」

 あとから駆け付けた私服の金髪メイドさんが、悲痛な声で驚愕した!


 NoU――ノウ⁉︎ ナニ、それっ⁉︎
 特撮の撮影とか、そんな悠長な感じじゃないのは女の子の表情を見れば解るけど!
 でも……あんな不気味なモノが現代に居るってのか……見たことも聴いたことも――。


 いや……聴いたことあったよ!


「まさか――こいつらが……」

 ニュースとかで頻繁に報道されていた事件――行方不明になるヒトや、都心部で熊とかに襲われたとか言っていたのを唐突に思い出した!

「――こちらエリー! Emergenc緊急事態発生!y! 繁華街にてNoUノウと遭遇! 排除対象は一体、ヒト型! 至急、増援を乞う! 繰り返す――通じない⁉︎」

 私服の金髪メイドさんが左腕に身に着けていた腕時計に向かって、鬼気迫る勢いでナニかを必死に告げていた。

 更に右手には護身用にしては物騒すぎる、F二〇〇〇と呼ばれている大型自動拳銃アサルトライフルを携帯していた――。

 時々、付き合わされるサバイバルゲームで、義父とうさんが主に使っていたのと同じ型式。
 蘊蓄ウンチクも嫌と言うほどに聴かせれた所為で、オレも良く知っていた。


 F二〇〇〇は近未来感を漂わせる独特な形状で、存在感も半端ない代モノ。
 装弾数は三〇発。
 一般に使われるライフル弾を用いた大型自動拳銃アサルトライフル。となる。
 主に西洋諸国の某特殊部隊や軍が正式採用している、紛れもなく実在する銃火器だった。

 法治国家の日本で、そんな本モノを何故に持っていて、何処からそんなモノを出したかなんて些細なことは今はどーでも良い!

「――えーい、ままよっ! 今、助けるからっ!」

 ナニが起こっているのかも解らないまま、人為らざるモノに向かって飛び出すオレ!

 とにかく解らないことは全て後回しだ!
 目の前で小さな女の子が怯えて泣いている。
 だったら、今、優先すべき事は――、


 助けるしかないでしょってことだ!


「――お、お待ち下さい、そーぢ様⁉︎ 危険に御座います!」

 目を見開き驚く私服の金髪メイドさん。

 オレがこんな行動を起こすなどとは、夢にも思ってなかったんだろうね。
 伏木家に出入りするオレは、大概のことには動じないんでね!

「XXXXX!」

 聴き取れない声か唸りかは知らない。
 女の子を放り投げて地面に捨てた、人為らざるモノ。
 飛び掛かるオレを禍々しい鋭爪で軽くあしらいやがった!

「――な⁉︎」

 薙ぎ払われた拍子に禍々しい鋭爪で腹を斬られたオレ。
 身を捻って躱そうとするも深く抉られた!
 更に丸太の並に太い腕で薙ぎ払われ、地面に叩き付けられた!

「ガハっ!」

 本当に軽く薙ぎ払われてしまっただけなのに、地面を勢い良く転がるオレ!

「――そ、そーぢ様⁉︎」

 構えた大型自動拳銃で牽制しながら、呻くオレの元に駆け寄る私服の金髪メイドさん!

「痛え……」

 抉られた腹から滴る血が衣服を赤く染める。
 腹を押さえて立ち上がるオレは、痛みを堪えながら、人為らざるモノを射抜くように見据えた。


 小さな女の子が直ぐ近くで気絶しているのが目に止まる――。


 脚が竦み、嫌な汗も噴き出る。
 しかし、小さな女の子を放って逃げるわけにはいかない。
 投げ出された時に逃げてくれていたら良かったんだけど――。


 しゃーねぇ、本気まぢで相手してやんよ! ――テメェは潰す!


「こんな危機もあるかと義父とうさんが持たせてくれてた……このをマジに使うことになるなんてね……」

 自重気味に呟いて、サコッシュに入れて携帯していた義父とうさんに託された玩具を素早く取り出し、勢い良く振り抜くオレ。


 ヴォーン


 振り抜いた勢いで、縮小していたのが一気に伸びて、独特の起動音をも響かせて蒼く輝いた!


「それは⁉︎ はるか様のオリジナルアンビリーバボの原型――ライトセイバーを何故、そーぢ様が⁉︎」

 オレを庇うように前に出て、人為らざるモノを必死に牽制していた私服の金髪メイドさん。
 背後からの独特の起動音を聴き付け、振り返った瞬間、目を見開いて驚きの声を上げる!


 ライトセイバーとは、名前の通り光る剣。


 正しくは、高速に動く螺旋状の鋼刃が、高熱を帯びて光っているように見えているに過ぎない。
 義父とうさんのと対を成すこの玩具は、あらゆる対象を削って溶かし斬る。

 義父とうさんが作る玩具――俺的玩具って言うモノは、総じて笑えないモノばかりだ。
 本人はやらかした俺的玩具といつも笑って言うけども、そんな生易しいモノじゃない。


 その中でも、ある意味で世界最強にも等しいモノが――このライトセイバーだ。


 つい最近、妙に含みのある義父とうさんからの手紙と一緒に同梱されていた。
 閉鎖空間に閉じ込められた時なんかに脱出できるように、とかなんとか。


 そもそも、そんな事故現場に出会すことは稀だからね。


 手紙にはそう書いてあったけど、手紙の文章とか取説を読んで性能を見る限り、そんな目的で持たされたのではないってのだけは伝わってきたから。

 まさかの人外が実際に居て、更に使うことになるなんて夢にも思わなかったよ、義父とうさん。

 それに、昨日。
 妙に深刻な表情で、オレに告げる義祖父じーちゃんから託された指輪にしてもそう――。
 
 義祖父ぢーちゃんは思うところって言っていたけど、恐らくこーゆー事態に関係したナニかの対策、或いは予防だったんだろうね。
 
 二人共、知ってたなら隠さずに言ってくれれば良かったのに……。

「鬼の未来さん直伝、オレ流剣術を披露してやんよ! ――舐めんな! バケモノ!」

 堂に入った体勢でライトセイバーを構え、僅か一瞬の踏み込みで人為らざるモノの懐に潜り込むオレ。

 その瞬間、オレを迎え撃つ人為らざるモノの禍々しい鋭爪が振り抜かれる!


 一瞬だった。


「そーぢ様!!!」

 ナニが起きたのか解らない私服の金髪メイドさんが叫ぶ!

「XXX――XX⁉︎」

 刹那、両腕が胴体から離れ宙を舞った!


「未来さんの指導や稽古悪魔のシゴキは地獄――本当に地獄だった。それに比べりゃ遅ぇし緩いんだよ、テメェは!」

 袈裟斬りに斬り上げた姿勢から上段斬り、素早く身を回転させて横薙ぎに叩き斬る!


 僅か一瞬――。


 瞬きする間に十字に斬られた人為らざるモノ。

 断末魔の悲鳴すら上げさせてもらえずに、四つのモノ言わぬ肉塊と化し、地面に崩れ落ちたのだった――。




 ―――――――――― つづく。
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