End of all hope

紫ノ宮風香

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密談

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「名を秘された次期女王殿下であったかな」

「いえ。国が滅びる直前に、先代女王陛下より王位を受け継いでいます」

明かりを抑えた室内で、二人の人影が大きな机を挟み相対している。

「では、女王としての名乗りを?」

壮年の男の声は怪訝そうに問いかけ、それに答える若い女性の声は低く、感情を抑えるような口調だ。

「それはできません。国が滅び、そして国を滅ぼしたモノの正体は解らぬまま。僅かに逃げ延びた民は隣国で酷い目にあわされています。

アヴァロン国王の貴方に頼まねばならない事が増えて申し訳ありません。
故国から逃れた民の保護もお願いします」

「民の保護? かの国に布告をすれば、最初に戦場に立たされるのは秘された聖国の民ではないのか」

「愚かな国王と王候貴族は既に禁忌に手を伸ばしました。故国の民を贄にし、力を得ようとしています。

時間がありません。急ぎ戻り、国王とその周辺を潰します。妹であればこれから先の事を読み取れるでしょう。どうか故国の民の保護を」

若い女性の口調こそはやや震えつつも抑えられていたが、その表情は既に凍てついた怒りが浮かんでいた。
怒りで魔力が暴走しないよう抑えるのが一苦労な程に。
そして彼女は無詠唱で魔方陣を展開してその姿を消した。







「陛下!こちらから強い魔術の波動を感じましたがご無事でしたか!」

限られた者にだけ使われる謁見室に飛び込んできたのは宮廷魔術師長と騎士団長だった。

「いちいち騒ぐな。これは非公式の会見だ。
呼ぶ手間が省けたから良いがな。

今から急ぎ西の国境へ向かうように。
秘された聖国が失われた。」

「「何ですと!」」

「そして西の隣国は禁忌に手を出した。じきに神の鉄槌が下る。
その方らは難民の保護と、難民に紛れて逃げようとする隣国の王族や貴族がいたら捕えるように。
国王であろうとも大罪人だ。容赦は要らぬ」

国王の言葉に驚き顔を一瞬だけ見合わせた二人は、予想以上の緊急事態に更に驚き、一礼し手配のため急ぎ持ち場へ戻っていった。





国王の手元にあるのは一枚の書簡。数年前に極秘裏に届けられたそれには、未知の存在から受けるであろう襲撃について記されていた。

幾つかの可能性と起こりうる被害の大きさ。
王族の血を絶やさぬための縁談の申し入れ。
そして想定された中でも最悪に近い結果。

神に仕える神官もしくは巫女として国を統べていた王族。本来であれば結界の外へは知らされない諸々の事柄もそこには記されていた。

「聖国の役割を引き継げる気がしない・・・な。
やることが山積みだ。まあ、あれ王太子にはいい試練か」

アヴァロン王の呟きを聞くものは誰もいなかった。
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