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第二部 上映中
Scene 22.
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英国様式の真っ黒な喪服に身を包み、丸みを帯びた独特の形状をした同じく英国様式のフルトン傘を差して、優雅に佇む女性らしき人物が目に止まる。
顔を覆っている黒い面紗と、肩に乗せて差しているフルトン傘が邪魔をして、俺の位置からでは表情までを窺い知ることはできなかった。
だがしかし。何にせよ、この悪夢に等しい異質な状況下の中で遭遇しているって時点で、十中八九、普通の人ではない。
良くない何かには違いねぇわな?
ま、日本の霊園でだ、こんな格好で墓参りに来てる人を見掛けた日には、普通の状況だとしても何気にホラーなんだけども。
滑稽さよりも不気味過ぎて、当人のSAN値 がまず正常なのかを疑ってまうわ。
そんなことを思いながらも、墓標の前で静かに佇む女性を注視しつつ、油断なくただのジャンプ傘を構えておく。
一歩一歩僅かずつだが躙り寄って近づいた。そして。
「何方様だ、貴女? 正しくその子の縁者か何かさんで、至極普通の当たり前に墓参りなのか? ――もしくは、俺に何ぞ用でもあるのか?」
ある程度の距離を保ち立ち止まった俺は、意を決して喪服女に言葉を投げ掛けた――のだが。
「――!」
直後、バネが弾けるように首だけを直角に曲げ、俺の方へと顔を向けた喪服女だった。
黒い面紗が顔を覆っている所為で、やはり表情云々は窺い知れないが、声を掛けられて応じる――と言った人の動きでは断じてない。
「動きがキショイわ。質問に答えてくれる口があるっつーならさ、俺は無駄に助かるんだけどもな?」
臨戦体勢のままにジャンプ傘を突きつけて睨む。怯まずに一歩前に出つつ、嫌味に近い質問を投げ掛けてやる。
「……」
頭だけ俺に向けた姿勢はそのままに、無言のまま、フルトン傘を俺へと差し向ける喪服女。
この直後、一気に双方が動いた――。
開いたままのフルトン傘で自らの身体を覆い隠すようにして突き出し、一気に俺に迫ってきた。
咄嗟に構えていたジャンプ傘で応戦する俺は、これを受け止め弾き返す。
弾かれたフルトン傘が宙に舞った、その直後――。
「――消えた、だとっ⁉︎」
スロー再生で見ているかの如く、俺の目の前に、紙風船が揺蕩うように落ちてくるフルトン傘。
その向こう側に居る筈の喪服女が、既に居ない。
「ちっ。俺としたことが……見失ったか」
舌打ちして愚痴るも、油断せず周囲を警戒する。美杉の墓標の前で、全神経を集中し身構えていた。
未だ重々しい嫌な空気は消えていないからだ。
燦々と降る冷たい雨が、そんな俺を打ち据える。緊張感漂う張り詰めた空気が纏わりつき、雨の弾ける音だけが嫌に耳につく――。
“ ウ……シ……ロ―― ”
雨の弾ける音に混じって、消え入るような微かな声が俺に届いた。
疑問に思うよりも前に咄嗟に身を捩り、横っ飛びで離脱する。受け身で着地するなり、元居た場所を見る。
禍々しい鋭く伸びた爪を携える手刀を、喪服女が突き出していた。
「うおぉーっ!」
直ぐ様、雄叫びを上げて地面を蹴り抜く勢いで立ち上がり、喪服女との距離を一気に詰める。
胸ぐらを掴んだとほぼ同時に、ジャンプ傘で喪服女の胸を突き刺し、渾身の力で深く抉る。
突き刺された胸から赤黒い血を大量に噴き上げ、目の前の俺を返り血で染め上げる。
更に喪服女の華奢な腕を掴み上げ、後ろ手に回してうつ伏せ状態で組み伏せる。
地面へと押さえ込み、骨が折れる鈍い音と衝撃が俺に伝わる。暴れ狂う喪服女の腕を、容赦なくへし折ってやった。
ここで怯めば――俺が一巻の終わり。
「うおぉぉぉお!」
背中から組み伏せたままに、喪服女の首に腕を潜らせ、雄叫びと共に一気に締め落とす。
俺の腕が食い込み、喪服女の首の肉が圧迫され、脈動する肉の動きが腕から伝わり生々しいが、一切、手を緩めない。
首の骨が折れた鈍い音と衝撃が腕に伝わった直後、喪服女の頭が力なくぶら下がるように項垂れた。
身体を痙攣させ、穴という穴から体液を撒き散らして沈黙する喪服女――。
「はぁはぁ……これで一般人の女性とかだったら……はぁはぁ……俺は鬼畜極まる……ふぅ……猟奇殺人犯……犯罪者だっつーの、全く」
呼吸を整え、身動ぎひとつしない喪服女の上から、蹌踉めきながらも立ち退いた。
顔を拝んでやろうと、うつ伏せ状態の喪服女を仰向けにひっくり返し、変な方向に曲がっている頭を覆う黒い面紗を一気に引き剥がした。
「なん……だと⁉︎」
黒い面紗を握り締め、目を見開き呆然とする。
「クソったれ共がっ! 俺を弄遊んで何のつもりだっ! 巫山戯るのも大概にしとけっ!」
未だ雨が燦々と降り注ぐ空に向けて、腹の底から響く声で怒鳴りつけた。
俺に首を締められて、苦悶の表情で目を見開き、鼻と涎に涙を垂れ流し、惨たらしい凄惨な姿で亡骸を晒している少女は――。
美杉だった――。
「美杉を騙るんじゃねーよっ! 俺に殺させたと、罪の意識を煽っても無駄なんだよっ!」
黒い面紗を地面に叩きつけ、空を仰いで怒り心頭に雄叫ぶ。
その時、俺の土手っ腹に鈍い衝撃が伝わった。
事切れた筈の美杉が、俺の腹にジャンプ傘を突き刺してくれやがったのだった。
「痛くはねぇが……それは残酷ってもんだろ、おい――」
美杉の無邪気で屈託のない笑顔とは似ても似つかない。
残忍で卑屈な薄ら笑いを浮かべ、嘲笑い蔑むように見下した面構えだった――。
――――――――――
気になる続きはCM広告のあと直ぐっ!
チャンネルはそのままっ!(笑)
顔を覆っている黒い面紗と、肩に乗せて差しているフルトン傘が邪魔をして、俺の位置からでは表情までを窺い知ることはできなかった。
だがしかし。何にせよ、この悪夢に等しい異質な状況下の中で遭遇しているって時点で、十中八九、普通の人ではない。
良くない何かには違いねぇわな?
ま、日本の霊園でだ、こんな格好で墓参りに来てる人を見掛けた日には、普通の状況だとしても何気にホラーなんだけども。
滑稽さよりも不気味過ぎて、当人のSAN値 がまず正常なのかを疑ってまうわ。
そんなことを思いながらも、墓標の前で静かに佇む女性を注視しつつ、油断なくただのジャンプ傘を構えておく。
一歩一歩僅かずつだが躙り寄って近づいた。そして。
「何方様だ、貴女? 正しくその子の縁者か何かさんで、至極普通の当たり前に墓参りなのか? ――もしくは、俺に何ぞ用でもあるのか?」
ある程度の距離を保ち立ち止まった俺は、意を決して喪服女に言葉を投げ掛けた――のだが。
「――!」
直後、バネが弾けるように首だけを直角に曲げ、俺の方へと顔を向けた喪服女だった。
黒い面紗が顔を覆っている所為で、やはり表情云々は窺い知れないが、声を掛けられて応じる――と言った人の動きでは断じてない。
「動きがキショイわ。質問に答えてくれる口があるっつーならさ、俺は無駄に助かるんだけどもな?」
臨戦体勢のままにジャンプ傘を突きつけて睨む。怯まずに一歩前に出つつ、嫌味に近い質問を投げ掛けてやる。
「……」
頭だけ俺に向けた姿勢はそのままに、無言のまま、フルトン傘を俺へと差し向ける喪服女。
この直後、一気に双方が動いた――。
開いたままのフルトン傘で自らの身体を覆い隠すようにして突き出し、一気に俺に迫ってきた。
咄嗟に構えていたジャンプ傘で応戦する俺は、これを受け止め弾き返す。
弾かれたフルトン傘が宙に舞った、その直後――。
「――消えた、だとっ⁉︎」
スロー再生で見ているかの如く、俺の目の前に、紙風船が揺蕩うように落ちてくるフルトン傘。
その向こう側に居る筈の喪服女が、既に居ない。
「ちっ。俺としたことが……見失ったか」
舌打ちして愚痴るも、油断せず周囲を警戒する。美杉の墓標の前で、全神経を集中し身構えていた。
未だ重々しい嫌な空気は消えていないからだ。
燦々と降る冷たい雨が、そんな俺を打ち据える。緊張感漂う張り詰めた空気が纏わりつき、雨の弾ける音だけが嫌に耳につく――。
“ ウ……シ……ロ―― ”
雨の弾ける音に混じって、消え入るような微かな声が俺に届いた。
疑問に思うよりも前に咄嗟に身を捩り、横っ飛びで離脱する。受け身で着地するなり、元居た場所を見る。
禍々しい鋭く伸びた爪を携える手刀を、喪服女が突き出していた。
「うおぉーっ!」
直ぐ様、雄叫びを上げて地面を蹴り抜く勢いで立ち上がり、喪服女との距離を一気に詰める。
胸ぐらを掴んだとほぼ同時に、ジャンプ傘で喪服女の胸を突き刺し、渾身の力で深く抉る。
突き刺された胸から赤黒い血を大量に噴き上げ、目の前の俺を返り血で染め上げる。
更に喪服女の華奢な腕を掴み上げ、後ろ手に回してうつ伏せ状態で組み伏せる。
地面へと押さえ込み、骨が折れる鈍い音と衝撃が俺に伝わる。暴れ狂う喪服女の腕を、容赦なくへし折ってやった。
ここで怯めば――俺が一巻の終わり。
「うおぉぉぉお!」
背中から組み伏せたままに、喪服女の首に腕を潜らせ、雄叫びと共に一気に締め落とす。
俺の腕が食い込み、喪服女の首の肉が圧迫され、脈動する肉の動きが腕から伝わり生々しいが、一切、手を緩めない。
首の骨が折れた鈍い音と衝撃が腕に伝わった直後、喪服女の頭が力なくぶら下がるように項垂れた。
身体を痙攣させ、穴という穴から体液を撒き散らして沈黙する喪服女――。
「はぁはぁ……これで一般人の女性とかだったら……はぁはぁ……俺は鬼畜極まる……ふぅ……猟奇殺人犯……犯罪者だっつーの、全く」
呼吸を整え、身動ぎひとつしない喪服女の上から、蹌踉めきながらも立ち退いた。
顔を拝んでやろうと、うつ伏せ状態の喪服女を仰向けにひっくり返し、変な方向に曲がっている頭を覆う黒い面紗を一気に引き剥がした。
「なん……だと⁉︎」
黒い面紗を握り締め、目を見開き呆然とする。
「クソったれ共がっ! 俺を弄遊んで何のつもりだっ! 巫山戯るのも大概にしとけっ!」
未だ雨が燦々と降り注ぐ空に向けて、腹の底から響く声で怒鳴りつけた。
俺に首を締められて、苦悶の表情で目を見開き、鼻と涎に涙を垂れ流し、惨たらしい凄惨な姿で亡骸を晒している少女は――。
美杉だった――。
「美杉を騙るんじゃねーよっ! 俺に殺させたと、罪の意識を煽っても無駄なんだよっ!」
黒い面紗を地面に叩きつけ、空を仰いで怒り心頭に雄叫ぶ。
その時、俺の土手っ腹に鈍い衝撃が伝わった。
事切れた筈の美杉が、俺の腹にジャンプ傘を突き刺してくれやがったのだった。
「痛くはねぇが……それは残酷ってもんだろ、おい――」
美杉の無邪気で屈託のない笑顔とは似ても似つかない。
残忍で卑屈な薄ら笑いを浮かべ、嘲笑い蔑むように見下した面構えだった――。
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チャンネルはそのままっ!(笑)
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