流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第二四幕。

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 村の大人達も大勢駆け付けて、教会よりも距離の近い宿屋へと子供達を運び込んだ。
 安静に寝かせ終えると、悲痛な面持ちのまま宿屋の食堂へと住人が集まった――。

「何がどうして……」「一体、何の仕業だ!」「……おお、神よ!」「無事で良かった」「俺の幼女に何て事を!」「ざわざわ……ざわざわ……」

 集まった村人達が、各々に困惑や狼狽しつつ騒ぎ立てている。
 約一名、不穏当な言葉を吐く紳士も交ざっているが、聴かなかった事にしておく。

「村長。私が駆け付けた時には、既に子供達が倒れ伏していて――」

 私は村長と村人に、遭遇した時点での事細かな詳細を嘘偽り無く報告した。
 ただ、今は関係の薄い私の生い立ちは伏せておいた。
 試練の間以降で遭遇した事態と、私の右腕に宿る謎の力に絞り、要点だけを重点的に伝えていく――。

 呪いと言う言葉を耳にして、一層、騒めき出す村人達。
 悲鳴を上げる者、怒りを露わにする者も少なからず居たが、私が説明する間は、割合、神妙に聴き入ってくれていた。

 そして、どうやって助けたかと言う顛末に差し掛かり、私の右腕に宿る謎の力の所で、皆の顔色が急激に変わった――。

「――何だと⁉︎」「――浄化だって⁉︎」「まさか、そんな事って⁉」「嘘だろ⁉︎」「聖水も無く⁉︎」「俺の幼女に触れただと⁉︎」「ざわざわ……ざわざわ……」

 村人達が更に狼狽しつつ騒めいた。
 世界を呪うが如くの凄まじい形相で私を睨みつけ、不穏当な言葉を吐く紳士が約一名、交ざってはいたが、先程と同じく気付かなかった事にしておく。

「――お前が呪いを持ち込んだんだろ!」

 私を睨みつけていた紳士が、罵声を浴びせて来た! 大きく騒めく村人達!

「儂の伴侶を愚弄するか、貴様――」

 隣に居た紅の切れ長の目が鋭くなり、怒気を孕んだ気配が膨れ上がる!

「――いいえ、使様は特別な加護で持って、苦しむ子供達をお救い下さったのです。濡れ衣に御座います。――お怒りをお鎮め下さいませ、竜巫女様」

 村人達と紅の間に割り込み、直ぐ様、騒めいている村長と村人達に向け、ご高齢の女性神官が静かに進言し、紅に向き直って深々と頭を下げた。

「紅、私は大丈夫だ」「ふん」

「此方にお見えになる彼の方は、見事、試練の間を突破なされた今代の勇者様でも御座います。私めが駆け付けた折には、既に御使様の神の手により、処置が済まされておりました故。試練からはつい先程、お戻りになられたばかりに御座いまして、勇者の証を宿す秘術は施されてはおりませぬが、嘘偽り無く誠の事に御座います」

「御使で勇者だと⁉︎ 信じられるか!」

「婆さんの言ってる事は本当だ。そこな若造はな、誰も勝てやしなかった程の剛の者――稀代の勇者だよ。その証拠に若造の槍と盾はな、なりは小さくなってるが、御使である番人が携えてた武具だ。見た時は目を疑ったがな?」

「な、何だと! それは本当か! くっ……ならば証だ! 証を見せてみろ!」

 顔が蒼褪めつつも尚、私を詰問する紳士。
 因縁付けて喰って掛かって来ている理由ってのは、違う所から出ているんじゃないかと私は思うんだが――。

「――御使様」

「私は御使とは違うんだが……解った。――これがそうらしい」

 女性神官が私に見せるようにと目で促して来たので、背負い袋の中から純血の珠玉を取り出して村長に手渡した。

 その後で、試練の間で譲渡された槍と盾を構えると、私の身の丈を二回り程上回る大きさになって、対峙していた時と同様に神々しい迄の輝きを放ち出した。

「そ、その神々しい迄の輝きは⁉ ――ほ、本物なのか⁉︎ ――誠の勇者⁉︎」

「ちっ……」

 集まっている村人の一人が、驚きを隠せずに声を張り上げた。
 詰問してくる紳士からは、苦悶の表情で舌打ちされた。

「――うむ、の言う通りじゃな……そこな若者の持つそれは、間違い無く誠の純血の珠玉……即ち、証。武具にしても、番人の最強の槍と盾に間違い無い様じゃ」

 村人が一斉に証を注視する中、手渡された村長が目を凝らして見た後、何かの呪文を唱える。
 そして、唸る様に肯定してくれた。

 って――ええ⁉︎ 武具屋の店主って、鍛冶師兼鑑定師で更に先代の勇者でもあったの⁉︎
 それでだな、試練の間を見て来たかの様に、やたらと詳しかったのは……。

「し、知らぬ事とはいえ、た、大変な不敬を働いてしまい、申し訳御座いませんでした! 何卒、何卒、平にご容赦を!」

 分が悪くなって狼狽し出すと、いきなり床に手をつき頭を擦り付けて平伏。
 身体を震わせて謝罪してくる紳士だった――。


 ◆◇◆◇◆


 一連の騒ぎを、誰に気付かれる事も無く、静かに傍観していた人物が居た――。

 認識阻害の魔法を駆使し気配をも隠蔽。
 広場の中央に聳える大きな樹木の枝に、脚を組み投げ出して、優雅に凭れ掛かっていた。

 黒髪赤目の褐色肌で耳の端が尖っていたその者は、美しい顔の右半分に縦に伸びた裂傷が刻まれていた。

 失った右眼を覆い隠す様に掛けたれた、真っ黒な眼帯が痛々しい。
 一部始終を観察していた赤目は、爬虫類や猫等に見受けられる、縦に細い独特の瞳孔をしている。

 姿は人のそれだが、気配は邪悪そのもの。
 魔に組みする闇の者は、口端を大きく吊り上げ、愉悦に歪み切った嘲笑を浴びせると、音も無く掻き消える様に姿を眩ませたのだった――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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