上 下
56 / 76
第漆章 混沌の渦中――悪意の巣窟編。

弐佰拾肆話 危機、其の肆。

しおりを挟む
 気を取り直して、再び、いつも通りの隊列になって慎重に隧道を進み始める俺達。
 程なく、縦に伸びた吹き抜けの穴がある、やたらと巨大な空洞にまたしても出会すこととなる――のだが。

「――なぁ……未来にアイ。こんなこと言ってスゲー申し訳ないんだがな? 何ぞスゲー嫌な予感がすんだわ、俺」

「――へぇ~、パパもなんだ? 奇遇だね。実はボクも嫌な予感がするんだよね」

「肯定。アイもこの場所の雰囲気って言うのが、すんごい見た覚えがあるっぽい。これは……やってくるフラグに違いない」

 アイと未来に申し訳なさそうに告げると、未来とアイもどうやら俺と同じ考えに行き着いている模様。

 何故かというと、このやたらと巨大な空洞のそれこそど真ん中に、耳長美形族の女性の住まいで見た覚えのある、藁っぽい何ぞが敷き詰めた場所が見て取れたからだ。

 しかも何ぞな卵の殻っぽいモノも、其処彼処に散乱してて、周囲に何ぞかの骨までもが散乱してたりもするんだよな……。

 この様相はつまり、何ぞかの巣っぽいのな?

「しかもさ、あの煙突のように上に伸びる穴っつーかなあそこがさ、スゲー気になって仕方ないんよなぁ」

 俺の予想が正しければ、あの吹き抜けの縦穴からが飛来して来るに違いない――。

「やっぱり奇遇だね、パパ。ボクもそう思ってたとこ。大急ぎで出口を探した方が良さげ」

「肯定。今はナニも感じないけど、これまでの状況からして、絶対にレッツゴーあかんヤツが来るフラグに違いないよ」

 やっぱり、未来とアイの考えも俺と同意見の模様。

「クモヨ、疲れてるところ済まんのだが、小鬼戦で作ってた砦みたいなヤツ? あれを入口付近に大至急で作ってくれん? 最悪、そこに篭城することになるやもだから、できるだけ頑丈なヤツな?」

「ウン……イマカラ ツクルネ」

「それとな婆ちゃん。疲れてるところ本気ですまんのだが、クモヨの砦と俺達全員に防御膜を施し直して補強しておいてくれん?」

「貴方……アタシもここの雰囲気は見覚えがあるから、なんとなく理由は解ったけど……やっぱりあのゲームに出てくる場所?」

「ええ、お婆さま。――恐らくそれで合ってましてよ」

 最妃は俺に良く付き合ってくれているんで解って然りだが……なして、婆ちゃんがそんなことを知ってんのかが謎だ。

「然程に時間はないと見た! とにかく出口っつーのか? 婆ちゃんとクモヨが作業してる間に急ぎ手分けして探してみるぞ」

 やたらと広いこの空洞、周囲の内壁にしても、当然、かなりの広さになるわけで。
 更に、隠蔽されてやしないかなどを詳しく隈なく探すだけでも、相当に手間と時間が掛かってしまう。

 結局は全員で手分けして隈なく探しても、結果は同じだった。
 そうこうしている内に時間切れ。
 俺達の嫌な予感が見事に的中する事態となる――。

「――まぢかよっ⁉︎ 本当に来やがったか……」

「風圧も凄い――しかも金冠クラスにデカっ!」

「あゝ……やっぱり、フラグだったよ……」

 俺的ナイトヴィジョンを通して上に延びる吹き抜けの穴を見上げる俺と、直ぐ隣に戻って来て、同じく見上げながらに悪態を吐く未来とアイ。

 巨大な生物が羽ばたいて、ゆっくりと舞い降りてきた――それも、二匹。

 それは、象徴にして原点――俺が良く知る飛竜種の空の王者と陸の女王……それも亜種と呼ばれる、蒼と桜そのモノだった。

 俺が大好きな狩りのゲーム、モンハ◯に森丘ってフィールドがあってだな、そこの中央に位置する飛竜の巣に良く似てたんで、もしやと思っていたら案の定かよ!

「――まさかリアルなこの身で戦うとは……夢にも思ってなかったよ、ボク」

 降りてくる蒼と桜な飛竜を見やって、呆れ顔で何ぞ愚痴る未来。
 そのモノ言いとは裏腹に、すかさず臨戦体勢を整え身構える。

「――奇遇だな、未来。まさに俺もだ」

「激しく同意」

 俺やアイにしても、やっぱり呆れ顔で相槌を打ちながら、俺は俺的ライトセイバーを素早く振り抜き起動して、アイは伐採ヒートホーク改を腰から抜き放ち、未来に倣って臨戦体勢を取り身構えた。

「貴方に貴女達……ゲームとは違うのよ。真面目に対処しないと大惨事なんだからね? 力尽きて猫が運んでくれることもなければ、回復するキャンプなんてのもないのよ?」

 俺達の側にやってきて、そんな感じに注意を促しつつ、其々に防御膜を施していく婆ちゃん。

「お婆さまの仰る通りでしてよ? 彼方、扱う武器は違いますけど……立ち回りはいつも通りで良くって?」

 腰の俺的ウィップと草刈デスサイズ・ヘルを抜き放って俺の隣に立つ最妃。
 俺と遊んでいた時のような連携で攻めるかと尋ねてきたり。

「――そうだな。だが、今は紛れもない本モノと呼んで良いモノだから、どうだかな? 細部が微妙に違うのってが引っ掛かる。モンハ◯と同じ性質であれば戦い易いんだけど」

 最妃に目配せをして肯定する。
 コント的探検衣装の隠されてもいないポケットから素早く取り出した、こんなこともあろうかと作っておいた俺的ガチャポンを最妃に手渡しておく。

「「GUAGYAOH――!」」

 俺達の目の前に静かに舞い降りた蒼と桜。
 鋭い眼で俺達を睨みつけると、空洞内に響き渡るほどの咆哮を上げた!

「狩人のヒト達ってさ、よくもこんなのとガチで戦えるよね……でも、リアルな人類も舐めんじゃないわよっての!」

 とかなんとか。俺もそーは思うけどもな、未来。
 俺達は純粋に人類と呼べるモノではなくなってきたと、そろそろ気付いてくれても良いんじゃね?
 特に未来。その代表だと、そろそろ自覚してくれても良いんじゃね?

「お姉ちゃん。リアルな人類だったら太刀打ちすらできず、勿論、戦えないんだからね!」

 当然、そんな未来にNGを入れる正しいことを言ってるようにも見えるアイ。


 そもそもだな、戦う戦わないとかの問題ではないとも気付いてくれんか?


 こんなモノ――飛竜っつードラゴン何ぞは、普通、創作モノにしか存在せん空想上の生物だぞ?
 本来、リアルに戦う何ぞは絶対に有り得ないんだからな? いや、まぢで。

「実物って言って良いのかは俺の知るところでは全くないんだが、目の前に実際に存在している以上、事実として対処せざるを得ないのでな? 認めたくはねーけど。だがしかし、迫力が本気でヤバいな。未来じゃねーけども、超常に関わって生き延びた俺達を舐めんなっての! 大剣も刺突槍もねぇけども……俺的ライトセイバーの錆にしてやんよ!」

 極一部分だけを肯定しておく。

「――彼方、行きますわよ!」

 戦闘開始の合図と言わんばかりに、手渡した俺的ガチャポンを掛け声と共に投げ込んだ最妃!

 眩い閃光が周囲を染め上げる中、俺達と蒼と桜の狩るか狩られるかの壮絶な戦いが、今、幕を開けた――。




 ―――――――――― つづく。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ミイラですか? いいえ、単に包帯に巻かれた電波な微笑女かと。ちなみに、ちっぱいは仕様です。――ヤっべ。∑(゚Д゚)

されど電波おやぢは妄想を騙る
キャラ文芸
 タイトルに殆ど変わりありませんが、難しいことが何ひとつない単なるギャグ物語に生まれ変わりました(笑)  物語とは言うも。  内容はないような内容(おやぢ去ね)  サラッと読み捨てられるベリーショートスタイルで晒していきますので、ベタやメタ、おやぢギャグなネタ好きの方は宜しくお願いします。  大変、大変、大変、大変……10回言うと――そりゃ、変態だ!!!!  おあとが宜しいようで――ヤっべ。∑(゚Д゚)  ああ、物は投げないで!  危ないから! 死んじゃうから!

自分を魔王だとか仰る中二病な美少女と出会いお持ち帰りされた俺は色々と間違っちゃってるのだろうか?  ――って、何処かで聴いた表題っぽいのな?

されど電波おやぢは妄想を騙る
キャラ文芸
 下校時間になり、いそいそと身支度を整えて帰宅しようと廊下を歩く俺。  そこに気配なく湧い――ゲフンゲフン。現れて通せんぼをブチかます、学校一の超絶美少女。  そんなカースト最上位な御方とは、間違っても接点などないオタクな俺に、わけのわからないことを唐突に仰るときた。  廊下の中心で理不尽を叫ぶ美少女と俺の、現実ではあり得ない摩訶不思議な冒険が――今始まる?  否、もう帰って良いでしょうか?

御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
【改稿版】  高校時代からのとあるバイト先で、卒業と同時にそのまま社員登用されたオレ――御手洗そーぢ。  実姉の華奈子と取り巻くヒト達のお陰で、不幸な生い立ちの幼少期からは考えられない、俗に言うシンデレラ・ストーリーに乗っかってしまうこととなった今現在。  ひょんなことから現代社会では、到底、有り得ないような、摩訶不思議と言うか常識ハズレと言うかな、とっても滑稽な体験を次々とさせられることとなるわけで。  と言うかさ、次々と巻き込まれていくだけなんですけど? どーしてこーなった⁉︎  斗家と伏木家に所縁のある御手洗姉弟を中心に、摩訶不思議なモノ騙りが始まるのだった――。  ◇◇◇  ※このモノ騙りは『紛うことなき〜』のスピンオフ、或いはクロスオーバー、はたまたサブストーリー、間違って背景だけ同じのオリジナルに成るか為らざるか⁉︎  執筆してる筆者にしても現時点ではどーなっていくか、全く予想だにしていないと言う驚愕の事実。  つまり、知らない。解らない。  更に言うと、予定は未定(笑)

Tactical name: Living dead. “ Fairies never die――. ”

されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
 遠い昔の記憶なのでやや曖昧だが、その中でも鮮明に残っている光景がある。  企業が作った最先端のロボット達が織りなす、イベントショーのことだった。  まだ小学生だった頃の俺は両親に連れられて、とある博物館へと遊びに来ていた。  そこには色々な目的で作られた、当時の様々な工業機械や実験機などが、解説と一緒に展示されていた。  ラジコンや機械弄りが大好きだった俺は、見たこともない機械の物珍しさに、凄く喜んでいたのを朧げに覚えている。  その中でも人間のように二足歩行し、指や関節の各部を滑らかに動かして、コミカルなショーを演じていたロボットに、一際、興味を惹かれた。  それは目や鼻と言った特徴はない無機質さで、まるで宇宙服を着込んだ小さな人? そんな感じだった。  司会の女性が質問を投げ掛けると、人の仕草を真似て答える。  首を傾げて悩む仕草や、大袈裟に身振り手振りを加えたりと、仰々しくも滑稽に答えていた。  またノリの良い音楽に合わせて、ロボットだけにロボットダンスを披露したりもして、観客らを大いに楽しませていた。  声は声優さんがアテレコしていたのをあとから知るが、当時の俺は中に人が入ってるんじゃね? とか、本気で思っていたりもしていたくらいだ。  結局は人が別室で操作して動かす、正しくロボットに違いはなかった。  だがしかし、今現在は違う。  この僅か数十年でテクノロジーが飛躍的に進歩した現代科学。  それが生み出したロボットに変わるアンドロイドが、一般家庭や職場にも普及し、人と共に生活している時代だからだ。  外皮を覆う素材も数十年の間に切磋琢磨され、今では人間の肌の質感に近くなり、何がどうと言うわけではないが、僅かばかりの作り物臭さが残る程度。  またA.I.の発達により、より本物の人間らしい動き、表情の動きや感情表現までもを見事に再現している。  パッと見ただけでは、直ぐに人間と見分けがつかないくらい、精巧な仕上がりだ。    そんな昔のことを思い出している俺は、なんの因果か今現在、そのアンドロイドらと絶賛交戦中ってわけで――。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

【おんJ】 彡(゚)(゚)ファッ!?ワイが天下分け目の関ヶ原の戦いに!?

俊也
SF
これまた、かつて私がおーぷん2ちゃんねるに載せ、ご好評頂きました戦国架空戦記SSです。 この他、 「新訳 零戦戦記」 「総統戦記」もよろしくお願いします。

高校生とUFO

廣瀬純一
SF
UFOと遭遇した高校生の男女の体が入れ替わる話

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...