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第一部 運命の出逢い。それは――。

五発目 遥か高みに君臨する先輩達――変態だけど。

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 全ての攻撃をその幼い身体で受け止め切ったナイチチちゃん。

 周囲に障壁を展開し、皆を守りつつ援護して立ち回っていたキズナさん。

 不意打ちは喰らうものの、その後の謎の変態パワーで難なく八つ裂きにしたゲイデさん。


 ベテラン勢だけに、流石の一言だった。
 駆け出しの俺に出る幕は全くなかったほどに。


 結局は殺人芋虫キリングキャタピラーが討伐される間、ただあたふたして見ていることしかできなかった――。


 ◇◇◇


「ふぅ――中々に良い汁単に汗ですを出した。汚したふんどしを履き替えて、タダちゃんに被らせてヤりたいわね」

 黒くて固い不思議な金属太く猛々しいで作られた逸品の戦斧を地面へと突き立て、何やら如何わしいポーズでの謎の白い歯をキラリなゲイデさん。

 爽快な笑顔なのに、何故か捕食対象を見る怪しい目で俺を見つめ、抑揚と発音が絶妙におかしい意味不明なことを仰っておいでだ。


 中々に良い汁って、何? 汗だよね?
 汗塗れの褌を被るくらいなら、俺は死を選ぶ。


「ちょっと臭うわよ、ゲイデ」

 ヤりきって戻ってくるゲイデさんに、鼻を摘んでシッシな仕草のキズナさん。

「とは言え、私にしても久々に悠久の刻を生きるエロフハッスルだけに死語したから汗塗れ……って、タダちゃん知ってる? エルフの汗ってお花のような良い香りがするのよ? ――試しに私のをくんかくんかしてみてよ」

 スカートの裾を軽くたくしあげ、色気たっぷりな黒いガーダーベルトをチラ見させ、煽情的に映えた白い太腿がおいでおいでする。

 魅惑の大人な世界へと通じている階段を登らせようと、しれっと誘ってくるキズナさんだった。


 どんなに美人でも、結局はエロフ。
 凄まじいまでの美貌も、残念過ぎる台詞と仕草でその全てが台なしですね。
 冒険者辞めて娼館で働いたら、引くて数多だと思いますよ、きっと。


「うんしょっと……」

 地面に突き立てて背凭れと化していた、身の丈もある巨大な盾を軽々と背負い直す、全ての攻撃をその奇跡の乳二つで完璧に防ぎ切ったナイチチちゃん。

「ナイチチちゃんは凄いね。絶対可憐チルドレンだよ」

 変態亜人の御二方を華麗にスルーして、ナイチチちゃんの元へと向かった俺は、純粋に労う気持ちから頭をそっと撫でて褒めてあげた。

「はにゃ⁉︎ ――にゃふ……うれち――うれしい、なの」

 触れた瞬間、一瞬だけ身体が強張り奇声を漏らすも、直ぐに惚けた表情で身を捩るナイチチちゃんだった。


 天使、最高かよ。


 そう言うクソ可愛らしい仕草を見せられると、本当に何処にでも居る七歳の幼女そのもの。
 さっきまで矢面に一人で立ち、魔物に臆することなく勇敢に相対していた乳とは思えない。


 乳違う、美幼女だった。
 あまりにも存在感がパねぇもんで、つい。


「ゲイデさんはあっち系だけどめっさ強かったし、残念エロフのキズナさんにしても、障壁やら傷の手当とか後方支援がホント凄かった。壁職を中心に魔物と立ち回るパーティプレイだけは凄く参考になったし……」

 ナイチチちゃんは言わずもがな。
 アレな性格で変態の御二方も、そこはかとなく上等級の冒険者に相応しい腕前かつ動きだった。


 ホント、変態でさえなければ、その凄さにただ諸手をあげて感動していた俺だったことと思う……実に残念で仕方ない。


「俺なんてさ……ナイチチちゃんが頑張ってくれてる後ろで、どうして良いか解らず右往左往してただけ。ホント、役立たずでごめんね」

 俺は心底そう思い、ナイチチちゃんに深く頭を下げた。

「そんにゃ――そんなことないの! おにぃた――おにぃちゃんもがんばったの! えーと……えーと……。すごい、すごいがんばった! なの!」

 そんな俺を一生懸命に励まそうとしてくれる。
 ただ……持ち上げる部分が見つからないようで、少しどうしようと困った複雑な表情で必死に褒めてくれるわけで……。


 その無垢な優しさが尊くも嬉しい反面、掘り下げても良いとこなしな俺の無能さが浮き出て実に辛かったり。


「タダちゃん、そんな気を落とさないで。アレは中等級の子らが寄ってたかって組んず解れつして、やっとこさヒィヒィ言わせる系の魔物なんだから。一角兎で名誉挽回よ」

 俺の隣にきて、軽く尻を触って慰める言葉を伝えてくれるゲイデさん。
 物言いと行動は相変わらずあっち系の変態だが、言わんとしてくれている気持ちだけは伝わった。


 でもね? 尻触って言うこと?
 気付きたくない嫌な気持ちも伝わったよ、うん。

 それとあとアンタ臭い。凄く臭い。
 生ゴミ臭がパねぇ……テラ臭い。


「くちゃい……」

 ナイチチちゃんも鼻を摘んで一言。


 美幼女にそんなこと言われた日には、俺だったら速攻で死を選ぶ。


「酷い言われようね。仕方ないじゃない……もの凄く臭い体液の魔物なんだから……。儂のガラスのように繊細な心が傷ついちゃうわよ」

 野太い女性言葉と身を悶えさせながら、ハンカチをキィ~な仕草と胸を押さえて嘘泣き。
 早く慰めてプリーズと、俺に視線でチラチラ合図してくる気色悪さ炸裂なゲイデさん。
 


 粉々に砕けて塵となれ。


 ◇◇◇


「さてと……今度は私の出番ね。刮目せよ」

 額のサークレットに中指を立てての、凄く香ばしいポーズでふんぞり変えるキズナさん。

「こんなこともあろうかと、人肌でまったり温めていた、とっても良い感じの人参を使ってハメハメすることになろうとは! ――この鬼畜!」

 とかなんとか盛大に仰って、豊満とは全く言えない胸のあるかどうか疑わしい谷間から、いやらしくぬめぇ~っと取り出した、これまた筆舌し難いヤバさテラMAXな形をした、当社比増し増しな人参。


 何処までも果てしなくエロフのツッコミどころが満載過ぎて、どこから指摘すれば良いのか非常に判断に困る。
 

「この私のエキスが染み込んだ人参を投げ込めば、穴に引き篭もって隠れてる一角兎らまで興奮して、悦び勇んで穴に入れてく――あ」

「そおぉ~い!」

 これ以上はナイチチちゃんの情操教育上よろしくないので、素早く人参を取り上げ投げ捨ててやった。


 すると――。


「真面目に効果あったんですね」

「儂もドン引きよ」

「ちょっと巫山戯たけど、嘘は言ってないわよ? 発情して出てきたのよ」


 人間――違った。
 エロフのエキスにそんな効果はない。
 あったとしても認めない。


「うわぁ……こわいめのうさた――うさぎさんがいっぱい」

 真っ赤な目をギラつかせた大量の一角兎が、何処からともなくそこら中から湧いて出た。
 
「キズナさん……発情と言うより……なんか怒ってますよ、アレ」

「大好物の人参にエロフの変な汁をつけられた挙句、雑かつ粗末に扱われた所為で怒ったんじゃないかしら? 儂でも怒る」

「変な汁って……過酷な言われようね、私」

 数十匹の怒り狂った一角兎が、俺達を取り囲むように展開していく。


 更に――。


「群れのボスまでご登場ですか。これはやっちゃった感がパねぇですね、ゲイデさん」

「キズナのエキスがよっぽど気に入らんらしいわね。相当に怒っていらっしゃるわよ、アレ」

「酷っ⁉︎ 二人して、酷っ⁉︎」


 地面が競り上がり、そこから土竜モグラのように姿を現した巨大な三角兎。

 群れを統率するボスがそれ。
 一般の個体よりも遥かに体躯が大きく、頭に毛ならぬ角が三本生えているのが特徴。

「一角兎なら俺でも勝てる自信がありますけど……アレは無理」

「でしょうね。アレの相手は儂がしてあげるわ。タダちゃんはナイチチと向こうで集団戦の練習をしてなさいな」

 戦斧をブンっと振り翳し、勇ましく構えて威嚇するゲイデさん。


 オネェじゃなければ、凄く格好良いのに。
 ホント、残念で仕方ない。


「おにぃた――おにぃちゃん、いこ。うさた――うさぎさんとあそぼ」

 魔物に囲まれていると言うのに、暢気な台詞で手を引っ張るナイチチちゃん。

「許さないわよ、兎共――」

 そんな中、一人だけ温度が違う雰囲気のキズナさん。
 何処から出したのか見てなかったけども、なんか禍々しいまでのテラ凄い威圧感を纏う錫杖を手にして憤慨していたり。


 そして――遂に死の踊りキルダンスが始まった。


「あらら。本気で怒っていらっしゃる……ヤっべ」

 ふんぞり返って偉そうな群れのボスである三角兎以外、一斉に後ろ足を地面に打ちつけ敵意を露わにし始めた。

 一角兎が怒った時に見せる、足ダンなストンピングがそれ。
 普段は大したことのない下位の魔物だけど、この時ばかりは危険度増し増しになる。


 次の瞬間――。


 真っ赤な眼で睨んでいた数十匹の一角兎が、遂に群がってきたのだった――。



 ――――――――――
 変態エロフがやらかして色々とヤバくね?
 キズナさん、なんて残念な女っ⁉︎ ∑(゚Д゚)
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