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File.12 SAN値ピンチ、まぢピンチ――(;゙゚'ω゚')r【後編】
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『ミエテル! ゼッタイ、ミエテル! ドーシテ……ヘンジ……シテクレナイノ!』
上履きに履き替える僕の下から覗き込み、くり抜かれ空洞となった目が明らかに見開らかれ、確信している素振りで嬉々として執拗に問うてくる少女。
愉悦に歪んだ薄ら笑いが、一層、増し増しで。
くっ……ヤっべ。メガギガテラヤバい。
未だ触れて来ないのがせめてもの救い。
目を瞑ったところで声が聴こえる。
狡猾な精神攻撃を喰らった僕は、ふらつく足取りで廊下を歩き自分の教室へと向かう。
グロキショい少女もちゃっかり憑いてくる。
歩くのではなく、すぅーっと床を滑るように。
廊下には昨日よりも更にグロさが増し増しの動物霊だの、視たら確実に病む系の影だのがウヨウヨ。
更にそれは教室に着いてもなんら変わりなく――。
黒板や天井から腐ったキショい頭や血塗れの手脚がニョキっと出ていたり、会話を交える生徒の周りをウロチョロと忙しなく飛び交うグチャグチャになった動物霊に、生徒の頭上で踏ん反り返る妙に偉そうな江戸時代だか平安時代だかの衣装を羽織ったちんちくりんな霊などなどが盛り沢山。
更には花が一輪添えてある空席にも関わらず、どなたかは存じあげないけども柔かに僕を見て薄ら笑っていらっしゃる半分透けた女生徒が、はっきりとした輪郭を残し座っていらっしゃるといった始末……。
そんな昨日以上の過酷な事実に、教室に居る生徒らは誰も気付いていないわけで――。
「こ、これはあかん。SAN値直葬一歩手前……無理、最早、無理」
何処を視ても具体的にグロキショい霊が有象無象なうえ――、
『ミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテル――』
机の前にはひたすら繰り返すさっきの少女に――、
『――フヒッ――フヒッ』
隣の空席からは嫌なプレッシャー。
僕は呼吸が覚束なくなって、胸を押さえて机に突っ伏すしかできなかった……。
予鈴が鳴り、教室のドアを開けて男性職員が入ってくる――担任の先生だ。
「あー、皆静かに。先日、痛ましい事故があったばかりだが――悲しんでばかりは居られない。天国に行けるように皆で冥福を祈り、彼女の分まで――」
皆を元気付けるように鼓舞して語る、昨日と全く同じ台詞の担任の先生。
ああ……事象改変で昨日の転校はなしにして、改めて今日にしたのか。
これくらいは僕にでも解る。
そして昨日と同じく、突っ伏してる僕を特に注視しながらの親切さで。
お気持ちは嬉しいんですけど……お話しを聴くどころではないのです――僕のことはお願いだからそっと放っておいて下さい。
「先生を見倣って元気を出して――」
憑き物が落ちた清々しい笑顔で熱弁を続けなさる担任。
死神さんが手を打ってくれたようで、背後の憑き者二人はもう居ない。
「――さて、新しいクラスの一員となる転校生を紹介する。入って来なさい」
先生が出入口に向かって呼び掛けると、一人の生徒が教室に入ってきた。
その転校生を目にするなり、クラス中の生徒が男女問わずに騒めいた!
ついでに蔓延する具体的にグロキショさ増し増しの霊な皆さまも騒めいた!
担任に促されグラマラスな身体を揺らし教壇に立つ転校生は、長い艶やかな黒髪を手で軽く掻き上げて姿勢を正すと、凛々しくも美しい表情で自己紹介を始める――。
「天翔 凛音と申します。私は父の仕事の都合で――」
微風に揺られる風鈴の涼しげな音色のように、優しくも透き通った美しい声で自己紹介をする。
その間に担任の先生が暗号か落書きかな汚い文字で、デカデカとその煌びやかな氏名を殴り書いていく。
『ミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテル――』
僕の机の前には、未だひたすら繰り返すさっきのグロキショい少女に――、
『――フヒッ――フヒッ』
隣の空席からは僕をガン見してのプレッシャー。
うん、ウザ過ぎる光景だ。
誠に遺憾では御座いますが、僕は自身の精神的衛生上好ましくないこの状況を打破する為に、止むなく昨日と同じく指を弾いて、クソウザいこいつらだけでも排除することにした――。
そして――。
「死神さん、エマージェンシー! 大至急、早よ!」
両手で何かの心の壁を展開して、必死に耐えるジェスチャーで呼びつけた――。
だって……触りたくないし。
戦わずして勝つのも戦略だ。
――――――――――
誰が為に僕はゆく?
それは僕のみぞ知る――。
上履きに履き替える僕の下から覗き込み、くり抜かれ空洞となった目が明らかに見開らかれ、確信している素振りで嬉々として執拗に問うてくる少女。
愉悦に歪んだ薄ら笑いが、一層、増し増しで。
くっ……ヤっべ。メガギガテラヤバい。
未だ触れて来ないのがせめてもの救い。
目を瞑ったところで声が聴こえる。
狡猾な精神攻撃を喰らった僕は、ふらつく足取りで廊下を歩き自分の教室へと向かう。
グロキショい少女もちゃっかり憑いてくる。
歩くのではなく、すぅーっと床を滑るように。
廊下には昨日よりも更にグロさが増し増しの動物霊だの、視たら確実に病む系の影だのがウヨウヨ。
更にそれは教室に着いてもなんら変わりなく――。
黒板や天井から腐ったキショい頭や血塗れの手脚がニョキっと出ていたり、会話を交える生徒の周りをウロチョロと忙しなく飛び交うグチャグチャになった動物霊に、生徒の頭上で踏ん反り返る妙に偉そうな江戸時代だか平安時代だかの衣装を羽織ったちんちくりんな霊などなどが盛り沢山。
更には花が一輪添えてある空席にも関わらず、どなたかは存じあげないけども柔かに僕を見て薄ら笑っていらっしゃる半分透けた女生徒が、はっきりとした輪郭を残し座っていらっしゃるといった始末……。
そんな昨日以上の過酷な事実に、教室に居る生徒らは誰も気付いていないわけで――。
「こ、これはあかん。SAN値直葬一歩手前……無理、最早、無理」
何処を視ても具体的にグロキショい霊が有象無象なうえ――、
『ミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテル――』
机の前にはひたすら繰り返すさっきの少女に――、
『――フヒッ――フヒッ』
隣の空席からは嫌なプレッシャー。
僕は呼吸が覚束なくなって、胸を押さえて机に突っ伏すしかできなかった……。
予鈴が鳴り、教室のドアを開けて男性職員が入ってくる――担任の先生だ。
「あー、皆静かに。先日、痛ましい事故があったばかりだが――悲しんでばかりは居られない。天国に行けるように皆で冥福を祈り、彼女の分まで――」
皆を元気付けるように鼓舞して語る、昨日と全く同じ台詞の担任の先生。
ああ……事象改変で昨日の転校はなしにして、改めて今日にしたのか。
これくらいは僕にでも解る。
そして昨日と同じく、突っ伏してる僕を特に注視しながらの親切さで。
お気持ちは嬉しいんですけど……お話しを聴くどころではないのです――僕のことはお願いだからそっと放っておいて下さい。
「先生を見倣って元気を出して――」
憑き物が落ちた清々しい笑顔で熱弁を続けなさる担任。
死神さんが手を打ってくれたようで、背後の憑き者二人はもう居ない。
「――さて、新しいクラスの一員となる転校生を紹介する。入って来なさい」
先生が出入口に向かって呼び掛けると、一人の生徒が教室に入ってきた。
その転校生を目にするなり、クラス中の生徒が男女問わずに騒めいた!
ついでに蔓延する具体的にグロキショさ増し増しの霊な皆さまも騒めいた!
担任に促されグラマラスな身体を揺らし教壇に立つ転校生は、長い艶やかな黒髪を手で軽く掻き上げて姿勢を正すと、凛々しくも美しい表情で自己紹介を始める――。
「天翔 凛音と申します。私は父の仕事の都合で――」
微風に揺られる風鈴の涼しげな音色のように、優しくも透き通った美しい声で自己紹介をする。
その間に担任の先生が暗号か落書きかな汚い文字で、デカデカとその煌びやかな氏名を殴り書いていく。
『ミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテルミエテル――』
僕の机の前には、未だひたすら繰り返すさっきのグロキショい少女に――、
『――フヒッ――フヒッ』
隣の空席からは僕をガン見してのプレッシャー。
うん、ウザ過ぎる光景だ。
誠に遺憾では御座いますが、僕は自身の精神的衛生上好ましくないこの状況を打破する為に、止むなく昨日と同じく指を弾いて、クソウザいこいつらだけでも排除することにした――。
そして――。
「死神さん、エマージェンシー! 大至急、早よ!」
両手で何かの心の壁を展開して、必死に耐えるジェスチャーで呼びつけた――。
だって……触りたくないし。
戦わずして勝つのも戦略だ。
――――――――――
誰が為に僕はゆく?
それは僕のみぞ知る――。
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