流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第三五幕。

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 私は傍で力無く俯いている褐色の女性に、脅かさない様に細心の注意を払い、着ていた外套を被せた。

『ア……アゥ……ア』

 泣きっ面で一生懸命に何かを伝え様とする褐色肌の女性。
 声帯を潰されているのか、声になっていない。
 更にどす黒く変色する程の打撲跡が全身に及び、脚の腱の部分には抉られた痕跡が残っている――。

「辛い目に遭ったんだな。もう大丈夫、心配無い。楽にすると良い」

 脅かさない様に女性の前にの平を見せてから、そっと頭を撫でる様に触れる私。すると――。

 右手が淡く輝き出して、褐色肌の女性に伝播していく――。
 淡い輝きが全身に及んでいき、最後に強く輝くと褐色肌の女性に吸い込まれる様に溶けて消えた――。

「もう大丈夫だよ、声も出るし自分で立つ事も出来ると思う。怖がらずやってごらん」

 そう言って頭を優しく撫でてあげた。

『――ア……ワ、タシ……⁉︎ 私、声が出ル⁉︎ 喋れル⁉︎ こんナ、こんな事っテ――ウぅ……」

 歓喜に打ち震え、大声を上げて泣き出す褐色肌の女性。

 紅の時と同様、謎の癒し力が発揮されて良かったと、内心、胸を撫で下ろす私。
 凄惨で酷い傷跡は、何一つ残っていない。
 艶々とした健康状態の良い顔色に迄回復している――と言うか、戻っている。

 自分の摩訶不思議な癒しの力が発現するのを、初めて落ち着いて見る事になった私。

 どうやら傷を癒すのでは無く、傷自体を無かった事にしている様な印象を受けた。
 この能力も自分の意思で自由自在に使い熟せる様にならねばと深く思う。
 しかし、心に受けた痕跡は、こんな私にも戻せないし治せないだろう。

 自分で乗り越え、生きるしか無い――。

『奇跡のお力を行使なさル、聖人様を見ている様でス。旦那様、本当に何とお礼申し上げて良いのカ。妾には何も返せませン……』

「構う事は無いさ。村で平和に愉しく暮らしてくれれば良い。後は……偶に紅の面倒を見てあげて欲しい、かな? 駄目か? 駄目なのか?」

『――プ。旦那様、狡いでス。断れないではないですカ』

「だって、そのつもりだよ? 駄目か? 駄目なのか?」

『もゥ……その言葉と仕草、殊の外お気に入りのご様子ですネ』

 下衆共を縛り上げていく黒と、両手で顔を覆って歓喜に咽び泣く褐色肌の女性との間で、茶化す様に戯る私は、側から見れば滑稽と言うより何とも言えないシュールな光景だろうけど。

 仲間が酷い目に遭わされた現実から、少しでも気を逸らせてあげたかったから戯けて見せた。
 後、二人があたふたする様子が、何気に面白かったってのが正直な本音だったり――。

「ご協力、感謝致します! 我々はこれにて!」

「あ、はい。どうぞお構い無く」

 数人の衛兵が下衆共を纏めて連行していった。
 最後の最後に挨拶をした隊長らしき人物に見送りをした所だった。

 だが、愛玩奴隷の子達は解放されない。
 いつ何処で嗅ぎ付けたのか、この街の奴隷商が引き取りにやって来ていたからだった。

 所有者亡き後は手元に戻ってくると言った都合の良い契約らしい。
 殆ど長期リース、レンタル紛いの人身売買だった。

 理由を聴けば、全ては愚王による政策だった。

 この世界では、そう言う決まり事が公的に存在している。
 力で訴えれば強奪になり、逆に犯罪者となるのだと衛兵が教えてくれた。

 出所が怪しくても、一度、商品として認可された時点で、助け出すには買い取るしかないのだそうだ。
 例えば、誘拐されたお姫様であっても。

 理不尽過ぎるが止むを得ない、納得してくれと、奥歯を噛みしめ悔しさに握り拳を作り、私に深々と頭を下げていた衛兵だった。

「あの商人を相手取り、無傷でお戻りになられる程の剛の者。ワタクシ、少し驚きましたで御座います」

 シルクハットに燕尾服、更には仮面舞踏会等で顔を隠す様な、異様な蝶柄のアイマスクを身に付けた寸胴短足の奴隷商。
 蝶柄のアイマスクで覆っている為に表情が読み辛いが、顔の皺から察するに、多分、壮年以上の歳だろうな。

 自慢の鼻髭を摘みながら、下衆な笑顔で私にそう話しかけてくるのだった――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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