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第二部 上映中
Scene 31.
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「どんだけ話してみても、俺の知る美杉そのまんまなのな?」
助手席にしれっと座って景色を眺めている美杉に、そう言ってやった。
実際はなんであれ、事実その通りだからだ。
今までの経験から、美杉が唐突に湧いて出てくることにもすっかり慣れてしまった。
なので然程に動揺もせず、何食わぬ顔で軽快に車の運転もでき、余裕で問い掛けられるってわけだ。
「当たり前でしょ? 私がなんだって言うの?」
頬っぺたを膨らまし、不満気に言い返してくる。
「そうだな……幽霊に幻覚に激似の宇宙人? 可能性を挙げればキリがねぇよ」
「阿呆でしょ!」
「失敬――否。流石の俺でも今回はちょっと否定し辛い」
普通に考えれば、およそ有り得ない話しだ。
現実と悪夢の境目が曖昧となり、ひとつに融合してしまった……としか思えない状況に陥っている。
そんな何を阿呆な……と続く言葉がピッタリな現象に遭遇しているわけで。
悪夢が現実を侵食して、事実となっていってるのかもしれない――。
「なぁ、美杉。自分は現実に存在していると思っている――で合ってるよな?」
「そんなの当たり前じゃない? 何を言い出すかと思えば――」
文句を言ってくるのを途中で遮って――。
「俺の居る現実では、美杉は既に居ないことになってんだよ」
辛い現実を再び口にした。そして――。
「だったらだな。俺が今こうやって和やかに話している美杉は……それこそ何になるんだって話しだ」
この摩訶不思議現象を否定せず受け入れたとしたら――この美杉はなんなんだと言うか、なんになるって話しだよ。
「そりゃ、私は私でしょ? 意味不明。どーあってもお兄ちゃんは、私を亡き者とか幽霊とか変態にしたいみたいだね?」
「変態は別として、そう言うわけでもないんだがな。百歩譲って行方不明になってた美杉が帰って来たとしようか? だとしても走行中の車の俺の助手席に、いきなり乗った状態で現われるって時点で、相当におかしい話しじゃね?」
そんな美杉の頭を優しく撫でつつ、例え話しで静かに問いかける。
「私が変態で、現実には存在してないってところは不変なのね。ここに居るのに……」
「じゃあもうひとつ。美杉、いつ俺の車に乗ったか答えてみ?」
実際に触れられる、現実に存在する虚像と思しき美杉に現実を突きつける。
「それは――あれっ⁉︎ 私って……え~っと……あれれ? 気づいたら既にここに居たような? じゃあ……私はどうやってお兄ちゃんの車に……あれれ?」
百面相を披露しながら一生懸命考えだすも、俺と自分が納得できる答えには辿り着かないようだった。
「ほれみろ。記憶自体も混濁してんじゃねーの。いつもしれっと湧いて出て、しれっと会話に参加してんだからな?」
「――うん、ごめん。お兄ちゃんが私を不審がってる意味が少し解った」
「一応、実体はあるから絶対に無碍に扱ったりはせんけどな? ――俺の願望的には、そのまま豹変せず、俺の知っている可愛いらしい美杉のままで、ずっと側に居て欲しいんだけどな?」
隣に座る美杉の頭を、昔みたいに容赦なくグシャグシャと撫でてやる。
もう失いたくもない。敵対することなんて、もっと考えたくもない。
「自分でも良く解らないのに……ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかも」
元気がなくなったと言うより、何かを必死に考えている美杉。
押し黙ったまま流れる風景をぼんやりと眺めている。
「そう落ち込むな、美杉。実際はなんであろうと、俺の知ってる可愛い美杉だ」
言葉にした通り。俺の視る今の美杉は、美杉以外の何者でもないのだからな。
◇◇◇
そうしている間に、美杉を助手席に乗せたまま、無事に霊園へと辿り着く。
どうやら今回の美杉は、消えることもないようだ。
さて。ここまでのイレギュラーは、実体のある美杉が実際に俺の隣に居て、今も自分の墓参りセットを持って隣を歩くってことだけだが――。
自分の墓参りって……どんな気持ちなんだろうか?
「もう直ぐ美杉の墓が見えてくる。辛い現実を直視しても、絶対に泣くなよ?」
「うん――って言いつつも、なんとな~く自信はないかな、うん」
「墓は形式上ってだけだ。死んだって証拠は何も残ってやしない。――あくまでも居なくなった。それだけだ」
「行方不明って……生死不明よね? 意味合い的には一緒なんだけど」
そこから先、二人ともに押し黙ったまま、ゆっくりと歩いて行く――。
そして。遂に辿り着く美杉の墓。
「――ここがそうだ」
「――そう、私は本当に亡くな――違う。居なくなってたんだ……」
しょんぼりと自分の名が彫られた墓石を、ただ黙って眺めている美杉。
「俺は諦めていないからな? ここには何も埋葬されてやしないんだから」
辛そうに俯く美杉の姿に我慢できなくて、しっかりと抱き締めた。
実体はちゃんとある。
強張って微かに震える身体には体温、脈打つ鼓動、仄かに香る美杉の匂いまでもが、ちゃんと備わり伝わってくる。
現実に紛れもなく存在している感が強く、やはり悪夢の中での悪夢とは考え難い。
だとすれば、俺の見解通り――そこに考えが行き着く刹那、周囲に嫌な気配が立ち込め、濃厚な霧に包まれた。
更にそこかしこの墓から迫り出してくる、嫌な感じの亡者達。
泥土を被った衣服はボロボロ。腐った身体は骨が剥き出し。
そんなホラー映画ではお馴染みのゾンビさながらの様相で、地面からわんさか湧いてきやがった。
「日本は火葬だっつーの。欧米諸国のような土葬じゃねぇよ。ゾンビは無理があるっつーの」
「そうそう。墓から湧くならゾンビではなく骨――つまりスケルトンが正しいよね。こんなのが湧いてくるなんて非常識」
とりあえず二人してツッコミを入れつつ後退る。
「「――え?」」
その時、不意に目に入った美杉の墓石。
そこには俺の名前が新たに彫られていた――。
――――――――――
気になる続きはこの後、直ぐ!
チャンネルは、そのまま!(笑)
助手席にしれっと座って景色を眺めている美杉に、そう言ってやった。
実際はなんであれ、事実その通りだからだ。
今までの経験から、美杉が唐突に湧いて出てくることにもすっかり慣れてしまった。
なので然程に動揺もせず、何食わぬ顔で軽快に車の運転もでき、余裕で問い掛けられるってわけだ。
「当たり前でしょ? 私がなんだって言うの?」
頬っぺたを膨らまし、不満気に言い返してくる。
「そうだな……幽霊に幻覚に激似の宇宙人? 可能性を挙げればキリがねぇよ」
「阿呆でしょ!」
「失敬――否。流石の俺でも今回はちょっと否定し辛い」
普通に考えれば、およそ有り得ない話しだ。
現実と悪夢の境目が曖昧となり、ひとつに融合してしまった……としか思えない状況に陥っている。
そんな何を阿呆な……と続く言葉がピッタリな現象に遭遇しているわけで。
悪夢が現実を侵食して、事実となっていってるのかもしれない――。
「なぁ、美杉。自分は現実に存在していると思っている――で合ってるよな?」
「そんなの当たり前じゃない? 何を言い出すかと思えば――」
文句を言ってくるのを途中で遮って――。
「俺の居る現実では、美杉は既に居ないことになってんだよ」
辛い現実を再び口にした。そして――。
「だったらだな。俺が今こうやって和やかに話している美杉は……それこそ何になるんだって話しだ」
この摩訶不思議現象を否定せず受け入れたとしたら――この美杉はなんなんだと言うか、なんになるって話しだよ。
「そりゃ、私は私でしょ? 意味不明。どーあってもお兄ちゃんは、私を亡き者とか幽霊とか変態にしたいみたいだね?」
「変態は別として、そう言うわけでもないんだがな。百歩譲って行方不明になってた美杉が帰って来たとしようか? だとしても走行中の車の俺の助手席に、いきなり乗った状態で現われるって時点で、相当におかしい話しじゃね?」
そんな美杉の頭を優しく撫でつつ、例え話しで静かに問いかける。
「私が変態で、現実には存在してないってところは不変なのね。ここに居るのに……」
「じゃあもうひとつ。美杉、いつ俺の車に乗ったか答えてみ?」
実際に触れられる、現実に存在する虚像と思しき美杉に現実を突きつける。
「それは――あれっ⁉︎ 私って……え~っと……あれれ? 気づいたら既にここに居たような? じゃあ……私はどうやってお兄ちゃんの車に……あれれ?」
百面相を披露しながら一生懸命考えだすも、俺と自分が納得できる答えには辿り着かないようだった。
「ほれみろ。記憶自体も混濁してんじゃねーの。いつもしれっと湧いて出て、しれっと会話に参加してんだからな?」
「――うん、ごめん。お兄ちゃんが私を不審がってる意味が少し解った」
「一応、実体はあるから絶対に無碍に扱ったりはせんけどな? ――俺の願望的には、そのまま豹変せず、俺の知っている可愛いらしい美杉のままで、ずっと側に居て欲しいんだけどな?」
隣に座る美杉の頭を、昔みたいに容赦なくグシャグシャと撫でてやる。
もう失いたくもない。敵対することなんて、もっと考えたくもない。
「自分でも良く解らないのに……ちょっとはしゃぎ過ぎちゃったかも」
元気がなくなったと言うより、何かを必死に考えている美杉。
押し黙ったまま流れる風景をぼんやりと眺めている。
「そう落ち込むな、美杉。実際はなんであろうと、俺の知ってる可愛い美杉だ」
言葉にした通り。俺の視る今の美杉は、美杉以外の何者でもないのだからな。
◇◇◇
そうしている間に、美杉を助手席に乗せたまま、無事に霊園へと辿り着く。
どうやら今回の美杉は、消えることもないようだ。
さて。ここまでのイレギュラーは、実体のある美杉が実際に俺の隣に居て、今も自分の墓参りセットを持って隣を歩くってことだけだが――。
自分の墓参りって……どんな気持ちなんだろうか?
「もう直ぐ美杉の墓が見えてくる。辛い現実を直視しても、絶対に泣くなよ?」
「うん――って言いつつも、なんとな~く自信はないかな、うん」
「墓は形式上ってだけだ。死んだって証拠は何も残ってやしない。――あくまでも居なくなった。それだけだ」
「行方不明って……生死不明よね? 意味合い的には一緒なんだけど」
そこから先、二人ともに押し黙ったまま、ゆっくりと歩いて行く――。
そして。遂に辿り着く美杉の墓。
「――ここがそうだ」
「――そう、私は本当に亡くな――違う。居なくなってたんだ……」
しょんぼりと自分の名が彫られた墓石を、ただ黙って眺めている美杉。
「俺は諦めていないからな? ここには何も埋葬されてやしないんだから」
辛そうに俯く美杉の姿に我慢できなくて、しっかりと抱き締めた。
実体はちゃんとある。
強張って微かに震える身体には体温、脈打つ鼓動、仄かに香る美杉の匂いまでもが、ちゃんと備わり伝わってくる。
現実に紛れもなく存在している感が強く、やはり悪夢の中での悪夢とは考え難い。
だとすれば、俺の見解通り――そこに考えが行き着く刹那、周囲に嫌な気配が立ち込め、濃厚な霧に包まれた。
更にそこかしこの墓から迫り出してくる、嫌な感じの亡者達。
泥土を被った衣服はボロボロ。腐った身体は骨が剥き出し。
そんなホラー映画ではお馴染みのゾンビさながらの様相で、地面からわんさか湧いてきやがった。
「日本は火葬だっつーの。欧米諸国のような土葬じゃねぇよ。ゾンビは無理があるっつーの」
「そうそう。墓から湧くならゾンビではなく骨――つまりスケルトンが正しいよね。こんなのが湧いてくるなんて非常識」
とりあえず二人してツッコミを入れつつ後退る。
「「――え?」」
その時、不意に目に入った美杉の墓石。
そこには俺の名前が新たに彫られていた――。
――――――――――
気になる続きはこの後、直ぐ!
チャンネルは、そのまま!(笑)
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