46 / 206
●アンビバレント●
2-3
しおりを挟む
賢一郎が両親を殺害し地方裁判所での結審が終わり、判決後しばらく経った後に健の元に1本の電話が入った。
「楜沢さん、町田支店の支店長から本部長宛のお電話ですが」
健は電話に出る。
『お疲れ様です。すみません、本部長にご相談があるのですが』
何事かと健は考えた。
「どうしました?本部長が外出中なので私が代わりにお伺いします」
『実は……』
支店長は言い出しにくいようだった。
「何ですか?」
『先程、お客様がお見えになったのですが。不動産の売却を望まれているんですが、その、問題がありまして』
支店長の口ぶりに、事故物件かと直ぐに健は思い付いた。
しかも、事故物件でも余程の物件だと推察した。
「どんな事故物件ですか?」
皆まで言わなくても、察してくれて支店長はホッとした。
『1年半ぐらい前に起きた、未成年の子供が両親を殺害した事件があったんですが』
健は直ぐにはピンと来なかった。
でも場所的に、朧げながら記憶を辿る。
「あったような……でもハッキリとは記憶がないな」
『先日裁判が終わって刑が確定したようです。それで、その物件を売却したいと親族が相談に来られて』
「相談に来た方と言うのは?」
『被害者の男性のご両親です。被害者の子供は、両親を殺した少年だけだったようで』
刑が確定しての売却と聞いて、その未成年者が相続欠格になったのかと健は頭の中で色々考える。
相続人である子供が相続出来ないとなると、所有者の直系尊属の両親に相続権が移るからだ。
『……今回の事件は、未成年が絡む大きな事件だったので、その物件をどう対応したら良いかと』
事件は風化されつつあったが、ここで動きがあればまた注目されるのでないかと支店長は考えて、独断できないと本社の不動産部の本部長に連絡して来たのだった。
「分かりました。その物件は私が預かります。近いうちに、その売主さんに詳しい話をしてみましょう」
事故物件など珍しいことではないが、事件が大きかっただけに慎重に扱わなくてはならないかと健も思った。
電話を切ると、健は部下に売主との接触を指示した。
「楜沢さん、町田支店の支店長から本部長宛のお電話ですが」
健は電話に出る。
『お疲れ様です。すみません、本部長にご相談があるのですが』
何事かと健は考えた。
「どうしました?本部長が外出中なので私が代わりにお伺いします」
『実は……』
支店長は言い出しにくいようだった。
「何ですか?」
『先程、お客様がお見えになったのですが。不動産の売却を望まれているんですが、その、問題がありまして』
支店長の口ぶりに、事故物件かと直ぐに健は思い付いた。
しかも、事故物件でも余程の物件だと推察した。
「どんな事故物件ですか?」
皆まで言わなくても、察してくれて支店長はホッとした。
『1年半ぐらい前に起きた、未成年の子供が両親を殺害した事件があったんですが』
健は直ぐにはピンと来なかった。
でも場所的に、朧げながら記憶を辿る。
「あったような……でもハッキリとは記憶がないな」
『先日裁判が終わって刑が確定したようです。それで、その物件を売却したいと親族が相談に来られて』
「相談に来た方と言うのは?」
『被害者の男性のご両親です。被害者の子供は、両親を殺した少年だけだったようで』
刑が確定しての売却と聞いて、その未成年者が相続欠格になったのかと健は頭の中で色々考える。
相続人である子供が相続出来ないとなると、所有者の直系尊属の両親に相続権が移るからだ。
『……今回の事件は、未成年が絡む大きな事件だったので、その物件をどう対応したら良いかと』
事件は風化されつつあったが、ここで動きがあればまた注目されるのでないかと支店長は考えて、独断できないと本社の不動産部の本部長に連絡して来たのだった。
「分かりました。その物件は私が預かります。近いうちに、その売主さんに詳しい話をしてみましょう」
事故物件など珍しいことではないが、事件が大きかっただけに慎重に扱わなくてはならないかと健も思った。
電話を切ると、健は部下に売主との接触を指示した。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
パラダイス・ロスト
真波馨
ミステリー
架空都市K県でスーツケースに詰められた男の遺体が発見される。殺された男は、県警公安課のエスだった――K県警公安第三課に所属する公安警察官・新宮時也を主人公とした警察小説の第一作目。
※旧作『パラダイス・ロスト』を加筆修正した作品です。大幅な内容の変更はなく、一部設定が変更されています。旧作版は〈小説家になろう〉〈カクヨム〉にのみ掲載しています。

聖女の如く、永遠に囚われて
white love it
ミステリー
旧貴族、秦野家の令嬢だった幸子は、すでに百歳という年齢だったが、その外見は若き日に絶世の美女と謳われた頃と、少しも変わっていなかった。
彼女はその不老の美しさから、地元の人間達から今も魔女として恐れられながら、同時に敬われてもいた。
ある日、彼女の世話をする少年、遠山和人のもとに、同級生の島津良子が来る。
良子の実家で、不可解な事件が起こり、その真相を幸子に探ってほしいとのことだった。
実は幸子はその不老の美しさのみならず、もう一つの点で地元の人々から恐れられ、敬われていた。
━━彼女はまぎれもなく、名探偵だった。
登場人物
遠山和人…中学三年生。ミステリー小説が好き。
遠山ゆき…中学一年生。和人の妹。
島津良子…中学三年生。和人の同級生。痩せぎみの美少女。
工藤健… 中学三年生。和人の友人にして、作家志望。
伊藤一正…フリーのプログラマー。ある事件の犯人と疑われている。
島津守… 良子の父親。
島津佐奈…良子の母親。
島津孝之…良子の祖父。守の父親。
島津香菜…良子の祖母。守の母親。
進藤凛… 家を改装した喫茶店の女店主。
桂恵… 整形外科医。伊藤一正の同級生。
遠山未歩…和人とゆきの母親。
遠山昇 …和人とゆきの父親。
山部智人…【未来教】の元経理担当。
秦野幸子…絶世の美女にして名探偵。百歳だが、ほとんど老化しておらず、今も若い頃の美しさを保っている。
天使の顔して悪魔は嗤う
ねこ沢ふたよ
ミステリー
表紙の子は赤野周作君。
一つ一つで、お話は別ですので、一つずつお楽しいただけます。
【都市伝説】
「田舎町の神社の片隅に打ち捨てられた人形が夜中に動く」
そんな都市伝説を調べに行こうと幼馴染の木根元子に誘われて調べに行きます。
【雪の日の魔物】
周作と優作の兄弟で、誘拐されてしまいますが、・・・どちらかと言えば、周作君が犯人ですね。
【歌う悪魔】
聖歌隊に参加した周作君が、ちょっとした事件に巻き込まれます。
【天国からの復讐】
死んだ友達の復讐
<折り紙から、中学生。友達今井目線>
【折り紙】
いじめられっ子が、周作君に相談してしまいます。復讐してしまいます。
【修学旅行1~3・4~10】
周作が、修学旅行に参加します。バスの車内から目撃したのは・・・。
3までで、小休止、4からまた新しい事件が。
※高一<松尾目線>
【授業参観1~9】
授業参観で見かけた保護者が殺害されます
【弁当】
松尾君のプライベートを赤野君が促されて推理するだけ。
【タイムカプセル1~7】
暗号を色々+事件。和歌、モールス、オペラ、絵画、様々な要素を取り入れた暗号
【クリスマスの暗号1~7】
赤野君がプレゼント交換用の暗号を作ります。クリスマスにちなんだ暗号です。
【神隠し】
同級生が行方不明に。 SNSや伝統的な手品のトリック
※高三<夏目目線>
【猫は暗号を運ぶ1~7】
猫の首輪の暗号から、事件解決
【猫を殺さば呪われると思え1~7】
暗号にCICADAとフリーメーソンを添えて♪
※都市伝説→天使の顔して悪魔は嗤う、タイトル変更
リモート刑事 笹本翔
雨垂 一滴
ミステリー
『リモート刑事 笹本翔』は、過去のトラウマと戦う一人の刑事が、リモート捜査で事件を解決していく、刑事ドラマです。
主人公の笹本翔は、かつて警察組織の中でトップクラスの捜査官でしたが、ある事件で仲間を失い、自身も重傷を負ったことで、外出恐怖症(アゴラフォビア)に陥り、現場に出ることができなくなってしまいます。
それでも、彼の卓越した分析力と冷静な判断力は衰えず、リモートで捜査指示を出しながら、次々と難事件を解決していきます。
物語の鍵を握るのは、翔の若き相棒・竹内優斗。熱血漢で行動力に満ちた優斗と、過去の傷を抱えながらも冷静に捜査を指揮する翔。二人の対照的なキャラクターが織りなすバディストーリーです。
翔は果たして過去のトラウマを克服し、再び現場に立つことができるのか?
翔と優斗が数々の難事件に挑戦します!
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

迸れ!輝け!!営業マン!!!
飛鳥 進
ミステリー
あらすじ
主人公・金智 京助(かねとも けいすけ)は行く営業先で事件に巻き込まれ解決に導いてきた。
そして、ある事件をきっかけに新米刑事の二条 薫(にじょう かおる)とコンビを組んで事件を解決していく物語である。
第3話
TV局へスポンサー営業の打ち合わせに来た京助。
その帰り、廊下ですれ違った男性アナウンサーが突然死したのだ。
現場に臨場した薫に見つかってしまった京助は当然のように、捜査に参加する事となった。
果たして、この男性アナウンサーの死の真相如何に!?
ご期待ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる