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クラブケーキオランデーズソース・ビターピールの香り

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広重は、亮と村瀬のやり取りを知ることもなく、自分のデスクで書類の作成をしていた。
部署に戻った村瀬は、広重の後ろを通り自分のデスクに着く。

「おーい、道明。ちょいちょい」

村瀬が人差し指を動かして広重を呼ぶ。

「はい、なんですか?」

広重は立ち上がると村瀬のデスクの前に立つ。

「この資料、まとめておいてよ。明日の会議に使うんだけど、俺、午後から外行くんでさ。夕方帰るまでに形にしといてよ」

ドサッと資料のファイルを広重は渡された。

「あのッ、俺も午後は外回りで」

「でも俺より早く帰ってくるだろ?俺、18時過ぎまでかかりそうなんだよね。よろしくー」

有無を言わせない威圧感に、広重も何も言い返せなかった。
 
「今日は、オーシャン行かないんだろ?つーか、行けねぇか?」

ポツリと村瀬は言う。

「……はい」

小声で広重は答える。
村瀬の言い方に、自分が貴彦に告白しているのがバレたと思った。

「じゃあ、よろしくな」

村瀬はそう言うと鞄を持ち出かけて行った。
広重はため息をつくと席に戻る。
資料を見て気が重くなってきた。
もしかして嫌がらせかと、被害妄想に陥る。
広重は仕方なく、自分の仕事を一時停止させて、村瀬の仕事を優先しようと思った。
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