黄昏の騎士

紫ノ宮風香

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《彼》

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魔導騎士として邪悪な魔導師の追跡を続けて十数年。
常に後手後手になってしまっている。

邪法を埋め込まれた人を見つける事が困難なままだった。《僕》が察知できるのは術が発動する時。
魂を《奴》に喰われないようにするので精一杯な日々。



ある時、邪法を埋め込まれた被害者の共通点に気が付いた。
何らかの手段で既に生気を奪われた後、邪法の埋め込みをされていたようだ。

現在は、直接追跡を続ける僕等と、こちらの世界の社会に溶け込み情報収集するメンバーの二手に分かれ、模索を続けている。



以前は黄昏時に時折見かけた《彼女》。ここ2~3年程は深夜か早朝にしか見かけなくなった。見かける頻度も明らかに減っている。
そして日を追う毎に生気のない表情になっていた。

そして嫌な情報が入ってくる。
邪法を埋め込まれた人の共通点が出たという。
ブラック企業と呼ばれる、人を奴隷のように使い潰すところで働かされていた者が、リタイアした後に邪法を発動されているようだと。
発動時の被害者の置かれてる環境が様々過ぎて、洗い出すのに時間がかかってしまったようだ。

深夜か早朝にしか見かけなくなった、生気のない《彼女》。気になったから、情報収集メンバーに《彼女》の周辺の調査を頼んでみた。
気のせいならいいのだが・・・・







まさかと思いたかった。
久しぶりに黄昏時にに見た《彼女》は、既に邪法を埋め込まれていたどころか術が発動していた。
黒い靄が《彼女》を覆い、魂も体内もずたずたにしているところだった。倒れかかる《彼女》に駆け寄り、抱き止めてから邪法を止めた。

即死は避けれたが、神経の一部と内臓の半分くらいの細胞が壊死を起こしかけていた。
この世界の医療技術では助からない。
《僕》はとりあえず情報収集メンバーの一人の部屋に《彼女》を担ぎ込んだ。とりあえずの延命と、とある選択をしてもらうために。

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