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依存からの共存
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まだ引き返せる。
真騎士の中で自分の声が響く。
春夜を失ったとしても、春夜を穢さなくて済む。
まだ間に合う。
良心の呵責に苛まされ、自身の声が更に脳内に強く訴えかける。
耐えられず麻人の顔を思い浮かべようとしても、思い出せないほど真騎士の両眼は春夜を焼き付けていた。
春夜は腕を伸ばすと真騎士の首に両手をかけた。
グッと手に力を込め、春夜の親指は真騎士の首に食い込む。
「僕以外を見ないで。考えないで。真騎士さんも早く裸になって」
春夜の瞳は静かに真騎士を捕らえる。
真騎士はその瞳に逃れられない。従うようにTシャツを脱ぐと厚い胸板が現れ、春夜は右手で真騎士の胸に手を当てた。
「いつ見ても逞しいよね。ずっと触れたかった。でも触れられなかった」
春夜はそう言うと上体を起こして、真騎士に抱きつき胸に頬を当てる。
「もう僕のだ。この身体は僕のもの」
真騎士は何も答えられない。
「真騎士さんが横になって。僕が気持ち良くしてあげる」
「……………もう無理だ。春夜。まだ間に合う。叔父と甥のままでいさせてくれ。勝手な事を言ってるのは分かってる。俺が全て悪かった。お前が俺を殺したいほど憎んでるなら死んでも良い」
真騎士はそう言うと、胸に春夜をギュッと抱き締めた。
「……………ヤダ!ヤダヤダヤダヤダ!イヤダ!!」
春夜が大声で叫び始める。
「どうして分かってくれないの?僕は真騎士さんを愛してる!あの人が羨ましかった!ずっと僕だけを見てたのに、なんでもう僕を見てくれないの?僕を捨てようとしないで!」
春夜は止まらず叫び続ける。
「分かったから!落ち着いて!春夜!」
春夜は真騎士の腕の中で号泣する。
もう離さないと背中に腕を回し、真騎士を逃さないように抑えつける。
駄々をこねる子供のように真騎士を離さない。
真騎士は落ち着くまで待とうと春夜を抱き締め髪を優しく撫でる。
「僕を捨てないで」
「捨てるわけがない」
落ち着かせようと髪を撫で続ける。
「だって、僕から逃げてばかりいる。僕の気持ちを無視する。ずっとそうだ。僕が真騎士さんを求めても、真騎士さんはあの人を求めてた。僕を愛していたんでしょ?それなのに自分勝手でズルい人」
春夜の恨み言を聞きながら、真騎士は髪を撫でるしかできない。
「お前を愛してる。俺のした事を許してくれとは言わない。だけど、これ以上はお前を苦しめたくない。麻人とも別れる。もう誰も愛さない。だから、お前も俺に拘るのはやめてくれ。自分を大事にしてくれ。まだ間に合う。やり直せる」
真騎士がそう言うと春夜は笑う。
「……………無理だよ。真騎士さんが欲しくて欲しくて我慢できないもの。あの人みたいに愛されたい。身も心も愛されたい。愛して欲しい。もう僕はおかしくなりそうだ。ううん。おかしくなってるのかも」
もう逃げられない。
目の前の春夜を救う事は、自分にしか出来ないと思った。
罪深い自分のせいで、春夜に普通の幸せを与える事はできないと悟った。
真騎士は、自分勝手に、本能のままに、欲望に忠実になる事を決めた。
真騎士の中で自分の声が響く。
春夜を失ったとしても、春夜を穢さなくて済む。
まだ間に合う。
良心の呵責に苛まされ、自身の声が更に脳内に強く訴えかける。
耐えられず麻人の顔を思い浮かべようとしても、思い出せないほど真騎士の両眼は春夜を焼き付けていた。
春夜は腕を伸ばすと真騎士の首に両手をかけた。
グッと手に力を込め、春夜の親指は真騎士の首に食い込む。
「僕以外を見ないで。考えないで。真騎士さんも早く裸になって」
春夜の瞳は静かに真騎士を捕らえる。
真騎士はその瞳に逃れられない。従うようにTシャツを脱ぐと厚い胸板が現れ、春夜は右手で真騎士の胸に手を当てた。
「いつ見ても逞しいよね。ずっと触れたかった。でも触れられなかった」
春夜はそう言うと上体を起こして、真騎士に抱きつき胸に頬を当てる。
「もう僕のだ。この身体は僕のもの」
真騎士は何も答えられない。
「真騎士さんが横になって。僕が気持ち良くしてあげる」
「……………もう無理だ。春夜。まだ間に合う。叔父と甥のままでいさせてくれ。勝手な事を言ってるのは分かってる。俺が全て悪かった。お前が俺を殺したいほど憎んでるなら死んでも良い」
真騎士はそう言うと、胸に春夜をギュッと抱き締めた。
「……………ヤダ!ヤダヤダヤダヤダ!イヤダ!!」
春夜が大声で叫び始める。
「どうして分かってくれないの?僕は真騎士さんを愛してる!あの人が羨ましかった!ずっと僕だけを見てたのに、なんでもう僕を見てくれないの?僕を捨てようとしないで!」
春夜は止まらず叫び続ける。
「分かったから!落ち着いて!春夜!」
春夜は真騎士の腕の中で号泣する。
もう離さないと背中に腕を回し、真騎士を逃さないように抑えつける。
駄々をこねる子供のように真騎士を離さない。
真騎士は落ち着くまで待とうと春夜を抱き締め髪を優しく撫でる。
「僕を捨てないで」
「捨てるわけがない」
落ち着かせようと髪を撫で続ける。
「だって、僕から逃げてばかりいる。僕の気持ちを無視する。ずっとそうだ。僕が真騎士さんを求めても、真騎士さんはあの人を求めてた。僕を愛していたんでしょ?それなのに自分勝手でズルい人」
春夜の恨み言を聞きながら、真騎士は髪を撫でるしかできない。
「お前を愛してる。俺のした事を許してくれとは言わない。だけど、これ以上はお前を苦しめたくない。麻人とも別れる。もう誰も愛さない。だから、お前も俺に拘るのはやめてくれ。自分を大事にしてくれ。まだ間に合う。やり直せる」
真騎士がそう言うと春夜は笑う。
「……………無理だよ。真騎士さんが欲しくて欲しくて我慢できないもの。あの人みたいに愛されたい。身も心も愛されたい。愛して欲しい。もう僕はおかしくなりそうだ。ううん。おかしくなってるのかも」
もう逃げられない。
目の前の春夜を救う事は、自分にしか出来ないと思った。
罪深い自分のせいで、春夜に普通の幸せを与える事はできないと悟った。
真騎士は、自分勝手に、本能のままに、欲望に忠実になる事を決めた。
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