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Act.01 電話から始まる非日常について。①
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ある日の早朝、オレのスマホに掛かって来た一本の電話――。
「こんな朝早くから誰だよ……煩いって」
昨日の夜、明日は公休だからということで、夜遅くまで……夜とは言わないな。
早朝まで、大好きなゲームで遊んでいたので、寝たのはついさっきだった。
気持ち良く寝掛かっていたところに、この仕打ち。
無視してやろうとスマホを留守電に切り替えて、再び布団に深く潜り込むオレ。
だがしかし。
バイブレーションにしていたのが悪かった。
「――しつこいな……一体、誰だよ……」
ひたすら振動するオレのスマホに、完全に叩き起こされてしまった。
「――何方様? 今、何時か解ってての嫌がらせですか? 間違い電話だったら大概にして下さいよ?」
完全に目が覚めたオレは、不機嫌そうに脇のスマホを手に取って電話に出た。
「そーぢ。今、何時か時計を見てからモノを言うと良いわよ……また夜更かししてたんでしょう」
電話に出たオレが耳にしたのは、若干、呆れたモノ言いだけど、とても聴き覚えのある優しい声。
「――? 今、何時かって……げっ⁉︎ 昼過ぎちゃってるじゃんっ⁉︎」
壁掛け時計を横目で見やり驚くオレ。
時差ボケはオレの方だった。
さっき寝たばっかりだったと思っていたが、軽く六時間は寝てたみたいだった。
「そーぢ……私が電話で起こさなかったら、夜中に起き出してたんじゃないの? ――全く、社会人なんだから、もっとシャッキとしなさい」
母親みたいなモノ言いで、オレを叱咤する電話口の女性。
オレの唯一の肉親である、姉の御手洗 華奈子からの電話だった。
ちなみに、そーぢとは今年で二十歳を迎えるオレ――御手洗 そーぢのことだね。
現在は姉と二人暮らし。
両親は、オレが幼い頃に既に他界している。
そして姉さんは現在――、
とある金払いの良い派遣会社に勤めている。
詳しいことは守秘義務らしく教えてはくれないので、とある派遣会社としか解らないけど。
連日、戻ってこないことも日常茶飯事だったけど、出向先から毎日欠かさず電話、できない時はメールを必ず送ってくるほどに、異常に過保護な姉さんだね。
一応、オレも高校を卒業した社会人なんですけど。
働き手になって既に一年以上経ったんだから、そんなに心配しなくても良いのに……。
そんな風に構ってくれる優しい姉さんを、オレは疎ましく思ったことは一度ももない。
何方かと言うと、オレの知らない何処かに出向させられている姉さんの安否確認もついでにできて、逆に安心しているオレだったから。
ヒトからシスター・コンプレックスと言われても否定はできないくらい、オレはそんな姉さんが大好きだからね――。
「あ~、うん。昨日から配信されたゲームがめちゃくちゃ面白くてさ……つい」
スマホをビデオ通話に切り替えると、相変わらず美人な姉さんが困った顔をしているのが映しだされた――。
何処かの出向先の制服なのか、由緒正しきメイド服に身を包んだ姉さんは今年で二十三歳。
パッと見は日本人とは思えない超絶美人で、若くも艶々した美肌に、切れ長でできる秘書的な鋭い目は茶色。
染めているわけではない地毛の栗色の髪は、束ねた髪を後頭部でポニーテールにし、ふんわりと丸く纏めたシニヨンスタイルで、大人の雰囲気を醸し出し、清楚かつ綺麗に纏めていた。
そんな姉さんだから、オレと三つしか離れていないのに、若干、歳上に見られる傾向があったりする。
「あらら~。ボッサボサの髪に相変わらずの寝惚け顔って……普段通り過ぎて私はホッとするけど。良い加減、社会人としての自覚を持たないと駄目よ、そーぢ」
オレがビデオ通話で見ている以上、当然、姉さんもオレが見えてる。
若干、嬉しそうな笑顔で優しく叱咤してくるのだった。
「し、仕方ねーだろ、正にたった今、起きたと言うか……起こされたばっかりなんだから!」
布団の上にドカリと座り、電話口の姉さんに向かって頭をポリポリと掻きながら言い訳するオレ。
「――あ、あのさ、姉さん。話は変わるけどさ、今度はいつ頃に帰って来る? ――寂しいってわけではないけど……一ヶ月も出ずっ張りで大丈夫なのかなって思ってさ?」
やや照れ臭く、最愛の姉さんに尋ねてみると――。
「そーぢ、正直に寂しいと言ってくれて良いのに……私はそーぢと離れて寂しいよ? でもね、あの妖女――クシュン。お嬢様がナニかと手を焼かせるし……無理難題を押し付けてばかり……金払い――クシュン。御給金が良いからってヒトを奴隷――クシュン。コキ使わなくっても良いじゃない? そうそう! 聴いてよ、そーぢ! この間なんて前線基――クシュン。研究施設に必要な軍――クシュン。設備の管理作業なんてさせられて地獄を見せられたし――」
よっぽど不満が溜まっているのか、久々のマシンガン愚痴りトークが始まった。
姉さんのコレは異様に長いんだよなぁ……。
なんかこー良く解らない不穏当な単語が、時折、混じり気味になるのが気になるんだけど……。
身内の所とはいえ、姉さんの出向させられてる派遣会社って、ホント、大丈夫?
そして、軽く三〇分位は延々と愚痴り続けていた――。
―――――――――― つづく。
「こんな朝早くから誰だよ……煩いって」
昨日の夜、明日は公休だからということで、夜遅くまで……夜とは言わないな。
早朝まで、大好きなゲームで遊んでいたので、寝たのはついさっきだった。
気持ち良く寝掛かっていたところに、この仕打ち。
無視してやろうとスマホを留守電に切り替えて、再び布団に深く潜り込むオレ。
だがしかし。
バイブレーションにしていたのが悪かった。
「――しつこいな……一体、誰だよ……」
ひたすら振動するオレのスマホに、完全に叩き起こされてしまった。
「――何方様? 今、何時か解ってての嫌がらせですか? 間違い電話だったら大概にして下さいよ?」
完全に目が覚めたオレは、不機嫌そうに脇のスマホを手に取って電話に出た。
「そーぢ。今、何時か時計を見てからモノを言うと良いわよ……また夜更かししてたんでしょう」
電話に出たオレが耳にしたのは、若干、呆れたモノ言いだけど、とても聴き覚えのある優しい声。
「――? 今、何時かって……げっ⁉︎ 昼過ぎちゃってるじゃんっ⁉︎」
壁掛け時計を横目で見やり驚くオレ。
時差ボケはオレの方だった。
さっき寝たばっかりだったと思っていたが、軽く六時間は寝てたみたいだった。
「そーぢ……私が電話で起こさなかったら、夜中に起き出してたんじゃないの? ――全く、社会人なんだから、もっとシャッキとしなさい」
母親みたいなモノ言いで、オレを叱咤する電話口の女性。
オレの唯一の肉親である、姉の御手洗 華奈子からの電話だった。
ちなみに、そーぢとは今年で二十歳を迎えるオレ――御手洗 そーぢのことだね。
現在は姉と二人暮らし。
両親は、オレが幼い頃に既に他界している。
そして姉さんは現在――、
とある金払いの良い派遣会社に勤めている。
詳しいことは守秘義務らしく教えてはくれないので、とある派遣会社としか解らないけど。
連日、戻ってこないことも日常茶飯事だったけど、出向先から毎日欠かさず電話、できない時はメールを必ず送ってくるほどに、異常に過保護な姉さんだね。
一応、オレも高校を卒業した社会人なんですけど。
働き手になって既に一年以上経ったんだから、そんなに心配しなくても良いのに……。
そんな風に構ってくれる優しい姉さんを、オレは疎ましく思ったことは一度ももない。
何方かと言うと、オレの知らない何処かに出向させられている姉さんの安否確認もついでにできて、逆に安心しているオレだったから。
ヒトからシスター・コンプレックスと言われても否定はできないくらい、オレはそんな姉さんが大好きだからね――。
「あ~、うん。昨日から配信されたゲームがめちゃくちゃ面白くてさ……つい」
スマホをビデオ通話に切り替えると、相変わらず美人な姉さんが困った顔をしているのが映しだされた――。
何処かの出向先の制服なのか、由緒正しきメイド服に身を包んだ姉さんは今年で二十三歳。
パッと見は日本人とは思えない超絶美人で、若くも艶々した美肌に、切れ長でできる秘書的な鋭い目は茶色。
染めているわけではない地毛の栗色の髪は、束ねた髪を後頭部でポニーテールにし、ふんわりと丸く纏めたシニヨンスタイルで、大人の雰囲気を醸し出し、清楚かつ綺麗に纏めていた。
そんな姉さんだから、オレと三つしか離れていないのに、若干、歳上に見られる傾向があったりする。
「あらら~。ボッサボサの髪に相変わらずの寝惚け顔って……普段通り過ぎて私はホッとするけど。良い加減、社会人としての自覚を持たないと駄目よ、そーぢ」
オレがビデオ通話で見ている以上、当然、姉さんもオレが見えてる。
若干、嬉しそうな笑顔で優しく叱咤してくるのだった。
「し、仕方ねーだろ、正にたった今、起きたと言うか……起こされたばっかりなんだから!」
布団の上にドカリと座り、電話口の姉さんに向かって頭をポリポリと掻きながら言い訳するオレ。
「――あ、あのさ、姉さん。話は変わるけどさ、今度はいつ頃に帰って来る? ――寂しいってわけではないけど……一ヶ月も出ずっ張りで大丈夫なのかなって思ってさ?」
やや照れ臭く、最愛の姉さんに尋ねてみると――。
「そーぢ、正直に寂しいと言ってくれて良いのに……私はそーぢと離れて寂しいよ? でもね、あの妖女――クシュン。お嬢様がナニかと手を焼かせるし……無理難題を押し付けてばかり……金払い――クシュン。御給金が良いからってヒトを奴隷――クシュン。コキ使わなくっても良いじゃない? そうそう! 聴いてよ、そーぢ! この間なんて前線基――クシュン。研究施設に必要な軍――クシュン。設備の管理作業なんてさせられて地獄を見せられたし――」
よっぽど不満が溜まっているのか、久々のマシンガン愚痴りトークが始まった。
姉さんのコレは異様に長いんだよなぁ……。
なんかこー良く解らない不穏当な単語が、時折、混じり気味になるのが気になるんだけど……。
身内の所とはいえ、姉さんの出向させられてる派遣会社って、ホント、大丈夫?
そして、軽く三〇分位は延々と愚痴り続けていた――。
―――――――――― つづく。
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