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第八幕。
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「其方、やはり阿呆の子であろう? 儂は好きにしろと言った筈であろう?」
「忝い。有り難く頂戴し、生涯、大切にする」
姿勢を正し、深々と頭を下げて礼を伝える私だった。
「大袈裟だのう。――さて、決まった所で食事としよう。準備も出来ておるでの?」
「何から何迄、本当に済まない」
「気にするなと言うても、其方は謝ってばかりだの?」
「ある意味で私の癖の様らしい――済まない」
「まぁ、良い。こっちだ」
そんな遣り取りを経て、紅き竜に促されつつ部屋を後にする私。
次に連れて来られた部屋は、豪華な調度品に彩られたリビングと言っても良い場所。
生活空間については、ちゃんと綺麗にしてるんだなと、変な感心を抱いてしまう私だった。
「其処の席に座るが良い。其方の好み何ぞ儂の知る所では無いのでな? 適当に用意してみたのが……どうだ、食せそうか?」
私を覗き込むかの様に、机から身を乗り出して、表情を見ようとしてくる紅き竜。
「気を遣わせて済まない――つかぬ事を尋ねるが……貴女は料理と言う言葉をご存知無いとか?」
「またそれか。知っておるに決まっておろうが。だが、儂も正直に言って得意では無いのだ」
深々と席に座り直し、呆れ気味に答える紅き竜。
「そうか。ならば食事についても私が受け持とう。――喰えぬ訳では無いが……些か見た目が辛い。私の食欲が失せてしまう」
「そうなのか? 儂は喰えれば良いのだ。贅沢は言わんよ」
「贅沢云々の話では無いのだ、紅き竜よ。蜥蜴とか蛙を丸焼き状態でそのまま出されてもな? ――見てくれ、この世界を呪うが如くの目や表情……」
用意された食事に視線を向け、載せられている材料を指して異議を唱える私。
「気にしても仕方無かろう? 世は所詮、弱肉強食なのだぞ?」
平然と受け答えする紅き竜だった。
「そうだな。――生きる為に戴くとしよう。……いただきます」
見た目は美女でも、性根はあくまでも竜。
言っても無駄かと諦めて食べる私だった。
紅き竜が用意してくれた食事と言うのが、まさかのサバイバル料理だったとは夢にも思わなかった。
味付けも無く素材感丸出し……止む無く食べれそうな果物らしきモノを中心に腹を満たしていった。
そうして、この世界に来て、初めての食事と言う行為を、絶世の美女と嗜む私だった。
食べる前に気にしていた、食べた物が腹から漏れ出すと言った心配も杞憂に終わった。
なので少しばかりではあったが、愉しく嬉しくもあった――が。
「儂はの、この世界の民からは最古の竜と呼ばれておっての。竜族の最後の生き残りでもある。民を怖がらせても良い事は無いのでな、普段から人の姿で暮しておるのだ。本来の姿と言った意味では、正直、間違いであろうな。竜の姿が正しく儂だ。――だが、先にも言ったが、人間を嫌ろうてはおらぬ故、人の姿を今は本来としておるのだ」
唐突に、自分の事を話し出した紅き竜。
そう言えばお互いの事を話そうと言っていたので、約束を守ってくれたのだろう。
「それは私に対する配慮からも、嘘では無いのが解る」
真剣に聴き、相槌を交え、思った事を嘘偽り無く返していく私だった。
「この様な形ではあるが人間――人族や亜人族とも、仲睦まじくしておったのだ。それをあの愚王は――」
「愚王? 例の女や子供を攫った件か?」
「うむ。ある日から突然、酷くなったのだ」
「ある日から? 急にか?」
「うむ。今までは人望も厚く良い王だった――それが急に、人に限らず亜人に到る迄、見目麗しい女や子供を攫って忌まわしい奴隷にしおった」
「紅き竜よ、この世界に奴隷制度は元からあるのか?」
「――哀しいが在るには在る。しかし、儂が今、指し示す奴隷と言うのはもっと哀しい。見目麗しい子供は男女関係無く、己の欲望の捌け口にしよる――口にするのも悍しい下衆な扱いであった」
「そうか。奴隷の扱いも様々だからな。――労働力としての奴隷と言うなら解らなくもない。――しかし、欲望の捌け口にするってのは胸糞の悪い話だ」
「其方もそう思ってくれるか。当然、儂も意見をしに王宮へ出向く訳だが――其方が美しいと言ってくれた容姿が裏目に出ての?」
「皆まで言わずとも解る。――貴女にしても捕らえる対象になった訳だ」
「そうだ。ま、下衆相手に遠慮は要らぬ故、返り討ちにしてやった。――のは良いのだが、直ぐに討伐隊何ぞを編成してな? 悪しき竜として攻めて来よったのだ。しかも儂の力を削ぐ、魔導具迄を持ち込んでの? そうなると流石の儂も多勢に無勢――其方が顕現した際のあの有り様だ」
「成る程。手に入らねば滅ぼすか……正に愚王の鏡だな」
「もう一つある。愚王の側近たる連中が揃いも揃って下衆ばかりになっておった。――人の気配のせぬ悪しき者に成り下がっておってな? 城下街にしても、儂の知っておる活気溢れた街では無くなっておった。あれでは、最早、死んだ街だの」
「悪しき者――俗に言う妖魔とか悪魔とか、そう言った類いの気配だったと? 詰まる所、操られたで無く――乗っ取られた?」
「定かでは無いが、賢王が愚王に急に変わるなぞ、それしかなかろう?」
「そうだな。私が呼ばれた理由、その愚王に対する切り札だったのか――もしくは愚王側の、貴女を滅ぼす為の切り札だったのか……」
「其方の事は正直、儂も解りかねる。――許せ」
「気にしないでくれ、紅き竜よ。貴女では無いが、私にしても恩義がある。貴女に出逢っていなければ――どうなっていたかも定かでは無かった。心より礼を言う」
「お互い様だの。――して、其方の世界とやらは、どんな風だったのだ?」
自分の事、この世界の事を、掻い摘んで話し終えた紅き竜は、私の事を聴きたいらしく興味深々で尋ねてきた。
「少し長くはなるが――私の元居た世界と言うのは、魔法文明も公には存在しない事になっている、科学――機械と言うのが発展した文明社会で――」
自分の事以外――現代の事はきっちり覚えていたので、掻い摘んで説明していく私。
自分は何処の誰で、どう言う人生を送って来たのか、どうしてこうなった等が、まるで解らないのは何故だろうか?
当然、此処に顕現させられる様な不思議な事態に遭遇、或いは切っ掛けになった出来事の記憶すらも持っていないのは何故?
紅き竜に説明すればする程、疑問が膨らんでいった――。
私は一体、何なのだ? 何の為に此処に来たのだ?
「――成る程の。摩訶不思議な世界よの。して、其方。今から彼奴の所に向かうが、それで良いか?」
そして、話に一区切りがついた所で、紅き竜から提案があった。
「構わない。話を聴いた限り、私としても出来ればこの状況や状態について、早く答えを知り得て対処したいのでね。願ったり叶ったりだが……向こうさんの都合は良いのか?」
「彼奴は四六時中、家に引き篭もって何ぞやっておる故、突然、邪魔しても何ら問題は無い。――善は急げだ、直ぐに出掛けるとしよう」
「そうか――私の為に……済まない」
「其方の謝り癖は何とかならんものか? 儂が責めている様で何とも……」
「済まな――了解した。善処しよう」
食事の後始末をさっさと終えて、直ぐに出掛ける準備をする。
程なく、紅き竜に彼奴と呼ばれるモノの元へと向かう事となった――。
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
「忝い。有り難く頂戴し、生涯、大切にする」
姿勢を正し、深々と頭を下げて礼を伝える私だった。
「大袈裟だのう。――さて、決まった所で食事としよう。準備も出来ておるでの?」
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「まぁ、良い。こっちだ」
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生活空間については、ちゃんと綺麗にしてるんだなと、変な感心を抱いてしまう私だった。
「其処の席に座るが良い。其方の好み何ぞ儂の知る所では無いのでな? 適当に用意してみたのが……どうだ、食せそうか?」
私を覗き込むかの様に、机から身を乗り出して、表情を見ようとしてくる紅き竜。
「気を遣わせて済まない――つかぬ事を尋ねるが……貴女は料理と言う言葉をご存知無いとか?」
「またそれか。知っておるに決まっておろうが。だが、儂も正直に言って得意では無いのだ」
深々と席に座り直し、呆れ気味に答える紅き竜。
「そうか。ならば食事についても私が受け持とう。――喰えぬ訳では無いが……些か見た目が辛い。私の食欲が失せてしまう」
「そうなのか? 儂は喰えれば良いのだ。贅沢は言わんよ」
「贅沢云々の話では無いのだ、紅き竜よ。蜥蜴とか蛙を丸焼き状態でそのまま出されてもな? ――見てくれ、この世界を呪うが如くの目や表情……」
用意された食事に視線を向け、載せられている材料を指して異議を唱える私。
「気にしても仕方無かろう? 世は所詮、弱肉強食なのだぞ?」
平然と受け答えする紅き竜だった。
「そうだな。――生きる為に戴くとしよう。……いただきます」
見た目は美女でも、性根はあくまでも竜。
言っても無駄かと諦めて食べる私だった。
紅き竜が用意してくれた食事と言うのが、まさかのサバイバル料理だったとは夢にも思わなかった。
味付けも無く素材感丸出し……止む無く食べれそうな果物らしきモノを中心に腹を満たしていった。
そうして、この世界に来て、初めての食事と言う行為を、絶世の美女と嗜む私だった。
食べる前に気にしていた、食べた物が腹から漏れ出すと言った心配も杞憂に終わった。
なので少しばかりではあったが、愉しく嬉しくもあった――が。
「儂はの、この世界の民からは最古の竜と呼ばれておっての。竜族の最後の生き残りでもある。民を怖がらせても良い事は無いのでな、普段から人の姿で暮しておるのだ。本来の姿と言った意味では、正直、間違いであろうな。竜の姿が正しく儂だ。――だが、先にも言ったが、人間を嫌ろうてはおらぬ故、人の姿を今は本来としておるのだ」
唐突に、自分の事を話し出した紅き竜。
そう言えばお互いの事を話そうと言っていたので、約束を守ってくれたのだろう。
「それは私に対する配慮からも、嘘では無いのが解る」
真剣に聴き、相槌を交え、思った事を嘘偽り無く返していく私だった。
「この様な形ではあるが人間――人族や亜人族とも、仲睦まじくしておったのだ。それをあの愚王は――」
「愚王? 例の女や子供を攫った件か?」
「うむ。ある日から突然、酷くなったのだ」
「ある日から? 急にか?」
「うむ。今までは人望も厚く良い王だった――それが急に、人に限らず亜人に到る迄、見目麗しい女や子供を攫って忌まわしい奴隷にしおった」
「紅き竜よ、この世界に奴隷制度は元からあるのか?」
「――哀しいが在るには在る。しかし、儂が今、指し示す奴隷と言うのはもっと哀しい。見目麗しい子供は男女関係無く、己の欲望の捌け口にしよる――口にするのも悍しい下衆な扱いであった」
「そうか。奴隷の扱いも様々だからな。――労働力としての奴隷と言うなら解らなくもない。――しかし、欲望の捌け口にするってのは胸糞の悪い話だ」
「其方もそう思ってくれるか。当然、儂も意見をしに王宮へ出向く訳だが――其方が美しいと言ってくれた容姿が裏目に出ての?」
「皆まで言わずとも解る。――貴女にしても捕らえる対象になった訳だ」
「そうだ。ま、下衆相手に遠慮は要らぬ故、返り討ちにしてやった。――のは良いのだが、直ぐに討伐隊何ぞを編成してな? 悪しき竜として攻めて来よったのだ。しかも儂の力を削ぐ、魔導具迄を持ち込んでの? そうなると流石の儂も多勢に無勢――其方が顕現した際のあの有り様だ」
「成る程。手に入らねば滅ぼすか……正に愚王の鏡だな」
「もう一つある。愚王の側近たる連中が揃いも揃って下衆ばかりになっておった。――人の気配のせぬ悪しき者に成り下がっておってな? 城下街にしても、儂の知っておる活気溢れた街では無くなっておった。あれでは、最早、死んだ街だの」
「悪しき者――俗に言う妖魔とか悪魔とか、そう言った類いの気配だったと? 詰まる所、操られたで無く――乗っ取られた?」
「定かでは無いが、賢王が愚王に急に変わるなぞ、それしかなかろう?」
「そうだな。私が呼ばれた理由、その愚王に対する切り札だったのか――もしくは愚王側の、貴女を滅ぼす為の切り札だったのか……」
「其方の事は正直、儂も解りかねる。――許せ」
「気にしないでくれ、紅き竜よ。貴女では無いが、私にしても恩義がある。貴女に出逢っていなければ――どうなっていたかも定かでは無かった。心より礼を言う」
「お互い様だの。――して、其方の世界とやらは、どんな風だったのだ?」
自分の事、この世界の事を、掻い摘んで話し終えた紅き竜は、私の事を聴きたいらしく興味深々で尋ねてきた。
「少し長くはなるが――私の元居た世界と言うのは、魔法文明も公には存在しない事になっている、科学――機械と言うのが発展した文明社会で――」
自分の事以外――現代の事はきっちり覚えていたので、掻い摘んで説明していく私。
自分は何処の誰で、どう言う人生を送って来たのか、どうしてこうなった等が、まるで解らないのは何故だろうか?
当然、此処に顕現させられる様な不思議な事態に遭遇、或いは切っ掛けになった出来事の記憶すらも持っていないのは何故?
紅き竜に説明すればする程、疑問が膨らんでいった――。
私は一体、何なのだ? 何の為に此処に来たのだ?
「――成る程の。摩訶不思議な世界よの。して、其方。今から彼奴の所に向かうが、それで良いか?」
そして、話に一区切りがついた所で、紅き竜から提案があった。
「構わない。話を聴いた限り、私としても出来ればこの状況や状態について、早く答えを知り得て対処したいのでね。願ったり叶ったりだが……向こうさんの都合は良いのか?」
「彼奴は四六時中、家に引き篭もって何ぞやっておる故、突然、邪魔しても何ら問題は無い。――善は急げだ、直ぐに出掛けるとしよう」
「そうか――私の為に……済まない」
「其方の謝り癖は何とかならんものか? 儂が責めている様で何とも……」
「済まな――了解した。善処しよう」
食事の後始末をさっさと終えて、直ぐに出掛ける準備をする。
程なく、紅き竜に彼奴と呼ばれるモノの元へと向かう事となった――。
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