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Act.13 街角から始まる非日常について。①

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 異世界に等しい会場で義祖父じーちゃんや超絶美人なメイドさん達と、昼食と言う名のおかしな無礼講を思いっきり愉しんだオレ。

「そーぢ様。このあとは如何なされます?」

 オレにしな垂れ掛かり、上目遣いに尋ねてくる金髪メイドさん。


 そーやって尋ねられるとさ、大人の如何わしい情事を要求をされている風にも感じるんだけど。
 

「そ、そーだね……。現地を視察がてら義父とうさんにでも寄ってくかな……ははは」

 そんな不埒なことを不意に思った所為で、ちょっとだけ照れてしまうオレだったけど、ちゃんと真面目に答えたよ?

「――ちぇ……ケホケホ。――左様で御座いますか。僭越ながらこの私が。この私が直々に! ――現地までお送りし、詳細をご案内致しますゆえ」

 思うところでもあったのか、舌打ちする金髪メイドさん。
 咳払いで誤魔化したあとで、直ぐ様、姿勢を正して行動指針を提示してきた。


 何故か自分がと言う部分をやたら強調して。


「……宜しく」

「畏まりました――少しばかりお待ち下さいませ」

 オレが了承の返事をすると、金髪メイドさんは礼を尽くした会釈と返事をし、直ぐ様、異世界――食事会から退出する。


 防波堤たるヒトが居なくなってしまったので、ある意味で危険と判断したオレ。


 ビッフェ形式の食事会を愉しんでいるメイドの皆さまに気付かれないように、静かにこっそりと抜け出すことにしたり。

「さて。誤解……ナニが誤解? ま、解いておくに越したことはないよね」

 オレも思うところがあってエントランスに降りて、窓口で一生懸命に仕事を熟す受付嬢の所に向かった。

 オレが一人でやって来たのを一瞬だけ横目で確認すると、今朝方と同じくツーンとそっぽを向いてシカトを決める受付嬢。

「なぁ……ナニか誤解してね?」
 
 話しかけるも無言でつんけんどん。

「なしてそこまでツンケンされねばならんのか⁉︎ オレ、ナニもしてねぇっつーの!」

「――知らない、馬鹿! ……フン!」

 一言だけ言うと、鼻息荒くそっぽを向いてプンスカな受付嬢。

 機嫌を損ねた理由――恐らく金髪メイドさんが関係してるんだろうが、それで受付嬢が怒る意味が全く解らないオレ。
 一生懸命、詰め寄るも全く話を聴いてくれない。


 頑張って言い訳っぽいことを並び立てていた、丁度、その時――。


「お待たせ致しました、そーぢ様」

 背後からいきなりの至近距離――耳元で優しく囁いて来る金髪メイドさん。

「――うわっ! ビックリし――えっ⁉︎」

 当然、驚き振り返るオレ!
 しれっと和かに佇んでいた金髪メイドさんを見た瞬間、思わず息を飲んで茫然自失となってしまった――。

「そーぢ様? ――私の私服姿は如何で御座いましょう? 折角なので身形を整えて参りましたが……お気に召しませんでしたでしょうか?」

 両手を後ろ手に組んで、恥ずかしそうに身悶える、それはもうあざとさ全開の金髪メイドさんだった。

 ナニが折角なのかは知らないけど、背後に佇んでいた金髪メイドさんが仰る通り、いつもの由緒正しきメイド服ではなく、とっても素敵極まる清楚な衣装に身を包んでいた――。

 それも良くある、我儘ボディの女性的な部分を強調なり主張なりして、これでもかと誘惑する下品で過度な露出なんてのが全くない、本当に上品な淑女の装いで佇み、そして良く似合ってた。


 オレ、不覚にも姉さんに匹敵すると思ってしまった……ごめん、姉さん。
 姉さん以外の女性で……初めてドキドキが止まらないや……。


「いえいえいえいえいえ、気に入らないなんて! そんな有り得ないでしょ! えっと、その……す、凄く……き、綺麗です、は、ははは……ハイ」

 元からして超絶美人な金髪メイドさん。
 そんな可愛い仕草をするもんだから挙動不審になって、滅茶苦茶に動揺した返事をするオレだった。

「お褒めに与り光栄に御座います。世辞でも嬉しゅう御座いますよ」

 後光が差すほどに素敵な満面の笑顔の金髪メイドさん。


 オレの心にあるナニかを、容赦なく撃ち抜かれた瞬間だった――。


「ま、負けた……。く、悔しい!」

 なんかね、ハンカチを噛み締めてキーッとなってる受付嬢がいたり。


 ナニがどう負けたの?
 オレには全く意味が解りません。


「参りましょう、そーぢ様」

 そう告げてオレの腕を取り、エントランスの出入口に二人並んで脚を運ぶ。

 なすがままに連行されるオレ――さっきとはまた違った金髪メイドさんの装い、腕を刺激する柔らかな感触、包み込む優しくも安心する香り――その全てが心地良く、ほっこり気分だった。

「――ふ」「――ベー!」

 横目で見た私服の金髪メイドさんは、受付嬢に向かって素敵ドヤ顔を喰らわせていた。

 対する受付嬢はあっかんべーをお見舞いしていた――。


 ◇◇◇


 世界のスーパーカー、ランボルギーニの助手席に乗り込み出発する――。


 不思議極まることに。
 帰り道も行き交うと言うか擦れ違う車が一台もない……。


「あのさ、まさかとは思うけど。オレの送迎の為だけに道路封鎖とか……やらかしてたりしてませんよね?」

 優雅にランボルギーニを運転する私服の金髪メイドさんに、一応、聴いてみた。

「そーぢ様を快適にお連れする為、少々、お時間を割いて頂いたに過ぎません。お気に為さらず」

 和やかに平然と言ってくれた私服の金髪メイドさん。

「いや、あのね、何処の重鎮ですか、オレ? 総理大臣とか国家の要人でもなんでもない、ただの庶民っすよ? 勘弁して――」



『――イヤっ!』



 そんなメイドさんに文句を言っている最中、不穏当極まる声がオレの耳に届いた。


「――っ! ちょっと、止めてっ!」

 慌てて金髪メイドさんに指示を出すオレ。

「如何なさいました、そーぢ様?」

 オレが言うなり急ブレーキを掛けて、直ぐ様、車を止めてくれる私服の金髪メイドさん。
 怪訝そうな表情になってオレに尋ねてきた。

「なんか今――声が聴こえたんだ!」

 言いながらガルウィングを持ち上げ、道路に飛び出し辺りを見回すオレ。


 走行する車の車内、ましてランボルギーニは大排気量な凄いエンジン音。
 普通は騒音に負けて外の声なんて掻き消され、絶対に聴こえる筈はないとは思う。
 正直に言って、幻聴か空耳の類いかもとは思わなくもない――。


 けど、なんだろう。
 何故だか無視が出来ないんだ。


「声……に御座いますか? 誠に失礼ながら……私には聴き取れるとは、到底、思えません」

 更に申し訳なさそうにしつつ、オレに尋ねてくる私服の金髪メイドさん。

「ですよね……やっぱり、オレの耳がおかしいのかな?」



『――来ないでっ!』



 辺り一帯に蔓延する妙な違和感。

 日中だと言うのに、ヒトっ子一人居ない鎮まり返った不気味な繁華街。

 更に、そこで聴こえた――不穏当な声。


「また? ――あっちか!」

 妙な疑問を抱きつつも、声の聴こえてきた方向へと一目散に駆け出すオレ。

「お、お待ち下さい、そーぢ様!」

 そして、大きなビルの狭間――少し開けた袋小路に辿り着く。


 ナニ者かが、小さな女の子の腕を片手で掴み吊り下げている場面に出会した!



 ―――――――――― つづく。
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