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●100万分の1●

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車内で2人きりになると、菜々緒は思い詰めた顔で、膝に乗せている手が小刻みに震えていた。

「そんなに緊張しないで。ただ、本当のことを知りたいだけなんだ。山内さんが無事で本当にホッとしている」

「そんなに気にかけていてくれたと思ってなくて。助けたいと思ってくれて嬉しいです」

健なら、本当に真古登から助けてくれるのではないかと菜々緒は希望を持った。

「いきなりだけど、品川の借金を支払うお金を、山内さんが援交で得ていると思っているんだけどあっている?」

早速健は真相を菜々緒に尋ねる。
菜々緒はコクンと頷いた。

「はい。春頃、真古登から言われて始めました。でも今と違って、その時はただ会って食事をしたり、数時間外でデートするだけでした」
  
「……どうしてコーヒーショップを突然辞めたの?」

今は売春行為をしている事は知っているが、それよりも姿を消した事を健はやんわりと尋ねる。

「……好きで辞めたんじゃないんです。行けなくなってしまったんです」

行けなくなった本当の理由を、菜々緒は健に告げることが出来ない。
逸郎が菜々緒にしたことは、公になれば犯罪行為に当たるのだから。
ただ健は、どうしてそんな状態になったのか知りたい。

「行けなくなったと言うのは?品川と何かあったの?」

菜々緒は首を振る。

「……出会い系で知り合った人と、その、本気でお付き合いを始めたんです」

菜々緒の言い分に健は違和感を感じる。
他に男が出来たとしても、コーヒーショップを無断で行かなくなると言う選択肢は無いはずだからだ。電話1本の連絡も入れられないのは不自然でしかない。
菜々緒は何かを隠していると思った。

「それならどうして、きちんとコーヒーショップを辞めなかったの?突然来なくなって、店長も心配していたよ」

あくまでも優しく健は諭す。

「……真古登に見つかるのが怖かったんです。連れ戻されると思って。結局見つかって連れ戻されました。もう真古登と別れたいのに……」

菜々緒の言う事は、ただ聞いていれば不自然ではないが、健はどうしても納得がいかなかった。
本当にそれだけの理由で姿を消したのなら、菜々緒の仕事ぶりを買っていただけに正直残念だと思った。
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