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小鳩克夫は刑務所から出所した。
刑に服してから8年の月日が経っていた。
やっと自由の身になれると思いながらも、自分の感情をコントロールできなかったために、不幸にしてしまった人達を思うと胸も痛んだ。
ゆっくりとした足取りで、この先、どうして生きて行こうか、どうやって美加子、綾と愛しあえるのかを考えていると、目の前には小鳩を養子にした両親が迎えに来てくれていた。
「お父さん、お母さん。色々ご迷惑をお掛けしました。俺のせいでしなくていい苦労もたくさんさせてしまって、本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げて小鳩は養父母に謝罪した。
「かっちゃん。もう、頭を上げておくれよ。私達こそ、長い間ごめんよ。綾を助けようとしてくれて本当にありがとうね」
養母は泣きながらそう言って小鳩を抱きしめた。養父も泣きながら小鳩の肩を抱いた。
小鳩が事件を起こした時、養父母は小鳩の身を案じた。
きっと何か理由があって、小鳩が人を殺めたのだろうと思ったからだった。
養父母がその理由を尋ねると、愛した女性のために罪を犯してしまったとだけ告げた。
服役中も小鳩は、養父母との面会を拒否していた。これ以上、迷惑をかけたくなかったからだ。
模範囚として、少しでも早くに出所したいと願いながら投獄されていた4年前、養母から娘の綾が帰って来たと手紙をもらった。
娘がいた事は知っていたが、自分が養子に入ったときはその娘は行方知れずとだけ聞いていた。
娘が居なくなり、憔悴していた養父母に綾の話はできなかったし、写真を見せてもらうこともしなかった。
だから綾が帰ってきた知らせは、小鳩にとっては安心したことだった。
もう自分のことは忘れて、綾と家族3人仲良く暮らしてほしいと思い、小鳩から縁を切るようにその後の手紙は読まなかった。
それでもどうしても話したいことがあると、何度も何度も養父母の代理人の弁護士に説得され、面会に来てくれた養父母から全てを聞くことになった。
話を聞くうちに、その娘の綾が美加子だと言う事実に、小鳩は大きなショックを受けた。
「まさか、美加子さんが、本当は綾さんだったなんて!そんな事が!」
養父母の話を聞いて小鳩は肩を震わせ泣いた。
全身全霊を掛け愛し、本気で愛し合った美加子が、実は自分に近しい人間だった事実に胸が苦しかった。
運命の悪戯だとしても、あまりにも酷《むご》いと思った。
養父母は、憔悴しきっている小鳩に丁寧にこれまでの事を全て語った。
綾が、河合の魔の手に落ちて行方知れずになっていたこと。
偶然とはいえ、河合から小鳩が綾を救っていたこと。
小鳩と離れた後は、美加子にとっては地獄の日々だったようだが、麻里矢と言う男がやっと綾を家に連れて帰してくれ、真実が全て分かったのだと話してくれた。
その話を聞いてからというもの、小鳩は1日も早く刑務所から出たいと願った。綾に直ぐにでも会いたかった。
刑に服してから8年の月日が経っていた。
やっと自由の身になれると思いながらも、自分の感情をコントロールできなかったために、不幸にしてしまった人達を思うと胸も痛んだ。
ゆっくりとした足取りで、この先、どうして生きて行こうか、どうやって美加子、綾と愛しあえるのかを考えていると、目の前には小鳩を養子にした両親が迎えに来てくれていた。
「お父さん、お母さん。色々ご迷惑をお掛けしました。俺のせいでしなくていい苦労もたくさんさせてしまって、本当に申し訳ありませんでした」
深々と頭を下げて小鳩は養父母に謝罪した。
「かっちゃん。もう、頭を上げておくれよ。私達こそ、長い間ごめんよ。綾を助けようとしてくれて本当にありがとうね」
養母は泣きながらそう言って小鳩を抱きしめた。養父も泣きながら小鳩の肩を抱いた。
小鳩が事件を起こした時、養父母は小鳩の身を案じた。
きっと何か理由があって、小鳩が人を殺めたのだろうと思ったからだった。
養父母がその理由を尋ねると、愛した女性のために罪を犯してしまったとだけ告げた。
服役中も小鳩は、養父母との面会を拒否していた。これ以上、迷惑をかけたくなかったからだ。
模範囚として、少しでも早くに出所したいと願いながら投獄されていた4年前、養母から娘の綾が帰って来たと手紙をもらった。
娘がいた事は知っていたが、自分が養子に入ったときはその娘は行方知れずとだけ聞いていた。
娘が居なくなり、憔悴していた養父母に綾の話はできなかったし、写真を見せてもらうこともしなかった。
だから綾が帰ってきた知らせは、小鳩にとっては安心したことだった。
もう自分のことは忘れて、綾と家族3人仲良く暮らしてほしいと思い、小鳩から縁を切るようにその後の手紙は読まなかった。
それでもどうしても話したいことがあると、何度も何度も養父母の代理人の弁護士に説得され、面会に来てくれた養父母から全てを聞くことになった。
話を聞くうちに、その娘の綾が美加子だと言う事実に、小鳩は大きなショックを受けた。
「まさか、美加子さんが、本当は綾さんだったなんて!そんな事が!」
養父母の話を聞いて小鳩は肩を震わせ泣いた。
全身全霊を掛け愛し、本気で愛し合った美加子が、実は自分に近しい人間だった事実に胸が苦しかった。
運命の悪戯だとしても、あまりにも酷《むご》いと思った。
養父母は、憔悴しきっている小鳩に丁寧にこれまでの事を全て語った。
綾が、河合の魔の手に落ちて行方知れずになっていたこと。
偶然とはいえ、河合から小鳩が綾を救っていたこと。
小鳩と離れた後は、美加子にとっては地獄の日々だったようだが、麻里矢と言う男がやっと綾を家に連れて帰してくれ、真実が全て分かったのだと話してくれた。
その話を聞いてからというもの、小鳩は1日も早く刑務所から出たいと願った。綾に直ぐにでも会いたかった。
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