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麻里矢が言っていることは一切理解できなかったが、美加子は小鳩の名を聞くと目から自然と涙が流れてきた。
小鳩の顔が自然と浮かぶ。
新しい記憶も留めておけないはずの美加子だが、何年経っても小鳩と愛しあえた1週間は蘇った。
小鳩から受けた愛のある行為。
何度も自分を愛してくれて悦楽を与えてくれた。
もう離れないと、離したくないと願っていた相手。
愛してるとお互い言葉にして愛しあえた、美加子にとって唯一大切な男《ひと》
「小鳩克夫は、あんたが行方不明になった後に小鳩家に養子に入った男だ。だからあの男も、実はあんたが戸籍上自分の姉だと分かっていない。偶然に出会い、あんたのために河合を殺した。運命は皮肉だな」
麻里矢の話を聞きながら、美加子は小鳩の笑顔しか思い浮かばない。
小鳩が美加子を愛したことしか思い浮かばない。
短い期間だったにもかかわらず、美加子の胸の中には小鳩がいた。
麻里矢の話は難し過ぎて一切入ってこないが、小鳩と自分が愛しあえた記憶は十分に呼び覚まされた。
「もうあんたは自由だ。小鳩の家に戻るなら送っていく」
麻里矢が言うと美加子はにっこり微笑んだ。
「あああ、あうう」
なんて言っているか、麻里矢に理解は出来なかった。おそらく家に帰る事を同意しているんだろうと麻里矢は汲み取った。
麻里矢は純粋に、美加子を小鳩綾に戻してやりたいと思った。
この家にいた忌まわしい記憶は、いずれ美加子の記憶から綺麗さっぱり消えるのは、医師である麻里矢も分かっていた。
その時、ダン!と襖が開けられ、やはり喪服姿の志貴が美加子と麻里矢の前に現れた。
「麻里矢。お前ここで何をしている?何の権限があって、そいつとふたりきりになっている?そいつは親父と俺の愛玩だ!親父がいなくなった途端、今更お前がシャシャリ出てくんじゃねぇ!」
麻里矢は志貴を見て狂っていると思った。
志貴は一昨年結婚し、今は娘が1人いた。
確かに回数は減っていたが、それでも妻を欺き、父と一緒に美加子を弄び続けていた。
だが父が亡くなった以上、もう美加子に手を出すのは妻にもバレるだろうから控えると麻里矢は思っていた。
しかし、現実はそんなに甘くは無かった。
父が亡くなってもまだ美加子に執着する志貴の姿を見て、我が兄ながら鬼畜そのものだと改めて思った。
小鳩の顔が自然と浮かぶ。
新しい記憶も留めておけないはずの美加子だが、何年経っても小鳩と愛しあえた1週間は蘇った。
小鳩から受けた愛のある行為。
何度も自分を愛してくれて悦楽を与えてくれた。
もう離れないと、離したくないと願っていた相手。
愛してるとお互い言葉にして愛しあえた、美加子にとって唯一大切な男《ひと》
「小鳩克夫は、あんたが行方不明になった後に小鳩家に養子に入った男だ。だからあの男も、実はあんたが戸籍上自分の姉だと分かっていない。偶然に出会い、あんたのために河合を殺した。運命は皮肉だな」
麻里矢の話を聞きながら、美加子は小鳩の笑顔しか思い浮かばない。
小鳩が美加子を愛したことしか思い浮かばない。
短い期間だったにもかかわらず、美加子の胸の中には小鳩がいた。
麻里矢の話は難し過ぎて一切入ってこないが、小鳩と自分が愛しあえた記憶は十分に呼び覚まされた。
「もうあんたは自由だ。小鳩の家に戻るなら送っていく」
麻里矢が言うと美加子はにっこり微笑んだ。
「あああ、あうう」
なんて言っているか、麻里矢に理解は出来なかった。おそらく家に帰る事を同意しているんだろうと麻里矢は汲み取った。
麻里矢は純粋に、美加子を小鳩綾に戻してやりたいと思った。
この家にいた忌まわしい記憶は、いずれ美加子の記憶から綺麗さっぱり消えるのは、医師である麻里矢も分かっていた。
その時、ダン!と襖が開けられ、やはり喪服姿の志貴が美加子と麻里矢の前に現れた。
「麻里矢。お前ここで何をしている?何の権限があって、そいつとふたりきりになっている?そいつは親父と俺の愛玩だ!親父がいなくなった途端、今更お前がシャシャリ出てくんじゃねぇ!」
麻里矢は志貴を見て狂っていると思った。
志貴は一昨年結婚し、今は娘が1人いた。
確かに回数は減っていたが、それでも妻を欺き、父と一緒に美加子を弄び続けていた。
だが父が亡くなった以上、もう美加子に手を出すのは妻にもバレるだろうから控えると麻里矢は思っていた。
しかし、現実はそんなに甘くは無かった。
父が亡くなってもまだ美加子に執着する志貴の姿を見て、我が兄ながら鬼畜そのものだと改めて思った。
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