子飼-秘密の共有-

五嶋樒榴

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春の夜の夢

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あの夜の後、真騎士は特に春夜に対して態度を変えることはなかった。
もちろんその話題に触れないようにしていた。
まさか11歳の甥が自分の情事を見て、発情するなどと思ってもみなかったからだった。
あの夜の出来事から1週間が経った頃だった。
春夜はしょっちゅうパンツを汚すようになった。
恐らく夢精をしているんだと真騎士も気がついた。
性の芽生を11歳で体験させてしまったことに真騎士は罪悪感があった。
「お兄ちゃん。僕、今日塾の日だよ」
春夜に話しかけられて真騎士はハッとした。
「ああ、そうだったね。帰りは迎えにいくから、塾で待っているんだよ」
真騎士がそう言うと春夜はにっこり笑った。

春夜を傷つけてはいけない。
もうこの部屋に麻人あさとを呼ぶのも無理だな。
参った。
春夜を1人にして夜に家を開けるのも無理だし。

真騎士は恋人の端元はたもと麻人とのデートに頭を悩ましていた。
麻人は真騎士の上司。
今までも何度かこの部屋に呼んでいたが、その度に、春夜には早く寝るように言っていた。
そして、妻と子がいる麻人は夜中に帰って行っていた。
しかしあの夜のようなことがあっては、さすがに麻人をこの部屋には呼べないと思った。
またいつ、夜中に春夜に見られるか分からないからだった。

仕方ない。
春夜には、ひとりでお留守番をしてもらうしかないな。
それにしてもさすがに夜中に帰ってくるわけにもいかないか。

「……………いちゃん!」
春夜の声に真騎士はハッとした。
「お兄ちゃん!さっきから呼んでるのに」
不満顔で春夜は言った。
「ああ、ごめん。今日の仕事のことを考えてた。食べ終わったかい?」
真騎士は春夜の食器の上を見た。
トーストとハムエッグはもう皿の上になかった。
「うん。今度の日曜日の約束覚えてる?」
今度の日曜日は、春夜をテーマパークに連れて行く約束になっていた。
「ああ、覚えてるよ。大丈夫だ」
真騎士はそう言うとにっこり笑った。
「良かった。凄く楽しみなんだ!友達が行ってきて凄かったって言ってたから!僕、歯を磨いてくるね」
春夜はそう言うと洗面所に向かった。
真騎士はフッとため息をつくとコーヒーを飲み干した。

春夜をこの家に預かってもう3年が経つのか。
姉さん。
母さん達が手伝ってくれてたとは言え、よくひとりで育ててきたね。
大変だったろうに。
あの男が全て悪いのは分かってる。
姉さんの代わりに俺がしっかり育てるから安心して。
ちゃんと大人になるまで責任持って俺が育てる。
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