恋するシャボン玉(鳴かない杜鵑 side episode2)

五嶋樒榴

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No.2 お茶漬けの味

20

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裕人は無言で服を着て俺の部屋を出て行った。
俺はホッとした。

そうだよね。
冷静になれば、俺への気持ちも、ただの家族ごっこの延長だって気付くはずだ。

あはは。
変なの。
セックスもしてねーのに、なんでこんなに胸が苦しくなる?

伊織を捨てた時だって苦しかったが、あいつとは何度も何度もセックスした。
あいつが浮気して頭きて愛想尽かしたけど、やっぱり別れる時は苦しかった。
裕人とはまだキスしかしてねーのに、なんでこんなに苦しくなる?
こんなんじゃ、セックスした後じゃ、裕人と別れるってなったら、俺、生きていけなくなるかも。

だから、やっぱりしなくて良かったんだ。
あいつが去って良かったんだ。
もう明日から来ねぇかもしれねぇ。
もう二度と会えないかもしれねぇ。
でも、あいつを知ってから去られるより良い。

「………………裕人?」

玄関が空いて、部屋に裕人が戻って来た。

「………………忘れ物か?」

「ええ。買ってくるの忘れてたから」

裕人はそう言うと俺の目の前に、ドラッグストアの袋からドサドサと中身を出した。

「ローション、あったほうが良いっすよね。あと、ゴム?これは必要かどうか分からなかったけど、とりあえず?」

不機嫌そうに裕人は言う。

「怖い、怖いって言うから買って来たんですからね!これで怖くないでしょ?」

は?
何言ってんの?
何勘違いしてんの?

「違うッ!怖いって言うのは、さっきの話、ちゃんと聞いてた?俺はこう言うことじゃなくて、お前をもっと」

あ、ずりー。
また最後まで聞かねーつもりだな。
口塞げばどうにかなるって思ってんだろ、このクソガキ!
そう思いながら、なんで俺はこいつとのキスが気持ちいいんだ?

「………………好きになってくださいよ。離れねーし。俺の家族を離すわけないでしょ」

ズクンと心臓の鼓動が強くなった。

家族。
家族になってくれるんか?
それ、俺はお前にとってどのポジション?
親父?兄貴?
嫁?

「どうするんです?風呂に入らなくて良いの?俺は別に気にしないけど、至さん嫌じゃないすか?嫌じゃないなら、直ぐにいただきます」

「わー!待てッ!俺、まだ返事してないだろッ!」

焦る俺。
笑う裕人。

「どっちの返事?家族になる返事?シャワー浴びたいって返事?どっちかひとつだけ聞いてあげます」

ひとつだけ?
ってそれって、シャワー浴びれなくなるじゃん!

「ひとつは無理だよ!家族にもなりたいし、シャワーも浴びたい!」

「ブー。はい、家族になるってのは聞き入れます。でもシャワーはダメ。俺を焦らした罰です」

マジか!
無理!
無理無理!
お前!
鬼だろッ!

「ごめんて!焦らしてごめん!もう焦らさない!だからシャワーを浴びさせてくれ!お願いします!」 

もう俺涙目だよ。

「分かりました。じゃあソッコー浴びて、絶対恥ずかしがらないでくださいね。少しでも焦らしたら、もう許しませんからね」

うううううう。
こえーよ。
目がマジこえーよ。
俺、好きになっちゃまずい奴、好きになっちまった?
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