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第五話 知りたくなかった事実。

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「天使とか言うこいつら、一体なんなんだ!」

 開口一発、疑問を打つけた俺。

 ――――――
 Voice chat channel Open.
 Active hot-channels. ―― “Nano. with Kana.”
 ――――――

 突如、そんな俺の視界の左下隅に、通信回線を開いたとのガイダンスがポップアップされた。
 どうやら離れた魔法少女とも、普通に会話のやり取りができるようになったってことらしい。便利過ぎかよ。

貴女あなた、馬鹿なの? 自分で答えを言ってるじゃない』

 その直後、ナノの小馬鹿にする声が聴こえてくる。

『そうそう、天使だよん。神の使徒って言う名の殺戮者だけどね~』

 飄々とした軽い口調で、ナノを肯定するカナ。

「――なんで神の使徒たる天使が、庇護する人間を襲ってんだよっ! ――そんなのおかしいだろうがっ!」

 女性然とした何か――天使の一体と相対している俺は、問い質すようにそう言い捨てた。

『――やっぱり貴女は馬鹿ね? そんなことも知らないで魔法少女になったの? 呆れた』

『――ん~、解り易く言うとね~、愚かな人間が増え過ぎて、神さまの怒りを買った、かな? お前ら要らね、消えてまえ。って、感じ?』

 マジカルトンファーで攻撃を受け流し、反撃に出ている俺に、そんな風に答える二人。

「マジに言ってんのかよっ⁉︎ じゃあ、俺らは……神に抗う不遜な不届き者って立ち位置になんじゃねぇかっ⁉︎」

 相対していた一体を葬り去り、マップのマーカーに従って次の敵へと移動しながら、二人に言葉を返す。

『貴女ってホントお馬鹿ね? 当たり前でしょうに?』

『だってあーしらは、使だよん』

 俺は耳を疑った。

「――は⁉︎」

 悪魔側の使徒が俺たちだと言った驚愕の事実を知らされ、不意に脚が止まってしまう。

『要はさ、人間を滅ぼされちゃうとね、悪魔側にすんごい都合が悪いわけよ? 人間が産み出す負のエネルギーとか、刈り取る魂とかがなくなって力が減退、最悪、神に淘汰されるってわけなのよ』

『だからあーしらが、それを防ぐ為に悪魔と契約して魔法少女になって、こうやって抗ってるんだよん』

『勘違いのないように言っとくけどね、悪魔にだって節度はあるのよ? 善か悪だなんてその都度入れ替わるものよ。――今回の神側のような身勝手な振る舞いは、良識ある人なら絶対に許せないでしょ?』

『あーしら、瀕死のところを助けられたじゃん? 代償に魂は半分取られちゃったけど、代わりに人外なすんごい力を与えられたじゃん? 悪魔の加護――魔法少女の力ってヤツ。それでチャラだよん』

「昔に流行った漫画で、悪魔を裏切って人間につくヒーローがいたっけな。要はそんな感じのスタンス心構えで良いのか?」

 我に返って直ぐ、俺なりに出した結論を言葉にし、慌てて移動を再開する。

『それはちょっと違うくない? 今回は悪魔側が全面的に協力してくれてんだからね? 悪魔と人間――魔法少女が手を結び、人に害なす敵たる神から、世界の窮地を救ってハッピーエンドって話よ。――おわかりかしら?』

「イマイチ釈然とせんのだが……まぁ良いさ。要は天使ってヤツらを潰していけば良いんだな?」

 次の目標に辿り着き、脳天からマジカルトンファーを穿ち、言葉通りの一撃で潰してやった。

『そんな感じね。そもそも天使自体、人を模したのではないの。人を造り替えた、神側の使徒たる化け物だから』

『どっちサイドも、結構、身勝手だけどね~。ホ~ント、ワロスワロス。あーしらは着ぐるみに変身するんだけど、あとでちゃんと人に戻って、今まで通り普通に生活できんだから。神側はあんな化け物のまま。比べるとさ、悪魔側のあーしらのが待遇マジ良くね?』

「人の魂を堕落させるのを好み魅了するも、契約を重んじるのが悪魔だからな。規律を重んじる神と比べれば……これは重い神罰か。当然と言えば当然だな――って、終わったみたいだな」

 俺から少し離れた場所で、最後の一体を厳つい戦鎚でぶっ潰したカナ。

『さて、帰ろっか。乙~』

『あーしも帰る。ドラマの続き見るぅ~』

 遠くで死神の鎌を肩に担ぎ、両手をパンパンと叩く仕草のナノと、その隣で身体の埃を払う仕草のカナの場違いな言葉が届いた。

「――ちょ、アンタら身勝手過ぎだろっ! 俺はまだ、アンタらのことを教えてもらってすらいねぇってのっ!」

 そう。あくまでも、なし崩し的に一緒に戦っただけ。
 互いに呼び合うから名前は解ったが、正式には教えてもらってねぇっての。
 それ以前に聴きたいことが、まだまだ山ほどどっさりあるっつーの。

『やるか』『おけまる』

 遠くで顔を突き合わせて頷き合うナノとカナ。


 そして――。


『――魔法少女、本気軽マジカル⭐︎カナ』

 香ばしいポーズで厳つい戦鎚をクルクルと回して名乗りをあげた、桃色の髪をドリルヘアかつサイドポニーにしている顔黒ガングロギャルっぽいカナ。


 抑揚と発音が微妙に違くね?


『――魔法少女、マジカル⭐︎ナノ』

 続いて香ばしいポーズで死神の鎌を振り抜き、口元に手を当てオホホ笑いな仕草で高らかに名乗りをあげる、漆黒の髪をポニーテールにした委員長っぽいナノ。


 高慢ちきキャラ?


『『願う夢はブチ壊し、抱く希望はへし折る乙女。それが私達――魔法少女、マジカル☆?』』

 息ピッタリに、駄洒落混じりの妙な決め台詞を痛いポーズで高らかに叫ぶ、二人の着ぐるみ魔法少女だった。


 俺が知るか。人に聴いてどうすんだよ?


 はぁ――仲間やら先輩後輩ってのは、ある意味で鉄板定番常識設定だけどもよ……な~んか妙に痛いノリの子らが出てきたよな、うん。

「俺は――魔法[物理]で推して推して推しまくる? 魔法少女なのかナノカ? で、俺、惨状参上? ……あ、語尾は疑問形で」

 なんとなく悔しい気分になった俺は、自己紹介がてら二人の真似をして、思いつくまま適当に名乗りをあげておく。


 だって、俺と被ったネーミングだよ?
 魔法少女マジカル☆ナノカナ? だよ?
 俺と同じセンスの痛過ぎる駄洒落だよ?
 もうね、やられたーって感じ。


『これでちゃんとヤることはやった。野次馬に囲まれんのヤだし、身バレもしたくないし――じゃあね!』

 忍者も驚きの軽技で瓦礫間を移動し、一際高く聳り立つ瓦礫の上に舞い降りると、香ばしいポーズで格好をつけてから、とっとと去っていくナノ。

『そそ。ちょっパヤケツカッチンだよん。――えっと、なのか? だっけ? んじゃ、またね~、バイビ~!』

 猛り狂う猪のように土煙をあげて突っ走りながら、可愛いらしく手を振って離脱していく器用なカナ。

「あ、ちょ、アンタら! 待って――って、早っ⁉︎」

 呼び止める隙も与えず、あっという間に姿をくらました二人だった――。



 ――――――――――
 世界の行く末は、俺の頑張り次第?
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