2人ではじめる異世界無双~無限の魔力と最強知識のコンビは異世界をマッハで成り上がります〜

こんぺいとー

文字の大きさ
上 下
27 / 38
第四章──暴かれ出した真実

商人の掟

しおりを挟む
「……つまり俺は影と、テンキは魔王と戦ったらまずいから、お互いの標的を入れ替える……ってことか」

そう、実に単純なことだ。
既に勇者ではないテルが魔王を倒そうと、歪みは発生しない。
ターゲットを入れ替えて打倒すれば、影の目論見は完全に途絶えることになるのだ。

「だとしても、どう探すんだよ? 魔王なんて聞いたこともないぞ」

『そのためにもまずは国家公認魔導士にならないと』

国家公認魔導士。テルの体を取り戻すあるいは新たに作るべく、目指してきた道だ。

「王立第三魔導図書館……だったか? そんなに凄いのか、そこの極秘資料ってのは」 

『それだけじゃないよ、だって国家公認魔導士ってだけで情報の集めやすさは段違いになるんだから』

「人々の上に立つ憧れの存在……か」

日本でいう医者とか先生……いわゆるエリートと言われる職だろう。
確かにそれだけの肩書きがあれば、ある程度は──。

「……いや、待て。そんな必要、ないんじゃないか……?」

『え?』

「ほら、アレだ、助けただろ? ……そう、アルカ商会だよ」

テルの脳裏に浮かぶのは、魔導列車で助けた赤髪の少女。

シエラは『それだ!!』と叫ぶ。

──というか、使った固定転移陣は確か、アルカ商会のものだ。

あまりの急展開にそれを忘れていた二人は、ぷっと吹き出す。

気づけば、目の前にアルカがいた。

「……よ」

「よ、じゃなかろうがたわけ」

とりあえず、挨拶だけしといた。



■ ■ ■

「なるほど。それで妾に会いに来たということじゃな?」

アルカは紅茶──正確にはそれらしきモノだが──を啜り、そうまとめて正否を問う。

いわゆる大人の味、と言うやつが苦手なテルは紅茶にしかめっ面をしながら首肯した。
全く、コーヒーといいこれといい、好んで飲む者の気持ちは一生分かりそうにない。

「あぁ、かなり最悪の事態で使わざるを得なかった……もしアレまで奪われてたら死んでたな、俺」

「スラれんようになっておるわ。当たり前じゃろうが」

そこは天下のアルカ商会、抜け目などあるはずもなかった。
本当に頼もしい。

『すっごい技術力。……さすが商会のトップだね』

シエラでさえそう言うのだから、相当に凄いシステムなのだろう。

「さて、それで……魔王、じゃったな」

「あぁ、何か知ってることはないか? なんでもいいんだ」

さて、そんな天下の商会のトップなのだ。
きっと耳寄りな情報を持っているに違いないとテルは期待する。
───だが、アルカは首を横に振った。

「残念じゃが妾は何も知らぬ。管轄外というやつじゃな。……じゃが、妾はエルフの一人にちと借りを作っておる。お主が訪ねられるよう、図っておこう。」

……エルフ?
なぜ今ここでエロ同人妖精が?

『えろどうじん? が何かは分からないけど、エルフは魔族とも呼ばれててね。魔王はエルフから生まれるし、魔王の伝承を記録してるって言うけど……でもまさか、エルフと意思疎通できるなんて思いもしなかったよ』

「魔族、か……」

どうやらテルの思っているエルフとは少し違うらしい。
もっとこう、神聖かつエロティックな雰囲気だと思っていたのだが……魔族という字面から受ける印象は真逆だ。

「その言葉はあまり使わん方がいい……差別用語じゃしな。彼らはそう呼ばれることを何よりも嫌う」

「あ、あぁ悪い、気をつけるよ」

テルは顔を引き攣らせる。
現代では、肌の色だけでもあれだけの差別が呪いのように根づいていた。
勇者、魔王、そんな大きなモノが交錯するコチラの世界では尚更だろう。

「村への転移陣は常備しておるが、許可が要る。今から用意させても一日ほどかかるが、それでよいか?」

「一日!? そんな早く行けるのか!! さっすがだなぁ、本当にありがとなアルカ!」

もっと三日、あるいは一週間ほどかかると思っていた。
アルカは礼を聞くと、満足気にない胸を張る。

「うむ、お主は命の恩人じゃからな。借りは返す、それが商人の掟じゃ」

全く、頼りになる幼女──あ、おばさんだったか、とテルは訂正するが。

途端、今まで受けたどんな殺意よりもどす黒いオーラが辺りに充満した。

「ぁ゛?」

「ゴメンナサイ」

『……テル。この世には絶対に言っちゃいけない事って言うのがあるんだよ……』

シエラの呆れた声に、テルは同意し反省せざるをえなかった。



■ ■ ■

一日後。

「ほれ、許可が出たぞ。随分待たせてすまぬな」

「いやクッソはえーよ、現代並だ……そんじゃ、行ってくる」

「うむ、戻ってくる時はまた渡した陣を使うと良い。あぁ、後エルフの名はチェネラという。変わり者じゃが悪い奴ではない、まぁお主とは気が合うじゃろう。……では、達者でな」

魔法陣を起動すると、最早慣れきった転移の光がテルを包んだ。

『ほんと、何から何まで感謝だね』

「あぁ────と、うわぁ!?」

転移の先、地に足をつくと同時に人にぶつかり、テルは大雑把にこけた。

「ご、ごめん。君、大丈夫?」

「あ、いや悪いのはこっちだから、気にすんな──!?」

こちらに駆け寄ってきた男性は、フードを被ってはいないものの。
若葉色の長い髪と真紅の瞳、端正な顔立ち──それをテルは見慣れていて。
また、懐かしいモノであった。

「レンリィ!?」

余りにも、奇妙すぎる再会がここに実現した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

飯屋の娘は魔法を使いたくない?

秋野 木星
ファンタジー
3歳の時に川で溺れた時に前世の記憶人格がよみがえったセリカ。 魔法が使えることをひた隠しにしてきたが、ある日馬車に轢かれそうになった男の子を助けるために思わず魔法を使ってしまう。 それを見ていた貴族の青年が…。 異世界転生の話です。 のんびりとしたセリカの日常を追っていきます。 ※ 表紙は星影さんの作品です。 ※ 「小説家になろう」から改稿転記しています。

伯爵令嬢の秘密の知識

シマセイ
ファンタジー
16歳の女子高生 佐藤美咲は、神のミスで交通事故に巻き込まれて死んでしまう。異世界のルナリス伯爵家にミアとして転生し、前世の記憶と知識チートを授かる。魔法と魔道具を秘密裏に研究しつつ、科学と魔法を融合させた夢を追い、小さな一歩を踏み出す。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

魔拳のデイドリーマー

osho
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生した少年・ミナト。ちょっと物騒な大自然の中で、優しくて美人でエキセントリックなお母さんに育てられた彼が、我流の魔法と鍛えた肉体を武器に、常識とか色々ぶっちぎりつつもあくまで気ままに過ごしていくお話。 主人公最強系の転生ファンタジーになります。未熟者の書いた、自己満足が執筆方針の拙い文ですが、お暇な方、よろしければどうぞ見ていってください。感想などいただけると嬉しいです。

千変万化の最強王〜底辺探索者だった俺は自宅にできたダンジョンで世界最強になって無双する〜

星影 迅
ファンタジー
およそ30年前、地球にはダンジョンが出現した。それは人々に希望や憧れを与え、そして同時に、絶望と恐怖も与えた──。 最弱探索者高校の底辺である宝晶千縁は今日もスライムのみを狩る生活をしていた。夏休みが迫る中、千縁はこのままじゃ“目的”を達成できる日は来ない、と命をかける覚悟をする。 千縁が心から強くなりたいと、そう願った時──自宅のリビングにダンジョンが出現していた! そこでスキルに目覚めた千縁は、自らの目標のため、我が道を歩き出す……! 7つの人格を宿し、7つの性格を操る主人公の1読で7回楽しめる現代ファンタジー、開幕! コメントでキャラを呼ぶと返事をくれるかも!(,,> <,,) カクヨムにて先行連載中!

記憶喪失になった嫌われ悪女は心を入れ替える事にした 

結城芙由奈@コミカライズ発売中
ファンタジー
池で溺れて死にかけた私は意識を取り戻した時、全ての記憶を失っていた。それと同時に自分が周囲の人々から陰で悪女と呼ばれ、嫌われている事を知る。どうせ記憶喪失になったなら今から心を入れ替えて生きていこう。そして私はさらに衝撃の事実を知る事になる―。

処理中です...