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第一夜。

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 昨今流行のソーシャルゲームがマンネリ過ぎて、遊ぶ気になれなかった俺。

 日がない一日をアニメを観たり漫画に小説を読み漁ったりして、適当に時間を潰していた。


 そして、何を間違えたのか、自分で小説を書き始めた俺!


 だが、想い描く妄想を活字に起こす作業は、実に困難を極めた……。


 どんなに書いても、文字の羅列的怪文書。
 ただの作文にも劣る――。


 そんなある日、閲覧数が本当に僅かだったけど伸びてくれた!
 僅かでも皆から認めて貰える作品が出来たと喜んだ俺!


 しかし、現実はそんなに甘くなかった――。


 評価システムの性質上、伸びたように見えただけだったのだ……。

 落胆し過ぎて、仄暗い井戸の底に居座るあの人貞◯の所まで逝くかと思った。

 やる気を失って、どうしようと呆けて天井を見つめていたら――。


 女神様が舞い降りた! 文字通りの意味の。


『なにをそんな落ち込んでいるの?』

 とは、可憐な声で俺に問う女神様――と言うか、天使。
 見た目が最近流行の幼女だったから。
 金髪碧眼で色白肌、二次元の中の人っぽいときた!

「えーと、夢? もしくは白昼夢? 或いは俺の妄想?」

 そんな推定、女神様のような天使様に、質問に質問で返す俺。

ですよ』


 殺意に変わった瞬間だった――。


 くだらない駄洒落で切り返しやがった、推定、女神様のような天使様のようにしれっと現れた、なにか。

「真面目に聴いてるんですけど?」

 ちょっとイラッとして、ムッとした顔で文句を言う。

『貴方は選ばれたのです! ――抽選で』

「なんに? どんな抽選で?」

『サンダルを宙に放り、表か裏かで占う――』

「古典的な天気予報だよね?」

『――チッ』

「なんで舌打ちするのかな?」

『貴方は選ばれたのです! ――不正な取引の元、厳選なる抽選によって!』

「不正な取引って段階で厳選ぢゃ無いから」

『チッ……ブツブツあー言えばブツブツこう言うし、ブツブツ今時のニートはブツブツコレだから全く――』

「ブツブツ言ってんのに、ルビ振って愚痴る意味はなに? 話が進まないから、要件、早よ」

『カースト最底辺を爆走し怪文書を晒し続け、うだつの上がらない危篤な貴方に、救済しに来たんですよ! 特別なある品を授けるついでに持参して来たんですよ!』

「勿体ぶらず、早よ言え」

『ムカツクわ~! まぁ、良いでしょう。私も大人、そう大人なのですから! 少々の戯言くらい平気です!』

「どこが大人だよ……ちっぱいのクセに、俺より若そうなクセに」

『失敬ですね! ちっぱいは正義! 需要もちゃんとありますぅ~! こう見えても私は――年齢の話は止めましょう』

「ウザい。要件、早よ」

『――くっ。実は……これを』

「三輪車だな?」

『良いですか? これはの三輪車です。これに乗れば貴方は生きてきた事を後悔する程にドン引きになる事――ま、乗って貰えばきっと意味が解ります!』

「オゥ~、いのぅ~、三輪車は~。――って言えってか?」

『正にそれです! ――どうです、世界が見違えたでしょう!』

「アンタを見る目が見違えたけどな! 良い歳の俺が幼児用乗用玩具で戯言を吐かす意味は?」

『――それに乗って猛走妄想すると、その妄想の通りの出来事が起こる素晴らしいノリの良い物! あのエルダーリッチな姿で著名なモモンガ何処かのアインズさん氏がボーナスをツッコンで手に入れた、所謂、ゴッズアイテムに等しく! ――あ、神々の道具って意味です』

「妄想と乗りを捩って……上手いな。誠に遺憾ながら感心してしまったわ。それにしてもだ、いきなりファンタジーだな、おい! 後、訳さなくても誰でも解るから」

! ですか!』

「――いっぺん死んで来い」

『酷っ! 何気に、酷っ!』

「――つまりアレだ。俺がこれに乗ってアンタが卑しい雌豚で、いけない大人の辱めを受ける状況を想い浮かべて猛走妄想すれば、その通りになると?」

『例えが気に入りませんが、大枠で合ってます』


 取り敢えず、やってみた。


「オラオラオラオラ! 俺の前は何人たりとも走らせねぇー!」

『そんな速度では駄目駄目、てんで駄目ですね――字面くらい理解しろっつーの、全く。阿呆はコレだから――』


 頭に来たので、取り敢えず、外でやってみた。


「オラオラオラオラ! 俺の前は何人たりとも走らせねぇー!」

 家の前の天下の横道を、良い歳をした大人な俺が、猛けり狂う勢いの全力で、ちっちょいペダルを必死に漕ぎ、字面通りに猛走妄想した!


 うん、シュールだ――。


「ママー、変なおじさんが居るよー」

「み、見ちゃ駄目です! 放っておいてあげるのがマナー。そう、マナーなのよ!」

「三輪車は道路で乗っちゃ駄目なんだよねー、ママー」

「正しくてよ、でも見なかった事にしましょう、ええ、見なかった」

 家の前を偶々通りかかった素敵親子から、心に染み入る激励を受けた――。

「……なぁ」『……気持ちは解ります』

「――ある意味では、文字通りの呪いの三輪車だな? ――で、卑しい雌豚になったか?」

『さぁ……』

「さぁって……新手の詐欺かよ! どうしてくれるんだよ! 近所の人に後ろ指されっちまったぢゃねーか!」

 俺が憤慨し怒鳴りつける頃には、既に推定、女神様のような天使様のフリをした、なにか。は消えていた。


 呪いの三輪車を、実際に残して――。


 ――――――――――
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