ゾクッ⁉︎ ぞんびぃ・ぱにつく 〜アンタらは既に腐ってる〜

されど電波おやぢは妄想を騙る

文字の大きさ
上 下
11 / 11
◇第二部◇

第三四話 さぁ、今度こそ移住開始! その前に。お土産も忘れずに。

しおりを挟む
 中村さんが引き篭もってる陸自の駐屯基地へと向かう、俺と愉快なゾンビたち。

 移動にかかる距離は然程もない。
 ただ野良ゾンビらとの遭遇など、不測の事態を警戒しつつの行軍移動となるので、目的地到着までには約一日半くらいかかる見通しだ。

 疲れないゾンビな住人らとは言え、大人ばかりではなく子供連れが居る。加藤さんの娘さんだな。なので途中で一泊の夜営休憩を挟んで進む算段。
 嵩張かさばる大荷物を抱えての行軍なので、結局は俺が一番しんどいからだが。
 
 あと途中でスーパーとホームセンターにも立ち寄って、中村さんとハスターへのお土産も確保し持っていくこととした。


 ◇◇◇


『はっはっは。流石に最新鋭の機体だな。素晴らしいの一言だよ、山田さん』

 何ぞ子供みたくはしゃいでいる、存外、楽しそうな田中さんから無線入った。

 武装を積んだキャリッジを引く一〇式戦車は、今回、俺ではなく田中さんが担当している。
 腐っても元気溌剌な田中さんは、妖怪並みの超高齢でかつ戦争経験者である……とは言え、良く良く考えてみれば、その当時にこんな最新鋭の戦車はない。
 つまり根本的に扱える筈がなく、本来なら無理な筈である。

 なのに何故に扱えるのか? そう疑問に思ってたら……なんと田中さん、実はニュータイプ――ゲフンゲフン。超優秀な元兵隊さんだった。
 解像度の悪い取説を軽く読んだと言うよりパラパラと捲って見ただけやゆーに、乗り込んで座席についたなり、僅か数分で完全に掌握してしまうってんだから……俺嫁の変化以上に驚いたわ、うん。冗談は腐るだけにしろし。

 そんなわけで行軍中の護衛任務は田中さんに丸投げ。
 手の空いた俺は、皆んなの荷物を積みに積み込んだ、某黒い猫印な宅急便御用達の8トン大型貨物トラックを担当する。
 勿論、さっきまで微妙におこだった俺嫁も、極自然に隣の座席に乗り込んでいる。

『こっちの自動車も中々に凄いですよ。貧乏学生だった僕なんて、こんなの乗ったことないし』

『運転手の私にしても感動だよ。こんな高級感溢れる車に乗れるとは、夢にも思わなかった。娘も凄く喜んでいるよ』

 鈴木さんに加藤さんからも、存外に嬉しそうな声で無線が入る。娘さんにしてもご機嫌で良かった。

 加藤さん親子と鈴木さんについては、万一の事態に備える意味でも、貨物トラックには同乗していない。
 軍用装甲車両であるマローダーに匹敵する頑丈さを兼ね備えた、レズバニ社のタンクへと三人一緒に乗り込んでもらった。
 ちなみに。おっちょこちょいな鈴木さんではちょいと不安なので、加藤さんに運転手を担当してもらった。

 陸自の駐屯地に最新鋭のマローダーが綺麗な状態で残っていたので、旧式たる七三式はここでお別れとなる。そのままアパートへと残していくことにした。

「まぁ、戦略兵器にしろ、家が建つほどの高級車にしろ、一般人たる俺らには、まず縁もゆかりもない代物ですからね?」

『確かにな』『本当ですよ』『全くだ』

「こんな瓦礫の山でなければ、フェラーリとかランボルギーニとかなスーパーカーに乗って、アクセルベタ踏みでかっ飛びたいですもん、俺」

『そうだな。誰に文句を言われることなく、色々と好きなことはできる。こんな世界だが……それだけは唯一の救いだの。儂にしてもウィドウ・メーカー V-22・オスプレイ(未亡人製造機の意)を飛ばしてみたいと思っておったところだ』

「ゾンビがヘリ飛ばすって……何処の洋画だよ? しかも態々機体のTAC愛称ので指定するって……濃ゆいにも程があるっての」

『ぼ、僕は車よりもバイク派! 大型バイクとかサイドカー、トライクルなんかに乗ってみたいですよ』

『私はキャンピングカーの一択だよ。娘と一緒に各地でバーベキューとか……きっと楽しいだろうな』

「人肉バーベキュー?」

「また山田さんったらそんなこと言うし。良い話しが台なしよ?」

「うひひ。向こうに着いて落ち着いたらさ、皆んなのその夢を一つずつ、それこそ皆んなで叶えていこう。はっはっは」

「もう……でも私も同意」

『賛成だな』『激しく同意』『私も皆に同じだ』

 道中、そんな楽しげな会話を織り交ぜながら、俺たちはひた進んでいく――。


 ◇◇◇


 程なくして、スーパーに到着。
 中村さん用に缶詰めや保存食などなど。ハスター用とゾンビら愉快な住人ら向けには、腐った高級肉などなど。
 そんな食糧やらの雑貨品をお土産として物色した。

 次の休憩点であるホームセンターでは、似非美幼女ビッチへの悪戯目的で、幼児用の痛いコスプレ衣装とか、微妙な動物柄のパンツなどなどをチョイスしておく。

 そんな日用品を中心に手当たり次第物色し、持って帰れるだけ持っていく。
 何せ軍の銃火器が手に入った今、電動ガンタッカーなどの武器代わりな道具は基本的に不要。
 なので必要なのはあくまでも物資。それに尽きる。


 大方、物色し終えたところで、行軍中に僅かばかり疑問に思っていたことを、皆に話しておく。


「ここまで、遭遇しない点について……どう考える?」

 割と真剣な真顔になって、話しを切り出した。

 そう。元犬猫などは勿論、元人間も含めて。
 まぁ居ないなら居ないで、それはそれで助かる。居ないことで特に問題になることはないからな。
 ゾンビら住人にしても、野良ゾンビを喰らわずとも腐った高級肉などで賄えるし、色々な意味で居ないに越したことはない。

 ただ……当初はそこかしこに居たそれらが、急に全く居なくなってるってのが、どうにも気味が悪い。
 以前、共喰いの現場を目撃しているが、今は姿はおろか、残骸すらも見てはいないのだから。

「前に山田さんが僕らに言ってたあれ。野良の共喰いと言うことでしょうか?」

「共喰いとな?」

「嫌な言葉ですな……」「……」

「そうなのよ。山田さんとデートの時に、私も出会でくわして目撃したんだけど。野良同士がお互いをただ喰い合う……そんな悲惨な場面」

「もう共喰いで全部が駆逐された。とかでは?」

「ぶっちゃけ、それならまだ良いけども。例のハスターみたいなのが居たら洒落にならんぞ? アイツは自我が残ってて利口だったけども」

 もしも仮にだ。あのケッタイな姿で自我のない野良とかだったら……最早、人間が敵うレベルじゃない。非力なゾンビである住人らは特に。
 単なる餌になって、捕食される未来しかねーよ。


 そんなホームセンター出張版、簡易井戸端会議を開催中――する。


「や、山田さん……」「出たよ……」

 俺嫁を背に庇い、直ぐに迎撃できるよう身構えておく。

「僕、あれ苦手です……」

 だろうね。以前に簀巻きでお持ち帰りされたもんな。

「何が出――ほう……あれか」

 会ってみたいと吐かしてたな、田中さん。

「……!」「山田さんが居る。大丈夫」

 怯える娘さんを抱きしめて、若干、引き攣った腐った笑顔でサムズアップの加藤さんは俺に丸投げ。


 皆んなの視線を全て掻っ攫ったのは、このホームセンターに巣喰う――軍曹アシダカクモだった。


 だがしかし。身体の大きさが、以前の数倍にまで成長していた。朽ちるだけの身体――腐っているのに、だ。

 しかも様子がおかしい。鋭い牙となった口顎から、止めどなく腐った汁を涎の如く垂れ流し、俺達を捉えている複眼も逸らさない。逃げもせずに構えている。

「軍曹……遂に自我を失ったか。しかも巨大化に輪をかけやがって。冗談は腐るだけにしろし」

 どうもこちらを敵視――否。最早、何も考えてはいないだろう。
 複数の脚をスプリングのように縮めた次の瞬間、俺たちへと襲いかかってくるのだった――。



 ――――――――――
 退廃した世界に続きはあるのか?
 それは望み薄……。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

紛うことなき現代社会で神?に再構成された電波なおやぢがやらかした玩具を駆使して人外チート家族らと共に非日常的存在に果敢に挑む?――おかわり!

されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
【おかわり・改稿版】  南国にあるリゾート地に赴いた斗家一行がは、秘密基地に等しい施設――秘密の花園と呼称する謎のなんぞな研究施設で、突如、起こった未曾有の危機に巻き込まれるも、家族の絆でなんとか乗り切った。  だがしかし、平穏も束の間。  謎の孤島が浮上する――。  骨休めもできないまま、その場所へと派遣され、実態調査をさせられるハメになってしまうのだった。  そしてまたしても。  ファンジー極まる超常現象に、次々と巻き込まれ翻弄されるのだった――。  第二部スタート。つまり続きです。

ミイラですか? いいえ、単に包帯に巻かれた電波な微笑女かと。ちなみに、ちっぱいは仕様です。――ヤっべ。∑(゚Д゚)

されど電波おやぢは妄想を騙る
キャラ文芸
 タイトルに殆ど変わりありませんが、難しいことが何ひとつない単なるギャグ物語に生まれ変わりました(笑)  物語とは言うも。  内容はないような内容(おやぢ去ね)  サラッと読み捨てられるベリーショートスタイルで晒していきますので、ベタやメタ、おやぢギャグなネタ好きの方は宜しくお願いします。  大変、大変、大変、大変……10回言うと――そりゃ、変態だ!!!!  おあとが宜しいようで――ヤっべ。∑(゚Д゚)  ああ、物は投げないで!  危ないから! 死んじゃうから!

Tactical name: Living dead. “ Fairies never die――. ”

されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
 遠い昔の記憶なのでやや曖昧だが、その中でも鮮明に残っている光景がある。  企業が作った最先端のロボット達が織りなす、イベントショーのことだった。  まだ小学生だった頃の俺は両親に連れられて、とある博物館へと遊びに来ていた。  そこには色々な目的で作られた、当時の様々な工業機械や実験機などが、解説と一緒に展示されていた。  ラジコンや機械弄りが大好きだった俺は、見たこともない機械の物珍しさに、凄く喜んでいたのを朧げに覚えている。  その中でも人間のように二足歩行し、指や関節の各部を滑らかに動かして、コミカルなショーを演じていたロボットに、一際、興味を惹かれた。  それは目や鼻と言った特徴はない無機質さで、まるで宇宙服を着込んだ小さな人? そんな感じだった。  司会の女性が質問を投げ掛けると、人の仕草を真似て答える。  首を傾げて悩む仕草や、大袈裟に身振り手振りを加えたりと、仰々しくも滑稽に答えていた。  またノリの良い音楽に合わせて、ロボットだけにロボットダンスを披露したりもして、観客らを大いに楽しませていた。  声は声優さんがアテレコしていたのをあとから知るが、当時の俺は中に人が入ってるんじゃね? とか、本気で思っていたりもしていたくらいだ。  結局は人が別室で操作して動かす、正しくロボットに違いはなかった。  だがしかし、今現在は違う。  この僅か数十年でテクノロジーが飛躍的に進歩した現代科学。  それが生み出したロボットに変わるアンドロイドが、一般家庭や職場にも普及し、人と共に生活している時代だからだ。  外皮を覆う素材も数十年の間に切磋琢磨され、今では人間の肌の質感に近くなり、何がどうと言うわけではないが、僅かばかりの作り物臭さが残る程度。  またA.I.の発達により、より本物の人間らしい動き、表情の動きや感情表現までもを見事に再現している。  パッと見ただけでは、直ぐに人間と見分けがつかないくらい、精巧な仕上がりだ。    そんな昔のことを思い出している俺は、なんの因果か今現在、そのアンドロイドらと絶賛交戦中ってわけで――。

魔法少女ってマジカルなのか? ――で、俺、惨状? そんな俺は社畜ブサメン瓶底メガネキモオタク。愛と夢と希望をブチ壊し世界の危機に立ち向かう?

されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
 極平凡で、ありふれた、良くある、日常の風景――。  朝起きて、準備して、仕事に出掛ける。  俺にしてもいつも通りで、他の誰とも何も変わらない――筈だった。    気付いた時には、既に手遅れだった。  運命の歯車が突如大きく、歪み、狂い、絡みあって――まるで破滅へと誘うかのように、今日、この日、たった今――目の前で動き出したのだ――。  そして俺は――戦うことを強いられる。  何故か――『魔法少女』として?  ※一部、改稿しました。

それぞれのその後

京佳
恋愛
婚約者の裏切りから始まるそれぞれのその後のお話し。 ざまぁ ゆるゆる設定

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

御手洗くんの紛うことなき現代社会での滑稽な非日常について。

されど電波おやぢは妄想を騙る
SF
【改稿版】  高校時代からのとあるバイト先で、卒業と同時にそのまま社員登用されたオレ――御手洗そーぢ。  実姉の華奈子と取り巻くヒト達のお陰で、不幸な生い立ちの幼少期からは考えられない、俗に言うシンデレラ・ストーリーに乗っかってしまうこととなった今現在。  ひょんなことから現代社会では、到底、有り得ないような、摩訶不思議と言うか常識ハズレと言うかな、とっても滑稽な体験を次々とさせられることとなるわけで。  と言うかさ、次々と巻き込まれていくだけなんですけど? どーしてこーなった⁉︎  斗家と伏木家に所縁のある御手洗姉弟を中心に、摩訶不思議なモノ騙りが始まるのだった――。  ◇◇◇  ※このモノ騙りは『紛うことなき〜』のスピンオフ、或いはクロスオーバー、はたまたサブストーリー、間違って背景だけ同じのオリジナルに成るか為らざるか⁉︎  執筆してる筆者にしても現時点ではどーなっていくか、全く予想だにしていないと言う驚愕の事実。  つまり、知らない。解らない。  更に言うと、予定は未定(笑)

処理中です...