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第捌章 混沌の元凶――ラプラス編。
弐佰参拾肆話 世界、其の参。
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ラプラスによって隔離されたこの世界。
と言うか、この空間から脱出する方法を模索して皆で検討しあうも、結局は八方塞がりに陥った。
頼みのモノリス・セカンドにしても、ラプラスに改変された所為で、機能を著しく制限されている。
お手上げだと途方に暮れかかるその時――。
「貴方……アタシをお忘れでないかい?」
いつもの巫山戯た態度は鳴りを潜め、何処か決意した表情を携えて話しかけてきた。
「えっと、婆ちゃん?」
「貴方……アタシは元々、何処に封印されていたかのかを思い出してみて?」
「封印って……まさか⁉︎」
「貴方……正しくは融合って言うけども。そう、ファウストであると同時に、ファーストでもあるのよ」
俺が推察したままの答えだった。
「言いたいことは解った。だけども婆ちゃん……」
「貴方……良いのよ。アタシは悠久の刻を永く流れ過ぎた。貴方にも過酷な運命を背をわせた。それを清算する時が……来たのよ」
「お婆さま……」
「貴女……あとは頼むからね」
「――承知」
「ナニをする気だよ婆ちゃんっ⁉︎」
そして――。
◇◇◇
「――なっ⁉︎」
周囲に壁はなく、見渡す限りの青い空。
和風の箪笥にパルス式の黒電話。
畳敷きの床には白いちゃぶ台。
その上には湯気の出ている湯呑みがぽつん。
そんな見覚えのある昭和時代が懐かしい和室で、唐突に座布団の上に座らされてる俺ときたからには――。
さぁ、大変だよな、うん。
「――うぉお~い、ティアっ! 大概にしとけっ! 脈絡もなく急に呼び出すってナニっ! ここはアレか? また精神世界云々とか吐かす、そんなケッタイな場所なのかっ! なぁっ!」
目の前に神妙に座っている稲妻姉さんに、そんな感じでメンチ切りつつ怒鳴ってやった。
「――質問の返答ですけれど、ここは儂の中とでも言っておきます。しっかし君は相変わらず動じな――」
最初に出逢った時のように、飄々とした態度でコピペの台詞。
「喧しいわっ! ギャグはノーサンキューだっ! ケッタイな空間に今さっきまで居て、ラプラス何ぞと相対した直後で婆ちゃんがナニかして――そこでなしてティアが唐突に干渉してくるっ⁉︎」
ちゃぶ台を思いっきりぶっ叩き、感情のままにちゃぶ台返しを披露し怒鳴り散らした。
「――も、申し訳ありません。わ、儂にしても……海よりも深い深淵の底に届くかの事情があってですね。ちょ、ちょっと落ち着いて――」
「喧しいっ! 言い訳する暇があったら、とっとと戻せやっ! 直ぐにできんつーなら頼まねーよっ! ここから飛び降りて勝手に帰るっ!」
「またまたご冗談が――ええっ⁉︎」
そう。即断即決に有言実行。
ティアの返答も待たずに本当に飛び降りてやった。
だがしかし。一瞬、目の前が真っ暗になって意識が飛ぶと、飛び降りた筈の俺は元の位置の座布団に座らされてたり。
「ホント、無茶ばかりしますよね、君はっ! 本気で飛ぶなんて想定外でしたよっ! 多次元並行世界で精神体で行方不明にでもなったら、二度と元の現世には戻れないどころか、存在自体が消失してしまうことにもなるんですよっ! ――まぁ、落ち着いて聴いて下さい。本来の君が閉じ込められている、閉鎖空間から抜け出す方法のことです」
「早よ言えっ! 婆ちゃんが心配だっ! 時間が惜しい……って、そう言やここでは時間の進み方が違うんだったな。とにかくさっさと教えろっ!」
「実は……ありません」
「――良し、そこに名折れっ! 俺の手でグチョグチョのミンチにすり潰してやんよっ!」
「た、正しくは今のままでは。ですけど」
「――チッ、そう言うことかよっ! 解ったっ! なら勝手にそうするわっ!」
「――は? 解った? 儂はナニも言ってませんけど? どうして?」
「ティア。良い加減その馬鹿っぽい口調を戻せっての。俺の知ってる世界一の美人はな、そんな口調で会話などせんのだよ。なぁ、紅? ――いいや、馬鹿嫁の半身」
「――ええっ⁉︎ なんでバレたっ⁉︎」
「俺嫁のことが解らいでかっ! つーか、纏ってる気配ってのをどんだけ隠そうが、最妃と一緒で同じくまんまなんだよっ! つっても今頃になって、ハッキリと認識できるよーになったんだけどな?」
「――威張って言うことですか、それ?」
「だから演技はもう良いからっ! さっさと口調も改めて元の姿に戻れ、最妃っ!」
するとあら不思議。
稲妻姉さんの姿がゆっくりと最妃に変わっていく。そして。
「――あらあら。流石に彼方ですね……。誓って言いますけど――」
「間違いなく俺嫁だ。おっけ。もうそれで納得した――とっとと帰るぞ」
「ええ、えっと、彼方。わ、私の用事が済んで――」
「良いから元の時間軸にさっさと戻せっ! 早よっ!」
「――し、承知しました」
再び視界が暗転し、次に目を開けると、ちゃんと元に戻っていた。
ただ俺の隣に立っている最妃は、今まで見たこともないくらいに困惑した表情だけどな?
「やっぱりか――婆ちゃん……」
婆ちゃんが半分以上溶け崩れて、そこに倒れていた。
そして俺と婆ちゃんに最妃以外の全員が、身動きを取れず固まっていた。
正しくは、時間の流れが止まっている、だが。
「虚数空間に誓約違反。俺らの為に自ら犠牲になるなよ……阿呆か……」
「貴方……やっぱり気付いていたのね? ごめんね……嘘ばかりで……元はアタシが……」
「そんな大昔のことはどうでも良い。婆ちゃんは婆ちゃん。俺はそれで良かったんだよ……」
「彼方……」
「貴方……皆からはアタシの記憶が失われるけど、どうか悲しまないで。……貴方達の側で……ずっと見守ってるから」
「婆ちゃん……」
「貴女……辛い思いをさせてごめんね」
「私は……」
「また……出逢うその時は……」
最後まで言葉を紡ぐことなく、淡い光に包まれて婆ちゃんは霧散した。
「――婆ちゃん」
その直後、止まっていた時間が元に戻り、ナニもなかったかのように動き出す――。
―――――――――― つづく。
と言うか、この空間から脱出する方法を模索して皆で検討しあうも、結局は八方塞がりに陥った。
頼みのモノリス・セカンドにしても、ラプラスに改変された所為で、機能を著しく制限されている。
お手上げだと途方に暮れかかるその時――。
「貴方……アタシをお忘れでないかい?」
いつもの巫山戯た態度は鳴りを潜め、何処か決意した表情を携えて話しかけてきた。
「えっと、婆ちゃん?」
「貴方……アタシは元々、何処に封印されていたかのかを思い出してみて?」
「封印って……まさか⁉︎」
「貴方……正しくは融合って言うけども。そう、ファウストであると同時に、ファーストでもあるのよ」
俺が推察したままの答えだった。
「言いたいことは解った。だけども婆ちゃん……」
「貴方……良いのよ。アタシは悠久の刻を永く流れ過ぎた。貴方にも過酷な運命を背をわせた。それを清算する時が……来たのよ」
「お婆さま……」
「貴女……あとは頼むからね」
「――承知」
「ナニをする気だよ婆ちゃんっ⁉︎」
そして――。
◇◇◇
「――なっ⁉︎」
周囲に壁はなく、見渡す限りの青い空。
和風の箪笥にパルス式の黒電話。
畳敷きの床には白いちゃぶ台。
その上には湯気の出ている湯呑みがぽつん。
そんな見覚えのある昭和時代が懐かしい和室で、唐突に座布団の上に座らされてる俺ときたからには――。
さぁ、大変だよな、うん。
「――うぉお~い、ティアっ! 大概にしとけっ! 脈絡もなく急に呼び出すってナニっ! ここはアレか? また精神世界云々とか吐かす、そんなケッタイな場所なのかっ! なぁっ!」
目の前に神妙に座っている稲妻姉さんに、そんな感じでメンチ切りつつ怒鳴ってやった。
「――質問の返答ですけれど、ここは儂の中とでも言っておきます。しっかし君は相変わらず動じな――」
最初に出逢った時のように、飄々とした態度でコピペの台詞。
「喧しいわっ! ギャグはノーサンキューだっ! ケッタイな空間に今さっきまで居て、ラプラス何ぞと相対した直後で婆ちゃんがナニかして――そこでなしてティアが唐突に干渉してくるっ⁉︎」
ちゃぶ台を思いっきりぶっ叩き、感情のままにちゃぶ台返しを披露し怒鳴り散らした。
「――も、申し訳ありません。わ、儂にしても……海よりも深い深淵の底に届くかの事情があってですね。ちょ、ちょっと落ち着いて――」
「喧しいっ! 言い訳する暇があったら、とっとと戻せやっ! 直ぐにできんつーなら頼まねーよっ! ここから飛び降りて勝手に帰るっ!」
「またまたご冗談が――ええっ⁉︎」
そう。即断即決に有言実行。
ティアの返答も待たずに本当に飛び降りてやった。
だがしかし。一瞬、目の前が真っ暗になって意識が飛ぶと、飛び降りた筈の俺は元の位置の座布団に座らされてたり。
「ホント、無茶ばかりしますよね、君はっ! 本気で飛ぶなんて想定外でしたよっ! 多次元並行世界で精神体で行方不明にでもなったら、二度と元の現世には戻れないどころか、存在自体が消失してしまうことにもなるんですよっ! ――まぁ、落ち着いて聴いて下さい。本来の君が閉じ込められている、閉鎖空間から抜け出す方法のことです」
「早よ言えっ! 婆ちゃんが心配だっ! 時間が惜しい……って、そう言やここでは時間の進み方が違うんだったな。とにかくさっさと教えろっ!」
「実は……ありません」
「――良し、そこに名折れっ! 俺の手でグチョグチョのミンチにすり潰してやんよっ!」
「た、正しくは今のままでは。ですけど」
「――チッ、そう言うことかよっ! 解ったっ! なら勝手にそうするわっ!」
「――は? 解った? 儂はナニも言ってませんけど? どうして?」
「ティア。良い加減その馬鹿っぽい口調を戻せっての。俺の知ってる世界一の美人はな、そんな口調で会話などせんのだよ。なぁ、紅? ――いいや、馬鹿嫁の半身」
「――ええっ⁉︎ なんでバレたっ⁉︎」
「俺嫁のことが解らいでかっ! つーか、纏ってる気配ってのをどんだけ隠そうが、最妃と一緒で同じくまんまなんだよっ! つっても今頃になって、ハッキリと認識できるよーになったんだけどな?」
「――威張って言うことですか、それ?」
「だから演技はもう良いからっ! さっさと口調も改めて元の姿に戻れ、最妃っ!」
するとあら不思議。
稲妻姉さんの姿がゆっくりと最妃に変わっていく。そして。
「――あらあら。流石に彼方ですね……。誓って言いますけど――」
「間違いなく俺嫁だ。おっけ。もうそれで納得した――とっとと帰るぞ」
「ええ、えっと、彼方。わ、私の用事が済んで――」
「良いから元の時間軸にさっさと戻せっ! 早よっ!」
「――し、承知しました」
再び視界が暗転し、次に目を開けると、ちゃんと元に戻っていた。
ただ俺の隣に立っている最妃は、今まで見たこともないくらいに困惑した表情だけどな?
「やっぱりか――婆ちゃん……」
婆ちゃんが半分以上溶け崩れて、そこに倒れていた。
そして俺と婆ちゃんに最妃以外の全員が、身動きを取れず固まっていた。
正しくは、時間の流れが止まっている、だが。
「虚数空間に誓約違反。俺らの為に自ら犠牲になるなよ……阿呆か……」
「貴方……やっぱり気付いていたのね? ごめんね……嘘ばかりで……元はアタシが……」
「そんな大昔のことはどうでも良い。婆ちゃんは婆ちゃん。俺はそれで良かったんだよ……」
「彼方……」
「貴方……皆からはアタシの記憶が失われるけど、どうか悲しまないで。……貴方達の側で……ずっと見守ってるから」
「婆ちゃん……」
「貴女……辛い思いをさせてごめんね」
「私は……」
「また……出逢うその時は……」
最後まで言葉を紡ぐことなく、淡い光に包まれて婆ちゃんは霧散した。
「――婆ちゃん」
その直後、止まっていた時間が元に戻り、ナニもなかったかのように動き出す――。
―――――――――― つづく。
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