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食事は割とまともな物が与えられた。
もちろん妻が作るものではなく、家政婦が作る食事だったので味も良かった。
ただ、1日に一食しか与えられない。
毎日昼過ぎに神下の妻が、膳を自ら美加子に運んで来ると苦々しく美加子を睨みつける。
美加子は目の前に膳が置かれても、妻がいる間は決して手を付けない。
妻がこれから自分に与える物を、受け入れなければならないからだった。
「どうせ喋れないメス豚が!」
妻は怒りのまま、美加子を罵倒し頬を何度も叩く。
美加子は痛みと恐怖に耐えるしかなく、身を固くして妻の怒りを受け入れた。
「売女《ばいた》!夫だけでなく息子までも手玉にとって!お前なんか見世物小屋の女みたいなもんじゃないか!」
激昂した妻は箒を手に持つと、バシバシと箒の柄で美加子を叩く。
この時間は、美加子にとってこの家での1番の苦痛だった。
意味もわからず一方的に折檻を受ける。
そんなに憎いなら、近付かなければ良いのにと美加子は思っていた。
妻が本当は、美加子を追い出したいことを美加子には理解できない。
そこまで深く人の心を読めれば、もうとっくにこの家から出て行っている。
美加子は目の前の現実しか受け止められず理解ができない。
だから妻は、ただ自分を責めて傷つけることに、悦びを感じているんだと美加子は思っている。
毎日繰り返される行為に、妻の怒りはおさまることを知らない。美加子への憎しみは、日に日に増していくばかりだった。
洋服の上からでも、美加子の白い肌はミミズ腫れになり、美加子は声なき声を絞り出し泣きながら妻に土下座をして許しを乞う。
それでも鬼の形相の妻は、自分の気が晴れるまで美加子を痛めつける。
志貴の持つ性質は、この妻に似たのだと美加子は思っている。
この生き地獄に、美加子はいつも小鳩の顔が薄らと浮かぶ。
夫を殺した小鳩。
自分のために、夫を殺してくれたことは美加子でも理解はできた。
とても短かった、ふたりで過ごせた幸せな時間。
だが引き離され、もう二度と小鳩に会えないと思うと、美加子は小鳩の姿を涙ながらに浮かべるしかできなかった。
小鳩を忘れないことだけが、美加子が生きる意味でもあった。
妻がやっと出て行き、美加子は受けた痛みが和らいでくると、もう冷えた膳に手を伸ばした。
はじめに汁を啜り口の渇きを癒し、無表情のまま食事をゆっくりと口に運ぶ。
腹が減れば、どんな状況であれ食欲はある。ただ本能のままに空腹を満たすだけだった。
そして傷ついた体で湯に浸かるのはまた苦行そのものであったが、夜になれば獣達が美加子の元に訪れるので、体を浄めて獣達を受け入れなければならない。
「美加子、今日もこんなに肌が痛めつけられて。可哀想に」
神下はそう言いながらも、自分の妻に折檻され傷つく美加子の肌を見て、ただ志貴と共に狂喜し犯し続けた。
美加子は神下家の人間達によって、人間としての尊厳も失わされていた。
もちろん妻が作るものではなく、家政婦が作る食事だったので味も良かった。
ただ、1日に一食しか与えられない。
毎日昼過ぎに神下の妻が、膳を自ら美加子に運んで来ると苦々しく美加子を睨みつける。
美加子は目の前に膳が置かれても、妻がいる間は決して手を付けない。
妻がこれから自分に与える物を、受け入れなければならないからだった。
「どうせ喋れないメス豚が!」
妻は怒りのまま、美加子を罵倒し頬を何度も叩く。
美加子は痛みと恐怖に耐えるしかなく、身を固くして妻の怒りを受け入れた。
「売女《ばいた》!夫だけでなく息子までも手玉にとって!お前なんか見世物小屋の女みたいなもんじゃないか!」
激昂した妻は箒を手に持つと、バシバシと箒の柄で美加子を叩く。
この時間は、美加子にとってこの家での1番の苦痛だった。
意味もわからず一方的に折檻を受ける。
そんなに憎いなら、近付かなければ良いのにと美加子は思っていた。
妻が本当は、美加子を追い出したいことを美加子には理解できない。
そこまで深く人の心を読めれば、もうとっくにこの家から出て行っている。
美加子は目の前の現実しか受け止められず理解ができない。
だから妻は、ただ自分を責めて傷つけることに、悦びを感じているんだと美加子は思っている。
毎日繰り返される行為に、妻の怒りはおさまることを知らない。美加子への憎しみは、日に日に増していくばかりだった。
洋服の上からでも、美加子の白い肌はミミズ腫れになり、美加子は声なき声を絞り出し泣きながら妻に土下座をして許しを乞う。
それでも鬼の形相の妻は、自分の気が晴れるまで美加子を痛めつける。
志貴の持つ性質は、この妻に似たのだと美加子は思っている。
この生き地獄に、美加子はいつも小鳩の顔が薄らと浮かぶ。
夫を殺した小鳩。
自分のために、夫を殺してくれたことは美加子でも理解はできた。
とても短かった、ふたりで過ごせた幸せな時間。
だが引き離され、もう二度と小鳩に会えないと思うと、美加子は小鳩の姿を涙ながらに浮かべるしかできなかった。
小鳩を忘れないことだけが、美加子が生きる意味でもあった。
妻がやっと出て行き、美加子は受けた痛みが和らいでくると、もう冷えた膳に手を伸ばした。
はじめに汁を啜り口の渇きを癒し、無表情のまま食事をゆっくりと口に運ぶ。
腹が減れば、どんな状況であれ食欲はある。ただ本能のままに空腹を満たすだけだった。
そして傷ついた体で湯に浸かるのはまた苦行そのものであったが、夜になれば獣達が美加子の元に訪れるので、体を浄めて獣達を受け入れなければならない。
「美加子、今日もこんなに肌が痛めつけられて。可哀想に」
神下はそう言いながらも、自分の妻に折檻され傷つく美加子の肌を見て、ただ志貴と共に狂喜し犯し続けた。
美加子は神下家の人間達によって、人間としての尊厳も失わされていた。
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