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第四〇幕。

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 村長宅を後にして、屋敷の情報を仕入れるついでに、先延ばしになっていた勇者の叡智を授かろうと教会へと訪れる私と紅。

「――これはこれは、御使みつかい様」

 丁度、教会の玄関先に出ていた女性神官を呼び止めた私。

「早速だが、村外れの屋敷についてお尋ねしたいのと、勇者の証を身に宿す秘術はいつ行って貰えるかを確認しに来たのだが」

 やはり面倒臭い挨拶は端折はしょり、会釈のみで用件を伝える私。
 私と言う人物は存外に面倒臭がりの様だ。

「あの屋敷に御座いますか? 幽霊が出るとか何とかの噂に御座いましょうか?」

 怪訝そうにする女性神官。

「先程、村長から調べた折には異常は無かったとお聴きした。その屋敷を私が買い取る話で進めているんだが」

「私を始め、何人かの優秀な神官で屋敷の中も外も隈なく調べております。問題は無いかと」

「そうか。――ならば話は変わるが、秘術はいつ行って貰えるのだろうか?」

「少々お待ち下さい。大変に失礼ながら、お身体の具合を診させて頂きたく思います……お手をお願い出来ますか?」

「こうで良いか?」

 しかし――。

「御使様、誠に申しあげ難いので御座いますが……純血の珠玉――勇者の証をその身に宿す事は御使様には出来兼ねます……不思議な事に……今、私が勇者様の身に宿せるかどうかをお調べする為に施した、審問しんもんの術式が……消失してしまいました」

「――は?」

 女性神官からそう告げられた。

「何で御座いましょう? 大きな力同士が複雑に絡み合って、せめぎ合っている様な――」

 超越者の婆さんも言っていたが、術式が複雑に絡み合って邪魔をしているみたいだ。

「誠に遺憾では御座いますが……断念せざるを得ません」

「止むを得ない、か――だが、勇者の叡智は授けられなくとも、勇者の証としての効力はあるのか? 身に宿さなくとも、身に着けていて問題は?」

「勇者の証としての効力ですか? 身に着けるだけですと、精々、身分の証程度にしかなりませんけれど? 勇者の叡智は身に宿さなければ意味をなしません故に……」

「それで充分。――では、鍛治師の所で装飾品でも作って貰い、身に着ける事にするよ」

 姿勢を正し礼を述べる私。

「御使様、此度はお力添え出来ず、申し訳御座いません」

 深々と頭を下げて謝罪してくれる女性神官だった――。

 帰る道すがら、勇者の証を収める装飾品の製作依頼の為に、鍛治師の所へと寄っていく私と紅。

「お! 丁度良い時に来たな、若造! 済まんがちょいとお遣いを頼まれてくれ!」

 私が店の玄関を潜るなり、踏ん反り返って座っていた椅子から勢い良く立ち上がって、くゆらせていたパイプを突きつけて、依頼を言ってくる鍛治師。

 若干、興奮気味なのは気の所為だろうか?



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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