子飼-秘密の共有-

五嶋樒榴

文字の大きさ
上 下
13 / 33
春の夜の夢

13

しおりを挟む




 僕は雫に顔を見られないようにして頭を抱き締める。そうだ、そうだよ。雫はストーカーなんだ。


「僕は雫が大大大大好きだから、、、、、」


 焦りや緊張を悟られないように優しさを全力で声に滲ませ雫に伝える。
 雫と初夜を迎える前に僕が見つけた小型カメラ。恋人になった後でも雫はパソコンで僕の日常をずっと見ていたんだ。あの時に雫は言っていた。


 

───『舞白さん。俺はね?舞白さんから離れると死んでしまうほど弱いんです。だから、カメラをつけて舞白さんをいつも見てるんです。仕事中とか、趣味に熱中して部屋にこもる時とか。さすがにお風呂やトイレは付けてないですよ?カメラ、、、、、』


 仕事中、つまり僕の仕事部屋。雫が絶対不可侵条約を結んだ部屋。そこにカメラがある、、、、、っ!日記を見ているのを見られていた?それとも僕が雫の部屋にいた時から知っていた?カメラに運良く写ってなかったとしてもっ

 
───『あと、盗聴はトイレ以外は付けてます』


 盗聴器!!!あぁ、僕、何か言ってたよね?!どうしよ、何言ってた?決定的なこと言ってないよね?いやでもカメラもあるから、、、、、、、終わったぁ、完全に詰みじゃん!バレてるじゃんこれ!

 
「、、、、、、、舞白さん、思い出しちゃったんですね」

 
 どう考えたって僕に逃げ道がないことへの焦りとどうしてあの時、ストーカー行為を続けることに対して辞めさせなかったのかという後悔が頭を占めた。それにこれからどうすればいいのかということで頭がグルグルになって抱き締めていた雫のことを忘れていた


「、、、、、舞白さんっ!俺の事、嫌いになりましたか?もう一緒に居るの嫌ですか?俺の顔を見るのも嫌になりました?俺のこと、、、、、置いてどこかへ行っちゃうんですか?俺の────」

「え?ちょ、ちょっと落ち着いて」 


 雫が焦りを含んだ声で僕に矢継ぎ早に質問を投げかける。質問全部が僕にとってはありえない話だった。


「雫、僕はどこにも行かないよ。さっきも言ったけど雫が大好きでずっと一緒にいたい。雫のいる今の生活が幸せなんだから」


 そう言えば雫は顔をあげて僕を見つめる。その瞳はまだ暗い闇の中にあって、僕の言葉が何一つ届いてないと理解する。



 
───この人は優しいから

  
「舞白さん。どこまで思い出しましか?」


 僕の欲しい言葉を言ってくれてるんだ。舞白さんを裏切った僕を、酷いことをした僕を、、、、、、、、、、舞白さんは遂に思い出してしまった
 


ああ、先の言葉を聞きたくない
その言葉は僕にとって幸せの終わりを告げるだろうから


 
「何も思い出してないよ?」


 聞いても聞いても聴き足りない可愛い声音から発せられた言葉は幸せの終わりを終わらす言葉だった。


「思い出してないんですか、、、、、?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

営業活動

むちむちボディ
BL
取引先の社長と秘密の関係になる話です。

美しき父親の誘惑に、今宵も息子は抗えない

すいかちゃん
BL
大学生の数馬には、人には言えない秘密があった。それは、実の父親から身体の関係を強いられている事だ。次第に心まで父親に取り込まれそうになった数馬は、彼女を作り父親との関係にピリオドを打とうとする。だが、父の誘惑は止まる事はなかった。 実の親子による禁断の関係です。

23時のプール

貴船きよの
BL
輸入家具会社に勤める市守和哉は、叔父が留守にする間、高級マンションの部屋に住む話を持ちかけられていた。 初めは気が進まない和哉だったが、そのマンションにプールがついていることを知り、叔父の話を承諾する。 叔父の部屋に越してからというもの、毎週のようにプールで泳いでいた和哉は、そこで、蓮見涼介という年下の男と出会う。 彼の泳ぎに惹かれた和哉は、彼自身にも関心を抱く。 二人は、プールで毎週会うようになる。

処理中です...