恋するシャボン玉(鳴かない杜鵑 side episode2)

五嶋樒榴

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No.2 お茶漬けの味

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裕人は家族を失ってから、本当に散々な目に遭ったようだ。
信二さんから聞いた話だと、家を焼いたのは裕人の母親の愛人だったとのこと。

裕人の親父は単身赴任でほとんど家に帰ってくることがなく、母親はその寂しさと欲求不満を、パート先の独身の男で埋めていたそうだ。
そしてその男が家に放火して、裕人から家族を奪った。

その日は、父親も赴任先から帰ってきていた日だったと言うことで、おそらく犯人はそれを知ってわざとその日を狙ったんだろう。
犯人と裕人の母親の間に、どんなトラブルがあったかまでは知らないが、放火するほど犯人の中で愛憎があったことは想像できる。

放火が原因で、父親、母親、妹が死んで、裕人だけが消防隊員に救助された。
その後、父親の弟家族に引き取られたが、叔父である父親の弟に虐待をされたと聞いた。

その時の話は俺にはしたがらないが、家族を不幸にした母親のこともあってか、初めてうちに来た時も、同じ母親と言うポジションの俺のお袋に警戒心があった。
この頃は、やっと少しずつ慣れたのかお袋にも懐いてきたが。


「俺、母親に裏切られたせいで一人ぼっちになって、親戚の家でも死にそうなぐらいボコられたり、なんで生きてたんかとスゲー人生恨みまくったけど、五島組に入れて、みんなに優しくされて、今、スゲー幸せっす。至さんも女将さんも優しいし。俺、みんな大好きっす」


そうやって話してくれるようにもなった。

大好きかぁ。
うん。俺もお前が好きだよ。
可愛い奴だと思ってる。

お袋も裕人を気に入っていて、なにかと世話を焼く。
でもお袋はちゃんと裕人と距離を置く。
そこは流石水商売のオンナだ。裕人の事が手にとるように分かるらしい。


「ヒロちゃん、女性恐怖症じゃないかな。あたしが近づくとまだ身構えるんだよね。前よりは懐いてくれてるんだけど、なんだか寂しいよ」


女性恐怖症。
俺には分からない感覚。

伊織に教え込まれるまで、俺は普通にオンナを抱いていた。
正直、今は抱くより抱かれる方が気持ち良くなっちまったけどね。
それでも伊織と別れた後、どうしても堪らなくなるとオンナを抱くこともある。
伊織以外には、男に抱かれたいと思ってないからだ。

「至さん、戸締りオッケーっす」

店の鍵を閉め、裕人は俺に鍵を渡す。
そしていつも途中まで一緒に帰る。

「しかし、女将さんもタフっすよね。こっちの店の後、スナック夜中までやってるんすから」

お袋は今の店を、付き合って2年ぐらいの男とやっていたが、男が若い女を作った事に激怒して店から追い出した。
ひとりでこの店をやっていたが、俺が一緒にやるようになってからは、こっちの閉店前に別に経営しているスナックのママになる。

正直そうやって仕事してる方が、お袋には生きがいになってる。
もう男に頼る年でもない。でも男はいる。そこはやっぱりオンナなんだろうね。
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