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第漆章 混沌の渦中――悪意の巣窟編。
弐佰弐拾肆話 雪国、其の弐。
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「皆、覚悟は良いな――フリーフォールに近いが……きっと、なんとかなる!」
根拠のない自信の用語で皆に告げる。
強度的には問題ない。強度は。
「ボクは気が進まないけど……仕方ないよね」
「アイも距離が解れば跳び降りるけど。マドハンドの時みたいになったらヤだし」
「あらあら。クモヨを信じなさい。壊れることはまずないでしょう。壊れることは」
「貴女……壊れなくてもアタシらが壊れるってことスルーしてない? 貴女ほど頑丈じゃないのよ?」
「全くなのよ? 鮨詰め箱詰めで乗り込むなんて、あり得ないのよ?」
やはり皆も不安そうだった。
当然だよな。地面が見えないんだからな。
実際に地面と呼べる所があるのかも不明なわけだし。
真っ逆さまに落ちてジ・エンドの可能性もあるわけだし。
「まぁ、言わんとしてることは解るが。婆ちゃん、補強のために防御膜を皆と雪車に」
クモヨの蜘蛛糸の耐久性は申し分ないが、生身の俺達に問題が残る。
なので防御膜を纏っておくわけだ。
これで死ぬことだけはない――たぶん。
「貴方……良いようにこき使ってくれるけどさ? アタシの活動エネルギーも無限じゃないのよ? ――ま、この程度ならまだ余裕あるけどさ」
ちょいと不機嫌面で文句を言う婆ちゃん。
仰る通りで御座いますが止むなし。
帰ったら敬老感謝してあげようと思う。
そういや婆ちゃんはアレを所望してたな?
「――帰ったら、例のモノを差し出すからさ! ここは気張ってよ、婆ちゃん」
馬の鼻先に人参作戦を敢行する俺。
「貴方……約束したわよ? 嘘ついたら針千本よ?」
「漢に二言はない。断腸の思いで差し出す」
「貴方……言質取ったわよ? ならアタシ、めっさ頑張ってあ・げ・る♪」
よっぽど欲しいのか、態度が一八〇度豹変した、めっさヤル気満々の超笑顔。
「パパ、例のモノって――えっち臭いヤツ?」
「お姉ちゃん! またそんな!」
「どーあってもソコに持って行くのな、未来? 良いんかそんなで?」
「あらあら」
「喧しいのよ! 遊んでないのよ! サッサと乗って降りるのよ!」
婆ちゃんが鼻歌交じりで全員とクモヨ謹製の 雪車に防御膜を施し、終わった順に颯爽――でない渋々かつ嫌々で乗り込んでいく。
この人数で乗り込むと流石に満員電車の鮨詰め状態だが、広過ぎても逆に危ないのでな? 止むなしだ。
ちなみに、クモヨだけは永遠の背中に乗って降下することになる。
下半身が大き過ぎて止むなしなのもあるが、十本の脚で完全に固定――掴まることができるからだ。
降りる際の外敵の襲撃、或いは転落救助な万一に備えての対策でもある。
しかし……婆ちゃんとクモヨが居れば、大概はクリアできるのな……俺的玩具すら要らん。
ファンタジー万歳ってところだよな、うん。納得いかんけども。
◇◇◇
「ん゛~~!」「ゴーゴー!」
ベリオな永遠の背中に乗ったクモヨの合図で遂に動き出した。
引っ張られ引き摺れる感覚のあと、いきなりの浮遊感が皆を襲う。
そして、急斜面を文字通り、落ちるように滑り降りて行く? 違うな。
正しくは揺すられ転げ回るほどの勢いで、至る所を打つけながらの大暴れで自由落下して行く、だ。
まるで安全対策がナニも施されていないジェットコースターにでも乗ってる気分。
「永遠ちゃん、もっと慎重に――って、うわっ⁉︎」
「あ痛っ! よ、予想以上に酷っ⁉︎ 酷くねっ⁉︎」
「舌を噛むから黙ってろ、未来、アイ!」
ドーム型ハウスの内部では揉みくちゃ状態。
特に双子組からは悲痛な文句が上がる。
打つからないように、各々、雪車の中で両腕両脚を必死に踏ん張り堪え凌ぐ。
「貴方……しっかり支えてなさいよ!」
「あ、案外、余裕なのよ?」
アリサと婆ちゃんは背丈が足りず、俺を吊り輪代わりにして、必死にしがみついて耐えてんだけども。
こんな状況でも、アリサと婆ちゃんに押し付けられる俺的双丘に心癒されます。
「あらあら」
そんな中、俺嫁だけは浮遊してんじゃね? って思うほど安定の姿勢でテラ余裕ときた……流石。
「「「うわ~~っ!!」」」
上上下下左右左右ABな必殺コマンド宜しく、どんだけかすら解らない距離をめっさ揺すられ打つけられながら、容赦なくガンガン落ちていく。
やはり俺如きでは永遠の情操面までも、綿密に創造することはできなかったってことだ。
結局、ベリオな外面だけが上手くいっただけだったよ。
中に乗ってるヒトを気遣う配慮何ぞは一切なし。お構いなし。
ただ単に命令を遂行する、自分本位を完璧に貫き通すだけ。
流石の俺も頭を抱えるほどに、頭痛が痛かったりだよ……。
正しく無事に降りられるのか。
俺には、最早、解らん……なるようになるだろう、うん。
―――――――――― つづく。
根拠のない自信の用語で皆に告げる。
強度的には問題ない。強度は。
「ボクは気が進まないけど……仕方ないよね」
「アイも距離が解れば跳び降りるけど。マドハンドの時みたいになったらヤだし」
「あらあら。クモヨを信じなさい。壊れることはまずないでしょう。壊れることは」
「貴女……壊れなくてもアタシらが壊れるってことスルーしてない? 貴女ほど頑丈じゃないのよ?」
「全くなのよ? 鮨詰め箱詰めで乗り込むなんて、あり得ないのよ?」
やはり皆も不安そうだった。
当然だよな。地面が見えないんだからな。
実際に地面と呼べる所があるのかも不明なわけだし。
真っ逆さまに落ちてジ・エンドの可能性もあるわけだし。
「まぁ、言わんとしてることは解るが。婆ちゃん、補強のために防御膜を皆と雪車に」
クモヨの蜘蛛糸の耐久性は申し分ないが、生身の俺達に問題が残る。
なので防御膜を纏っておくわけだ。
これで死ぬことだけはない――たぶん。
「貴方……良いようにこき使ってくれるけどさ? アタシの活動エネルギーも無限じゃないのよ? ――ま、この程度ならまだ余裕あるけどさ」
ちょいと不機嫌面で文句を言う婆ちゃん。
仰る通りで御座いますが止むなし。
帰ったら敬老感謝してあげようと思う。
そういや婆ちゃんはアレを所望してたな?
「――帰ったら、例のモノを差し出すからさ! ここは気張ってよ、婆ちゃん」
馬の鼻先に人参作戦を敢行する俺。
「貴方……約束したわよ? 嘘ついたら針千本よ?」
「漢に二言はない。断腸の思いで差し出す」
「貴方……言質取ったわよ? ならアタシ、めっさ頑張ってあ・げ・る♪」
よっぽど欲しいのか、態度が一八〇度豹変した、めっさヤル気満々の超笑顔。
「パパ、例のモノって――えっち臭いヤツ?」
「お姉ちゃん! またそんな!」
「どーあってもソコに持って行くのな、未来? 良いんかそんなで?」
「あらあら」
「喧しいのよ! 遊んでないのよ! サッサと乗って降りるのよ!」
婆ちゃんが鼻歌交じりで全員とクモヨ謹製の 雪車に防御膜を施し、終わった順に颯爽――でない渋々かつ嫌々で乗り込んでいく。
この人数で乗り込むと流石に満員電車の鮨詰め状態だが、広過ぎても逆に危ないのでな? 止むなしだ。
ちなみに、クモヨだけは永遠の背中に乗って降下することになる。
下半身が大き過ぎて止むなしなのもあるが、十本の脚で完全に固定――掴まることができるからだ。
降りる際の外敵の襲撃、或いは転落救助な万一に備えての対策でもある。
しかし……婆ちゃんとクモヨが居れば、大概はクリアできるのな……俺的玩具すら要らん。
ファンタジー万歳ってところだよな、うん。納得いかんけども。
◇◇◇
「ん゛~~!」「ゴーゴー!」
ベリオな永遠の背中に乗ったクモヨの合図で遂に動き出した。
引っ張られ引き摺れる感覚のあと、いきなりの浮遊感が皆を襲う。
そして、急斜面を文字通り、落ちるように滑り降りて行く? 違うな。
正しくは揺すられ転げ回るほどの勢いで、至る所を打つけながらの大暴れで自由落下して行く、だ。
まるで安全対策がナニも施されていないジェットコースターにでも乗ってる気分。
「永遠ちゃん、もっと慎重に――って、うわっ⁉︎」
「あ痛っ! よ、予想以上に酷っ⁉︎ 酷くねっ⁉︎」
「舌を噛むから黙ってろ、未来、アイ!」
ドーム型ハウスの内部では揉みくちゃ状態。
特に双子組からは悲痛な文句が上がる。
打つからないように、各々、雪車の中で両腕両脚を必死に踏ん張り堪え凌ぐ。
「貴方……しっかり支えてなさいよ!」
「あ、案外、余裕なのよ?」
アリサと婆ちゃんは背丈が足りず、俺を吊り輪代わりにして、必死にしがみついて耐えてんだけども。
こんな状況でも、アリサと婆ちゃんに押し付けられる俺的双丘に心癒されます。
「あらあら」
そんな中、俺嫁だけは浮遊してんじゃね? って思うほど安定の姿勢でテラ余裕ときた……流石。
「「「うわ~~っ!!」」」
上上下下左右左右ABな必殺コマンド宜しく、どんだけかすら解らない距離をめっさ揺すられ打つけられながら、容赦なくガンガン落ちていく。
やはり俺如きでは永遠の情操面までも、綿密に創造することはできなかったってことだ。
結局、ベリオな外面だけが上手くいっただけだったよ。
中に乗ってるヒトを気遣う配慮何ぞは一切なし。お構いなし。
ただ単に命令を遂行する、自分本位を完璧に貫き通すだけ。
流石の俺も頭を抱えるほどに、頭痛が痛かったりだよ……。
正しく無事に降りられるのか。
俺には、最早、解らん……なるようになるだろう、うん。
―――――――――― つづく。
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