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◇第二部◇
第三四話 さぁ、今度こそ移住開始! その前に。お土産も忘れずに。
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中村さんが引き篭もってる陸自の駐屯基地へと向かう、俺と愉快なゾンビたち。
移動にかかる距離は然程もない。
ただ野良ゾンビらとの遭遇など、不測の事態を警戒しつつの行軍となるので、目的地到着までには約一日半くらいかかる見通しだ。
疲れないゾンビな住人らとは言え、大人ばかりではなく子供連れが居る。加藤さんの娘さんだな。なので途中で一泊の夜営休憩を挟んで進む算段。
嵩張る大荷物を抱えての行軍なので、結局は俺が一番しんどいからだが。
あと途中でスーパーとホームセンターにも立ち寄って、中村さんとハスターへのお土産も確保し持っていくこととした。
◇◇◇
『はっはっは。流石に最新鋭の機体だな。素晴らしいの一言だよ、山田さん』
何ぞ子供みたくはしゃいでいる、存外、楽しそうな田中さんから無線入った。
武装を積んだキャリッジを引く一〇式戦車は、今回、俺ではなく田中さんが担当している。
腐っても元気溌剌な田中さんは、妖怪並みの超高齢でかつ戦争経験者である……とは言え、良く良く考えてみれば、その当時にこんな最新鋭の戦車はない。
つまり根本的に扱える筈がなく、本来なら無理な筈である。
なのに何故に扱えるのか? そう疑問に思ってたら……なんと田中さん、実はニュータイプ――ゲフンゲフン。超優秀な元兵隊さんだった。
解像度の悪い取説を軽く読んだと言うよりパラパラと捲って見ただけやゆーに、乗り込んで座席についたなり、僅か数分で完全に掌握してしまうってんだから……俺嫁の変化以上に驚いたわ、うん。冗談は腐るだけにしろし。
そんなわけで行軍中の護衛任務は田中さんに丸投げ。
手の空いた俺は、皆んなの荷物を積みに積み込んだ、某黒い猫印な宅急便御用達の8トン大型貨物トラックを担当する。
勿論、さっきまで微妙におこだった俺嫁も、極自然に隣の座席に乗り込んでいる。
『こっちの自動車も中々に凄いですよ。貧乏学生だった僕なんて、こんなの乗ったことないし』
『運転手の私にしても感動だよ。こんな高級感溢れる車に乗れるとは、夢にも思わなかった。娘も凄く喜んでいるよ』
鈴木さんに加藤さんからも、存外に嬉しそうな声で無線が入る。娘さんにしてもご機嫌で良かった。
加藤さん親子と鈴木さんについては、万一の事態に備える意味でも、貨物トラックには同乗していない。
軍用装甲車両であるマローダーに匹敵する頑丈さを兼ね備えた、レズバニ社のタンクへと三人一緒に乗り込んでもらった。
ちなみに。おっちょこちょいな鈴木さんではちょいと不安なので、加藤さんに運転手を担当してもらった。
陸自の駐屯地に最新鋭のマローダーが綺麗な状態で残っていたので、旧式たる七三式はここでお別れとなる。そのままアパートへと残していくことにした。
「まぁ、戦略兵器にしろ、家が建つほどの高級車にしろ、一般人たる俺らには、まず縁もゆかりもない代物ですからね?」
『確かにな』『本当ですよ』『全くだ』
「こんな瓦礫の山でなければ、フェラーリとかランボルギーニとかなスーパーカーに乗って、アクセルベタ踏みでかっ飛びたいですもん、俺」
『そうだな。誰に文句を言われることなく、色々と好きなことはできる。こんな世界だが……それだけは唯一の救いだの。儂にしてもウィドウ・メーカー(未亡人製造機の意)を飛ばしてみたいと思っておったところだ』
「ゾンビがヘリ飛ばすって……何処の洋画だよ? しかも態々機体のTACので指定するって……濃ゆいにも程があるっての」
『ぼ、僕は車よりもバイク派! 大型バイクとかサイドカー、トライクルなんかに乗ってみたいですよ』
『私はキャンピングカーの一択だよ。娘と一緒に各地でバーベキューとか……きっと楽しいだろうな』
「人肉バーベキュー?」
「また山田さんったらそんなこと言うし。良い話しが台なしよ?」
「うひひ。向こうに着いて落ち着いたらさ、皆んなのその夢を一つずつ、それこそ皆んなで叶えていこう。はっはっは」
「もう……でも私も同意」
『賛成だな』『激しく同意』『私も皆に同じだ』
道中、そんな楽しげな会話を織り交ぜながら、俺たちはひた進んでいく――。
◇◇◇
程なくして、スーパーに到着。
中村さん用に缶詰めや保存食などなど。ハスター用とゾンビら愉快な住人ら向けには、腐った高級肉などなど。
そんな食糧やらの雑貨品をお土産として物色した。
次の休憩点であるホームセンターでは、似非美幼女ビッチへの悪戯目的で、幼児用の痛いコスプレ衣装とか、微妙な動物柄のパンツなどなどをチョイスしておく。
そんな日用品を中心に手当たり次第物色し、持って帰れるだけ持っていく。
何せ軍の銃火器が手に入った今、電動ガンタッカーなどの武器代わりな道具は基本的に不要。
なので必要なのはあくまでも物資。それに尽きる。
大方、物色し終えたところで、行軍中に僅かばかり疑問に思っていたことを、皆に話しておく。
「ここまで野良ゾンビが全く居ない、遭遇しない点について……どう考える?」
割と真剣な真顔になって、話しを切り出した。
そう。元犬猫などは勿論、元人間も含めて。
まぁ居ないなら居ないで、それはそれで助かる。居ないことで特に問題になることはないからな。
ゾンビら住人にしても、野良ゾンビを喰らわずとも腐った高級肉などで賄えるし、色々な意味で居ないに越したことはない。
ただ……当初はそこかしこに居たそれらが、急に全く居なくなってるってのが、どうにも気味が悪い。
以前、共喰いの現場を目撃しているが、今は姿はおろか、残骸すらも見てはいないのだから。
「前に山田さんが僕らに言ってたあれ。野良の共喰いと言うことでしょうか?」
「共喰いとな?」
「嫌な言葉ですな……」「……」
「そうなのよ。山田さんとデートの時に、私も出会して目撃したんだけど。野良同士がお互いをただ喰い合う……そんな悲惨な場面」
「もう共喰いで全部が駆逐された。とかでは?」
「ぶっちゃけ、それならまだ良いけども。例のハスターみたいなのが居たら洒落にならんぞ? アイツは自我が残ってて利口だったけども」
もしも仮にだ。あのケッタイな姿で自我のない野良とかだったら……最早、人間が敵うレベルじゃない。非力なゾンビである住人らは特に。
単なる餌になって、捕食される未来しかねーよ。
そんなホームセンター出張版、簡易井戸端会議を開催中――緊急事態に直面する。
「や、山田さん……」「出たよ……」
俺嫁を背に庇い、直ぐに迎撃できるよう身構えておく。
「僕、あれ苦手です……」
だろうね。以前に簀巻きでお持ち帰りされたもんな。
「何が出――ほう……あれか」
会ってみたいと吐かしてたな、田中さん。
「……!」「山田さんが居る。大丈夫」
怯える娘さんを抱きしめて、若干、引き攣った腐った笑顔でサムズアップの加藤さんは俺に丸投げ。
皆んなの視線を全て掻っ攫ったのは、このホームセンターに巣喰う――軍曹だった。
だがしかし。身体の大きさが、以前の数倍にまで成長していた。朽ちるだけの身体――腐っているのに、だ。
しかも様子がおかしい。鋭い牙となった口顎から、止めどなく腐った汁を涎の如く垂れ流し、俺達を捉えている複眼も逸らさない。逃げもせずに構えている。
「軍曹……遂に自我を失ったか。しかも巨大化に輪をかけやがって。冗談は腐るだけにしろし」
どうもこちらを敵視――否。最早、何も考えてはいないだろう。
複数の脚をスプリングのように縮めた次の瞬間、俺たちへと襲いかかってくるのだった――。
――――――――――
退廃した世界に続きはあるのか?
それは望み薄……。
移動にかかる距離は然程もない。
ただ野良ゾンビらとの遭遇など、不測の事態を警戒しつつの行軍となるので、目的地到着までには約一日半くらいかかる見通しだ。
疲れないゾンビな住人らとは言え、大人ばかりではなく子供連れが居る。加藤さんの娘さんだな。なので途中で一泊の夜営休憩を挟んで進む算段。
嵩張る大荷物を抱えての行軍なので、結局は俺が一番しんどいからだが。
あと途中でスーパーとホームセンターにも立ち寄って、中村さんとハスターへのお土産も確保し持っていくこととした。
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『はっはっは。流石に最新鋭の機体だな。素晴らしいの一言だよ、山田さん』
何ぞ子供みたくはしゃいでいる、存外、楽しそうな田中さんから無線入った。
武装を積んだキャリッジを引く一〇式戦車は、今回、俺ではなく田中さんが担当している。
腐っても元気溌剌な田中さんは、妖怪並みの超高齢でかつ戦争経験者である……とは言え、良く良く考えてみれば、その当時にこんな最新鋭の戦車はない。
つまり根本的に扱える筈がなく、本来なら無理な筈である。
なのに何故に扱えるのか? そう疑問に思ってたら……なんと田中さん、実はニュータイプ――ゲフンゲフン。超優秀な元兵隊さんだった。
解像度の悪い取説を軽く読んだと言うよりパラパラと捲って見ただけやゆーに、乗り込んで座席についたなり、僅か数分で完全に掌握してしまうってんだから……俺嫁の変化以上に驚いたわ、うん。冗談は腐るだけにしろし。
そんなわけで行軍中の護衛任務は田中さんに丸投げ。
手の空いた俺は、皆んなの荷物を積みに積み込んだ、某黒い猫印な宅急便御用達の8トン大型貨物トラックを担当する。
勿論、さっきまで微妙におこだった俺嫁も、極自然に隣の座席に乗り込んでいる。
『こっちの自動車も中々に凄いですよ。貧乏学生だった僕なんて、こんなの乗ったことないし』
『運転手の私にしても感動だよ。こんな高級感溢れる車に乗れるとは、夢にも思わなかった。娘も凄く喜んでいるよ』
鈴木さんに加藤さんからも、存外に嬉しそうな声で無線が入る。娘さんにしてもご機嫌で良かった。
加藤さん親子と鈴木さんについては、万一の事態に備える意味でも、貨物トラックには同乗していない。
軍用装甲車両であるマローダーに匹敵する頑丈さを兼ね備えた、レズバニ社のタンクへと三人一緒に乗り込んでもらった。
ちなみに。おっちょこちょいな鈴木さんではちょいと不安なので、加藤さんに運転手を担当してもらった。
陸自の駐屯地に最新鋭のマローダーが綺麗な状態で残っていたので、旧式たる七三式はここでお別れとなる。そのままアパートへと残していくことにした。
「まぁ、戦略兵器にしろ、家が建つほどの高級車にしろ、一般人たる俺らには、まず縁もゆかりもない代物ですからね?」
『確かにな』『本当ですよ』『全くだ』
「こんな瓦礫の山でなければ、フェラーリとかランボルギーニとかなスーパーカーに乗って、アクセルベタ踏みでかっ飛びたいですもん、俺」
『そうだな。誰に文句を言われることなく、色々と好きなことはできる。こんな世界だが……それだけは唯一の救いだの。儂にしてもウィドウ・メーカー(未亡人製造機の意)を飛ばしてみたいと思っておったところだ』
「ゾンビがヘリ飛ばすって……何処の洋画だよ? しかも態々機体のTACので指定するって……濃ゆいにも程があるっての」
『ぼ、僕は車よりもバイク派! 大型バイクとかサイドカー、トライクルなんかに乗ってみたいですよ』
『私はキャンピングカーの一択だよ。娘と一緒に各地でバーベキューとか……きっと楽しいだろうな』
「人肉バーベキュー?」
「また山田さんったらそんなこと言うし。良い話しが台なしよ?」
「うひひ。向こうに着いて落ち着いたらさ、皆んなのその夢を一つずつ、それこそ皆んなで叶えていこう。はっはっは」
「もう……でも私も同意」
『賛成だな』『激しく同意』『私も皆に同じだ』
道中、そんな楽しげな会話を織り交ぜながら、俺たちはひた進んでいく――。
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程なくして、スーパーに到着。
中村さん用に缶詰めや保存食などなど。ハスター用とゾンビら愉快な住人ら向けには、腐った高級肉などなど。
そんな食糧やらの雑貨品をお土産として物色した。
次の休憩点であるホームセンターでは、似非美幼女ビッチへの悪戯目的で、幼児用の痛いコスプレ衣装とか、微妙な動物柄のパンツなどなどをチョイスしておく。
そんな日用品を中心に手当たり次第物色し、持って帰れるだけ持っていく。
何せ軍の銃火器が手に入った今、電動ガンタッカーなどの武器代わりな道具は基本的に不要。
なので必要なのはあくまでも物資。それに尽きる。
大方、物色し終えたところで、行軍中に僅かばかり疑問に思っていたことを、皆に話しておく。
「ここまで野良ゾンビが全く居ない、遭遇しない点について……どう考える?」
割と真剣な真顔になって、話しを切り出した。
そう。元犬猫などは勿論、元人間も含めて。
まぁ居ないなら居ないで、それはそれで助かる。居ないことで特に問題になることはないからな。
ゾンビら住人にしても、野良ゾンビを喰らわずとも腐った高級肉などで賄えるし、色々な意味で居ないに越したことはない。
ただ……当初はそこかしこに居たそれらが、急に全く居なくなってるってのが、どうにも気味が悪い。
以前、共喰いの現場を目撃しているが、今は姿はおろか、残骸すらも見てはいないのだから。
「前に山田さんが僕らに言ってたあれ。野良の共喰いと言うことでしょうか?」
「共喰いとな?」
「嫌な言葉ですな……」「……」
「そうなのよ。山田さんとデートの時に、私も出会して目撃したんだけど。野良同士がお互いをただ喰い合う……そんな悲惨な場面」
「もう共喰いで全部が駆逐された。とかでは?」
「ぶっちゃけ、それならまだ良いけども。例のハスターみたいなのが居たら洒落にならんぞ? アイツは自我が残ってて利口だったけども」
もしも仮にだ。あのケッタイな姿で自我のない野良とかだったら……最早、人間が敵うレベルじゃない。非力なゾンビである住人らは特に。
単なる餌になって、捕食される未来しかねーよ。
そんなホームセンター出張版、簡易井戸端会議を開催中――緊急事態に直面する。
「や、山田さん……」「出たよ……」
俺嫁を背に庇い、直ぐに迎撃できるよう身構えておく。
「僕、あれ苦手です……」
だろうね。以前に簀巻きでお持ち帰りされたもんな。
「何が出――ほう……あれか」
会ってみたいと吐かしてたな、田中さん。
「……!」「山田さんが居る。大丈夫」
怯える娘さんを抱きしめて、若干、引き攣った腐った笑顔でサムズアップの加藤さんは俺に丸投げ。
皆んなの視線を全て掻っ攫ったのは、このホームセンターに巣喰う――軍曹だった。
だがしかし。身体の大きさが、以前の数倍にまで成長していた。朽ちるだけの身体――腐っているのに、だ。
しかも様子がおかしい。鋭い牙となった口顎から、止めどなく腐った汁を涎の如く垂れ流し、俺達を捉えている複眼も逸らさない。逃げもせずに構えている。
「軍曹……遂に自我を失ったか。しかも巨大化に輪をかけやがって。冗談は腐るだけにしろし」
どうもこちらを敵視――否。最早、何も考えてはいないだろう。
複数の脚をスプリングのように縮めた次の瞬間、俺たちへと襲いかかってくるのだった――。
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