17 / 53
第一七幕。
しおりを挟む
「先人の勇者様の叡智が個人の許容範囲を上回り、肉体や魂の崩壊、或いは個を失って廃人と化す為に御座います。それ以前に迷宮に巣食う魔物に召される事になるでしょう」
「成る程。障害を乗り越えて耐え抜いた者だけが、勇者と呼ばれるに相応しいと?」
「左様に御座います――」
「それでも私は――」
正義感が強い訳でも無ければ、世界を救ってやる等と言う大逸れた志も持ち得てはいない。
正しく勇者と呼ばれる程に出来た人物では無い。
それでも魔王なる者を倒さねば、此処から先に進まないのだ。
その結果がこの世界を救い、不幸になる民をも救済する結果に繋がる――そう願いたい。
「解っておる。主人には儂の力が取り込まれておる故、障害と言うべき魔物については余裕であろうの。――問題は叡智の許容範囲だの。これは個人の資質に左右されよるでの?」
心配そうな表情の紅が私の隣に歩み寄り、肩に手を置き励ましてくれた。
「戦い方も良く解らない私だ……途中の魔物にしても脅威だよ、紅」
その手に私の手を重ね、愚痴に近い不安を口にした。
「竜の力を得ておる。軽く剣を振るうだけでも相当なもの。其処は心配要らぬよ、主人」
それでも優しく鼓舞してくれた紅。
「紅がそう言うならそうなんだろうな。――問題は勇者の叡智か……不純な動機の私に、受け入れきれる器が備わっていれば良いが」
言葉通りの意味で、心の負担が少し軽くなった気がするも、不安は拭えない私。
魔物は倒せても、個人の資質は調べようが無い――出たとこ勝負となる……。
「そう案ずるな。主人が事切れれば儂も同じく事切れよる。一人では逝かせぬ。もっと気楽に考えるが良かろう」
「やっぱり紅は阿呆の子の妻だな? そんな事になりたく無いから、今、真剣に悩んでいるんだ、私は!」
「ならば是が非でも突破してもらう事を此処で祈っておこう。――信じて待っておるでの? ただ、無理だけはご法度だぞ?」
「ああ、そうしてくれ、紅。――未亡人には絶対させない」
紅の言葉で、完全に気持ちが固まった。
「最後に此方をお渡ししておきます。万一にも断念せざるを得ない状況に陥いられた際にお使い下さい。此方へと導かれますので」
最後に、女性神官から小さな人形を手渡された。
一見すると、呪いの藁人形にも見える簡素な作りの物。
ある意味であってるな――身代わり人形には違い無いのだから。
「こんな時は、笑顔で送り出すのが妻の役目だの。――どうか御無事で、主人よ」
そう言って、少し寂しい笑顔ながらも送り出してくれる紅。
「大丈夫だ――行ってくる、紅」
紅の頬を優しく撫で、暫しの別れを告げる私。
永遠の別れにだけはならない様に努めるさ。
紅から離れて女性神官に会釈をし女神像へと歩み寄る。
像に触れると、身体全身が神々しい輝きに包まれ、緩やかに宙に浮いた。
そして掻き消える様に、試練の間と呼ばれる迷宮へと誘われていった――。
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
「成る程。障害を乗り越えて耐え抜いた者だけが、勇者と呼ばれるに相応しいと?」
「左様に御座います――」
「それでも私は――」
正義感が強い訳でも無ければ、世界を救ってやる等と言う大逸れた志も持ち得てはいない。
正しく勇者と呼ばれる程に出来た人物では無い。
それでも魔王なる者を倒さねば、此処から先に進まないのだ。
その結果がこの世界を救い、不幸になる民をも救済する結果に繋がる――そう願いたい。
「解っておる。主人には儂の力が取り込まれておる故、障害と言うべき魔物については余裕であろうの。――問題は叡智の許容範囲だの。これは個人の資質に左右されよるでの?」
心配そうな表情の紅が私の隣に歩み寄り、肩に手を置き励ましてくれた。
「戦い方も良く解らない私だ……途中の魔物にしても脅威だよ、紅」
その手に私の手を重ね、愚痴に近い不安を口にした。
「竜の力を得ておる。軽く剣を振るうだけでも相当なもの。其処は心配要らぬよ、主人」
それでも優しく鼓舞してくれた紅。
「紅がそう言うならそうなんだろうな。――問題は勇者の叡智か……不純な動機の私に、受け入れきれる器が備わっていれば良いが」
言葉通りの意味で、心の負担が少し軽くなった気がするも、不安は拭えない私。
魔物は倒せても、個人の資質は調べようが無い――出たとこ勝負となる……。
「そう案ずるな。主人が事切れれば儂も同じく事切れよる。一人では逝かせぬ。もっと気楽に考えるが良かろう」
「やっぱり紅は阿呆の子の妻だな? そんな事になりたく無いから、今、真剣に悩んでいるんだ、私は!」
「ならば是が非でも突破してもらう事を此処で祈っておこう。――信じて待っておるでの? ただ、無理だけはご法度だぞ?」
「ああ、そうしてくれ、紅。――未亡人には絶対させない」
紅の言葉で、完全に気持ちが固まった。
「最後に此方をお渡ししておきます。万一にも断念せざるを得ない状況に陥いられた際にお使い下さい。此方へと導かれますので」
最後に、女性神官から小さな人形を手渡された。
一見すると、呪いの藁人形にも見える簡素な作りの物。
ある意味であってるな――身代わり人形には違い無いのだから。
「こんな時は、笑顔で送り出すのが妻の役目だの。――どうか御無事で、主人よ」
そう言って、少し寂しい笑顔ながらも送り出してくれる紅。
「大丈夫だ――行ってくる、紅」
紅の頬を優しく撫で、暫しの別れを告げる私。
永遠の別れにだけはならない様に努めるさ。
紅から離れて女性神官に会釈をし女神像へと歩み寄る。
像に触れると、身体全身が神々しい輝きに包まれ、緩やかに宙に浮いた。
そして掻き消える様に、試練の間と呼ばれる迷宮へと誘われていった――。
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww
刺狼(しろ)
ファンタジー
ニートの主人公は一回50万の報酬を貰えるという治験に参加し、マッドサイエンティストの手によってサイボーグにされてしまう。
さらに、その彼に言われるがまま謎の少女へ自らの血を与えると、突然魔法陣が現れ……。
という感じの話です。
草生やしたりアニメ・ゲーム・特撮ネタなど扱います。フリーダムに書き連ねていきます。
小説の書き方あんまり分かってません。
表紙はフリー素材とカスタムキャスト様で作りました。暇つぶしになれば幸いです。
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる