流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第一七幕。

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「先人の勇者様の叡智が個人の許容範囲を上回り、肉体や魂の崩壊、或いは個を失って廃人と化す為に御座います。それ以前に迷宮に巣食う魔物に召される事になるでしょう」

「成る程。障害を乗り越えて耐え抜いた者だけが、勇者と呼ばれるに相応しいと?」

「左様に御座います――」

「それでも私は――」

 正義感が強い訳でも無ければ、世界を救ってやる等と言う大逸れた志も持ち得てはいない。
 正しく勇者と呼ばれる程に出来た人物では無い。
 それでも魔王なる者を倒さねば、此処から先に進まないのだ。
 その結果がこの世界を救い、不幸になる民をも救済する結果に繋がる――そう願いたい。

「解っておる。主人には儂の力が取り込まれておる故、障害と言うべき魔物については余裕であろうの。――問題は叡智の許容範囲だの。これは個人の資質に左右されよるでの?」

 心配そうな表情の紅が私の隣に歩み寄り、肩に手を置き励ましてくれた。

「戦い方も良く解らない私だ……途中の魔物にしても脅威だよ、紅」

 その手に私の手を重ね、愚痴に近い不安を口にした。

「竜の力を得ておる。軽く剣を振るうだけでも相当なもの。其処は心配要らぬよ、主人」

 それでも優しく鼓舞してくれた紅。

「紅がそう言うならそうなんだろうな。――問題は勇者の叡智か……不純な動機の私に、受け入れきれる器が備わっていれば良いが」

 言葉通りの意味で、心の負担が少し軽くなった気がするも、不安は拭えない私。
 魔物は倒せても、個人の資質は調べようが無い――出たとこ勝負となる……。

「そう案ずるな。主人が事切れれば儂も同じく事切れよる。一人では逝かせぬ。もっと気楽に考えるが良かろう」

「やっぱり紅は阿呆の子の妻だな? そんな事になりたく無いから、今、真剣に悩んでいるんだ、私は!」

「ならば是が非でも突破してもらう事を此処で祈っておこう。――信じて待っておるでの? ただ、無理だけはご法度だぞ?」

「ああ、そうしてくれ、紅。――未亡人には絶対させない」

 紅の言葉で、完全に気持ちが固まった。

「最後に此方をお渡ししておきます。万一にも断念せざるを得ない状況に陥いられた際にお使い下さい。此方へと導かれますので」

 最後に、女性神官から小さな人形を手渡された。
 一見すると、呪いの藁人形にも見える簡素な作りの物。
 ある意味であってるな――身代わり人形には違い無いのだから。

「こんな時は、笑顔で送り出すのが妻の役目だの。――どうか御無事で、主人よ」

 そう言って、少し寂しい笑顔ながらも送り出してくれる紅。

「大丈夫だ――行ってくる、紅」

 紅の頬を優しく撫で、暫しの別れを告げる私。
 永遠の別れにだけはならない様に努めるさ。

 紅から離れて女性神官に会釈をし女神像へと歩み寄る。
 像に触れると、身体全身が神々しい輝きに包まれ、緩やかに宙に浮いた。
 
 そして掻き消える様に、試練の間と呼ばれる迷宮へと誘われていった――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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