30 / 33
依存からの共存
10
しおりを挟む
まだ引き返せる。
真騎士の中で自分の声が響く。
春夜を失ったとしても、春夜を穢さなくて済む。
まだ間に合う。
良心の呵責に苛まされ、自身の声が更に脳内に強く訴えかける。
耐えられず麻人の顔を思い浮かべようとしても、思い出せないほど真騎士の両眼は春夜を焼き付けていた。
春夜は腕を伸ばすと真騎士の首に両手をかけた。
グッと手に力を込め、春夜の親指は真騎士の首に食い込む。
「僕以外を見ないで。考えないで。真騎士さんも早く裸になって」
春夜の瞳は静かに真騎士を捕らえる。
真騎士はその瞳に逃れられない。従うようにTシャツを脱ぐと厚い胸板が現れ、春夜は右手で真騎士の胸に手を当てた。
「いつ見ても逞しいよね。ずっと触れたかった。でも触れられなかった」
春夜はそう言うと上体を起こして、真騎士に抱きつき胸に頬を当てる。
「もう僕のだ。この身体は僕のもの」
真騎士は何も答えられない。
「真騎士さんが横になって。僕が気持ち良くしてあげる」
「……………もう無理だ。春夜。まだ間に合う。叔父と甥のままでいさせてくれ。勝手な事を言ってるのは分かってる。俺が全て悪かった。お前が俺を殺したいほど憎んでるなら死んでも良い」
真騎士はそう言うと、胸に春夜をギュッと抱き締めた。
「……………ヤダ!ヤダヤダヤダヤダ!イヤダ!!」
春夜が大声で叫び始める。
「どうして分かってくれないの?僕は真騎士さんを愛してる!あの人が羨ましかった!ずっと僕だけを見てたのに、なんでもう僕を見てくれないの?僕を捨てようとしないで!」
春夜は止まらず叫び続ける。
「分かったから!落ち着いて!春夜!」
春夜は真騎士の腕の中で号泣する。
もう離さないと背中に腕を回し、真騎士を逃さないように抑えつける。
駄々をこねる子供のように真騎士を離さない。
真騎士は落ち着くまで待とうと春夜を抱き締め髪を優しく撫でる。
「僕を捨てないで」
「捨てるわけがない」
落ち着かせようと髪を撫で続ける。
「だって、僕から逃げてばかりいる。僕の気持ちを無視する。ずっとそうだ。僕が真騎士さんを求めても、真騎士さんはあの人を求めてた。僕を愛していたんでしょ?それなのに自分勝手でズルい人」
春夜の恨み言を聞きながら、真騎士は髪を撫でるしかできない。
「お前を愛してる。俺のした事を許してくれとは言わない。だけど、これ以上はお前を苦しめたくない。麻人とも別れる。もう誰も愛さない。だから、お前も俺に拘るのはやめてくれ。自分を大事にしてくれ。まだ間に合う。やり直せる」
真騎士がそう言うと春夜は笑う。
「……………無理だよ。真騎士さんが欲しくて欲しくて我慢できないもの。あの人みたいに愛されたい。身も心も愛されたい。愛して欲しい。もう僕はおかしくなりそうだ。ううん。おかしくなってるのかも」
もう逃げられない。
目の前の春夜を救う事は、自分にしか出来ないと思った。
罪深い自分のせいで、春夜に普通の幸せを与える事はできないと悟った。
真騎士は、自分勝手に、本能のままに、欲望に忠実になる事を決めた。
真騎士の中で自分の声が響く。
春夜を失ったとしても、春夜を穢さなくて済む。
まだ間に合う。
良心の呵責に苛まされ、自身の声が更に脳内に強く訴えかける。
耐えられず麻人の顔を思い浮かべようとしても、思い出せないほど真騎士の両眼は春夜を焼き付けていた。
春夜は腕を伸ばすと真騎士の首に両手をかけた。
グッと手に力を込め、春夜の親指は真騎士の首に食い込む。
「僕以外を見ないで。考えないで。真騎士さんも早く裸になって」
春夜の瞳は静かに真騎士を捕らえる。
真騎士はその瞳に逃れられない。従うようにTシャツを脱ぐと厚い胸板が現れ、春夜は右手で真騎士の胸に手を当てた。
「いつ見ても逞しいよね。ずっと触れたかった。でも触れられなかった」
春夜はそう言うと上体を起こして、真騎士に抱きつき胸に頬を当てる。
「もう僕のだ。この身体は僕のもの」
真騎士は何も答えられない。
「真騎士さんが横になって。僕が気持ち良くしてあげる」
「……………もう無理だ。春夜。まだ間に合う。叔父と甥のままでいさせてくれ。勝手な事を言ってるのは分かってる。俺が全て悪かった。お前が俺を殺したいほど憎んでるなら死んでも良い」
真騎士はそう言うと、胸に春夜をギュッと抱き締めた。
「……………ヤダ!ヤダヤダヤダヤダ!イヤダ!!」
春夜が大声で叫び始める。
「どうして分かってくれないの?僕は真騎士さんを愛してる!あの人が羨ましかった!ずっと僕だけを見てたのに、なんでもう僕を見てくれないの?僕を捨てようとしないで!」
春夜は止まらず叫び続ける。
「分かったから!落ち着いて!春夜!」
春夜は真騎士の腕の中で号泣する。
もう離さないと背中に腕を回し、真騎士を逃さないように抑えつける。
駄々をこねる子供のように真騎士を離さない。
真騎士は落ち着くまで待とうと春夜を抱き締め髪を優しく撫でる。
「僕を捨てないで」
「捨てるわけがない」
落ち着かせようと髪を撫で続ける。
「だって、僕から逃げてばかりいる。僕の気持ちを無視する。ずっとそうだ。僕が真騎士さんを求めても、真騎士さんはあの人を求めてた。僕を愛していたんでしょ?それなのに自分勝手でズルい人」
春夜の恨み言を聞きながら、真騎士は髪を撫でるしかできない。
「お前を愛してる。俺のした事を許してくれとは言わない。だけど、これ以上はお前を苦しめたくない。麻人とも別れる。もう誰も愛さない。だから、お前も俺に拘るのはやめてくれ。自分を大事にしてくれ。まだ間に合う。やり直せる」
真騎士がそう言うと春夜は笑う。
「……………無理だよ。真騎士さんが欲しくて欲しくて我慢できないもの。あの人みたいに愛されたい。身も心も愛されたい。愛して欲しい。もう僕はおかしくなりそうだ。ううん。おかしくなってるのかも」
もう逃げられない。
目の前の春夜を救う事は、自分にしか出来ないと思った。
罪深い自分のせいで、春夜に普通の幸せを与える事はできないと悟った。
真騎士は、自分勝手に、本能のままに、欲望に忠実になる事を決めた。
1
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/essay.png?id=5ada788558fa89228aea)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない
すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。
実の親子による禁断の関係です。
23時のプール
貴船きよの
BL
輸入家具会社に勤める市守和哉は、叔父が留守にする間、高級マンションの部屋に住む話を持ちかけられていた。
初めは気が進まない和哉だったが、そのマンションにプールがついていることを知り、叔父の話を承諾する。
叔父の部屋に越してからというもの、毎週のようにプールで泳いでいた和哉は、そこで、蓮見涼介という年下の男と出会う。
彼の泳ぎに惹かれた和哉は、彼自身にも関心を抱く。
二人は、プールで毎週会うようになる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる