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otto
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真幸は疾風を見て言葉を失っていたが、我に帰ると疾風を睨む。
「なんでお前がここに?」
「今日は仕事明けで前を通りかかったんだ。最近、梶田に妙な噂があったもんで様子見だ」
警察は、梶田が六本木の鴉に噛んでいた事を把握していたのかと真幸は思った。
「梶田と何があった?」
疾風は尋ねたが、真幸の舎弟に連れさられて、恐らく梶田は殺されると分かった。
「ちょっとな。それより、サツは梶田の何を嗅ぎ回ってんだ?」
真幸に問われても、警察内部のことをここで話すわけにもいかない。
「少し、話さないか?いくら人通りが少なくても人目がある」
疾風が言うと真幸は笑う。
「そんなに俺と一緒にいるところを見られるのがヤバいなら、お前がサッサと立ち去れよ」
真幸が挑むように笑うと、疾風は真幸を睨んで勝手に真幸の車に乗り込んだ。
「おい!何勝手に乗ってんだ!」
運転手兼ボディガードが疾風を引き摺り出そうとするが、疾風はそれを制して真幸を見る。
「早く乗れ」
真幸はムッとしながらも、疾風との再会に心が躍る。
憎まれ口が出ようと、素直に疾風に従ってしまう。
真幸はボディガード兼運転手を運転席に座らせ、自分は疾風の隣に乗り込んだ。
しばらく車を走らせ、人気の無い河川敷近くに車を止めると、運転手兼ボディガードは車の外に出された。
疾風が真幸の手をギュッと握る。真幸はびっくりして疾風を見つめた。
「もう二度と会えないと思っていた」
疾風はそう言って真幸を見つめる。
疾風の瞳に自分が映っていると思うと、真幸は恥ずかしさと後ろめたさがあった。
「二度と会うつもりは無かった」
真幸は疾風の視線から顔を背けた。
「姿を消したのが俺のためだと分かっている。そのお前の行動に俺は甘えた」
「当然だろ?お前は警察の人間だ。俺を追わないのは正解だったんだ」
真幸はフッと笑う。
あのまま、二度と会ってはいけない相手が、また目の前にいることが怖かった。
離れていても愛していた。
工に身体を慰められながらも、本当は疾風を望んでいた。目の前の男が、欲しくて欲しくて堪らなかった。
「どうして梶田の事務所にいた?梶田を始末するのは、さっきのことで読めたが」
ふたりきりなので、疾風は核心に触れてきた。
隠し事は嫌だった。
「六本木の鴉ってドラッグの事件知ってんだろ?」
真幸は話始める。
「ああ。愚嵐怒って奴らが捌いていたドラッグな」
疾風は愛おしそうに真幸の手を握ったまま答える。
「裏で繋がっていたのが梶田だった事は知ってるか?」
「いや。初めて聞いた。そうか、それでか」
疾風がひとりで納得しているので、真幸は怪訝そうな顔で疾風を見る。
「梶田が最近羽振りがいいと聞いて。俺は今、金町署の刑事課に居るんだが、亀有の梶田の事務所はうちの管轄なもんでたまに様子見をしているんだよ。まぁ、今日は本当にたまたま、仕事明けで前を通っただけだったんだけどな」
警察が張り込んでいない時に、梶田を押さえられて良かったと真幸は思った。
「梶田の舎弟の乃木も死んだ。梶田が行方を晦ましたとなれば、そっちの件で梶田は疑い続けられるんだろうな」
真幸は真春が拉致された話も全て疾風に話した。
全ての話を聞いて、六本木の鴉に真幸も関わっていたと知り、疾風に六本木の鴉を送ってきたのは真幸だと確信した。
「六本木の鴉を俺に送ってくれたのはやっぱりお前だったんだな」
嬉しそうに疾風は言う。
自分と離れていても、真幸は自分を見ていてくれたと思うと疾風は嬉しかった。
「え?俺?お前に何も送ってねーぞ。お前が金町署の人間になってるのだって今知ったんだぞ」
真幸の言葉に疾風は、それなら一体誰が自分に六本木の鴉を送りつけたんだと考えた。
「あ」
真幸は伊織の顔が浮かんで小さな声を上げた。
「どうした?」
疾風が真幸を見つめる。
「いや、なんでもない」
伊織だと知って真幸は納得しながらも、余計なことをしやがってと内心思った。
黙ってしまった真幸の手をギュッと疾風は握る。
ハッとして真幸は疾風を見る。
「…………もう一度、チャンスをくれないか?お前とこうして会えたことに俺は縋りたい」
疾風の言葉に真幸は顔を顰める。
自分も疾風に縋りたい。
こうして会ってしまっては、もう握られた手を離されたくない。
「勝手なことを言うな。俺とお前じゃ生きる世界が違うと言ってんだよ!」
血塗られた自分は、疾風と対等には生きていけないと思いながらも、疾風が真幸の手を握って離そうとしない事が嬉しい。
「ここではなく、ふたりきりになって本心を聞きたい。俺の部屋に来てくれ」
疾風は今すぐにでも真幸が欲しくて堪らない。
もう我慢も限界だった。
「今でも愛してる」
疾風に愛してると言われて、真幸は抗えない。
真幸も疾風を愛しているからだった。
「なんでお前がここに?」
「今日は仕事明けで前を通りかかったんだ。最近、梶田に妙な噂があったもんで様子見だ」
警察は、梶田が六本木の鴉に噛んでいた事を把握していたのかと真幸は思った。
「梶田と何があった?」
疾風は尋ねたが、真幸の舎弟に連れさられて、恐らく梶田は殺されると分かった。
「ちょっとな。それより、サツは梶田の何を嗅ぎ回ってんだ?」
真幸に問われても、警察内部のことをここで話すわけにもいかない。
「少し、話さないか?いくら人通りが少なくても人目がある」
疾風が言うと真幸は笑う。
「そんなに俺と一緒にいるところを見られるのがヤバいなら、お前がサッサと立ち去れよ」
真幸が挑むように笑うと、疾風は真幸を睨んで勝手に真幸の車に乗り込んだ。
「おい!何勝手に乗ってんだ!」
運転手兼ボディガードが疾風を引き摺り出そうとするが、疾風はそれを制して真幸を見る。
「早く乗れ」
真幸はムッとしながらも、疾風との再会に心が躍る。
憎まれ口が出ようと、素直に疾風に従ってしまう。
真幸はボディガード兼運転手を運転席に座らせ、自分は疾風の隣に乗り込んだ。
しばらく車を走らせ、人気の無い河川敷近くに車を止めると、運転手兼ボディガードは車の外に出された。
疾風が真幸の手をギュッと握る。真幸はびっくりして疾風を見つめた。
「もう二度と会えないと思っていた」
疾風はそう言って真幸を見つめる。
疾風の瞳に自分が映っていると思うと、真幸は恥ずかしさと後ろめたさがあった。
「二度と会うつもりは無かった」
真幸は疾風の視線から顔を背けた。
「姿を消したのが俺のためだと分かっている。そのお前の行動に俺は甘えた」
「当然だろ?お前は警察の人間だ。俺を追わないのは正解だったんだ」
真幸はフッと笑う。
あのまま、二度と会ってはいけない相手が、また目の前にいることが怖かった。
離れていても愛していた。
工に身体を慰められながらも、本当は疾風を望んでいた。目の前の男が、欲しくて欲しくて堪らなかった。
「どうして梶田の事務所にいた?梶田を始末するのは、さっきのことで読めたが」
ふたりきりなので、疾風は核心に触れてきた。
隠し事は嫌だった。
「六本木の鴉ってドラッグの事件知ってんだろ?」
真幸は話始める。
「ああ。愚嵐怒って奴らが捌いていたドラッグな」
疾風は愛おしそうに真幸の手を握ったまま答える。
「裏で繋がっていたのが梶田だった事は知ってるか?」
「いや。初めて聞いた。そうか、それでか」
疾風がひとりで納得しているので、真幸は怪訝そうな顔で疾風を見る。
「梶田が最近羽振りがいいと聞いて。俺は今、金町署の刑事課に居るんだが、亀有の梶田の事務所はうちの管轄なもんでたまに様子見をしているんだよ。まぁ、今日は本当にたまたま、仕事明けで前を通っただけだったんだけどな」
警察が張り込んでいない時に、梶田を押さえられて良かったと真幸は思った。
「梶田の舎弟の乃木も死んだ。梶田が行方を晦ましたとなれば、そっちの件で梶田は疑い続けられるんだろうな」
真幸は真春が拉致された話も全て疾風に話した。
全ての話を聞いて、六本木の鴉に真幸も関わっていたと知り、疾風に六本木の鴉を送ってきたのは真幸だと確信した。
「六本木の鴉を俺に送ってくれたのはやっぱりお前だったんだな」
嬉しそうに疾風は言う。
自分と離れていても、真幸は自分を見ていてくれたと思うと疾風は嬉しかった。
「え?俺?お前に何も送ってねーぞ。お前が金町署の人間になってるのだって今知ったんだぞ」
真幸の言葉に疾風は、それなら一体誰が自分に六本木の鴉を送りつけたんだと考えた。
「あ」
真幸は伊織の顔が浮かんで小さな声を上げた。
「どうした?」
疾風が真幸を見つめる。
「いや、なんでもない」
伊織だと知って真幸は納得しながらも、余計なことをしやがってと内心思った。
黙ってしまった真幸の手をギュッと疾風は握る。
ハッとして真幸は疾風を見る。
「…………もう一度、チャンスをくれないか?お前とこうして会えたことに俺は縋りたい」
疾風の言葉に真幸は顔を顰める。
自分も疾風に縋りたい。
こうして会ってしまっては、もう握られた手を離されたくない。
「勝手なことを言うな。俺とお前じゃ生きる世界が違うと言ってんだよ!」
血塗られた自分は、疾風と対等には生きていけないと思いながらも、疾風が真幸の手を握って離そうとしない事が嬉しい。
「ここではなく、ふたりきりになって本心を聞きたい。俺の部屋に来てくれ」
疾風は今すぐにでも真幸が欲しくて堪らない。
もう我慢も限界だった。
「今でも愛してる」
疾風に愛してると言われて、真幸は抗えない。
真幸も疾風を愛しているからだった。
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