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第四話 痛い子達も惨状⁉︎

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 索敵済みの残り六体の位置は、右上隅に投影される地図の上に、赤いマーカーで表示されていた。
 どうやら敵の分布や配置状況を、マーカーの色や大きさでリアルタイムに表示するようだ。

「武器関係は右隅に常時透過投影。関連情報は常に左下隅からポップアップか。戦闘領域のマップまでとは至れり尽くせりだよ。視界を妨げない配慮も中々に凄いな……って、このデカいマーカーは何だっ⁉︎」

 驚愕し戸惑う。
 何故ならマーカーで表示される六体の内、一体だけが四、五倍もある大きなマーカーだったからだ。
 マップ上の位置と照らし合わせた実際の位置は、遠く離れた瓦礫の向こう側となる。


 その向こう側から土煙やらに紛れて、ゆっくりと姿を曝す何か――。


 それは女性を模した六本の脚で、ゆっくりと歩みを進めていた巨大な何かだった。
 まるで悪魔の所業――人体をグチャ混ぜにしたような、巨大な蟻っぽい異様な風体だった。

 胸部は女性の腹のようにくびれ、そこから繋がる赤黒い腹部が豊かな胸を模して、二つに割れて揺れている。
 更に能面のような無機質な頭部に加え、そこに生えた触角が女性の腕。
 大顎の牙二本に至っては、女性の脚となっていた。
 女性の脚を模して鋭く伸びた牙が、犠牲者の男性を捕らえている。
 腹を裂いて腸を引き摺り出し、貪り喰いながら近付いてきやがるのだ。


(一体、なんなんだよ……こんな――)


 注視した瞬間、俺の視界の左下隅に、再びガイダンスがポップアップされた。

 ――――――
 Weapon shape-changed to
 special weapon for destruction.
 Change form ―― “ Destroy mode. ”
 ――――――

「――は? 武器形状を殲滅特化武器に……変更するだとっ⁉︎」

 意味不明に驚く間もなく、直ぐにそれは実行される。

『Standing by ―― Complete.』

 抑揚のない合成音声が響き、眩い輝きに包まれた両手のマジカルトンファーが一つに融合し、瞬く間に姿を変えていく。
 視界の右下隅に投影されている武器を形取ったマークも、それに合わせて更新された。

 ――――――
 Equipment.
 “ Magical Anti-materiel rifle. ”
 ――――――

 俺が手にしていたのは、ガイダンス通りに姿が変わった武器――なのだが。

「これはアレか? 俺が知ってる形状の物を模して、状況に応じて変わる武器ってヤツなのか?」

 呆れるように呟く俺が手にしている武器。
 全長が1500ミリを優に超える、実在する巨大な対物ライフルだった――。

「うぉおーいっ! 実在する銃……M82A2に酷使したっつーか、まんまそれじゃねーかっ⁉︎ マジカルをつければ、何でもかんでも魔法っぽいってセンスをどうにかしやがれっ! 誰がどう見たってな、まんまただの現用兵器じゃねーかっ!」

 そう叫びつつも迎撃姿勢に移行する。
 被筒の前後に設置された二つのグリップを握り、レシーバー部分を肩に担ぐ形で構えると、文句を言いながらも引き金を引いた。

 怒号のような銃声が轟くと同時に、発砲による凄まじい反動が俺の身に伸し掛かり、支えていた足が引き摺られる。

 ただ射出された弾丸は実弾ではなく、最早、大口径の弾丸と言うレベルではなかった。
 眩しい虹色の光を纏った一筋の閃光ときた。

 蟻擬きを頭から撃ち抜くも、勢い余って貫通し、後方の瓦礫までを吹っ飛ばすって言うんだから……どんだけ?

「――これは断じて銃違くね? 何つーもん撃たせんだよ? 俺を破壊魔にでもしたいのか!」

 その威力は砲撃にも等しく、砲弾で穿たれたような大穴が開いていた。
 更にその周囲はレーザーで焼かれたかの如く爛れ溶け、黒い靄をあげた酷い有り様となってやがった。

 貫かれた蟻擬きは全身を痙攣させたのち、体液を撒き散らして活動を停止した。
 土埃りを上げて倒れ込み、力なく地面に平伏すと、溶け崩れていく――。

「あかんて、あかんヤツだわ、これ。各個撃破でいくから、マジカルトンファーに戻してくれ」

 俺の言葉に従って、マジカルトンファーに姿が戻る。
 残り五体の各個撃破、殲滅に討って出ようとしたその時だった――。

「なんて物を打ちかましてんのよっ⁉︎ あんなのは魔法違くて、最早、よ、っ!」

 何処からか聴こえてくる、ツンデレぽくも甲高い可憐な声。

「ホ~ント、凄いね。でもね、あーしの獲物のが絶対に強いよ~だ」

 同じく何処からか聴こえてくる、ややギャルっぽい間の抜けた可憐な声。

「――誰だ⁉︎」

 大声で叫ぶ俺は、マップに投影されている二つの青いマーカーに気付いた――その位置は直ぐ近く。

(話し掛けてくるってことは友軍? 青いのは友軍表示か?)

 ――――――
 Friendly. ―― “ Magical Girl’s. ”
 ――――――

 それを肯定するかのように、視界の左下隅に投影されているガイダンス。更にその直後――。

「――話はあとよ。使らが広範囲に散ってる。手分けして殲滅するわよ」

 いつの間に背後にいたのか、俺に顔を向け、指示っぽいことを言う黒髪の少女。

「え~っ⁉︎ 折角登ってきたのに~。デカブツやったそっちの子、さっきの凄い魔砲で蹴散らしちゃってよ~」

 同じく一緒に居た桃髪の少女は、仰々しく地団駄じたんだを踏み、ウンザリした物言いで黒髪の少女に文句を返している。

 
 そんなコントか漫才で登場した二人は、どっちも俺と似たような、痛いフリフリ衣装の着ぐるみだった。


「馬鹿なの、? そんなことをしたら、この周辺一帯が焼け野原でしょうが! 各個撃破で行くわよ!」

 ビシッと禍々しいを突きつけ、駄洒落で小馬鹿にした黒髪の着ぐるみ少女。

「だよね~、。しゃあない。あーし、頑張っちゃおう! てぇーい!」

 担いでいたいかついを振り回し、瓦礫を凄い勢いで駆け下りて、中央突破を敢行していくカナと呼ばれた着ぐるみ少女。


(結局、アンタらも魔法は[物理]かよ。その姿からして、俺と同類の魔法少女に違いはないんだろうけどさ、武器が禍々し過ぎて、魔法もマジカルも関係なさげだよな、おい)


 あとカナって子は、きっと残念系お馬鹿キャラ的扱いなんだろうな、うん。


「あの子は全く――アンタは左側をお願いね」

 俺に溜息混じりでそう告げると、直ぐ様、瓦礫間を飛び跳ねて移動を開始。
 右側で暴れている敵に向かっていった、ナノと呼ばれた着ぐるみ少女。

「ちょ、身勝手過ぎるだろ――全く」

 ナノとか言う奴の言う通り、確かに悠長に会話して、変なツッコミ入れてる場合ではないよな。
 俺は愚痴りながらも、左側で暴れている敵に向かって行く。

「魔法少女なのか? 俺、惨状?」

 そして、能面彫刻な何かの前に一足飛びで降り立つと、すかさずマジカルトンファーを交差するように構えて立ち塞がるのだった――。



 ――――――――――
 世界の行く末は、俺の頑張り次第?
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