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第一〇幕。
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「――え⁉︎」
当然、面食らう私。
「この世界には今、魔王と名乗る不遜な輩――ご存知の通り、今の愚王様だね~。其奴が陣取っててさ、実は世界を牛耳っちゃってる訳なのよね~。あの汚ったない空も其奴の仕業って訳なのよ」
失礼ながら、お婆さんの身形から発せられる言葉遣いとは、到底、思えない口調で、淡々と話し出した――。
「実はそこな紅がドジ踏んでね、今にも滅ぼされそうだったのよ? ――で、君を呼んだ。手下に煽らせて、誘き出された紅を助ける為にね。まんまと引っ掛かった其方の紅も悪いのよ?」
「失敬だの。儂はドジなど踏んでおらぬ。無遠慮に敵対する人は、当然、踏み散らかしてやったがな」
全く動じていない紅き竜は、蜥蜴の干物を食べながら、超越者たる目の前の人に否定を告げた。
「あ、そう――紅の助けになる様に、急いで召喚陣を組んだのがいけなかったのか、飲み過ぎて酔ってたアタシが悪かったのか――干渉されちゃったのよね~、魔王に」
不穏当な単語を含んだ言葉が聴こえた。
それを取って付けた様に、魔王の所為にしている――なんだ、此奴?
「それで――この世界に召喚される途中、君は本来の姿を完全に消失させられた。そして、魂だけが相性の良い遺体に宿っちゃったって訳~。転移させたつもりが転生になっちゃうんだもん、アタシもビックリでさ、もうね、ゲラゲラ笑っちゃったわよ」
猛烈に殺意が湧く私――。
真面目な話、今この場にて斬り殺したくなったが、今は堪える私――。
「だから~アタシもビックリって言ったでしょ? 不浄の者――生きた屍でも無いし、正しく蘇った訳でも無い。遺体の中身だけ入れ替える召喚術なんて、長く存在するアタシも聴いた事も無い。死体を腐らせ無い様に保存する術式はあるんだけどね?」
あっけらかんと続ける――言葉の抑揚と発音からも、自分の所為では無いと言っているかの様に――。
「本来なら、この世界の者は太刀打ち出来ない特殊な技能なんかも備わってる筈だけど――見るからに無さそうね。失敗、失敗」
――駄目だ。堪忍袋の尾が切れそう。
「呪いならまだ解ける見込みもあったけど――どうも魔王の呪いでも無いのよね~」
机に身を乗り出し、皺くちゃな手で私の失った左腕を見て、左肩をポンポン叩く。
――煽ってやがるのか、此奴は?
「兎に角、魔王の所為で術式が何重にも複雑に絡み合ってて、今直ぐどうこうなんてアタシにも出来ない。――可能性を一つ上げるけど、魔王を倒せば、片方の魔王の術式は消せると思うよ? 頑張って魔王を倒せば良いのよ」
どうあっても魔王の責任にしたい様で、やたら魔王を推してくる。
流石の私も此処等が限界だった――右手と眼光に殺気が篭る。
「アタシでも、どうしてこうなったかなんてビックリだって言ってんでしょうが! ――この世界に呼んでおいてなんだけど……ごめんとしか言えない」
慌てて言葉を継ぎ足して、初めて態度を神妙に改める。
「――でね、細やかなお詫びって事で、ハイ、コレ」
またしても、何処から出したのか解らない。
目線で促された机の上に――人の左腕らしき物と革袋が載っていた。
人の左腕らしき者と思った理由――どう見ても人間の物では無いから。
簡単に言うと、この異世界には存在しないであろう――機械で出来た左腕だった。
現代のロボットやアンドロイドを超える、オーバーテクノロジーと言う物に等しい。
超越者と呼ばれる此奴は、一体、何者なんだ?
「貴方なら見て解るでしょ? ちょっと変わった義手ね。でもね、ただ変わった義手では無いのよ? アタシ謹製の――この世界には存在しない、別の世界の技術で作った義手。世に出せば大混乱になる程、素晴らしく高性能な有り難い物よ?」
言ってる事は、謎で未知な至高の逸品。
しかし実際は、単なる手打ち金と見舞いの粗品程度の価値感な雑な態度で、私にそそくさと差し出してきた。
「今、脳波と繋げるから。痛覚迄は認識しないけど、基本は本モノの腕の様に動かせると思うけど――」
何も返事はしていない私を他所に勝手に話を進め、その義手を左肩に許可も無く充てがうと、耳慣れない言葉――呪文か何かを詠唱し始めた。
「これで良いわよ。動かしてみて?」
促され黙って指示に従う私。
左腕の義手が自分の腕の様に軽快に動く。
グーチョキパーなる動作も、時間差すら無く思った通りに動いた。
「――大丈夫そうね。上手く行って良かった。絡み合ってる術式に干渉されでもしたら、君、消し飛んでる所よ?」
また何か不穏当な言葉を聴いた。
正直に言おう――此奴は嫌いだ。
「良いじゃ無い、上手く行ったんだからさ! 細かい事は気にしないの! ――あと、コレとコレも渡しておくから!」
私の表情を読み取り、大慌てで別の物を用意する。
またしても机の上にいつの間にか載っている物――駄目押しの宝石って所だろうか。
「――珠玉って言う別の世界の物よ。君の思う通りに姿を変える魔導具に等しき物と思えば良いかな? それでコッチは当面の路銀――平たく言えば慰謝料ってヤツよ」
宝石の様なモノは魔導具、それと手切金か。
最後の最後に俗っぽい真似をしてくれやがる――。
「――と、言う事で受け取った以上、アタシに責任追及はしないでよね! 魔王を倒したら元に戻せるか試してあげるけど期待はしないで! ――じゃあね、頑張って! 勇者(仮)様」
あまりな物言いに、遂に怒りが浸透。
完全に怒りに身を任せた私が、問答無用で斬り捨ててやると立ち上がった瞬間――手も触れていないのに、外に放り出されてしまった私と、蛙の干物を咥えた紅き竜だった。
先程まで在った住居も、跡形も無く消え失せていた――。
「彼奴め、逃げおったわ……こうなると儂もお手上げだの。気配を辿る事も出来ん。済まぬな」
「――良いさ。原因も解ったし、左腕も付いたし。色々と聴けたし。目標みたいなのも出来たし。残念なのは……肝心な事を煙に巻いて無責任に逃げくさった、単なる役立たずだって事だな」
「其方――ある意味で、儂の所為でもあったのが正直に言って辛い」
「嫌、貴女の所為では無い。魔王とやらが貴女に罠を張ったのがそもそもの原因。それが無ければ、私がこの地に呼ばれる事も無かった。気にしなくて良いって」
「其方と言う奴は……ただの阿呆の子では無いの。……なぁ、其方。儂を美女と言っておったの?」
「な、何を藪から棒に突然……」
「其方さえ良ければだ――儂を娶らんか?」
「――はぁ? な、何をいきなり……」
「責任は無いと其方は言ってくれるが、軽率な行動を取って、結果、其方に迷惑を掛けたのは事実。魔王を倒す等、どれだけ難しい事かも解らぬ。罪滅ぼしに儂も側で手伝いたい」
「だったら仲間で良いのでは? 夫婦って言うのは……些か間違ってはいないか?」
「良いのだ――儂は其方に命を救われた身である故、生殺与奪の権利も其方に在ると思うておる。それにの、独りにも飽きた。――どうか頼まれては貰えぬだろうか?」
「生殺与奪って……。貴女程の美女からの申し出を断れる勇者は存在するのか? 動機が不明瞭だが、貴女の美しさの前では些細な事」
「――おぉ、では良いのだな?」
「済まない――私の方からもお願いする。この異世界で出逢った縁を大切にしたい。私の妻となって、支え導いて欲しい……」
「其方――では、無いな。主人と呼ぶとしよう」
「主人か……では私は、貴女の事を親しみを込めて――紅と呼ぼう」
「それで良い。末永く宜しく頼む、主人よ」
「ああ、此方こそ――紅」
こうして思い掛けずに夫婦となった一体と一匹。
魔王を倒せば元に戻せる可能性に賭け、前途多難な人生を共に歩む事となった――。
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
当然、面食らう私。
「この世界には今、魔王と名乗る不遜な輩――ご存知の通り、今の愚王様だね~。其奴が陣取っててさ、実は世界を牛耳っちゃってる訳なのよね~。あの汚ったない空も其奴の仕業って訳なのよ」
失礼ながら、お婆さんの身形から発せられる言葉遣いとは、到底、思えない口調で、淡々と話し出した――。
「実はそこな紅がドジ踏んでね、今にも滅ぼされそうだったのよ? ――で、君を呼んだ。手下に煽らせて、誘き出された紅を助ける為にね。まんまと引っ掛かった其方の紅も悪いのよ?」
「失敬だの。儂はドジなど踏んでおらぬ。無遠慮に敵対する人は、当然、踏み散らかしてやったがな」
全く動じていない紅き竜は、蜥蜴の干物を食べながら、超越者たる目の前の人に否定を告げた。
「あ、そう――紅の助けになる様に、急いで召喚陣を組んだのがいけなかったのか、飲み過ぎて酔ってたアタシが悪かったのか――干渉されちゃったのよね~、魔王に」
不穏当な単語を含んだ言葉が聴こえた。
それを取って付けた様に、魔王の所為にしている――なんだ、此奴?
「それで――この世界に召喚される途中、君は本来の姿を完全に消失させられた。そして、魂だけが相性の良い遺体に宿っちゃったって訳~。転移させたつもりが転生になっちゃうんだもん、アタシもビックリでさ、もうね、ゲラゲラ笑っちゃったわよ」
猛烈に殺意が湧く私――。
真面目な話、今この場にて斬り殺したくなったが、今は堪える私――。
「だから~アタシもビックリって言ったでしょ? 不浄の者――生きた屍でも無いし、正しく蘇った訳でも無い。遺体の中身だけ入れ替える召喚術なんて、長く存在するアタシも聴いた事も無い。死体を腐らせ無い様に保存する術式はあるんだけどね?」
あっけらかんと続ける――言葉の抑揚と発音からも、自分の所為では無いと言っているかの様に――。
「本来なら、この世界の者は太刀打ち出来ない特殊な技能なんかも備わってる筈だけど――見るからに無さそうね。失敗、失敗」
――駄目だ。堪忍袋の尾が切れそう。
「呪いならまだ解ける見込みもあったけど――どうも魔王の呪いでも無いのよね~」
机に身を乗り出し、皺くちゃな手で私の失った左腕を見て、左肩をポンポン叩く。
――煽ってやがるのか、此奴は?
「兎に角、魔王の所為で術式が何重にも複雑に絡み合ってて、今直ぐどうこうなんてアタシにも出来ない。――可能性を一つ上げるけど、魔王を倒せば、片方の魔王の術式は消せると思うよ? 頑張って魔王を倒せば良いのよ」
どうあっても魔王の責任にしたい様で、やたら魔王を推してくる。
流石の私も此処等が限界だった――右手と眼光に殺気が篭る。
「アタシでも、どうしてこうなったかなんてビックリだって言ってんでしょうが! ――この世界に呼んでおいてなんだけど……ごめんとしか言えない」
慌てて言葉を継ぎ足して、初めて態度を神妙に改める。
「――でね、細やかなお詫びって事で、ハイ、コレ」
またしても、何処から出したのか解らない。
目線で促された机の上に――人の左腕らしき物と革袋が載っていた。
人の左腕らしき者と思った理由――どう見ても人間の物では無いから。
簡単に言うと、この異世界には存在しないであろう――機械で出来た左腕だった。
現代のロボットやアンドロイドを超える、オーバーテクノロジーと言う物に等しい。
超越者と呼ばれる此奴は、一体、何者なんだ?
「貴方なら見て解るでしょ? ちょっと変わった義手ね。でもね、ただ変わった義手では無いのよ? アタシ謹製の――この世界には存在しない、別の世界の技術で作った義手。世に出せば大混乱になる程、素晴らしく高性能な有り難い物よ?」
言ってる事は、謎で未知な至高の逸品。
しかし実際は、単なる手打ち金と見舞いの粗品程度の価値感な雑な態度で、私にそそくさと差し出してきた。
「今、脳波と繋げるから。痛覚迄は認識しないけど、基本は本モノの腕の様に動かせると思うけど――」
何も返事はしていない私を他所に勝手に話を進め、その義手を左肩に許可も無く充てがうと、耳慣れない言葉――呪文か何かを詠唱し始めた。
「これで良いわよ。動かしてみて?」
促され黙って指示に従う私。
左腕の義手が自分の腕の様に軽快に動く。
グーチョキパーなる動作も、時間差すら無く思った通りに動いた。
「――大丈夫そうね。上手く行って良かった。絡み合ってる術式に干渉されでもしたら、君、消し飛んでる所よ?」
また何か不穏当な言葉を聴いた。
正直に言おう――此奴は嫌いだ。
「良いじゃ無い、上手く行ったんだからさ! 細かい事は気にしないの! ――あと、コレとコレも渡しておくから!」
私の表情を読み取り、大慌てで別の物を用意する。
またしても机の上にいつの間にか載っている物――駄目押しの宝石って所だろうか。
「――珠玉って言う別の世界の物よ。君の思う通りに姿を変える魔導具に等しき物と思えば良いかな? それでコッチは当面の路銀――平たく言えば慰謝料ってヤツよ」
宝石の様なモノは魔導具、それと手切金か。
最後の最後に俗っぽい真似をしてくれやがる――。
「――と、言う事で受け取った以上、アタシに責任追及はしないでよね! 魔王を倒したら元に戻せるか試してあげるけど期待はしないで! ――じゃあね、頑張って! 勇者(仮)様」
あまりな物言いに、遂に怒りが浸透。
完全に怒りに身を任せた私が、問答無用で斬り捨ててやると立ち上がった瞬間――手も触れていないのに、外に放り出されてしまった私と、蛙の干物を咥えた紅き竜だった。
先程まで在った住居も、跡形も無く消え失せていた――。
「彼奴め、逃げおったわ……こうなると儂もお手上げだの。気配を辿る事も出来ん。済まぬな」
「――良いさ。原因も解ったし、左腕も付いたし。色々と聴けたし。目標みたいなのも出来たし。残念なのは……肝心な事を煙に巻いて無責任に逃げくさった、単なる役立たずだって事だな」
「其方――ある意味で、儂の所為でもあったのが正直に言って辛い」
「嫌、貴女の所為では無い。魔王とやらが貴女に罠を張ったのがそもそもの原因。それが無ければ、私がこの地に呼ばれる事も無かった。気にしなくて良いって」
「其方と言う奴は……ただの阿呆の子では無いの。……なぁ、其方。儂を美女と言っておったの?」
「な、何を藪から棒に突然……」
「其方さえ良ければだ――儂を娶らんか?」
「――はぁ? な、何をいきなり……」
「責任は無いと其方は言ってくれるが、軽率な行動を取って、結果、其方に迷惑を掛けたのは事実。魔王を倒す等、どれだけ難しい事かも解らぬ。罪滅ぼしに儂も側で手伝いたい」
「だったら仲間で良いのでは? 夫婦って言うのは……些か間違ってはいないか?」
「良いのだ――儂は其方に命を救われた身である故、生殺与奪の権利も其方に在ると思うておる。それにの、独りにも飽きた。――どうか頼まれては貰えぬだろうか?」
「生殺与奪って……。貴女程の美女からの申し出を断れる勇者は存在するのか? 動機が不明瞭だが、貴女の美しさの前では些細な事」
「――おぉ、では良いのだな?」
「済まない――私の方からもお願いする。この異世界で出逢った縁を大切にしたい。私の妻となって、支え導いて欲しい……」
「其方――では、無いな。主人と呼ぶとしよう」
「主人か……では私は、貴女の事を親しみを込めて――紅と呼ぼう」
「それで良い。末永く宜しく頼む、主人よ」
「ああ、此方こそ――紅」
こうして思い掛けずに夫婦となった一体と一匹。
魔王を倒せば元に戻せる可能性に賭け、前途多難な人生を共に歩む事となった――。
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気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
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