19 / 53
第一九幕。
しおりを挟む
どのくらい潜ったか解らないが、明らかに場違いな場所に漸く辿り着く――。
入口から中を覗き込み、一帯の様子を隈なく見ておく事にした。
其処は、かなり広めの空間と言うか部屋だった。
人工の石壁と解る作りに、魔導具と思しき照明器具が幾つも取り付けられ、部屋を明るく照らし出していた。
最奥には例の女神像が鎮座し、私との間に槍と盾を持った甲冑姿の巨大な石像が、背後の女神像を守護するが如く配置されていた。
誰がどう見ても最終試練の間に等しい場所――。
「最終試練――この石像と戦わされる羽目になるんだろうな」
そう呟き足を踏み入れた途端、肯定するかの如く目の前の石像が淡く輝き、ゆっくりと動き出した――。
「倒せば良さそうだが――些か大き過ぎやしないか? 紅よりは遥かに小さいけど……」
いつ動かれても対処可能な様に、右腰に提げている宝剣に左手を添えて独り言ちりながらも、動く石像に向かってゆっくりと詰め寄っていく私。
試練の間の最奥にて、最終試練と思しき巨大な動く石像と対峙している私だった――。
対峙している中世の甲冑姿の石像は、サイクロプスの様な一つ眼で、身の丈もある巨大な槍と盾を携えていた。
槍とは言ったが、中世の甲冑姿も伊達では無いらしく、騎乗した上で突進力を載せて穿つ槍――つまり、ランスを所持している。
盾にしても、騎乗時において身体全体が覆える程の広範囲型。
あの質量で真面に穿たれたら、私はただでは済まないし、私の間合いで盾を突破するのは容易では無いだろう。
馬に乗っていないのが、せめてもの救いだな。
私を見据える一つ眼が赤く光り、私の動きを追う様に忙しなく動いていたが、いきなり襲ってくる気配は無い。
そして、一つ眼が明るく輝くと、脚を揃えて直立不動の姿勢から、礼を尽くした会釈をした。
その後、槍を水平に構え盾を翳し、戦闘体勢に移行した石像。
「流石に試験官って感じだな。礼儀正しい」
私も敬意を払って会釈を返した後、宝剣を真一文字に抜き放ち、盾を正面に翳して石像に応えた。
そして――最終試練が開始された。
巨大な石像とは思え無い滑らかな動きを見せ、唸り声に雄叫びや咆哮も無く、身の丈もある巨大な槍を大きく振り被り、私を殴り付ける様に突き下ろしてきた!
「――試してみるか!」
私の身長の三倍以上はある石像から穿たれる槍は、二、三階上から突き落とされる様なものだ。
だが、私には思う所があって、その槍の一撃を右手に構える盾のみで、あえて受け止めてみる。
金属が打つかり合う独特の甲高い音を轟かせ、火花を散らす石像の槍と私の盾だった。
「――やはり、私の盾も宝剣に勝るとも劣らない性能の様だな!」
これ程の高さから勢い良く振り落とされ穿たれれば、本来の衝撃は半端無く凄まじい筈。
だが、難なく右手の盾のみで、潰されず、貫かれず、吹き飛ばされもせず、その場で簡単に受け止めてくれた盾。
実際、私の予想通りで、堪えると言った必要すら無かった。
但し、防御し支える私の足が踏んでいる床は衝撃に耐えられずに大きく沈み込んだ。
更に足元周辺の床が捲れて吹き飛んでしまった。
その有り様が、今の一撃がどれ程の衝撃だったかを明確に物語っていた。
「これを受け止めれる私も、大概に規格外だと思うよ――なっ!」
受け止め切った盾でそのまま押し返し、槍諸共、石像を弾き飛ばしてやる私!
槍が弾かれて、反り返る石像!
だが、反り返る慣性をも活かし、身を捻って反動を付けた横回転から、後ろ手の盾殴りが私に放たれる!
「――くっ!」
左手の宝剣をすかさず逆手持ちに切り替え、床に突き刺して威力を剣の刃に沿って逃がす様に受け流す私!
盾殴りの攻撃角度を宝剣で調整し、力を逃して逸らしてやったのだ!
私の目算通り、盾殴りが刃を滑り均衡を失った石像は、足が縺れてひっくり返ってしまう!
「流石だな。鍛治師が舌を巻く程の宝剣ってのは伊達では無いらしい。斬って良し、防いで良し。――素晴らしい」
凄まじい重量が載った盾殴りだったと言うに、鍛治師の言っていた通り、刃こぼれは疎か折れる気配すら全く無いときた。
床に両手をついてゆっくり起き上がる石像は、槍と盾を構え直して再び私へと攻撃を見舞ってくる。
丸太程もある巨大な槍を高速かつ連続で突き出す石像!
文字通りの石の様な物で構成されるから、石像に違いは無いので、私はそう呼んでいた。
しかし、石像の雰囲気とは真逆な動き。
まるで本当の人間、或いはゴム人形の様に、しなやかかつ軽やかに動いているのだ。
携えられる槍や盾は、穿つ、或いは防ぐ技を披露する度に、私の宝剣の如く神々しい迄の輝きを放っていた。
「最終試練を務めているだけの相手だ――なっ!」
石像から穿たれる動作の一挙手一投足を注視して、剣、或いは盾で穿たれる槍の連撃を確実に捌いて対処していく私!
最後の一突きを見舞って、槍を持つ腕が大きく伸びきった!
「此処だな!」
その隙を見逃さなかった私は、伸び切った巨大な腕の下に回り込み、左手に持つ宝剣で容赦無く斬り上げた!
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
入口から中を覗き込み、一帯の様子を隈なく見ておく事にした。
其処は、かなり広めの空間と言うか部屋だった。
人工の石壁と解る作りに、魔導具と思しき照明器具が幾つも取り付けられ、部屋を明るく照らし出していた。
最奥には例の女神像が鎮座し、私との間に槍と盾を持った甲冑姿の巨大な石像が、背後の女神像を守護するが如く配置されていた。
誰がどう見ても最終試練の間に等しい場所――。
「最終試練――この石像と戦わされる羽目になるんだろうな」
そう呟き足を踏み入れた途端、肯定するかの如く目の前の石像が淡く輝き、ゆっくりと動き出した――。
「倒せば良さそうだが――些か大き過ぎやしないか? 紅よりは遥かに小さいけど……」
いつ動かれても対処可能な様に、右腰に提げている宝剣に左手を添えて独り言ちりながらも、動く石像に向かってゆっくりと詰め寄っていく私。
試練の間の最奥にて、最終試練と思しき巨大な動く石像と対峙している私だった――。
対峙している中世の甲冑姿の石像は、サイクロプスの様な一つ眼で、身の丈もある巨大な槍と盾を携えていた。
槍とは言ったが、中世の甲冑姿も伊達では無いらしく、騎乗した上で突進力を載せて穿つ槍――つまり、ランスを所持している。
盾にしても、騎乗時において身体全体が覆える程の広範囲型。
あの質量で真面に穿たれたら、私はただでは済まないし、私の間合いで盾を突破するのは容易では無いだろう。
馬に乗っていないのが、せめてもの救いだな。
私を見据える一つ眼が赤く光り、私の動きを追う様に忙しなく動いていたが、いきなり襲ってくる気配は無い。
そして、一つ眼が明るく輝くと、脚を揃えて直立不動の姿勢から、礼を尽くした会釈をした。
その後、槍を水平に構え盾を翳し、戦闘体勢に移行した石像。
「流石に試験官って感じだな。礼儀正しい」
私も敬意を払って会釈を返した後、宝剣を真一文字に抜き放ち、盾を正面に翳して石像に応えた。
そして――最終試練が開始された。
巨大な石像とは思え無い滑らかな動きを見せ、唸り声に雄叫びや咆哮も無く、身の丈もある巨大な槍を大きく振り被り、私を殴り付ける様に突き下ろしてきた!
「――試してみるか!」
私の身長の三倍以上はある石像から穿たれる槍は、二、三階上から突き落とされる様なものだ。
だが、私には思う所があって、その槍の一撃を右手に構える盾のみで、あえて受け止めてみる。
金属が打つかり合う独特の甲高い音を轟かせ、火花を散らす石像の槍と私の盾だった。
「――やはり、私の盾も宝剣に勝るとも劣らない性能の様だな!」
これ程の高さから勢い良く振り落とされ穿たれれば、本来の衝撃は半端無く凄まじい筈。
だが、難なく右手の盾のみで、潰されず、貫かれず、吹き飛ばされもせず、その場で簡単に受け止めてくれた盾。
実際、私の予想通りで、堪えると言った必要すら無かった。
但し、防御し支える私の足が踏んでいる床は衝撃に耐えられずに大きく沈み込んだ。
更に足元周辺の床が捲れて吹き飛んでしまった。
その有り様が、今の一撃がどれ程の衝撃だったかを明確に物語っていた。
「これを受け止めれる私も、大概に規格外だと思うよ――なっ!」
受け止め切った盾でそのまま押し返し、槍諸共、石像を弾き飛ばしてやる私!
槍が弾かれて、反り返る石像!
だが、反り返る慣性をも活かし、身を捻って反動を付けた横回転から、後ろ手の盾殴りが私に放たれる!
「――くっ!」
左手の宝剣をすかさず逆手持ちに切り替え、床に突き刺して威力を剣の刃に沿って逃がす様に受け流す私!
盾殴りの攻撃角度を宝剣で調整し、力を逃して逸らしてやったのだ!
私の目算通り、盾殴りが刃を滑り均衡を失った石像は、足が縺れてひっくり返ってしまう!
「流石だな。鍛治師が舌を巻く程の宝剣ってのは伊達では無いらしい。斬って良し、防いで良し。――素晴らしい」
凄まじい重量が載った盾殴りだったと言うに、鍛治師の言っていた通り、刃こぼれは疎か折れる気配すら全く無いときた。
床に両手をついてゆっくり起き上がる石像は、槍と盾を構え直して再び私へと攻撃を見舞ってくる。
丸太程もある巨大な槍を高速かつ連続で突き出す石像!
文字通りの石の様な物で構成されるから、石像に違いは無いので、私はそう呼んでいた。
しかし、石像の雰囲気とは真逆な動き。
まるで本当の人間、或いはゴム人形の様に、しなやかかつ軽やかに動いているのだ。
携えられる槍や盾は、穿つ、或いは防ぐ技を披露する度に、私の宝剣の如く神々しい迄の輝きを放っていた。
「最終試練を務めているだけの相手だ――なっ!」
石像から穿たれる動作の一挙手一投足を注視して、剣、或いは盾で穿たれる槍の連撃を確実に捌いて対処していく私!
最後の一突きを見舞って、槍を持つ腕が大きく伸びきった!
「此処だな!」
その隙を見逃さなかった私は、伸び切った巨大な腕の下に回り込み、左手に持つ宝剣で容赦無く斬り上げた!
――――――――――
気になる続きはCMの後!
チャンネルは、そのまま!(笑)
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。
無言で睨む夫だが、心の中は──。
【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】
4万文字ぐらいの中編になります。
※小説なろう、エブリスタに記載してます
ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww
刺狼(しろ)
ファンタジー
ニートの主人公は一回50万の報酬を貰えるという治験に参加し、マッドサイエンティストの手によってサイボーグにされてしまう。
さらに、その彼に言われるがまま謎の少女へ自らの血を与えると、突然魔法陣が現れ……。
という感じの話です。
草生やしたりアニメ・ゲーム・特撮ネタなど扱います。フリーダムに書き連ねていきます。
小説の書き方あんまり分かってません。
表紙はフリー素材とカスタムキャスト様で作りました。暇つぶしになれば幸いです。
異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~
ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ
以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ
唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活
かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる