流行りの異世界――転生先が修羅場で阿鼻叫喚だった件について説明と謝罪を求めたい。

されど電波おやぢは妄想を騙る

文字の大きさ
上 下
9 / 53

第九幕。

しおりを挟む
 山を一つ越えた先にある森の中に、彼奴あやつと呼ばれる者はいると言う――。

 徒歩で行くには遠く、馬も馬車も手元には無い。
 在った所で、私に乗馬なんて出来るとは思えないし、馬車にしてもきっと操れないと思う。
 当然、紅き竜に乗って飛んで行く事になる訳で。
 竜に乗って飛ぶ等、現代では有り得ないのでね、二度目とは言え、しがみ付くので精一杯だった。
 少し怖くて、若干、涙目になっているってのは内緒だ。

 必死に縋り付いて耐えていると、長閑のどかな森の一角に、突如、見えてきた広い草原。
 その中央付近に舞い降りた紅き竜だった。

 例の如く、私が降りやすい様にと頭を下げて、翼をスロープにしてくれる。
 私を降ろした後で、美女の姿に戻った。

「彼奴はでの。この世界のことわりに縛られておらぬ存在。儂にしても詳しくは知らぬ。ただ、この世界においても高次存在には違い無い。――簡単に言えば、神に等しい存在と言う事だ。儂は神何ぞは信じておらぬ故、彼奴の事は別称で、世捨人ひきこもりと呼んでおるのだがな?」

 これから会う事になる人物らしき者について、軽く教えてくれた紅き竜。

「超越者――。神――。世捨人――」

 高次存在については知っている。
 現代においても、神と呼ばれる存在に等しい。
 しかし、何故その様な者に、紅き竜は気軽に会えるのか?
 そして、その様な事を何故に知り得ているのか?
 紅き竜とは一体、何者なのだろうかと疑問に思ってしまう私。

「天上天下唯我独尊に天真爛漫と、理解し難い良く解らぬ性根をしておる故、常識も何もかもが通用せぬ。――場合によっては会話すら成り立たぬでの? 妙な事をしくさっても、あまり驚くで無いぞ?」

「了解した。――しかし、貴女とはどう言った由縁で――」

 紅き竜に、知り合った経緯を尋ねようと口にするも無視された。
 それ程迄に一心不乱に、聴き取れない妙な綴りの言葉――唄を空に向かって奏でていた。
 すると、今迄、何も無かった場所に、突如、現れた住居――こじんまりとした、喩えると煉瓦レンガ造りの様な家だった。

 そして扉がゆっくりと開け放たれ、出迎えてくれた、紅き竜が彼奴と呼ぶ者――。

「早かったわね、アカ

 扉の取手を握るしわくちゃな手に顔、やや腰が曲がり杖を突いた姿勢は、誰がどう見ても大概なお年を召したお婆さんに他ならなかった――。

「その様子だと来るのが解っておったようだの」

「まぁ~ねぇ~♪ そっちの方もビックリしないでよ」

「――済まない。つい唖然としてしまっていた」

「兎に角、中へどうぞ~」

「――相変わらずな態度だの」

「失礼、お邪魔する」

 玄関を潜り、贅沢とも質素とも言えない、妙な部屋に案内される私。
 壁と言う壁には、見た事も無い図柄や文字が描かれており、妙な匂いが立ち込めていた――。

 一言で言うなら、香水か薬品が混じり合った匂い。
 良い香りのする香水が混じり合うと、元々の良い香りを台無しにしてしまうアレだ。
 凄いキツい匂いが私の鼻を刺激して止まないが、気分を害されても良く無いので、素の表情を必死に保って我慢する。
 その部屋にあるソファーに対面で腰掛ける私。

「お茶菓子もあるから。良かったら食べてね」

 何処から出したのか解らないが、ソファーに挟まれた机の上に、お茶とお菓子が用意された。

「気が効くの。遠慮無く戴こう」

 紅き竜はさも当然の如く手を出すが、私は――。

「――お気遣い無く」

 と、言って拒否しておく。

 匂いに充てられて気分が優れないのもあるが、お菓子とは名ばかりの下手物ゲテモノ――蜥蜴と蛙の干物だったからだ。

 なんの嫌がらせか……。

 この世界の食べ物は全てこんな感じなんだろうか……先が思い遣られる。

「お忙しい中、時間を割いて頂き申し訳ありません。早速ですが――」

 此処に居るのが辛いので、早々に立ち去ろうと、挨拶も端折って本題を口にする私。

「貴方が聴きたい事――アタシが君をこの世界に誘った張本人だよ。でもね、失敗しちゃったんだな~」

 それを遮って、とんでもない事実を悪びれる事も無く真顔で飄々ひょうひょうと吐かした――。



 ――――――――――
 気になる続きはCMの後!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

白い結婚三年目。つまり離縁できるまで、あと七日ですわ旦那様。

あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
異世界に転生したフランカは公爵夫人として暮らしてきたが、前世から叶えたい夢があった。パティシエールになる。その夢を叶えようと夫である王国財務総括大臣ドミニクに相談するも答えはノー。夫婦らしい交流も、信頼もない中、三年の月日が近づき──フランカは賭に出る。白い結婚三年目で離縁できる条件を満たしていると迫り、夢を叶えられないのなら離縁すると宣言。そこから公爵家一同でフランカに考え直すように動き、ドミニクと話し合いの機会を得るのだがこの夫、山のように隠し事はあった。  無言で睨む夫だが、心の中は──。 【詰んだああああああああああ! もうチェックメイトじゃないか!? 情状酌量の余地はないと!? ああ、どうにかして侍女の準備を阻まなければ! いやそれでは根本的な解決にならない! だいたいなぜ後妻? そんな者はいないのに……。ど、どどどどどうしよう。いなくなるって聞いただけで悲しい。死にたい……うう】 4万文字ぐらいの中編になります。 ※小説なろう、エブリスタに記載してます

ニートの俺がサイボーグに改造されたと思ったら異世界転移させられたンゴwwwwwwwww

刺狼(しろ)
ファンタジー
ニートの主人公は一回50万の報酬を貰えるという治験に参加し、マッドサイエンティストの手によってサイボーグにされてしまう。 さらに、その彼に言われるがまま謎の少女へ自らの血を与えると、突然魔法陣が現れ……。 という感じの話です。 草生やしたりアニメ・ゲーム・特撮ネタなど扱います。フリーダムに書き連ねていきます。 小説の書き方あんまり分かってません。 表紙はフリー素材とカスタムキャスト様で作りました。暇つぶしになれば幸いです。

異世界に来たようですが何も分かりません ~【買い物履歴】スキルでぼちぼち生活しています~

ぱつきんすきー
ファンタジー
突然「神」により異世界転移させられたワタシ 以前の記憶と知識をなくし、右も左も分からないワタシ 唯一の武器【買い物履歴】スキルを利用して異世界でぼちぼち生活 かつてオッサンだった少女による、異世界生活のおはなし

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで商売をして生計を立てていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

処理中です...