妖精に連れ去られた娘

紫ノ宮風香

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お腹がすいた

ずっとそれだけが頭の中をぐるぐる回っている。
前にごはんを食べたのはいつだっけ?
視界もずっとぐるぐる回っている。
眠くても寝ることも許されずにあれこれやらされてる。



──ここに置いてもらえるだけ幸せだと思え

そう言われてあれこれ言いつけられて、ずっと動きっぱなし。ここにいる他の子たちはもっとのんびり過ごしているのに。
誰も庇ってくれなかった。みんなが知らん顔をした。
可愛がられた記憶などない。幸せなんて感じたこともない。そもそも幸せって何?



──お前ももう成人だからな。明日からは領主様の館で奉公だ。感謝して今までの倍以上働け!

今までもごはんを食べる時間や寝る時間もなく動いていたのに・・・・・
他の子たちが大人に甘えたり、笑いながらはしゃいでいるのを、横目で見ながら洗濯や畑仕事や水汲みをしていた。
皆が寝静まっている時間に森へ行くように命じられ、薪に使えそうな枝やキノコや木の実集めもしていた。

今までの倍以上なんてとても無理だった。





絶望と共に気が遠くなり、体が崩れ落ち──





☆★☆★☆★

くすくすと笑う声が遠くから響く。



「あらあら、成人したとたんに体が朽ちたのね。
普通なら餓死・・過労死・・・している扱いだものね。
でも、今回は感情があまりない状態だったから面白くないわね」

成人までは何があっても死ねない・・・・・・・・・・・・・・・呪い。そして、常人であれば命を落とすような暴力以外の悪意が常に纏わりつく呪い。

「ああ、でも今回は少し収穫があったわね。
今生の父親がかけた『誰からも愛されない』という呪い。
相乗効果で定着させたら次から絶対楽しいわね」





せいぜい苦しみなさい。私のために。
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