12 / 12
第二部 上映中
Scene 32.
しおりを挟む
「なんで俺の名前が彫られてんだよっ! 新手の嫌がらせかよっ! 何処ぞの世紀末救世主のように『お前はもう死んでいる』とか吐かしたいんかいっ!」
美杉を背に庇い、土木用スコップを構えつつ盛大にツッコミを入れておく。
「お、お兄ちゃん……これ……ゾンビ映画の撮影現場とか……そんなんじゃないよね……」
身を震わせて後ろで怯える美杉。
「当たり前だっ! ――って、大丈夫だ。俺が護るっ! だ、だからさ? 背中からいきなりブスリとか……そんな不意打ちはすんなよ、美杉」
正体がなんであれ、今は正しく美杉の筈なんだ。だったら護ってやるしかねーだろうが。
だがしかし。今までのことがトラウマ案件になってる俺は、ちょびっとだけ背後からブスリってなんないか心配になっていたり。
「しないけどっ! あれは一体なんなのよっ!」
やはり俺の背中に隠れて震えるだけの美杉は、ホラー映画さながらの不気味な動きでにじり寄ってくる得体の知れないヤツらを指差し、本当に解っていないような物言いで叫ぶ。
「実際のところ……なんなんだろうな? ちょいと数が多いが、きっとなんとかなるっ! ――美杉、墓石の後ろに隠れてじっとしてろ!」
土木用スコップを盾に見立てて構えつつ、摺り足で後ろに下がる。墓石の裏に美杉を隠し、一気に攻めに出る。
「こちとらゾンビ映画何ぞは飽きるほど観たんだよっ! 今更テメェら如きにビビる俺じゃねーわってのっ!」
にじり寄ってくる近くのヤツから順に、容赦なくぶん殴って潰していく。
そこら中にドス黒く腐った脳髄や肉片が飛び散り、体液とともに撒き散らかされていく。
「くっさっ⁉︎ 汚ねえ汁を撒き散らしてんじゃねーよっ! テメェらはこの現世では、存在自体が赦されんのだっ!」
潰されて動きの鈍ったヤツは、土木用スコップの鋭い切っ先で容赦なく突き刺し、そのまま振り抜いて切り裂いていく。
腐った内臓や腸が飛び出て、倒れていく有象無象ども。
「どんだけでも、かかってこいやーっ! オラオラオラーっ!」
美杉に近づこうとするヤツらを一体、また一体と、確実に殲滅していく。
この周囲一帯が、あっという間に凄惨な現場と化していった――。
そして。どんだけ潰したか解らないくらい潰してやった頃、ようやく終わりが見え始めるのだった――。
「はぁはぁ……あと少し」
周囲の嫌な気配が霧散し始めて、残り数体のところまで殲滅した。
周囲一帯に残骸が転がって、錆びた鉄の臭いと酸っぱい汚物、腐った肉の臭いが立ち込める中、未だ残っている数体がにじり寄ってくる。
「はぁはぁ……今回はやたらとしつこい……はぁはぁ……だが、俺は負けんっ! 絶対に、絶対にだっ!」
返り血ならぬ返り汁と腐った肉片を浴びて、ドス黒く染まって酸っぱい臭いを纏う俺は自分を鼓舞する。
実は臭いで吐きそうだったからだ。
「お兄ちゃん……」
不意に震えた声が聞こえてチラ見した美杉は、今回はちゃんと美杉のままだった。
「美杉が――美杉のままで居てくれる。ならば俺に撤退の二文字はないんだよっ!」
返り汁で滑る土木用スコップをグッと握り直して、残り数体に特攻を仕掛ける。
残り数体を一体、また一体と潰して……最後の最後でやらかした。
倒したと思っていた一体に足を噛みつかれた。
「グハァ!」「お、お兄ちゃん⁉︎」
動きを妨げられたところで、残った二体の内の一体に肩を噛まれ、最後の一体には腹に噛みつかれる。
「この……クソったれ……がぁ――」
ホラー映画でゾンビに捕食されるモブのように、二体と半分に取りつかれてしまう。
鋭い痛みと熱さが、噛まれた部位から伝わって意識が飛びそうになる。
「お、お兄ちゃんを離せーっ!」
墓石の影から美杉が飛び出し、俺に取りついた一体の頭を桶で殴りつけた。
だがしかし。美杉のか細い華奢な腕で軽い桶を振り抜き殴りつけたところで、結局は無駄に終わる。噛みつくままで、びくともしない。
「グハァ!」
噛みつかれた肩から腕を引きちぎられ、腹の肉を抉り取られて腸が飛び出る。
足首も抉り取られて満身創痍になっていく。
鋭くも熱い痛みが俺を襲い、この状況が現実であると認識させる。
「離せっ! 離せっ! 離せっ!」
ひたすら必死に桶で殴り続ける美杉。
意にも介さず俺を貪り続ける亡者共。
その時だった――。
二体の亡者がいきなり吹き飛ぶ。
更に足元の亡者も宙に舞い、直後、横に吹き飛んだのだ。
「な、何が――って、お兄ちゃんっ⁉︎ お兄ちゃんっ!」
鮮血と返り汁に塗れ、内臓や腸を曝け出して吐血し倒れる俺を、必死に抱き込む美杉。
「死んじゃうっ⁉︎ お兄ちゃんが死んじゃうっ⁉︎ こんなの駄目っ! いやいや、いや、いやぁーっ!」
腕を失い噴き出る肩の血を止めようと必死に押さえ込み、飛び出ている腸を俺に戻そうと泣き噦る美杉――。
(ははは……頭を撫でてやりたいんだが、もう腕が動かん……利き腕はなくなったし、内臓もないぞうだな――ここで俺は潰えるっぽいのな……)
走馬灯のような虚数時間に嵌った。
最後の長い時間。突拍子もないしょーもない考えばかりが頭を過ぎていく。
(なん……だ……)
そんな俺のぼんやりとした視界に映った、美杉の後ろに立ち塞がる黒い影。
それは――。
――――――――――
気になる続きはこの後、直ぐ!
チャンネルは、そのまま!(笑)
美杉を背に庇い、土木用スコップを構えつつ盛大にツッコミを入れておく。
「お、お兄ちゃん……これ……ゾンビ映画の撮影現場とか……そんなんじゃないよね……」
身を震わせて後ろで怯える美杉。
「当たり前だっ! ――って、大丈夫だ。俺が護るっ! だ、だからさ? 背中からいきなりブスリとか……そんな不意打ちはすんなよ、美杉」
正体がなんであれ、今は正しく美杉の筈なんだ。だったら護ってやるしかねーだろうが。
だがしかし。今までのことがトラウマ案件になってる俺は、ちょびっとだけ背後からブスリってなんないか心配になっていたり。
「しないけどっ! あれは一体なんなのよっ!」
やはり俺の背中に隠れて震えるだけの美杉は、ホラー映画さながらの不気味な動きでにじり寄ってくる得体の知れないヤツらを指差し、本当に解っていないような物言いで叫ぶ。
「実際のところ……なんなんだろうな? ちょいと数が多いが、きっとなんとかなるっ! ――美杉、墓石の後ろに隠れてじっとしてろ!」
土木用スコップを盾に見立てて構えつつ、摺り足で後ろに下がる。墓石の裏に美杉を隠し、一気に攻めに出る。
「こちとらゾンビ映画何ぞは飽きるほど観たんだよっ! 今更テメェら如きにビビる俺じゃねーわってのっ!」
にじり寄ってくる近くのヤツから順に、容赦なくぶん殴って潰していく。
そこら中にドス黒く腐った脳髄や肉片が飛び散り、体液とともに撒き散らかされていく。
「くっさっ⁉︎ 汚ねえ汁を撒き散らしてんじゃねーよっ! テメェらはこの現世では、存在自体が赦されんのだっ!」
潰されて動きの鈍ったヤツは、土木用スコップの鋭い切っ先で容赦なく突き刺し、そのまま振り抜いて切り裂いていく。
腐った内臓や腸が飛び出て、倒れていく有象無象ども。
「どんだけでも、かかってこいやーっ! オラオラオラーっ!」
美杉に近づこうとするヤツらを一体、また一体と、確実に殲滅していく。
この周囲一帯が、あっという間に凄惨な現場と化していった――。
そして。どんだけ潰したか解らないくらい潰してやった頃、ようやく終わりが見え始めるのだった――。
「はぁはぁ……あと少し」
周囲の嫌な気配が霧散し始めて、残り数体のところまで殲滅した。
周囲一帯に残骸が転がって、錆びた鉄の臭いと酸っぱい汚物、腐った肉の臭いが立ち込める中、未だ残っている数体がにじり寄ってくる。
「はぁはぁ……今回はやたらとしつこい……はぁはぁ……だが、俺は負けんっ! 絶対に、絶対にだっ!」
返り血ならぬ返り汁と腐った肉片を浴びて、ドス黒く染まって酸っぱい臭いを纏う俺は自分を鼓舞する。
実は臭いで吐きそうだったからだ。
「お兄ちゃん……」
不意に震えた声が聞こえてチラ見した美杉は、今回はちゃんと美杉のままだった。
「美杉が――美杉のままで居てくれる。ならば俺に撤退の二文字はないんだよっ!」
返り汁で滑る土木用スコップをグッと握り直して、残り数体に特攻を仕掛ける。
残り数体を一体、また一体と潰して……最後の最後でやらかした。
倒したと思っていた一体に足を噛みつかれた。
「グハァ!」「お、お兄ちゃん⁉︎」
動きを妨げられたところで、残った二体の内の一体に肩を噛まれ、最後の一体には腹に噛みつかれる。
「この……クソったれ……がぁ――」
ホラー映画でゾンビに捕食されるモブのように、二体と半分に取りつかれてしまう。
鋭い痛みと熱さが、噛まれた部位から伝わって意識が飛びそうになる。
「お、お兄ちゃんを離せーっ!」
墓石の影から美杉が飛び出し、俺に取りついた一体の頭を桶で殴りつけた。
だがしかし。美杉のか細い華奢な腕で軽い桶を振り抜き殴りつけたところで、結局は無駄に終わる。噛みつくままで、びくともしない。
「グハァ!」
噛みつかれた肩から腕を引きちぎられ、腹の肉を抉り取られて腸が飛び出る。
足首も抉り取られて満身創痍になっていく。
鋭くも熱い痛みが俺を襲い、この状況が現実であると認識させる。
「離せっ! 離せっ! 離せっ!」
ひたすら必死に桶で殴り続ける美杉。
意にも介さず俺を貪り続ける亡者共。
その時だった――。
二体の亡者がいきなり吹き飛ぶ。
更に足元の亡者も宙に舞い、直後、横に吹き飛んだのだ。
「な、何が――って、お兄ちゃんっ⁉︎ お兄ちゃんっ!」
鮮血と返り汁に塗れ、内臓や腸を曝け出して吐血し倒れる俺を、必死に抱き込む美杉。
「死んじゃうっ⁉︎ お兄ちゃんが死んじゃうっ⁉︎ こんなの駄目っ! いやいや、いや、いやぁーっ!」
腕を失い噴き出る肩の血を止めようと必死に押さえ込み、飛び出ている腸を俺に戻そうと泣き噦る美杉――。
(ははは……頭を撫でてやりたいんだが、もう腕が動かん……利き腕はなくなったし、内臓もないぞうだな――ここで俺は潰えるっぽいのな……)
走馬灯のような虚数時間に嵌った。
最後の長い時間。突拍子もないしょーもない考えばかりが頭を過ぎていく。
(なん……だ……)
そんな俺のぼんやりとした視界に映った、美杉の後ろに立ち塞がる黒い影。
それは――。
――――――――――
気になる続きはこの後、直ぐ!
チャンネルは、そのまま!(笑)
0
お気に入りに追加
6
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
悪夢で視る人――それは俺だけが視ることのできる、酷く残酷で凄惨な個人的ホラー映画。
されど電波おやぢは妄想を騙る
ホラー
彼女居ない歴イコール、生きた歳の俺は二十歳。
仕事が休みになると、当然、することもないので、決まって部屋に引き篭もる悪い癖を持っている。
何をしているかって言うとナニではなく、ひたすらに大好物なホラー映画を鑑賞しているってわけ。
怪奇物にスプラッター、パンデミックに猟奇物まで、ホラーと名のつく物ならなんでもバッチ来いの大概な雑食である。
めっさリアルに臓物が飛び出す映画でも、観ながら平気で食事が喉を通るって言うんだから大概だろ?
変なヤツだと後ろ指を刺されるわ、あの人とはお話ししてはダメよと付き添いの親に陰口を叩かれるくらいのな?
そんな俺が例の如くホラー映画を鑑賞中、有り得ないことが俺の身に起きた。
そこを境に聴くも悍しい体験をしていくこととなる――。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
羅刹の花嫁 〜帝都、鬼神討伐異聞〜
長月京子
ホラー
【第8回ホラー・ミステリー小説大賞にエントリー中です。楽しんでいただけたら投票で応援していただけると嬉しいです】
自分と目をあわせると、何か良くないことがおきる。
幼い頃からの不吉な体験で、葛葉はそんな不安を抱えていた。
時は明治。
異形が跋扈する帝都。
洋館では晴れやかな婚約披露が開かれていた。
侯爵令嬢と婚約するはずの可畏(かい)は、招待客である葛葉を見つけると、なぜかこう宣言する。
「私の花嫁は彼女だ」と。
幼い頃からの不吉な体験ともつながる、葛葉のもつ特別な異能。
その力を欲して、可畏(かい)は葛葉を仮初の花嫁として事件に同行させる。
文明開化により、華やかに変化した帝都。
頻出する異形がもたらす、怪事件のたどり着く先には?
人と妖、異能と異形、怪異と思惑が錯綜する和風ファンタジー。
(※絵を描くのも好きなので表紙も自作しております)
第7回ホラー・ミステリー小説大賞で奨励賞
第8回キャラ文芸大賞で奨励賞をいただきました。
ありがとうございました!
パラサイト/ブランク
羊原ユウ
ホラー
舞台は200X年の日本。寄生生物(パラサイト)という未知の存在が日常に潜む宵ヶ沼市。地元の中学校に通う少年、坂咲青はある日同じクラスメイトの黒河朱莉に夜の旧校舎に呼び出されるのだが、そこで彼を待っていたのはパラサイトに変貌した朱莉の姿だった…。
何カガ、居ル――。
されど電波おやぢは妄想を騙る
ホラー
物書きの俺が執筆に集中できるよう、静かな環境に身を置きたくて引っ越した先は、眉唾な曰くつきのボロアパート――世間一般で言うところの『事故物件』ってやつだった。
元から居た住人らは立地条件が良いにも関わらず、気味悪がって全員引っ越してしまっていた。
そう言った経緯で今現在は、俺しか住んでいない――筈なんだが。
“ 何かが、居る―― ”
だがしかし、果たして――。“ 何か ”とは……。

10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理な『ギャグ』が香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる