悪夢で視る人――それは俺だけが視ることのできる、酷く残酷で凄惨な個人的ホラー映画。【第二部・リテイク版】

されど電波おやぢは妄想を騙る

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第二部 上映中

Scene 32.

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「なんで俺の名前が彫られてんだよっ! 新手の嫌がらせかよっ! 何処ぞの世紀末救世主 北斗◯拳のケンシ◯ウのように『お前はもう死んでいる』とか吐かしたいんかいっ!」

 美杉を背に庇い、土木用スコップを構えつつ盛大にツッコミを入れておく。

「お、お兄ちゃん……これ……ゾンビ映画の撮影現場とか……そんなんじゃないよね……」

 身を震わせて後ろで怯える美杉。

「当たり前だっ! ――って、大丈夫だ。俺が護るっ! だ、だからさ? 背中からいきなりブスリとか……そんな不意打ちはすんなよ、美杉」

 正体がなんであれ、今は正しく美杉の筈なんだ。だったら護ってやるしかねーだろうが。
 だがしかし。今までのことがトラウマ案件になってる俺は、ちょびっとだけ背後からブスリってなんないか心配になっていたり。

「しないけどっ! あれは一体なんなのよっ!」

 やはり俺の背中に隠れて震えるだけの美杉は、ホラー映画さながらの不気味な動きでにじり寄ってくる得体の知れないヤツらを指差し、本当に解っていないような物言いで叫ぶ。

「実際のところ……なんなんだろうな? ちょいと数が多いが、きっとなんとかなるっ! ――美杉、墓石の後ろに隠れてじっとしてろ!」

 土木用スコップを盾に見立てて構えつつ、摺り足で後ろに下がる。墓石の裏に美杉を隠し、一気に攻めに出る。

「こちとらゾンビ映画何ぞは飽きるほど観たんだよっ! 今更テメェら如きにビビる俺じゃねーわってのっ!」

 にじり寄ってくる近くのヤツから順に、容赦なくぶん殴って潰していく。
 そこら中にドス黒く腐った脳髄や肉片が飛び散り、体液とともに撒き散らかされていく。

「くっさっ⁉︎ 汚ねえ汁を撒き散らしてんじゃねーよっ! テメェらはこの現世では、存在自体が赦されんのだっ!」

 潰されて動きの鈍ったヤツは、土木用スコップの鋭い切っ先で容赦なく突き刺し、そのまま振り抜いて切り裂いていく。
 腐った内臓や腸が飛び出て、倒れていく有象無象ども。

「どんだけでも、かかってこいやーっ! オラオラオラーっ!」

 美杉に近づこうとするヤツらを一体、また一体と、確実に殲滅していく。

 この周囲一帯が、あっという間に凄惨な現場と化していった――。


 そして。どんだけ潰したか解らないくらい潰してやった頃、ようやく終わりが見え始めるのだった――。


「はぁはぁ……あと少し」

 周囲の嫌な気配が霧散し始めて、残り数体のところまで殲滅した。
 周囲一帯に残骸が転がって、錆びた鉄の臭いと酸っぱい汚物、腐った肉の臭いが立ち込める中、未だ残っている数体がにじり寄ってくる。

「はぁはぁ……今回はやたらとしつこい……はぁはぁ……だが、俺は負けんっ! 絶対に、絶対にだっ!」

 返り血ならぬ返り汁と腐った肉片を浴びて、ドス黒く染まって酸っぱい臭いを纏う俺は自分を鼓舞する。


 実は臭いで吐きそうだったからだ。
 

「お兄ちゃん……」

 不意に震えた声が聞こえてチラ見した美杉は、だった。

「美杉が――美杉のままで居てくれる。ならば俺に撤退の二文字はないんだよっ!」

 返り汁で滑る土木用スコップをグッと握り直して、残り数体に特攻を仕掛ける。
 残り数体を一体、また一体と潰して……最後の最後でやらかした。


 倒したと思っていた一体に足を噛みつかれた。


「グハァ!」「お、お兄ちゃん⁉︎」

 動きを妨げられたところで、残った二体の内の一体に肩を噛まれ、最後の一体には腹に噛みつかれる。

「この……クソったれ……がぁ――」

 ホラー映画でゾンビに捕食されるモブのように、二体と半分に取りつかれてしまう。
 が、噛まれた部位から意識が飛びそうになる。

「お、お兄ちゃんを離せーっ!」

 墓石の影から美杉が飛び出し、俺に取りついた一体の頭を桶で殴りつけた。

 だがしかし。美杉のか細い華奢な腕で軽い桶を振り抜き殴りつけたところで、結局は無駄に終わる。噛みつくままで、びくともしない。

「グハァ!」

 噛みつかれた肩から腕を引きちぎられ、腹の肉を抉り取られて腸が飛び出る。
 足首も抉り取られて満身創痍になっていく。
 鋭くも熱い痛みが俺を襲い、この状況がさせる。

「離せっ! 離せっ! 離せっ!」

 ひたすら必死に桶で殴り続ける美杉。
 意にも介さず俺を貪り続ける亡者共。


 その時だった――。


 二体の亡者がいきなり吹き飛ぶ。
 更に足元の亡者も宙に舞い、直後、横に吹き飛んだのだ。

「な、何が――って、お兄ちゃんっ⁉︎ お兄ちゃんっ!」
 
 鮮血と返り汁に塗れ、内臓や腸を曝け出して吐血し倒れる俺を、必死に抱き込む美杉。

「死んじゃうっ⁉︎ お兄ちゃんが死んじゃうっ⁉︎ こんなの駄目っ! いやいや、いや、いやぁーっ!」

 腕を失い噴き出る肩の血を止めようと必死に押さえ込み、飛び出ている腸を俺に戻そうと泣き噦る美杉――。


(ははは……頭を撫でてやりたいんだが、もう腕が動かん……利き腕はなくなったし、内臓もないぞうだな――ここで俺は潰えるっぽいのな……)

 走馬灯のような虚数時間に嵌った。
 最後の長い時間。突拍子もないしょーもない考えばかりが頭を過ぎていく。

(なん……だ……)

 そんな俺のぼんやりとした視界に映った、美杉の後ろに立ち塞がる黒い影。



 それは――。



 ――――――――――
 気になる続きはこの後、直ぐ!
 チャンネルは、そのまま!(笑)
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