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依存からの共存
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仕事から帰ってきた真騎士と向かい合って春夜は夕飯を共にしていた。
「今日は帰ってきてから何してたの?」
真騎士が尋ねると春夜はにっこり笑う。
「友達と部屋で勉強してたよ」
春夜がそう答えると真騎士は春夜を見つめる。
「予備校は本当に通わなくて良いのか?来年は受験生だし、成績の伸びもあまり良くないよ?お前は姉さんから」
真騎士が言いかけているが、春夜は席を立った。
「ご馳走様。予備校は本当に良いから。別にそこまでして大学に行く気はない」
春夜が食べ終えた食器を重ね、キッチンに運ぶと直ぐに洗い始めた。
「春夜。ちゃんと話を聞きなさい。高校だってランクを落としたんだよ。その方がプレッシャーが無いって言ったから」
真騎士の小言は続く。
「そうさ。無理して真騎士さんと同じ高校に入ったって、どうせ特進科には行けなかったし」
真騎士を見ずに春夜は言う。
「だったら今の高校の方がのんびり勉強もできてる。特に行きたい大学もないし、将来だってまだ決めてない」
春夜の態度にまだ反抗期なのかと真騎士は思った。
その原因も自分にあると分かっている。
「……………将来の事は焦らすつもりはないよ。ただ選択肢を増やすためにも、大学だけは上を目指して欲しいと思って」
親心である。
このままでは、ちゃんと育てると誓ったのに、未知瑠に顔向けができないと思った。
「僕は真騎士さんと違って優秀じゃないから。僕が行ける大学で十分だ」
春夜はそう言うと、キッチンを出て自分の部屋に向かった。
真騎士はため息をつくと、テーブルに肘をつき頬杖をついた。
参った。
きっとあの夜のことが原因で春夜は……………。
ずっとお兄ちゃんと呼んでくれていたのに、高校生になって俺の呼び方も名前で呼ぶようになった。
どうすれば春夜のためになるのか。
どうすれば。
自分の高校生の時とは春夜は明らかに違う。
そのジレンマに真騎士は苦悩する。
春夜が生まれた時、まだ自分も子供だった。
甥だと言われても、何か違う生物のような感覚だった。
可愛いと愛でながら、春夜に対して邪な思いもあった。
春夜を性的な存在として見ていた時期は、自分は異常者だと思ったこともあった。
大学生になり、社会人になり、春夜が甥であり、自分が大切に育てなければと自覚が芽生えても来ていた。
しかし、あの夜。
春夜が初めての精通であろうことになった夜。
その原因は自分であり、そして、真騎士に男の恋人がいると分かってしまった夜。
あの夜から、春夜はきっと自分を軽蔑してるんだと真騎士は思った。
中学に上がるときに、将来に向けて話し合いがあった。
真騎士と暮らすか、祖母と暮らすか。
「僕は、このまま東京に残りたい。お兄ちゃんと今までと同じ生活がしたい」
何も知らない母は、真騎士にそのまま春夜を託した。
きっと真騎士に男の恋人がいると知ったら、その場面を春夜に見られたことを知ったら、きっと母に春夜を取り上げられていたに違いない。
春夜が生きやすい将来を、きちんと考えないといけないと真騎士は思った。
「今日は帰ってきてから何してたの?」
真騎士が尋ねると春夜はにっこり笑う。
「友達と部屋で勉強してたよ」
春夜がそう答えると真騎士は春夜を見つめる。
「予備校は本当に通わなくて良いのか?来年は受験生だし、成績の伸びもあまり良くないよ?お前は姉さんから」
真騎士が言いかけているが、春夜は席を立った。
「ご馳走様。予備校は本当に良いから。別にそこまでして大学に行く気はない」
春夜が食べ終えた食器を重ね、キッチンに運ぶと直ぐに洗い始めた。
「春夜。ちゃんと話を聞きなさい。高校だってランクを落としたんだよ。その方がプレッシャーが無いって言ったから」
真騎士の小言は続く。
「そうさ。無理して真騎士さんと同じ高校に入ったって、どうせ特進科には行けなかったし」
真騎士を見ずに春夜は言う。
「だったら今の高校の方がのんびり勉強もできてる。特に行きたい大学もないし、将来だってまだ決めてない」
春夜の態度にまだ反抗期なのかと真騎士は思った。
その原因も自分にあると分かっている。
「……………将来の事は焦らすつもりはないよ。ただ選択肢を増やすためにも、大学だけは上を目指して欲しいと思って」
親心である。
このままでは、ちゃんと育てると誓ったのに、未知瑠に顔向けができないと思った。
「僕は真騎士さんと違って優秀じゃないから。僕が行ける大学で十分だ」
春夜はそう言うと、キッチンを出て自分の部屋に向かった。
真騎士はため息をつくと、テーブルに肘をつき頬杖をついた。
参った。
きっとあの夜のことが原因で春夜は……………。
ずっとお兄ちゃんと呼んでくれていたのに、高校生になって俺の呼び方も名前で呼ぶようになった。
どうすれば春夜のためになるのか。
どうすれば。
自分の高校生の時とは春夜は明らかに違う。
そのジレンマに真騎士は苦悩する。
春夜が生まれた時、まだ自分も子供だった。
甥だと言われても、何か違う生物のような感覚だった。
可愛いと愛でながら、春夜に対して邪な思いもあった。
春夜を性的な存在として見ていた時期は、自分は異常者だと思ったこともあった。
大学生になり、社会人になり、春夜が甥であり、自分が大切に育てなければと自覚が芽生えても来ていた。
しかし、あの夜。
春夜が初めての精通であろうことになった夜。
その原因は自分であり、そして、真騎士に男の恋人がいると分かってしまった夜。
あの夜から、春夜はきっと自分を軽蔑してるんだと真騎士は思った。
中学に上がるときに、将来に向けて話し合いがあった。
真騎士と暮らすか、祖母と暮らすか。
「僕は、このまま東京に残りたい。お兄ちゃんと今までと同じ生活がしたい」
何も知らない母は、真騎士にそのまま春夜を託した。
きっと真騎士に男の恋人がいると知ったら、その場面を春夜に見られたことを知ったら、きっと母に春夜を取り上げられていたに違いない。
春夜が生きやすい将来を、きちんと考えないといけないと真騎士は思った。
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