子飼-秘密の共有-

五嶋樒榴

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春の夜の夢

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次の日の夜、真騎士は母に電話をかけた。
「実は、春夜の事なんだけど」
自分の仕事が忙しい事、家に帰ってから料理を作るので春夜が夜遅くに夕飯を食べること、やはりひとりでこの部屋に待たせておくのが心配なことを全て打ち明けた。
『そう。あなたが根を上げるのを待ってたの。無理矢理春夜をこっちに連れてくるのはあなたのためにも良くないと思ったし』
「うん。でも、先のことを考えるようになって、春夜と俺が暮らすのは春夜に悪い影響になるかと思って。でも一つ問題があるんだ。当の春夜が俺と離れるのを嫌がってる」
『それも分かってるわよ。ねぇ、もう少し頑張る気はある?』
「どう言うこと?」
『春夜をうちに連れてくるのは大歓迎よ。うちの人も春夜をとても可愛がってるし。でもいきなりこの家に連れてきたら春夜がどうなるか怖いの。学校のお友達とも離れたくないだろうし』
「うん。それで?」
『あなたが心配してるのは夕飯のこととかでしょ?あなたが嫌じゃ無ければ、平日だけでも食事を作ってくれる家政婦を雇うのはどう?』
「家政婦?」
『ええ。お金はかかるけど、それぐらい負担するわよ。もう少し大きくなれば家政婦だって必要なくなるでしょ?小学生の間だけでも雇ってみたら?それでもまだ不安があるなら、その時はちゃんと春夜を説得して私が春夜を育てるわ』
母の意見に真騎士も異論はなかった。
夕飯の買い出しと、夕飯を作ってくれるだけでも助かると真騎士は思った。
『私達も時間がある時はそっちに今まで通りお邪魔するし。今は色々試して、春夜のストレスにならないようにしましょうよ』
母にここまで言ってもらえて真騎士はもう何も異論はなかった。
「ありがとう、母さん」
『良いのよ。本当は春夜と暮らしたいのが本音だけど、春夜に会う度に言われるのよ。お兄ちゃんが大好き。ずっとこの家にいるって。春夜のためになることならなんでも協力するわ。甲斐性のある旦那様と再婚した私を褒めてよね』
母の言葉に真騎士は笑った。
そして春夜に必要とされる自分が嬉しかった。
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