流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第三七幕。

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「私達も村に戻ろうか、紅、黒」

『旦那様、わらわからハ、非常に申し上げ難いのですガ……』

「儂は主人のする事に肯定するだけなのだが、些か黒に同意でな?」

「どうした?」

『この子達を連れ帰る手段が御座いませン』

「――あ!」

「あ! じゃ無いわ、主人よ! 阿呆の子か? 儂もこんな大人数は乗せては翔べぬぞ! どーするのだ!」

 結局、皆が乗れる大きな馬車を用意する事になり、馬と荷馬車を買い揃える事になってしまう私だった――。

 そして、こんな事なら、奴隷商に馬車も用意してもらうんだったと今更に気付く、阿呆の子な私だった。

 クロの仲間を助け出し、奴隷商から愛玩奴隷の子供達を譲り受けた私。
 しかし、行き帰りを紅に乗って済ますつもりだった私は、当然、何も用意してはいない訳で。
 皆を連れ帰る為に馬と荷馬車も購入する。

 馬車で村に戻るには、この街から広陵地帯を越えて数日は掛かる見込み。
 当然、野宿する事にもなるのも必至。

 止む無く、野営道具に簡単な食料等も追加で買い込み、準備万端で街を後にした――。


 帰路の道中は本当に忙しなかった。


 魔物を撃退、野生動物を狩って素材や獲物を得たり。
 紅と組み手をしたり、黒に魔法の基礎を教えてもらったり。
 大所帯に目を付けてちょっかいを出してきた野盗等を、逆に追い剥ぎしてやったり。
 本当に充実し過ぎる日々を送る事となった。

 そろそろ村に着く、そんなある日――。

「何を遣っておるのだ、主人よ?」

 私が羊皮紙に何やらつづっている姿が気になったのか、興味津々で覗き込んでくる紅。

「ああ。私自身が持っている能力を纏めていた。書き出してみると、本当に摩訶不思議だよ」

 覗き込む紅の頭を撫でて、そう答えた私。
 馬車で村へと帰る道すがら、私は自身について色々と整理しながら考察していたのだった――。

 そして覗き込む紅に解説していく私。

「先ず、紅から譲り受けた竜玉の能力なのだが――予想以上の効果だよ」

 私の胸に埋め込まれている竜玉は、身体能力を強化すると言った恩恵を、永続的に付与してくれている。

 人でありながら竜と同じ固有能力を引き継ぎ、生命力と筋力や肉体強度が飛躍的に向上し、竜の身体とほぼ同義と言って良い程になったって事だ。

「次に私の右腕。謎の癒しの力については――大体、思ってた通りだよ」

 良くある回復と言った治癒治の力では無かった。
 あるべき姿に戻す――後天的に受けた怪我や病気等の異常を、無かった事にする奇跡に等しい能力だったのだ。
 怪我や病気を患っている愛玩奴隷の子供達に試みて、その結論に至った。

 部位を失った子は失った部位が元通り再構築され、目の疾患があった子は元通り見える様になった。
 後天的に受けた打撲や裂傷も、当然、何も無かったかの様に消え失せる。
 病状不明の疾患ですら、蝕まれる前の健康状態に巻き戻したかの如く無かった事にしてしまったのには、正直、驚いた。

 ただ、生物には等しく有効だったが、砕いた岩等の無機物には全く効果は無かった。
 物を直したりは出来ないと言う事も解った。

 私自身の大穴に効果の無い理由は、この世界に顕現した時点で既に大穴が開いていた所為だと結論付けた。

 あるべき姿――私の元通りの身体と言う定義は、大穴が開いている状態だと位置付けられている所為だと思う。
 元からある大穴を無かった事にしようとも、最初から大穴は開いている訳だから治らないって理屈だな。

 それと発現させる条件についても判明した。
 私が無意識下に及び、切実に想い願う事だったのだ。
 しかし、これは言うのは簡単だが、実際は簡単な様で難しい。

 この神の奇跡を行使する神官を凌ぐ、私の奇跡。
 結局はこの世界に誘われた際に、元々から授けられた私独自の能力の一つだと結論付け、そう言うものだと納得しておく事にした。

「最後に、私が速く動けた事について何だけど――これが意味不明で異常過ぎるんだよ」

 流れ行く時間の中に、ほんの僅かな時間だけ留まる事が出来る能力であると判明した。

 相手の認識を阻害、私の認識を拡張したその隙間の時間――虚数時間に私が留まり、驚異の身体能力で事を成すと言う、冗談に近い離れ技だ。

 例えるならば、死の間際に見る走馬灯の様な、僅かな時間が引き延ばされてゆっくり過ぎる感覚に近い。

 気付いた切っ掛けは、紅と黒との模擬戦。
 二人が気付いた時には私が別の場所に居るか、既に終わっていたのだ。

 その様子から、対峙する者には私が消えた様に速く動いた様に見え、私からは周りの動きが遅くなる様に見えると言った、有り得ない程に不思議な能力であると結論付けた。

 模擬戦の後、この能力について紅と黒に尋ねてみるも、質問の答えは紅の専売特許である、知らぬ。の三文字。
 黒にしても全く知らないとの事。

 風の精霊の力を借り受け、ある程度は加減速させる魔法も存在するらしいが、私程の奇想天外な特殊過ぎる能力は前例も無いそうだ。
 どうやらこれも、元から私に授けられた独自の固有能力の一つとみて、ほぼ間違いは無い。

「――と言う感じ。素直にそう理解しておくよ」

「こうして見ると摩訶不思議と言うか、冗談みたいだの?」

「まぁ、私の身体自体が既に冗談な状態だ。余り驚きはしないよ。それにちゃんと把握して無いと、いざと言う時に困るから」

 村に帰る迄の数日間、紅と黒にも協力してもらい、自身の身体について検証してみて得た答えがこれ等だった――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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